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キャリアコンサルタントひろくん

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2025.04.01
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​ 心理学も発展途上の学問の1つです。そして近年、認知の機能に着目した新しいアプローチとして、第3世代認知行動療法が広まりつつあります。
 Rumination-focused CBT(RfCBT)も第3世代CBTも、その1つです。うつや不安の発生要因でなく、そういう状態を保ってしまう原因に働きかけることが特徴です。いかに保ってしまう原因を断ち切るかをねらい、対応します。​
 なおこの方法は、残念ながらセルフワークには向いていません。具体的にいうと、全てを一人で行うのはとても難しいという欠点があるように感じます。そのかわり、今後反すう焦点化認知行動療法を受ける際、理解が進みやすくなり、治療の効果が出やすくなることを意図しています。

【反すう焦点化認知行動療法とはなんだろう】​
 認知行動療法(CBT)においては、認知の内容を修正するというアプローチからのシフトが進み、認知の機能に着目した新しいアプローチが近年広まりつつあります。それらは第3世代CBTと総称されます。第3世代CBTの中には、マインドフルネス認知療法、メタ認知療法、行動活性化療法、弁証法的行動療法、アクセプタンス・コミットメント・セラピー(ACT)などが含まれます。そして今回紹介するRumination-focused CBT(RfCBT)も第3世代CBTに含まれます。
 RfCBTは問題理解の基本的なメカニズムを行動活性化療法(BA)と共有し、うつや不安の発生要因でなく維持要因に着目することが特徴であり、いかに維持要因を断ち切るかを考えることを介入の軸とします。また病理のメカニズムとして否定的な考え込み(rumination)が果たす機能に注目し、超診断的なアプローチを目指す方法です。
 CBTでは従来、認知の内容に着目して、否定的な方向への認知の偏りをいかに現実的・適応的なものへと修正するかに焦点が当てられてきました。(例:認知再構成法) しかし、認知の内容ではなく、機能に焦点化する新しいCBTが登場し、行動療法、認知療法に続く流れとして「第3世代CBT」と呼ばれるようになりました。


​【反すう焦点化認知行動療法のポイントになる「考え込み」】​
 「考え込み」は思考に対する気分の落ち込みの影響を高めます。それにより、抑うつ状態にある人が自己の現状を把握しようとする際、抑うつ気分によって活性化された負の思考や記憶を用いてしまう可能性が高まります。つまり、考え込みによってより悲観的かつ宿命的な考えをするようになることから、効果的な問題解決が妨げられてしまうのです。
 また、考え込みは道具的行動(≒改善に向けた行動)を妨害するので、ストレスの多い状況が増加していきます。考え込みがうつ状態の長期化につながるのです。
 考え込みは様々なリスクの原因になりえます。うつ病に対して考え込みをしやすい者はリスク行動を起こす可能性が高く、抑うつ気分について考え込みやすい人は薬物乱用のような危険な行動に至るリスクが高いことも指摘されています。過食症や薬物乱用も考え込みとの相互関係がみられることが知られています。
 考え込みは自己に対する焦点づけを行うという性質から、自己注目の一タイプとも言えます。自己注目には異なる機能を有するいくつかの種類があります。全てが有害なわけではありません。中には自身を内省することで自己理解が深まったり、否定的な思考・感情の代替的解釈を生みだすといった適応的な機能をもつ場合もあります。
 抑うつ患者の認知的な特徴であり、もろさの一つとして知られるものに「過度に一般化された自伝的記憶」があります。これは自伝的記憶を思い出す際、個人的な特定のエピソードが再生されず、エピソードが一般化・抽象化され、具体的な日時や状況などの情報が欠落したり、繰り返された出来事の想起になってしまうことを指します。
 つまり分析的・評価的な自己注目、すなわち考え込みによる自己注目は過度に一般化された自伝的記憶を持続させてしまいます。一方、分析的傾向が弱まった体験的な自己注目は、過度に一般化された自伝的記憶を減少させるとも言われています。
 考え込みは、社会的問題解決能力の欠損にも関連しています。①状態志向的刺激(なぜ、何が、など)、②プロセスに注目させる刺激(どのように、どういう風に、など)、③無刺激の3群で問題解決能力の比較をした結果、②のプロセスに注目させた群はその他の群に比べ問題解決が有意に改善されました。

​【国内での研究では何がわかっているのだろう】​
 では国内研究では考え込みはどのように研究されているのでしょうか? ネガティブな内容全般を考え込む傾向が抑うつと結びつくのではなく、そのうちの一部である抑うつ気分が喚起された時の抑うつ気分・症状に関連した内容を考え込む傾向が抑うつと結びつきやすいとされています。
 クライエントが考え込みを有効であるとみなしてしまっている場合。すなわち、抑うつ的考え込みが、将来の問題状況への準備や共感性の増加、不快感情の予防と緩和につながるという信念が、抑うつ的考え込み傾向が高い場合に認められています。
 夜に行う考え込みが抑うつを考える上で重要な役割を担います。そして、就寝前のネガティブな考え込みは入眠までの時間に関係し、その時間の長さが主観的な睡眠の質にも影響を与えることが示され、就寝前 のネガティブな考え込み傾向は不眠の要因となりうることが指摘されています。


【機能分析と処理モードの変容とは】​
 RfCBTの理論は、ベックらのうつ病に対するCBTの原理や技法に基づき、さらに2つの大きな要素を付加している点がポイントです。第1に、行動活性化療法の考え方を採用し、機能分析を用いる点です。
 第2に、イメージや体験を用いたアプローチにより、情報処理 モードの変容に焦点を当てる点です。
 RfCBTにおいては、回避行動や考え込みの繰り返しは、抑うつや不安を引き起こす原因であるだけでなく、 それらを維持させてしまうものでもあると考え、維持要因としての回避や考え込みの機能に着目します。
 考え込み自体もまた、過去に嫌な経験を免れたこと(≒役立ったこと)で強化され学習されたものです。考え込みの機能としては、①失敗や恥をかくことを避けられること ②仕事でチャレンジすることを避けること ③他者からの批判に先手を打てること ④感情をコントロールできること ⑤言い訳して自分を守れる、などが挙げられます。
 考え込みは、リスク行動、否定的自己評価、社会的問題解決能力の欠損に関連する非機能的特徴を持つものであり、抑うつの発症・維持要因でもあります。考え込みも回避も、適切な状況下で度を越さない程度に行う分にはいたって普通の行動ですし、 時には機能的でもあります。しかし、これらが過度に行われたり、バランスを欠いている場合は問題となるのです。
 ABC分析は、機能分析のやり方を示す最もシンプルな方法です。Aは先行刺激(Antecedent)、 Bは行動(Behavior)、Cは行動の結果(Consequence)を指し、それぞれに従って状況や行動を整理していくことができます。 活動性を上げていくために、このレベルでの行動分析十分なクライエントもいます。TRAP・TRACへの注目とACTONを交互に、かつ頻繁に用いることで機能分析が進められます。
 TRAPとTRACとは? 回避が主なターゲットである場合、クライエントの回避的なパターンを崩すには、TRAPと TRACの考え方が役に立ちます。
TRAPを例示すると、きっかけ(Trigger)によって反応(Response)が起き、考え込みを繰り返すというような回避パターン(Avoidance-Pattern)をとるような場合です。
 一方TRACとは、自らがとっている回避パターン(TriggerとResponse)に気付き、代わりとなる対処(Alternative Coping)を見つけるように進めることです。
 ACTIONとは? さらに、クライエントが自らの行動と結果について、より意識できるようにサポートする概念を表したものがACTIONである。行動がどのように機能しているかをチェックし(Assess)、回避か活性化のどちらかを選択し(Choose)、選んだ行動をなんでも試し(Try out)、新しい行動を毎日の生活習慣に取り入れ(Inte grate)、結果を観察し(Observe)、決してあきらめない (Never give up)ということを表します。
 処理モードの変容については、「なぜ、何が」といった状態志向的刺激ではなく、プロセスに注目した場合に問題解決能力の向上が見られるという知見から、How形式の情報処理とWhy形式の情報処理を想定しています。Why形式の処理モードは適応的でなく建設的でない考え込みスタイルで、抽象的、一般的、評価的なことについて考えるものです。これに対して、How形式の処理モードは適応的で建設的な考え込みスタイルで、具体的でありプロセスを重視するものです。抽象的なWhy思考から、具体的なHow思考へと思考スタイルや処理モードを変えることを、イメージや体験を用いたエクササイズによって行うのがRfCBTに基づく援助です。

Rumination-focused CBTの介入手順】
 RfCBTにおいては、はじめに機能分析を行います。考え込みをしている際の思考プロセスに対する機能分析を行うのです。具体的には、実際の体験や記憶をいくつか挙げてもらい、それらをもとに時間を追って具体的かつ詳細に思考プロセスおよび結果を明らかにしていきます。
 あくまで思考プロセスに焦点を当て、 思考の内容について非難することは避ける注意が必要です。考え込みにおける思考プロセスのモデルを作成したら、抑うつを誘引する共通のステップや引き金がないか、あるいは異なる結果を導いた体験との相違がないかを検討します。
 もう一つは、考え込み自体が生じる条件や機能についての機能分析です。具体的には、①考え込みの習慣はいつから始まり、②どのような環境で生じやすいか、③考え込みの始まる直前にどんなことが生じているか、④どういう時に頻度が増減するか、⑤考え込みの停止ができた直前にはどのような行動をしていたか、⑥考え込みを行うことで今まで得てきた利益は何か、などについて行動実験やソクラテス式問答法(考えを深める為の質問法)を用いて情報収集し、査定します。
 そして、機能分析をもとに、環境調整や行動活性化を行います。たとえば、一人でいる際に考え込みが生じやすいならば社会的接触を増やす、車内で聞く悲しい音楽がきっかけとなっているならば違う音楽を流すようにするなど、考え込みをブロックする環境統制のための行動や拮抗する行動を増加・習慣づけていくのです。
 援助者には技術的な工夫が求められます。①課題を段階的に計画することや、②面接場面でのリハーサル、③環境調整、④ロールプレイングや ⑤援助者によるモデリングの実施、⑥拮抗する行動により得られるであろう結果や利益の入念な検討を行うこと、などが挙げられます。
 考え込みの代替行動として、①リラクセーションや②問題解決行動、③アサーショントレーニング、④ 日常生活場面での行動実験、⑤快活動への取り組みなども重要となります。快活動への取り組みは、気晴らしによる抑うつの軽減の観点を活かすものと言えそうです。
 思考プロセスに関する機能分析をもとに、イメージあるいは日常生活場面での実際の経験を用いたエクササイズにより考え込みの仕方の変容を行います。(例:同情的・共感的な感情を抱いた体験を想起するcompas sion exerciseと呼ばれるワーク)

今回は以下の論文から学ばせてもらいました。 心理教育として、非常に素晴らしい論文でした
『Rumination-focused CBT の紹介』
著作:下山 晴彦氏 他
東京大学大学院教育学研究科臨床心理学コース下山研究室





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Last updated  2025.04.01 05:34:12
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