ボランティアキャリアコンサルティング

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キャリアコンサルタントひろくん

キャリアコンサルタントひろくん

2025.05.04
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​【はじめに】​
 私は今回『傷つきやすいあなたが福祉実習を乗り越えるために』を執筆することにしました。なぜなら、 傷つきやすい面もお持ちのあなた様にこそ、福祉を誠実に支える人材として活躍してほしい からです。 
​​​ 誤解がないようにお伝えしておきますが、 実習で学べたことはたくさんありました。楽しいことやうれしいこともたくさんありました 。それは本当のことです。でも、 現実的には辛いこともたくさんありました。 私は担当教員から助けてもらえませんでした。その上、 テキストや学校の授業では教えてくれない内容がカギになってきます。 その要点を提供するのが当プログラムの目的です。 ​​​
 私が福祉業界のキャリアをスタートした場所は、高齢者介護のデイサービスでした。当時、私はある男性利用者さんと出会いました。その人は認知機能がとてもしっかりされていましたが、彼が私に言った言葉は次の通りです。
「介護の職員はなぁ…  まじめで、やさしくて、まともな奴ほど早く辞めてしまうんだよ 。 お前は早く辞めないでくれよ…
 彼の分析は非常に鋭いものだと私は思います。真面目で優しい方は、次のような特徴を持っています。
1.優しい為に抗議が苦手で、ストレスをためこみ、無理し続けてしまう。
2.他人が傷つけられる場面を見たら、心を痛めてしまう。
3.だれかをを傷つけている行為を目撃したら、心が痛んでしまう。
 つまり 「本当は福祉マインドを持ち、誠実に福祉をするためにふさわしい人材」であるにもかかわらず、福祉業界が抱える問題に対して余計に弱くなってしまっている のです。私は本当にもったいないことだと思っています。
​ もしかしたらあなたには、他の個性もあるのかもしれません。何かしらの精神障害や発達障害を持っている。過去に人間関係において傷ついてしまった経験がある。かりにそうだとしても、 あなたが志した「福祉への思い」は、きっと本物だろうと思う のです。 プロの専門職としての自覚(アイデンティティ)を持って、福祉を提供して、相手に幸せになってもらいたいと願う気持ち。もしあなたがその気持ちを持っているならば、是非とも福祉実習を乗り越えて頂き、今後あなたなりの方法で福祉に貢献して頂きたい と願っています。​

​【目次】​
1.まずは安心して自分をみつめる環境を調えよう。
2.指導者との付き合い方について。
3.職員との付き合い方について。
4.利用者さんとの付き合い方について。
5.実践的な準備方法について。

​【1.まずは安心して自分をみつめる環境を調えよう】​
 このプログラムを利用するには、開始する前の準備が大切です。準備とは、あなたがこのプログラムを、 安心して取り組めるための環境を調えること です。まず物理的な環境を調えましょう。
1.落ち着いた環境でリラックスして座っている。
2.できればすぐにおもいついた内容をメモできると良い。
3.一人で行う。
などの環境を用意します。
 用意ができたら、次にこれから紹介する セルフトークを味わいながら読み上げてください。1分間に130文字位を読み進めるぐらいの、かなりゆっくりした速度で読み上げます 。なお、紹介したセルフトークよりも、もっと自分の心が安心して納得できるようなトークを作れたならば、もちろん交換してかまいません。
(セルフトーク)
「わたしは絶対に自分を責めないことを宣言します。私がこのプログラムに取り組む理由は、実習に関する問題に対処するためです。私はたくさんの重要なことに気づきながら、自分を成長させ、安心を感じていきます。問題や、問題を生んでいる要因について、客観的かつ多角的に取り組んでいきます。そして今よりもずっと現実的な視点を持てるようになり、成長させた視点から自分をさらに理解し、反省もしていきます。
 私は安心して、心の底まで自分を見つめてよいのです。また私が不安・怖いと思えるできごとは、全て過去に起こったもので、記憶の中で思い出すだけのものです。ですから、現実は危険な状態では全くありません。試しに目の前や周囲を見回してみましょう。(実際にみまわす)あなたにおそいかかる人が誰かいましたか? もちろんいませんね。あなたは安全な環境で、プログラムに取り組んでいるのです。」

【2.指導者との付き合い方について】(ここからは黙読でもOKです)​
 指導者といえど、相手はひとりの人間です。ですから 指導者を一人の人間として、尊重する気持ちや姿勢を忘れないようにしましょう。そもそも実習は、利用者さんの日常生活及び職員たちの日常業務活動の場に「お邪魔させて頂く行為」です。「お邪魔して学ばせて頂く」のです。我々が利用者さんの権利をおかすこと、それにつながる職員さんたちの業務活動を妨げることは厳禁です。 ですから「自分が安心できて楽に実習を行う為に配慮する」のではなく、「利用者さんや職員さんたちを大切に思って配慮し、当プログラムの内容を実行した結果、ついでに自分が安心できて楽にもなれる」という点を忘れないようにしてください。
 人間は長所と短所を併せ持っています。また環境からとても大きな影響を受けています。過去の経験(例:いじめ、虐待)に大きな影響を受け続けている劣等感の強い人も少なくありません。「寿支援者交流会」の事務局長を務めておられる高沢幸男さんは、私との面談の中で次のようなことをおっしゃいました。
​「福祉の仕事をしている人なんて大体、すねに傷をもっているものですよ」 ​
 世間一般の人たちの中には、福祉に携わる人に対して「福祉に取り組むなんて、立派で素晴らしい人だ」とイメージする人が少なくありません。ですが、私は断言します。福祉に携わる人たちも、他の業界や職種に携わる人と殆ど大差はありません。そして 過酷な環境にさらされている分、(一時的に)むしろ攻撃的で意地悪な状態になっている人がたくさんいます。その事実は受け止めておきましょう
 指導者たちの実際の能力、やる気、持っている余力、おかれた環境などは、本当にそれぞれです。ですから指導者としての質や姿勢は、要はピンキリだと割り切って下さい。 指導者に対して、自分の理想、希望、一般的に望ましいと思える物事を押し付けないようにしてほしいと思います。
 そんなことを言っても、自分は授業料を払って学びに来ているのだから、まともに指導するのは当たり前だと感じる方もいらっしゃるかもしれません。ですが 指導者たちは、置かれている状況(環境)から、あまりに多くの影響をうける存在なのです。 極端な例ですが、三日三晩不眠不休で働いている状態で、あなたは新たなストレス・課題に適切に対応できるでしょうか?

​  「自分が正しい(はずだ)から、相手を正してやろう」という考えは厳禁 と考えてください。特に キャリアのある方、優秀な方、自信過剰な方は要注意 です。仮にソーシャルワーカー資格なら失格の心の姿勢です。理由は ①自分の問題点を自覚しにくい ②素直に学べなくなる ③自分のやり方を押し付けてしまううえ、かかわる相手を軽視してしまう ことにつながるからです。​
最初からできないのは当たり前です。もちろんそれでいいのです。 むしろ どんな姿勢で実習の準備に取り組み、実習期間を過ごしたのか。あなたは実際どんな人柄なのか、等が大切になります。発展途上だと謙虚に認め、学んで行けばそれでいいんです

指導者はとても多忙な存在です。 いくつもの課題を同時に追いかけていることもしょっちゅうです。そして、自分以外の人間・組織の都合、催促に振り回されることも少なくありません。ですから、実習生のあなたの学習スケジュールを確認したり立案することは、優先順位が高くないこともありえます。従って あなたは主体的に自分のスケジュールについて、予め理解して整理しておくことが必要 となります。スケジュール手帳などを用意して、実習総時間、実習条件、実習期間などは予めできる限り把握しておきましょう。

 指導者によっては、実習1日の振り返りを行ってくれる方もいらっしゃいます。まずこの点について感謝しましょう。実習の振り返りをしてくれない方(現実的に不可能な方)はたくさんいるのです。その上での話ですが、 指導者の指導には絶対に反論しないようにしましょう。 反論してしまうと、今後指導を受けづらくなってしまったり、低評価がつきやすくなったりします。
 なぜ反論してはいけないのでしょうか。第1の理由は、指導者側に大きな心理的問題等がある場合、どんなに適切な改善や対応をしても、通用しないからです。第2の理由は、実習生側に不十分・不適切な要素があるからです(私も一部そうでした)
 指導者はあなたと意見を交わす対等の相手ではありません。たとえ相手が明らかにまちがった言動をしても、正そうとしてはいけません。もちろん倫理綱領の中には、正すことを求めたり、批判精神を大切にすべきとあるかもしれません。その場合は、あなたが卒業して資格を取った上で、組織窓口等に情報提供をしましょう。
 そもそも 「指導者はいつも優しく、指導力を発揮して対応すべきだ」というあなたの一方的な思い込みは、非現実的です。 確かに筋は通っているかもしれません。「授業料を支払っているから、実習先としての指導・教育効果を発揮するのは当たり前だ!」という主張は、因果が成立しています。でも、実態にそって考えると非現実的になってしまうのです。
​ 指導者や職員は過酷な環境で働いています。しかも能力や姿勢などにも個人差があります。ですので、むしろ 「やたら厳しいし、きつく当たってくるし、明らかに八つ当たりの時さえある」のが現実の場合があります そのようなあまりに理不尽な場合、どう対応すればよいのでしょうか?​
 第1にいろいろ言われても、「はい、わかりました。」「はい。勉強になりました。」などの対応で済ませて、 まともに相手の言動をうけとめない ことです。要は 心の中ではスルー するわけです。なぜなら、わざと八つ当たりをされるケースなどでは、何をしても無駄だからです。
 第2に不適切に対応されたときに「指導者(職員)も辛いんだろうなぁ。対人療法の観点で言えば「心の悲鳴」なんだそうだ。「大変なんだろうなぁ」と、 心中で同情します
 第3に できる限り実習指導者に日中はかかわらないように過ごすのも、現実的な一手です 。ただし、避けていると相手にばれてはいけません。その分1日の振り返りなどで十分にコミュニケーションするなどのフォローも大切でしょう(心の準備ができるので、まとめての方が楽かもしれませんね)
 第4に優秀な成績で実習をクリアする必要はないことを自覚しましょう。仮に実習先で不十分な評定が出たとしても、補講やレポート提出などで挽回できるケースも少なくありません。 ​実習日程を全てクリアすることを最大の目標にして、質は二の次とする場合も、相手の理不尽度が高い場合にはやむを得ない現実的な対応(悪手ですが)として、ありえます。​
※大切なのは実際の場において、誠実に職務遂行できるかどうかですから。

 あなたがもしもかなり若手の場合。 指導者をまるで権威者のようにとらえてしまう可能性があり ます。そうした場合、次のようなリスクが考えられます。①相手の機嫌ばかりうかがい「心中でも」相手の言いなりになる。②自己否定ばかりしてしまう。③相手の言動を全てまともに受け止めてしまい、ストレスが異常に高まってしまう。
 そうではなく、相手も(あなたも)「しょせんは人」であることを思い出しましょう。短所も欠点もある人なのです。また 指導者の言動は、あなたの実習上の問題点における技術的・専門性の指導をしているだけ なのです。加えて 指導者には、あなたの人格や尊厳を否定する権限など、みじんもない ことを覚えておきましょう。しょせんは、あなたの一部だけを取り上げて、自分の主観だけで批判などをしてくるだけなのですから。

 実習生の中には、指導者を無駄に刺激しないようにして、実習を乗り切ろうとする方もおられます。利用者や職員の日常をおかさないためではなく、自分を守る為に目立たないようにして、その結果、指導者から注意やきつい指導を受けないようにするわけです。
 確かに一部の場面では有効に働くかもしれません。しかしその姿勢は、利用者さんや職員たちの日常を大切にするという姿勢ではありません。
 たとえ表面上は「静かに立っている」ようであっても、単に「指導者や職員を刺激しないように目立たずにいる」ことと、 「利用者さんや職員たちの日常をおかさずに、不快感を与えないように留意しながら、細かく観察している」 ことでは、天地の差があります。
 指導者から現場における具体的な指示をもらえずに困るケースがあるかもしれません。しかし、あなたが実習で慣れてきたり、あなたの人柄、適性等を指導者が感じ始めた場合、 指導者(職員)側から指示されることは十分にあります。 あなたは現在、することがわからなくて困っているかもしれません。でも明日には相手からの指示や、課題提示があるかもしれないことを頭の片隅に入れておくと良いかもしれません。その為にも、 あなたの最善を尽くし続けましょう (無理のある最善ではありません。)
​​ 指導者が未熟だったり、日中の実習生の活動を十分に観察できていない場合、 指導者からの指示・課題提示が的外れのときがあります。 指導者に嫌われて、嫌がらせやしごきの一環として、わざと困難な課題を出されることもあります。 ​​
​ しかし 反論はせず 指示内容でわからない部分があれば具体的な追加説明を求める などをして、 指導者と対立しないようにしましょう 。実習は短ければ数週間。長くても数か月で終了してしまいます。そして、実習が終了して資格証が届いてしまえば、そういう大きな問題を抱える指導者とは一生関与しなければよいのです。(逆に一生大切に師匠として仰げる人がいたら、大切にしましょう。相互互恵の関係にしていけると良いですね)​
 指導者にもいろいろなタイプがあります。もしも相手が 内心自信がなかったり、強い劣等感を持っていたりする場合はどうすればいいのか?  あいさつなどを礼儀正しくするのはもちろんです。その上で、 相手に対して自分が優秀である、できがよい、頑張っているといったアピールをすることは避けましょう。 「出来過ぎ君」は嫌われがちです。
 むしろ現場における事象について、無知であることを前提に、 具体的に質問することを推奨 します。具体的に質問する為には、事前にテキストも読んでおく必要があります。 目の前で観られた具体的な事象について、学ぶ為に質問をするという本質を忘れないでください。 その上で、ついでに相手の劣等感等への対策になるだけなのです。

あなたが試してみたいことについて、必ず事前に指導者に確認しておきましょう 。なぜならばあなたには ①クライエントが抱える見えない面を十分にアセスメントできていない ②今までの経緯が見えない 、からです。また試行したいとお願いする際は、必ず ①クライエントの利益 ②クライエントの同意 を盛り込む(形式的でなく本当に)必要があります
 もしもあなたの試みがうまくいった場合、あなたの実力や自信は向上し、クライエントの生活の質も向上することでしょう。同時に、職員等が嫉妬してくるリスクも発生します。学びと貢献をとるのか?リスクを避けるのか? それは あなたの価値観次第 です。
​​​  指導者はあなたになるべく多くの時間をクライエントと過ごしてほしいと思っています。 それこそが実習の重要な機能の1つだからです。 そして テキストで学んだアプローチや理論といった理屈を「あてはめる」行為 よりも、まず 実際を体験しつつ観て学んで、そこから感じられた内容が「よく考えてみれば〇〇に当てはまった」という経験 を重視しましょう。​​​
 事前に出された課題において、いろいろな対応方法が載っている場合、 その方法をいきなり実践しないようにしましょう。必ず実践前に指導者または有力な職員等に許可をもらうほうが無難です。 例えば私は事前に自閉症の方に対して2語文でかかわるように予習させられました。ですので「自閉症の方には基本2語文で関わればいいのだ。いつもそうしよう」と思い込んで、相手の自主性を損ねるという失敗をしました。要は 指導者等とのコミュニケーションが不足 していたのです。
 あなたの理解不足や、間違った試行によって、指導者の指示に従えていない場合がありえます。そうした場合、もちろん質問をして修正や成長を図るのですが、それでも同じことを何度も繰り返す方がいます。 その問題への対応方法は、質問をとても具体的なものにするという方法が有効です。 例えば「ある場面において、Xさんの〇〇という行動はどうして起きるのでしょうか?その際、話しかける対応法もあるようですが、他にどんな方法があり得るのでしょうか?」という具合です。場面や対象人物を限定して質問してみると、 あなたの問題点がわかりやすくなる ことでしょう。
​ 指導者が アイスブレイク してくれたとしても、それで相手が友好的でノリがよく、話しやすい人だと思い込まないようにしてください。指導者はあなたが緊張しないように配慮してくれている可能性が高く、一方で 冷静にあなたの人柄や個性を観察しているものです 絶対に調子に乗ってはいけません。 たとえ友好的に話すとしても、あなたが体育会の1年生で、卒業したばかりのOB(3歳差)と話すぐらいのノリにしておいた方が、私は無難だと強く思います。​


​【3.職員との付き合い方について】​
  もしも職員と何かしらもめてしまった場合、 指導者はかなりの確率で職員側を支援 します。今後も付き合いがあり、現在戦力として組織に役立ってくれていて、退職されたら困るのは職員の方だからです。
  職員などから実習への志望動機をきかれることがあると思います。その際は 自分の志望動機が、相手にどのように伝わるだろうか?と考えておく方が望ましい です。本当の理由が相手の望む理由でない場合は、本当の理由の一部分を活用して、相手が受け入れやすい理由に替えておく方が無難でしょう。
職員の言動を安易にまねてはいけません。職員の全員が、あなたが目指す資格の専門性をもっているわけではないのです。 (むしろごく少数でしょう) 残念ながら手本にしようとしたその職員の言動は、不適切である可能性もあるのです。しかもその職員と別の職員が対立している場合は、あなたが問題行為をしているとして、指導者に密告されるリスクがあるのです。
​ 実習の仕組みを知ってしまうと、指導者や職員のメリットはほとんど無いことに気づきます。その際に 「みなさまに迷惑をかけたくない」ということを必要以上にPRする 人がいます。相手に優しく聞こえる営業トークにも聞こえるこのセリフは、恩着せがましい、口先だけだ、などと反感を持たれるリスクもあります。​
 もしもあなたが取得する資格以外の有資格者であったり、何かしらの実務経験を十分に持っているなどの方である場合、 職員たちはあなたのキャリア(実績)、資格、能力などをねたんだり、嫌がらせをしてくるかもしれません。 たしかにそれらは理不尽なものですし、不快なものです。
 でも 実習先の職員は、全員があなたの指導者(SV)ではありません。いろいろな立場の方々が、働いておられます。中には不十分な能力、適性、専門性などで業務上苦労していたり、過酷な環境で強いストレスを受けている状況等もあり得るのです。
 嫌がらせをしてくる人たちを愛そう、とまでは言いません。でもその 大変さに共感して、「苦しいのだろうなぁ…」と心中でいたわる気持ちがあってもよいかもしれません。 間違っても自分の心を守る為に(=防衛機制)、相手をあわれまないようにしましょう。
​​​ 少し現場になれてくると、いじられキャラの職員がいる場合、あなたは他の人と同様にちょっといじってしまいたい衝動にかられるかもしれません。ですが、 それは絶対にしてはいけません。厳禁行為です。   
 人の信頼関係の構築における段階には次のようなモデルがありますが、短い実習期間では、 進んでも「実験の段階」までで十分 です。 「関係強化の段階」まで進もうとすると 、仲がよくなるか 、逆に(ひどく)対立するリスク が生まれます。なお 冗談も同様です。 ​​​

(人間関係の発達の5段階)
1出会いの段階:簡単なあいさつを通して、人間関係をすすめるかどうかの判断が行われる。
2実験の段階:簡単な自己紹介、表面的な世間話やおしゃべりを通じて、お互いのことを探りあう。実はこの段階でストップする人が多い。実習先で交わされる多くの交流はこの段階までです。交流してお互いを認める為、対立した関係になりにくく、孤独感も感じにくいメリットがあります。
3関係強化の段階:性格、家族、価値観などについて内面的なコミュニケーションが行われる。親密な関係になり始める。
4統合の段階
5結束の段階
自分の弱みを むやみに 職員(や幼稚な指導者)に見せないことも大切 です。自分の弱みを見せるというのは、「実験の段階移行」の段階で行われるものです。にもかかわらず、段階を無視して効果がみこめない行為をしてしまうと、どうなるでしょうか?
​ 疲労して過酷な環境で労働する 指導者や職員たちは、むしろあなたを攻撃の対象としてみなしやすくなってしまいます ですから実習先の職員とは、 礼儀正しく敬語を使って、終始対人距離を長めにとっておく安全第一の姿勢で交流しましょう。
 そして実は、あなたの存在が未知である 職員や指導者も、頻繁に来訪しては去っていく実習生たちに対して、必要以上に深い交流をするのを避けている可能性は高いのです。相手の負担も感じとりましょう。
​​ あなたが社会人である場合、あなたは場面によっては即戦力性を発揮して利用者さんとかかわれるかもしれません。しかしそれは 職員からねたまれる可能性があるリスク行為であるうえ、そもそも職員の日常的な支援の様子を観察して学ぶという実習から逸れた行為 になってしまいます。 職員の日常への侵害ですし、実習と労働をはき違えた行為です。 ​​
 やることが無くて焦ってしまう。行動していないとアピールにならないと不安になってしまう。そういう気持ちは理解できますが、 モデリングで習った通り、未熟な実習生は手本を観察することで非常に多くを学べる存在です。またあなたがソーシャルワーカーを目指しているなら、「かかわり」がいかに重要であるかを習ったはずです。「かかわり」には観察しつつ見守ることも含まれていましたね。
 ですから焦らずに、相手に不快感をあたえないように留意しながら、観察することからも学ぶことです。繰り返しになりますが、かかわりには見守りや、一緒の時間を過ごすことも含まれています。何が相手のニーズに対応し、相手を本当に大切にすることなのかを考えて対応してみましょう。

「自分が実際の業務を手伝えば、職員たちは楽になるはずだから良いはずだ。」これは思い込みで決めつけです。 繰り返しますが、 学びに来ていることをわすれない言動を心がけましょう。 ただし相手が手伝いを要求してくれば、 実習生には「準職員」の面もありますので、前向きに支援しましょう。 そこから見えることも、学びにつなげてください。
 では実習生はずっと能動的にかかわらなくてもよいのでしょうか? もちろん違いますね。実習という視点で見ても「指示待ちすぎる姿勢」だと感じられると、周囲の職員や指導者から苦言を言われたり、場合によってはきつく怒られたりすることもあり得ます。
 手を出してもいけないし、指示待ちで何もしていないのもいけない。じゃあどうすればいいのか?という声が聞こえてきそうです。その場合は、 指導者からの指導内容を最優先しましょう。 利用者さんとのコミュニケーションが足りないと言われたら、コミュニケーションする取り組みを増やしてみることが大切です。職員から苦言を言われても、指導者からの指示が出ている旨を伝えましょう。その上で、現場の職員の新たな指示に従うか、とりあえず行動しておいて、その結果を指導者に報告するかします。
 職員と一対一でコミュニケーションをしているときは良好な感じだった。でも一対集団(いつものグループ)などになった場合、急に良好な交流ではなくなった。この変化に驚かないでください。相手にも今までの流れがあるのです。グループや組織内の立場などもあります。一対一で見せた姿も、グループ内で見せた姿も、両方とも相手の本物の一面なのです。なお初対面での一対一でのコミュニケーションでは、大体の人が様子見も兼ねてかなり慎重に行ってくるものです。この姿が当たり前だとは思わないようにしましょう。

 職員が許可したから、勝手に実行してしまうのは止めましょう。あなたに指示する権限があるのは、指導者だけです。


​【4.利用者さんとの付き合い方について】​
​  利用者さんとの付き合い方は、教科書や授業を一番生かしやすい内容となります。 教科書の内容や授業で習った内容を大切にして、倫理綱領なども守りながらかかわり支援すれば、十分に学べることが多いと思います。​
 あえて私から伝えるならば、利用者さんを観察すると言っても、 実験対象のように観察しないように注意します。つまり相手(職員を含む)の不快感、プレッシャーなどを上手に感じ取って、相手のいつも通りの言動をおかさないように観察 します。


​【5.実践的な準備方法・教員との付き合い方について】​
 日頃電車通勤していない人は、満員状態のデイリーハッスルなど、 かなりのダメージを通勤から受けてしまいます。 予め軽減の準備をしておくとよいでしょう。私は一定区間を自転車で通い、リフレッシュしながら通学していました。(事故の際の保険適用等では不利になる可能性があります。ご注意ください)
 通勤電車で座れる場所をリサーチしておきましょう。私は一度全く同じ時間帯・曜日に電車に乗ってみて、座れる場所をリサーチしてみました。なお、ホームの端に立って、入ってくる電車の全車両をざっと見ていけば、空いている車両の目途がつけやすくなります。

くつは良いものを使用しましょう。インソールの活用も効果的です。 疲労度が全く違ってきます。また事前に体を鍛えて、基礎体力を挙げておきましょう。現場ではクライエントと散歩する、ほぼ一日中立ち業務であることもざらです。ですので、しばらくじっと立位でいるというトレーニングも基礎体力向上とは別に行う方がよいでしょう。減量も有効です。5kg減るだけで、負担が大きく変わってきます。

食事の準備は、施設側の都合に全て合わせましょう。 (あなたに摂食上注意する疾患があるなら別ですが)そして昼食は利用者さんと一緒に食べながら、そこからも学べると良いと思います。つまり 実習期間中に、休み時間は無いとお考え下さい。

通勤時間にレポートを(一部)作成するようにしましょう。 完成させることができなくても、各内容のネタをピックアップする、一部の文章をスマホで作成して、自分のパソコンに転送して、貼り付け機能を利用する、などの工夫が、塵も積もれば山となります。

 実習スケジュールにもしも調整の余地がある場合、例えば週に3回の実施と、6回の実施では負担が大幅に違ってしまいます。何を当たり前のことを…と思うかもしれませんが、多くの人は交渉・調整の余地があるにも関わらず、 一方的に相手の最初の条件を受け入れてしまう傾向 にあります。可能であれば、 教員に調整を依頼しましょう。 教員から自力での交渉を振られた場合でも、 誠実に必要性を訴求しながら週4回以下の実習実施を交渉してみることをお勧めします。
 ただし大前提として、 あなたの実習上の権利よりも尊重されるのはクライエントの日常生活と、職員たちの日常支援(業務)です。 その点はきちんと踏まえておいてください。
 実習中に各ネタが無くなって困る人もいらっしゃいます。そうした人は、 実習前の準備として「ネタ候補集」を作成しておくとよい と思います。実習に関するテキスト1冊を読んでいく中で、例えば「ストレングスの見つけ方」「エンパワメントの仕方」「最初の会話やかかわりでのラポール形成のこつ」などといった具合に、キーワードを含めて実習日程の1.2倍以上のネタをリストアップしておけば、かなりの助けになるはずです。
 もしもあなたがたった1人の親しみやすい職員を見つけられたなら、それは とても幸運なこと です。(メンタークラスであれば最高ですね) 福祉の業界にはそうした尊敬に値するような人柄の方も、少数ですが一定数いらっしゃいます。

 実習は複数回、または複数クールに渡って行われる場合があります。その際の基本は、 初回の反省を次に生かすという姿勢 です。ものすごく効果があります。​

施設にいる看護師さんには、特に曲者が多い ように思います。基本的には病院やクリニックで勤務するはずの看護師さんが、 何かしらの事情で施設勤務している わけです。その場合は人間性、心的問題がある場合も少なくありません。彼女たちは自分の心を守る為に(防衛機制)、プライドが高い、間違いを認めないなどの傾向があるので、一目置いた対応をする方が無難だと思います。もちろん最初から曲者扱いするのはよくありません。かかわってみて、曲者である可能性が高い場合に、やむを得ず行う対応だと思ってください。
 学校の教員がもう一人の指導者(SV)になってくれるケースが殆どだと思います。 信頼関係を構築しておき、自分一人では対応しきれないケース(非常に困難、あまりに理不尽等)では積極的に頼っていきましょう。 定期的な巡回はあると思いますが、それに加えて
1.早めの相談
2.独断専行して一人で解決しようとしない(例:指導者の上司に報告する)
3.教員が実習先について詳しい情報を持っている場合、事前に教えてもらっておく。
を行っていくと良いでしょう。
​ 実は… 学校側の教員に問題があるケースも考えられます 学校の教員は何十人もマネジメントしなければならず、来年度以降も実習先を確保し続けなければなりません。一方、あなたはお金をもう払ってしまっています。利益確保上は、もう用済みというわけです。​
 およその教員はしっかりと指導・支援してくれると思います。でも万が一、教員が全く支持的でない場合はどうすればよいのでしょうか?

 実例を挙げておきます。教員も人ですから、やる気の高低、あなたとの相性、教員本人が置かれている環境などが影響してきます。私の指導教員は次のような言動をした方でした。
・実習中の休日は十分休むように言っておいて、休んだら「バカンス楽しんでますねぇ?」と嫌味を言われる
・「実習は1日でも長く期間を稼いでもらわないと困る!」とどうせ実習中止になるだろうと発言しておいて、「あなたならきっと実習をやりとげられます」とビジネススマイル
・私からの相談等の電話に対し、居留守を使う
・施設でおきた問題行為(例:「うちでは虐待がありますよ」発言や、実際の虐待行為)について、一切認めようとしない
・一方施設側の私に対する評価は、全て鵜呑みにする
・施設指導者と私が対立したことが明るみになった際、「私の顔に泥を塗って!」と赤面して切れる
 こんな指導力・指導姿勢でした。ですから私は、 困ったことを実習先の指導者に相談して対応しました。 これが対応法その1です。対応法その2は、 このプログラムを熟読して頂き、指導力不足の教員の支持機能の代わりとして活用すること です。
​​​​
【終わりに】
 福祉の仕事は大変です。かつて教員の離職・病休問題において実施されたアンケートがありますしたが、教員の仕事は ​「 ストレスも強いけれど 、やりがいも大きい」​ と感じられていました。私は 福祉も同様だと思っています。 ​その上優しくて誠実なあなたを、クライエント(利用者さん)は待っているはずです。共にあなたと何かしらの形で福祉にかかわれることを心から願っています。実習頑張って下さいね。応援してます。​ ​​​スマイル





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Last updated  2025.05.05 05:42:31
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