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いらっしゃいませ。 こえめ
です![]()
真矛の家は森の中の大きなお屋敷。( 前のお話 )
実夏と真矛は
仲良く遊べるのでしょうか?
―3―
あたしは目の前の、
ふっくらぎっしりのパイに夢中で、
ほっぺたが膨らみっぱなしだったから、
真矛とは、とくに話すこともなかったけど、
ときどき出されるリカさんからの質問には、
首をたてか横に振ることで、返事の代わりにしたの。
「お母様はいつもおうちにいるの?」
首は横。
「動物、好き?」
たてにうなずく。
「何の動物が好きなの?」
もぐもぐしながら困っていたら、
真矛が「きりん!」って叫んだ。
真矛のそんなに大きい声を聞いて、ちょっとビックリしたわ。
だって幼稚園では物静かで、
自由時間でも、スカートを花のように広げて、
ひとりでお絵かきしている姿しか
知らなかったんだもの。
そしたら急にさっきの、
真矛のクルクルを思い出しちゃって、
またあたしは、目の前のパイをさっさと平らげて帰りたくなったの。
最後の一口を、かまずに呑み込んだら
つっかえちゃって、
苦しくって涙目になっちゃった。
ジュースを飲まされ背中を叩かれしながら、
思っていたのは、
なんで真矛、あたしと同じキリンが好きなのよ!もうやだ!
ってこと
その後、わあわあ泣きじゃくっていたあたしは
また来たときと同じように、
リカさんに手を引かれて、泣きながら帰ったんだけど、
玄関に向うとき、反対側の廊下の先に
真っ白な猫が見えた。
騒がしいからきっと、
何事かと様子を見に来たのね。
猫飼ってるなら、好きな動物は猫って言えばいいのに!
って、また頭にきた。
うちは家が留守になることがあったから、
どんなにねだっても、動物は飼ってもらえなかったのよ。
家まで歩いていくうちに
あぁ、もうこれで、あの家に行くことは無いんだと思ったら
せめてあの猫さわりたかったな、なんて思ったりして、
どうしようもなく悲しくなって、
またまた泣いた。
リカさん、困ってたよねきっと。
家に着いたら、うちのママは留守だった。
いくらなんでもこんなに早く帰ってくるとは、
思ってなかったんだろうけど。
あたしが門のかげの大きな石を、両手で転がそうとしていたら
後ろからリカさんが手伝ってくれたの。
また良いにおいがした。
石の下のカギを取って、玄関を開けて入るとき、
リカさんが、「実夏ちゃん、また来てね」って言ってくれたので、
あたし本当にホッとして、
あした幼稚園で真矛をさそって、
ブランコに乗ろうって、決めたの。
次の日、ひまわり色のスカートの真ん中で
画用紙に真っ赤なクレヨンをグイグイ塗りたくっている
真矛の前に立ったまま、その手元を見ながら、
モジモジしてたら、
真矛が急に手を止めて、
あたしを見上げてきたの。
一瞬怒られるのかと、ビクッとして固まっちゃった。
あのときの真矛の瞳、
宝石みたいにきらっと光って、
きれいって思った。
真矛の声がした。
「ねぇ、またおうちに遊びにきて?」
すっごく嬉しかった。
なんだ、本当はいい子なんだって思った。
あたしって小さいときから単純だったのかな。
それからちゃんと、一緒にブランコにも乗ったわよ。
しかも二人乗り。
そんなわけで、あたしはまた、ママにおめかしさせられて、
真矛の家に遊びに行くことになったの、
迎えに来たリカさんの手をしっかりにぎって。
だけど今度はピンクのリボン無しで、
ポニーテールにしてもらったわ。
(つづく) ( 次のお話 )
魔法の真矛ちゃん(16)実夏 March 20, 2009
魔法の真矛ちゃん(15)塔哉4 March 18, 2009
魔法の真矛ちゃん(14)塔哉3 March 18, 2009