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2012.12.24
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カテゴリ: SF小説

              その4


『小さな町の本屋さんで立ち読みしていたぼくに『本屋の看板娘』さんが・・・

「お好きなんですね・・・」


わざと一呼吸おいてから、ぼくは彼女を振り向いた・・・
ぼくの下手な一人芝居は、はたして不自然に見えなかっただろうか・・・。

はじめて、この本屋さんに立ち寄った時、「文庫」のタグを見つけて、奥へ進むぼくに、笑顔と声が届いたんだ。

「いらっしゃい」

きれいな声、爽やかな笑顔・・・
ぼくが受けた衝撃の波は、はねかえって、君の心のどこかに届いたのだろうか、ぼくは、それを望んでいた・・・
初めて出会った人に・・・

だから、何度目だかに、君が

「お好きなんですね」

って、声をかけてくれたとき、本当のことを言えば、
それまで何度も通っていて、安い文庫本を探すこと
それ以外のひそかな楽しみを抱いていたこと・・・

君と話しができたなら・・・

その願いが叶ったならば、どんなに嬉しいだろうって・・・そうなったら、そうなったで、いったいどんな話しをすれば・・・どんな話しができるのだろう、ボクに・・・

不自然なほど、時間をかけて、彼女に返事をしようとぐずぐずしている。そんなボクを君は優しく見上げて、その場に立っていて、そしたら、

『いいのよ、ゆっくりで』 って、そう言う君の声が、ぼくの中に聞こえたんだ。

(君は、テレパスなの!?)

幸いなことに、その笑顔に助けられて、ぼくは初めて君にボクの言葉を告げる。

「はい!好きです」

たった6文字の言葉、その後が続かない・・・ボクにとっては貴重な第一声だけど

彼女にとっては、拍子抜けするほどでしかないに決まっている、そのはずなのに

「どんな小説がお好きなんですか?」 

「え!」

初めての言葉が8文字で、今度は2倍の16文字!・・・

そんな長くて、難しい?ことを訊かれても・・・ボクに与えられた時間は、そんなにたくさんあるのかなぁ・・・

そうだ!今日はクリスマス・イブだった!奇蹟を我にくださいサンタさん!

まるで子供である・・・だが、やっぱりサンタはいた!

閃いたのだ!

ボクは、手の中の大好きな小説の表紙が彼女に見えるようにした。すると、彼女の目が輝いた、たしかにそう見えた。

「この本がお好きなんですか、『そのときは彼によろしく』、私も大好きなんです」

(なんて素敵な贈り物なんだ!サンタさんありがとう!)

その日を境にボクと雪の世界は、暖かく、深くなっていった。


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 注:「そのときは彼によろしく」 市川拓司 著





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最終更新日  2012.12.30 01:37:29
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