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その4
『小さな町の本屋さんで立ち読みしていたぼくに『本屋の看板娘』さんが・・・
「お好きなんですね・・・」
わざと一呼吸おいてから、ぼくは彼女を振り向いた・・・
ぼくの下手な一人芝居は、はたして不自然に見えなかっただろうか・・・。
はじめて、この本屋さんに立ち寄った時、「文庫」のタグを見つけて、奥へ進むぼくに、笑顔と声が届いたんだ。
「いらっしゃい」
きれいな声、爽やかな笑顔・・・
ぼくが受けた衝撃の波は、はねかえって、君の心のどこかに届いたのだろうか、ぼくは、それを望んでいた・・・
初めて出会った人に・・・
だから、何度目だかに、君が
「お好きなんですね」
って、声をかけてくれたとき、本当のことを言えば、
それまで何度も通っていて、安い文庫本を探すこと
それ以外のひそかな楽しみを抱いていたこと・・・
君と話しができたなら・・・
その願いが叶ったならば、どんなに嬉しいだろうって・・・そうなったら、そうなったで、いったいどんな話しをすれば・・・どんな話しができるのだろう、ボクに・・・
不自然なほど、時間をかけて、彼女に返事をしようとぐずぐずしている。そんなボクを君は優しく見上げて、その場に立っていて、そしたら、
『いいのよ、ゆっくりで』 って、そう言う君の声が、ぼくの中に聞こえたんだ。
(君は、テレパスなの!?)
幸いなことに、その笑顔に助けられて、ぼくは初めて君にボクの言葉を告げる。
「はい!好きです」
たった6文字の言葉、その後が続かない・・・ボクにとっては貴重な第一声だけど
彼女にとっては、拍子抜けするほどでしかないに決まっている、そのはずなのに
「どんな小説がお好きなんですか?」
「え!」
初めての言葉が8文字で、今度は2倍の16文字!・・・
そんな長くて、難しい?ことを訊かれても・・・ボクに与えられた時間は、そんなにたくさんあるのかなぁ・・・
そうだ!今日はクリスマス・イブだった!奇蹟を我にくださいサンタさん!
まるで子供である・・・だが、やっぱりサンタはいた!
閃いたのだ!
ボクは、手の中の大好きな小説の表紙が彼女に見えるようにした。すると、彼女の目が輝いた、たしかにそう見えた。
「この本がお好きなんですか、『そのときは彼によろしく』、私も大好きなんです」
(なんて素敵な贈り物なんだ!サンタさんありがとう!)
その日を境にボクと雪の世界は、暖かく、深くなっていった。
注:「そのときは彼によろしく」 市川拓司 著奇跡の4B 最終回 Hello, & Goodbye ♪ 2019.08.25 コメント(8)
奇跡の4B 最終章 会えば必ず来る時 2019.07.16 コメント(26)
奇跡の4B キャバーンクラブ 2019.05.06 コメント(98)