★モイラの名画座★

< 新しい記事

新着記事一覧(全1143件)

過去の記事 >

2007.06.14

哀しい再会★「ひまわり」

(6)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

戦争によって、人生を大きく変えられてしまったカップルの悲劇を、
写実的に描いたイタリア映画の傑作‥‥それが、1970年の「ひまわり」です。

＜LOVE！シネマ2500シリーズ＞[DVDソフト] ひまわり＜デジタルリマスター版＞

恋に落ち、美しい海と火山の町ナポリで結婚式を挙げたジョヴァンナ（ソフィア・ローレン）とアントニオ（マルチェロ・マストロヤンニ）。
しかし、時は第二次世界大戦中。アントニオも召集令状を受け取り、
精神病を装って病院入りして徴兵を逃れようと試みるが、詐病がバレ、
兵卒として、極寒のソ連の前線に送られた。
アントニオの母とともに、彼の還りを待つジョヴァンナ。
数年後、戦争は終わるが、アントニオは生死不明のまま。
「アントニオはきっと生きているわ‥‥！」
ジョヴァンナはひとり、異国ソ連に旅立ち、モスクワでアントニオを探し始めた。
しかし、そこで彼女が見た光景は‥‥！

モスクワ郊外の原野一面に咲き乱れる、大輪のひまわりの花‥‥
夫を探すジョヴァンナが、そのひまわりの花の群れの中に
疲れきった哀しい目をしてたたずむ姿が、忘れられません。
ひまわりは「情熱の花」とも形容されますが、この映画のひまわりの群れは、
情熱の花とはほど遠い、ひどく哀しく、寂しいものでした。
それでいてひどく美しく、おびただしい黄色い花々が、目に痛かったです。
あの広大なロシアの大地で、アントニオがわりとあっけなく見つかるくだりは、
ちょっとご都合主義かなとも思いましたが、
まあそれは、映画というフィクションの「お約束」なんでしょうね。

戦争によって男女が引き裂かれ、運命を大きく変えられる‥‥
有史以来、数限りなくとりあげられた題材で、
この作品を、「典型的なメロドラマ」と鼻で笑う人もいますが、
その「典型的なメロドラマ」の方程式に則り、
イタリアの２大俳優を起用し、美しい映像やヘンリー･マンシーニの名曲、
練り上げられたシナリオで、格調高い人間ドラマに創り上げたヴィットリオ・デ・シーカ監督の力量に拍手です！
イタリアン・ネオレアリズモの傑作「自転車泥棒」でもそうでしたが、
この作品でも、「悲しみ」が写実的に表現されていました。
アントニオが召集されるまでのくだりに、コミカルなシーンがいくつかあったので、
中盤、終盤の悲劇がなおのこと、ひしひしと観客の心を打つのです。

それにしても戦争って、ほんとに罪深いですね。
戦争によって、ジョヴァンナやアントニオのようなカップルが、何人出たことか‥‥
涙、涙だけではなく、しっかりした人間描写に裏打ちされた傑作映画です‥‥

★イタリアの大輪の花、ソフィア･ローレン！★