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『ザ・聊斎志異』(蒲松齢/訳 柴田天馬)から。※同書にはない通し番号を便宜上付します。69「口技(コウギ)」異類:人村に薬を処方して医者稼ぎをする二十四、五の女がいた。診てもらいにくる者がいても女自身では処方できず夜になるのを待つ。日が暮れると小さな部屋を浄めて女が籠る。やがて話し声が聞こえてくる。「九姑、来たの?」すると一人の女子が答えた。「来てよ!」をんなは又曰った、「蝋梅も九姑について来たの?」婢(こしもと)らしいこゑが答えた。「来(まい)りましたわ!」そんな調子で次々にやってくる話し声が聞こえてくる。最終的には、3人の姑(むすめ)、3人の婢(こしもと)、幼児1人、猫1匹が揃って喧々諤々喧しい。近況報告を一通り終えるとようやく処方についての議論が始まる。それが終わり別れを告げる声が聞こえてやがて静かになり、おもむろに女が簾を開けて出てきて患者に薬と処方を授けるのだった。患者は神様の処方だとありがたがる。最後に著者のツッコミ。この処方を試みてもたいした効果はなかった。口技(くちわざ)というやつで、それを使って金を取るだけのこと。まあ、珍しくはある、と。まあ、金を払って面白い見せ物(聞き物?)を楽しんだということで。プラシーボ効果もそれなりにあるかも。
2026.09.09
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『すみせごの贄』(澤村伊智)読了。比嘉姉妹シリーズ第7弾は次の6短編を収める。「たなわれしょうき」オカルトライター野崎の事件簿。山の中の滋賀県T町に伝わる"たなわれしょうき"なる習俗の取材に赴く。真琴はお留守番。「戸栗魅姫の仕事」老舗温泉旅館の迷宮。除霊無双の琴子、インチキ霊能者と対峙して…一本取られる。「火曜夕方の客」真琴の本業(?)のアルバイト先のバーデラシネのカウンターでの雑談で出てきたご近所の怪異をおしどりオカルトハンター野崎&真琴が追いかける。「くろがねのわざ」これもデラシネのカウンターの雑談から始まる。真琴を従えた琴子がチャチャッと除霊…ではなく助霊?「とこよだけ」先輩オカルトライターの助っ人として悪霊の島に渡った野崎に危機迫る! 真琴は入院中。「すみせごの贄(にえ」比嘉姉妹の仇敵、料理研究家の辻村ゆかり再々登場!シリーズで一番存在感があるキャラクタですね。
2026.09.08
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『さえづちの眼』(澤村伊智)読了。比嘉姉妹シリーズ第6弾は次の中編3編を収める。「母と」おしどりオカルトハンター野崎&真琴の事件簿。"現代版&少女版サン・ジェルマン伯爵"登場!「あの日の光は今も」かの料理研究家辻村ゆかりと、かのオカルトライター湯水は、とある事件で出会っていた!「さえづちの眼(まなこ)」琴子、無双!
2026.09.07
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『マテニ10号』(黄晳暎)読了。イ・ジノは高さ45メートルの煙突の頂上に登り籠城を始める。25年間工場労働者として働いて突然不当解雇を受け、その撤回を当局に要求するためだ。仲間たちの支援を受けながら、籠城は100日、200日、300日、400日と経過していく。地上から切り離されて、夜間、あれこれ過去を回想していると、知った死者が次々に訪れて地上に誘い、過去の日々を見せてくれる。それはジノの曽祖父の代まで遡り、日韓併合から現代までの朝鮮の激動の歴史を綴っていく。早逝した曽祖母の霊が一家の運命の節目ごとに現れたり、人の未来を視る祖母が登場したりして、韓国版マジックリアリズムの一族の物語という趣きもありましたが、"近代産業労働者"であった一族の視点から見た朝鮮の近現代史が淡々とユーモアを交えて描かれて、無知であった分野の新たな知見を得たような気がしました。後半は当局の弾圧を受けながらの社会主義運動・労働運動が丁寧に叙述される結果、懐かしプロレタリア小説を読むようでいささか戸惑いました。[追記]労使交渉を求める手段として煙突やビルの屋上、クレーン車などに籠城する"高空籠城"は韓国でポピュラーらしいですね。籠城1年ぐらいで世論が騒ぎだし、使用者側は渋々交渉に応じるようになると。
2026.09.06
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『ぜんしゅの跫(あしおと)』(澤村伊智)読了。比嘉姉妹シリーズ第5弾。次の5編を収めます。「鏡」「わたしの町のレイコさん」「鬼のうみたりければ」「赤い学生服の女子」「ぜんしゅの跫」オカルトライターの野崎がうち「鏡」、「鬼のうみたりければ」及び「ぜんしゅの跫」の3編に登場。もっとも2編はただいるだけという感じで、活躍、というかひどく痛めつけられるのは表題作となります。比嘉真琴との結婚式の直後の事件、テーマは兄弟姉弟の和解という、珍しく前向きの結末。そう、真琴と琴子の関係もぎこちなくも改善するのです。格別面白く感じたのは「鬼のうみたりければ」。現代版遠野物語風の味わいがなんともいえません。
2026.09.05
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『ししりばの家』(澤村伊智)読了。比嘉姉妹シリーズ第4弾。東京で新居を構えた若夫婦二組がししりばの家に関わったことから悍ましい事態に巻き込まれていきます。対するは比嘉姉妹の長女琴子。実は琴子が拝み屋・除霊師を生業とする決意を促したのが、小学生の時に同級生と侵入した廃屋ししりばの家での超常体験だったのです。当時の後遺症で地元で引きこもり生活を送る同級生の憑き物を落とさんと、琴子、悲壮な覚悟で再びししりばの家に乗り込む! 『IT(イット)』風の面白さが溢れています。京極夏彦や三津田信三であれば妖怪の履歴についての蘊蓄を延々と繰り広げるところ、この著者はあっさり触れるに止めて読みやすいです。
2026.09.04
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『などらきの首』(澤村伊智)読了。比嘉姉妹シリーズ第3弾は短編集。シリーズキャラクタのエピソードが描かれます。それぞれ濃い、というか相当攻めていて粒揃いでした。小学二年生の比嘉真琴も登場してかわいいです、ちょっと生意気だけど。
2026.09.03
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『ザ・聊斎志異』(蒲松齢/訳 柴田天馬)から。※同書にはない通し番号を便宜上付します。68「陳雲棲(チンウンセイ)」異類:人楚の夷陵の眞という秀才、孝廉の息子で文章上手のイケメンとモテ要素を備える。子どもの頃に人相見が曰うには、後に女道士を娶って妻になされませう父母は笑っていたが、その後眞の縁談をすすめるとどれもこれも帯に短し襷に長しでもまとまらない。母方の祖父母は黄岡に住んでいて眞はよくお祖母さんを訪ねていたが、その近くに呂祖菴(りょそあん)があり菴中にいる女道士たちがみな美人で評判だったので、眞はこっそり訪ねてみた。果たして四人の女道士がいて、みな雅びで潔(きよ)らか、眞を歓待してくれた。中でも最も若い陳雲棲が一番の器量良し、眞は一目惚れする。その後眞は強引に陳に迫りますが父の死で郷里に帰って喪に服すことになります。喪が明けて菴を再訪すると菴を主宰していた老道士は亡くなって女道士らは散り散りになり、陳の行方はわからない。気落ちして家に帰ると眞は病に伏してしまいます。その後眞の母親が旅に出て同宿した王という器量良しの娘と気が合い息子の嫁にと連れ帰ります。母から王を薦められて眞、もう陳は諦めて王と結婚しようか、美人らしいしと王と対面したところ、王は陳だったのでびっくり。事情があって王を名乗っていたと。眞はたちまち病から回復、めでたく陳と夫婦になります。母親は陳を気に入っていたのですが、もっぱら琴や碁などをこととする陳に実務能力に乏しいのをちょっと心配。その後眞と陳が旅先でかつての陳の姉弟子の盛雲眠と出会い家に連れてきます。寡婦となって淋しかった眞の母親、立ち居振る舞いが鷹揚で良慣れた盛と大いに話が合います。おまけに盛は実務能力に長けていて、面倒な家の管理をテキパキとこなしてくれますからもう手放せません。そこで陳が母親にとんでもない提案、盛も眞の妻にしたらいかがでしょう、と言い出しますが、母親、満更でもない様子。眞の方にも否やはなく、晴れて盛と夫婦の誓い。初夜を前にして盛はいう。妾(あたし)は二十三の老處女よ眞は信用しませんでしたが、"やがて落紅が褥(ふとん)に殷(あか)くついた"のでした。さて、その後も眞は試験に合格しませんでしたが、母親は気にしない。それなりの家産はあったところ盛がしっかり管理してさらに豊かになってきたし、二人の嫁と私たちで楽しんで暮らせばいいよ、と達観してます。眞は幸せ者だなあ。
2026.09.02
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