Laub🍃

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2011.03.31
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月並みの幸せ。それは幸せなのだろうかとか思ってたって仕方ない。

だが、進むごとにこれでいいのかって思って進まなくなるジレンマに俺達は負け、元いた場所に戻った。

……そこには、誰も居なくなっていた。
俺達を送り出してくれた彼女たちが居た痕跡は、血痕だけで。

彼女をてに入れられれば他の様々な理不尽はどうとでもできると思ってずっと頑張って来た俺の精神は瓦解した。





修学旅行先は、異世界に触れる機会だという。
それがモノホンの異世界に行く機会になるなんて、誰が思う。

初めての海外旅行は最高で最悪だった。


もう会えないような予感を振り払いながら。
あの時、置いて探索になんて出るんじゃなかった。

俺がいたら守ってやれたのに。
俺の疑い深さはあのこを守るためにあると思ったのに。
だから、クラスでいじめが起きていた時もあのこが巻き込まれないよう、優しいあのこが気付いてあいつを庇うことのないよう必死に隠していたのに。

関谷は回想する。世界で一番自分たちが幸せと実感した日を。

『俺達これで幸せになります!』
『月名ちゃん関谷なんていつでもふって俺んとこ来ていいんだからねー』
『そ、そんな…文理くんはたしかに素敵な人だけど…』
『うっせ。月名は俺が幸せにすんだよ』
『ひゅーあっついねー』



時間の経過によるカップルの状態変化だとかハウツー本だとかも付き合いの中に組み込めたらいいんだけど、色々参考にしすぎるとそれの真似になったり凡庸になっちゃったりするとも聞いて俺はそれらを捨てた。本に頼り過ぎないのは初めてのことだった。

どこでも見たことないようなデートプランを。
まとめきれなくて破綻した。
うああああ。どうしよう。

『大丈夫だよ。私はそのままで好きだから。…もちろん、私の為に頑張ってくれてる関谷くんが、一番大好きだけど』



…もっと彼女の事を、好きになった。

初めて、月並みの幸せの中に、月並みでない幸せがあるのだと知った。

情けない自分を、彼女だけはー……


「おい析也、どうする?今日はここで寝るか?」
「!…」

駄目だ、過去の回想にふけってる場合じゃない。

「なあ…ここの人達は、その『カナタ』『ドコカ』とやらと仲がよくないんだろ?だったら少しは大丈夫なんじゃないか」

そう希望的観測を口にするのは、俺の友人、文理。
いつもは馬鹿騒ぎしてる奴も、長引くこの探索で消耗してるらしく弱気だ。

「義香が居たらきっとこんな奴らと一緒になんて…って言いだしてただろうけど、居ないんだしさ」
「お前…」
「冗談だよ、冗談」
「言っていい事と悪い事があるだろ……」

言い争いも尻すぼみだ。

置いてきた彼女たちー俺達の仲間を連れて行ったのは、どうやら『カナタ』『ドコカ』という奴らしいと、その村の人達は教えてくれた。ニヤニヤとした謎の笑みとともに。
奴はどこぞの笛吹男のように、行き場のない者を連れて行くらしい。
そいつは二度と戻ってこないとか。

冗談じゃない。


「…そうだな…」


分からない。
分からないけれど、明日からは、明日からこそ、普段の自分に戻ろう。
そうして、冷静になって、あの子たちを、月名を今度こそ探して守るんだ。

情けない。

ああ本当に、情けない……。

http://plaza.rakuten.co.jp/nanayukitp/diary/201103310002/

to be continued... ?





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最終更新日  2017.05.16 11:15:34
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