能登の手染め日記

能登の手染め日記

Jan 9, 2016
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カテゴリ: 染色
昨年、椿の名所に暮らしている人から「染めの特産品として使えないか?」という質問を受けて『椿染め』を調べてみた。

椿の花を使って染めるには俗に言う『花びら染め』というのがあるが、花びらを染めるときに熱をかけると色素は壊れていくし、低温で染めた色は退色が激しく酸やアルカリ分にも変色しやすい。染めを何度か重ねて鉄分の媒染を重ねた赤みのグレーが実用できるかどうか?というくらいだと思う。

文献などによると昔からアカネなどの媒染剤として枝葉を燃やした灰汁を使うとあり、アルミ成分が有効に利用されていたとある。先日のブログにも書いたように、実際に工業試験場での試験でもアルミ成分は含まれていた。

問題は媒染剤として働くアルミ成分がどのくらい含まれているのか?染めた内容はどうか?ということ。季節によっても違いはあるが、8月末の緑葉の濃い時期の灰汁で1リットル当たり1.4g含まれていると出た。

4リットルの灰汁で5.6g程度含まれているから、染める色は薄いピンクからアカネ色までを想定し、布の重さ56gの10%の媒染剤量と設定、染めと媒染を5回重ねた。同じように酢酸アルミを同じ比率で5.6g使って比較(^^)

1009灰汁.jpg

上からアメリカセンダングサ、アカネ、コガネバナ、左:酢酸アルミ媒染、右:椿灰汁媒染

酢酸アルミの媒染と椿灰汁媒染、写真ではほぼ同じ発色。並べて比較すると、灰汁媒染は全体として明度は落ちるが少し濃く染まるという程度の違いがあった。

その灰汁媒染の染布の工業試験場における耐光堅牢度の試験では3級未満。残念ながら染めと媒染を9回繰り返したアカネも結果は良くなかった。そして酢酸アルミの媒染では常に良好な結果の出ていたコガネバナの耐光試験結果も3級未満と良くなかった。・・・これで、私は何枚もの試験に落ちた落第生になってしまったのだ(泣

確かに椿の灰汁にはアルミ成分が多く含まれているのは事実だ。だが、他の成分も多く含まれている。これは、酢酸アルミ単一による媒染とは明らかに異なっている。

俗に言う『草木染め特有の膨らみのある色、ムックリ感』が強い。大げさな言い方をすれば、白い胡粉の入ったポスターカラーのような顔料絵具を塗った感触に近い。

染色の古典として、昔の草木染めはこうした灰汁を使ったり水中や土中の金属分に反応させて発色させていた。自然のものを使った染色は染め液にも媒染剤にも、発色に有効な成分以外の金属塩や染色に不適当な成分も繊維に付着する。

そうした過去に染められた生地を実際に見る機会は少ない。しかし石灰分などが多い水で染めると、白濁した色になる。というのは誰でもが想像できることだろう。

椿灰汁から酢酸アルミなどの媒染に代わった経緯は染めの原理が理解されてきた時代に、より明快な発色を求めた結果といえる。どちらの染めを良いとするかは好みもあるから単純に比較できないが、草木染めを自然のものだから良いということではなく、美しく発色させて、長持ちさせる染めを求めることもまた染め人の務めなのだと思う。

そして、椿灰汁の媒染の堅牢度が良くないから単純にダメということではなく、もっと堅牢度を高める方法はないのか、有効な灰汁の使い方がないかを探すこともまた染め人の仕事なのだと思う。

染め方は様々だ。1回だけの私の染め方とは異なる方法や別の環境で良い結果が出ることもあるだろう。自然のものは分からないことばかり。また今年一年かけて違う方法を調べてみる・・・この道のりも、また長いわ~~~(^^;

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Last updated  Jan 19, 2022 11:07:05 PM
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Re:椿の灰汁を染めに使う(01/09)  
化学の実験みたいで、面白そうですね。
ランクリさせてもらいました。
(Jan 10, 2016 10:03:02 PM)

Re[1]:椿の灰汁を染めに使う(01/09)  
notonote  さん
MoMo太郎009さん
ありがとうございます。
草木染めは化学ですね。ただ、私は高校時代まったく勉強しなかったので、基礎知識が危ないです(^^;
(Jan 11, 2016 01:29:19 PM)

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