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2024.04.23
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カテゴリ: カテゴリ未分類

<本日から幾日かに分けて、昭和44年ころの作
品をご披露させていただきます>




 銀杏が黄金の色に輝く公園の青いベンチに、美
枝子はフィアンセと座っていた。

「どうしたんだい?今日はすっかりおとなしいん
だね。何か心配ごとでもあったのかい・・・?」

そう聞かれても、真相を明かす訳にも行かなかっ
た。なるべく相手の眼を避けて、

「女性って、秋にはセンチになるって言うわ。」

「君は戦後の生まれだろう、信じられないよ。ま
あ、いいや。秋の淋しさに浸りなさい、僕は黙っ
ているよ。」


思いやりのある言葉であった。彼の手は彼女の髪
をそっと撫でていた。彼の吸う煙草の煙の中で、
美枝子は目を瞑った。


 実を言えば、今日は、昔勤めていた療養所の友
達から、ひょっこりと手紙が来たのだった。それ
は四日かかって彼女の手許に届いたことが、スタ
ンプから知れた。

永い間、便りを出さなかった詫びの言葉や、柿の
うまいことや、婦長の代わったことなど、ごくあ
りきたりの内容であったが、最後に永井の死んだ
ことが記してあった。

書いた人からすれば、親切心から付け加えたもの
であろうけれど、美枝子にとって、それはかなり
ショックな追伸であった。






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Last updated  2024.04.23 08:18:49
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