ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Jul 13, 2019
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カテゴリ: 映画、テレビ
「恋を抱きしめよう愛こそはすべて」(評価 ★★★☆☆ 三つ星)

 イギリス発のおとぎ話。日本では10月公開予定。 https://yesterdaymovie.jp/
 売れない歌手が主人公。ある日突然、自分以外の人々はビートルズのことを全く知らないことに気づく。彼は、どんなに検索してもビートルズの存在自体が確認できずはじめは動揺するも、彼らの楽曲をあたかも自分の作品として歌っていくうちに曲の良さで注目され、やがては国際的に有名な歌手になる。

<感想>
 映画冒頭で画面に「YESTERDAY」という題名がでかい文字で表示されたときには、さすがに胸が高まった。その書体がビートルズのロゴを思わせるものだったから。監督がダニー・ボイル様だし、激しく期待しまくって鑑賞に臨んだ。
 だのになぜ。もっとロッケンロールな元気で躍動感のある作品になるかと思ってたので残念。要するにこの映画は音楽映画というよりかは恋愛映画として観るべきらしい。
 ただ、恋愛ネタを絡めるなら絡めるで、数あるビートルズの恋歌に出てくる一途で切ないキャラを再現していただきたかった。

 選曲については、YesterdayやThe Long And Winding Roadなど、主人公が静かに弾き語りする場面では楽曲の素晴らしさを再認識できた。映画予告編では確かSomethingも出てきたと記憶してるのだけれど、本編では削除されたみたい。それこそ歌詞的にも恋愛映画向きの歌なのにもったいない。←ぶっちゃけ、Let It Beとかよりも名曲だと思う

 ビートルズ愛好家しかわからない小ネタももっとガンガン挿入していただきたかった。実際、台詞のなかに、Will you still need me, feed me, when I'm sixty-fourとか、with a little help from my friendsとかは出てきてただけに中途ハンパ。
 例えば、もしぼくがこの映画の脚本家、演出家だったら、後半のリバプール駅での場面で、She's got a ticket to ride(涙の乗車券)を引用するし、米ロスアンジェリスで活躍する主人公が故郷に戻って歌う場面では、Get back to where you once belongedと歌わせるのに。思わず身を乗り出して製作者目線で映画を鑑賞してたわけで。

 独創的な作風という点だったら、例えば、オブラディオブラダという言葉の意味、A Hard Day's Nightの冒頭の不協和音、All You Need Is Love冒頭のフランス国歌、あたりの小ネタをひとつかふたつ挿入してもよかった。
 ヘイジュードには触れられていたものの、ジュードって誰だよって話で盛り上がるわけでもなく、エド・シーランのおやじギャグが出てくるぐらい。

 不要と思われる場面もあった。ビートルズの曲を知ってる人物が主人公のほかにもう二人いる、だとか、「ビートルズ」以外にも「煙草」とか「コカコーラ」とかもこの世に存在しないとか。余計な描写は削って、そのぶんビートルズの楽曲の良さそのものを活かした演出に時間を割いていただきたかった。

 とにかくもったいないという印象。業界用語でjukebox musicalという言葉があるけれど、曲の多さや知名度を活かせば、 「ボヘミアンラプソディ」 「ロケットマン」 を超える濃いめの音楽映画として仕上がってたかもしれないのに。





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最終更新日  Jul 15, 2019 04:38:23 AM
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