「技(わざ)」が “ テクニック ” や “ 職能 ” としての意味合いを持つのに対し、
「伎(わざ)」には、人が演じ、語り、ふるまう **“ 人間的な所作 ”** という温かみがあります。
たとえば能や歌舞伎の “ 伎 ” がそうであるように、単なる技能ではなく、心と身体が一体となった表現です。
伎芸は、「この人から買いたい」と思わせる “ 人の魅力で生まれる信頼 ” を軸にしています。
それは、話し方・所作・聞き方・間(ま) ―― すべてが “ 伎 ” としての芸であり、暮らしに寄り添う人間力の表現です。
どれだけ商品が優れていても、それを届ける人のふるまいや言葉が心に響かなければ、真の商いとは言えません。
伎芸は「人間らしく売る」ことそのものであり、そこには真心や情が溶け込んでいます。
単に上手に説明するのではなく、相手の暮らし・心・タイミングに寄り添って伝えることが、伎芸の本質です。
商品やサービスの良さを、暮らしの中にある物語として語る力が問われます。
たとえば「漆喰の壁」は「子どもの健康を守る呼吸する壁」として語るような、人に寄り添った言葉の選び方が重要です。
挨拶、名刺の渡し方、間のとり方 ―― すべてが “ 伎芸 ” の表現手段。
丁寧さと自然体が融合したふるまいが、人の心を動かします。
押し売りや演出過剰ではなく、信頼の中でそっと背中を押すような関わり方が、長く愛される商いにつながります。
「伎芸」という言葉を掲げられたこと自体が、商いに対する深い哲学と美意識のあらわれです。
気品と礼節が
基本なのです。
それを理念として大切にされながら、具体的な現場でバランスよく実践していくことが
令和の時代の商いだと考えています。