October 29, 2015
XML
カテゴリ: クラシック音楽
久石譲が指揮者としての活動を始めたのはいつだろう。

ミニマル・ミュージックから映画音楽に行き、そのあとジャズに行った人だとばかり思っていたが、FM放送でベートーヴェンの交響曲をきいて驚いたのを昨日のことのようにおぼえている。

宮本文昭が指揮活動から引退するというニュースをきいてしまったと思った。というのは、一度は実演をきいてみたいと思っていたからだ。

久石氏はそんなことはないだろうが、演目がオルフの「カルミナ・ブラーナ」でもあるし、一度きいておこうと思って出かけた。入手したのは東京芸術劇場の1階、前列から10番目ほどと視覚的には良席。

前半は日本テレビ委嘱作である「コントラバス協奏曲」の世界初演(ソロは読響の石川滋)。30分近い大作。

久石氏は現代音楽畑出身の人だが、「あの世界では終わりたくない」ということを若いころから言っていた。ジブリアニメでブレークする以前の話である。

聴衆との接点との回復、それが映画音楽や商業音楽ならつまらない、というか本質的な解決ではない。芸術を成立せしめる共同体の崩壊と喪失がその原因なのだから、聴衆をたくさん獲得できればそれでいいというのであればうたかたの大衆流行音楽と同じだ。

サロネンのように自分の曲を演奏するのが動機で指揮をおぼえて指揮者になった例もあるが、まさか久石氏はそうではないだろう。

そんなことを考えながら「コントラバス協奏曲」を聴き、指揮を見る。



というのが印象と記憶のすべてで、繰り返しの多さに退屈したし、オーケストレーションの練達さに感心するものの音楽的内実は希薄に思われた。現代音楽にもおもしろい曲はたくさんあるが、この曲は中途半端さがいなめない。

「カルミナ・ブラーナ」は3人のソリストがすばらしかった。

ソプラノの森谷真理の、極上のシルクのような声の美しさと繊細な表現にはひさしぶりに「時間が止まってほしい」と思ったし、この曲をやらせたら世界一と思われるテノールの高橋淳は、これまでよりさらにバージョンアップした演技となりきった歌唱で場を圧倒する。

バリトンの宮本益光も機敏かつ的確な歌唱。とくに発音が明瞭でこれまでに接したこの曲のバリトンとしてはベスト。

久石氏の指揮は安全運転に終始したように思われる。とにかく事故なしに無事に終わることに眼目がおかれていたように思うのは放送収録のためか、それとも練習時間の問題か。

かなうなら、この日のソリストで高関健の指揮で、さらに言わせてもらえば前札響首席の武藤氏のティンパニでこの曲をきいてみたいと思いながら池袋の雑踏をあとにしたことである。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  January 1, 2016 01:09:25 PM
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

プロフィール

ペスカトーレ7

ペスカトーレ7

バックナンバー

December , 2025
November , 2025
October , 2025

© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: