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カテゴリ: 映画の話
山田洋次監督による、藤沢周平作品の映画化。
「たそがれ清兵衛」「隠し剣鬼の爪」と前二作を見続けて来たので、三部作の最後を飾るこの作品も楽しみにしていました。

お毒見役の務めによって失明した下級武士、三村。
内助の功を果たそうとした妻、加世の思いは、上士の島津に逆手に取られてしまう。
愛妻を弄ばれ、裏切られたという事実を知り、主人公は盲目の身でありながら、島津に果し合いを挑むが…

「武士の一分」という言葉の定義を、現代人の感覚に置き換えたら、「誇り」「プライド」ちょっと難しくして「矜持」なんて表現になるのでしょうか。(ちなみに英語タイトルは“Love and Honor”というそうですが)

侍の自尊心というと、いかにも刀の勝負のイメージですが、そこは山田洋次。
弱い者、小さいもの、ささやかなもの…だけど、自分が愛し慈しんでいるもの。それを守り抜くことにも、立派な人間としての誉れがあるのだ、というメッセージが伝わってきました。

立ち回りでかっこよく人を斬って大団円、という映画とは一線を画したい…という姿勢は、前二作にも通じるものだと思います。



ヒーローではない市井の人の生き方に、確かな輝きを放つものがある。
これは、山田洋次のこれまでの映画にも、藤沢周平の作品群にも、通じるテーマなんですね。

「橋ものがたり」 も好きです。】


ところで、主演のキムタクは、私にとっては「何をやっても○○○○」な役者の筆頭なのですが(“ハウルの動く城”を除く)、考えてみれば、それもスターの条件なのかな?
この映画の中でも、ところどころ(あぁ、キムタクだなぁ~)と思うところはあったものの、なかなかの熱演だったと思います。

ただ、この映画で私が一番力量を感じたのは、敵役の上士、島津を演じた坂東三津五郎でした。

(以降ネタバレをしておりますので、未見の方はご留意ください)


クライマックスとなる、果し合いの場面。
ここで肝となってくるのは、盲目というハンデを背負いながら剣の達人を斬ろうとする主人公…ではなくて、実は
「目が見えない相手と斬りあいをする」
という、勝ち目ありまくりな状況に立たされた相手方の心理描写にあると思うのです。

その通り、カメラは果し合いが始まると、じっと島津の側を正面に撮り続けます。



そんな島津の心の内を、表情と全身の動きで見事に表現されていました。
それにしても、まさか屋根から飛び降りるとは思わなかったので、ちょっとたまげました(笑)

*****


着物に興味を持ち始めて良かったなぁと思うことは、映画を観ていても、今までは漫然と見ていた帯結びや着物の柄を観察するという楽しみが増えたことです。
犬神家の一族を観ても、日曜日に始まったドラマ「華麗なる一族」を観ても(あ、これもキムタクだ)、ついつい、画面の中の着物の装いに目が行きます。

現在では、既婚女性は帯を文庫結びにはしないことになっていますが、この映画の中のご新造さんは文庫を丸ぐけの帯〆で結んでいるように見えました。恐らく考証に基づいたものだと思いますが、面白い発見でした。





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最終更新日  2007.01.16 10:35:13
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