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カテゴリ: 映画の話
21世紀の地球は、格差とコミュニケーション不全に満ち、世界は狭くなりながら、いつまでも終わらない悲劇を繰り返す。

すべては「バベル」というタイトルが如実に示しているとおり。

モロッコの砂漠で始まり、東京の夜景で終わるこの映画が描き出している現実は、見ようによっては語られ尽くしたテーマともいえるでしょう。

濃淡のある様々なつながりで絡まりあいながら、遠く離れたそれぞれの国で、運命にもがく人間たち。

これを、神の視点から俯瞰して捉えるような描き方をされていると、観ているこちらも「無知な大衆を啓蒙してやるぞ」という“上から目線”を感じて、私などはちょっとしらけてしまうのですが…

監督の視線は、対象に親身に寄り添い、同じ目線で登場人物の人生を追っているように感じられました。
観ていて心地よい映画ではない。けれど、この監督は、人間に、そして世界に、絶望していない。
嘆くだけでは何も生まれないという信念が、伝わってくる作品だと感じました。

説明するのが難しい、“まずは観て、感じてみて”としか言いようのない映画でもあります。




その一方で、映画が終わった後も、いつまでも心に残って消えないのは、もっと小さな、ささやかな…
そばにいる人と分かりあいたい、心を通わせたい、と痛切に願う、人々の思いが伝わる場面の数々でした。

中でも、菊池凛子演じる聾者の少女は、忘れがたい存在感。
彼女の慟哭は、私の心の柔らかい部分を確実に捉え、大きくゆさぶりました。
映画の終わりに、監督自身の献辞がテロップでインサートされるのですが、そこに書かれた一文の意味が、ずっしり響きました。

すばらしい映画を観た、という実感と共に、映画館を後にした夜でした。

【こちらはブリューゲルの描いた“バベルの塔”】


(今日からしばらく更新をお休みします。また、再開できるのを私も楽しみにしています。)





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最終更新日  2007.05.21 14:15:54
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