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カテゴリ: 本の話




心の底では、わたしは演劇でも映画でもなく、映画館の出身なのだ、とかたくなに思っている。


一度見たら忘れられない個性を持った女優、片桐はいりさん。18歳から約7年間、銀座の映画館で「もぎり嬢」のアルバイトをしていた彼女が、映画館にまつわる数々の思い出を綴った「キネマ旬報」の連載をまとめた本を読みました。

はいりさんが勤めていた頃「銀座文化」という名前だったその映画館は、私が映画鑑賞の喜びに目覚めた頃は「シネスイッチ銀座」という名前に生まれ変わっていました。
世代的には少しずれるけれど、それでも章を追うごとに、様々な映画館で過ごした忘れられない作品との時間が甦ってきて、本当に読んでいて楽しかった一冊。

かつて自分がアルバイトしていた映画館で、公開初日を迎えた「かもめ食堂」の舞台挨拶に立つことになったはいりさん。こんな風に濃密に劇的に、映画館と関わる人生というのも珍しいでしょう。

アルバイト時代の様々なエピソードに加えて、公演先や旅先の地方ではいりさんが発見した、個性的な映画館の描写も登場します。味わい深い文章で、どの話も心に深い余韻を残しました。
あぁ、映画ってやっぱり良いものですねぇ…と、水野晴郎と化した読後の私(笑)

定員入替制やネットで指定席が変えるシステムが存在しなかった昭和の頃から、外に出かけなくても映画は存分に見られるように時代は変わりました。
横浜で、渋谷で、銀座で、どれほどお世話になったかわからない映画館の数々も、その多くが姿を消しました。
本の言葉を借りれば

というのは、私の実感でもあります。

でもなぜか、あの映画はあの場所で観た、その時あんなことがあった、誰と行った…と、映画のタイトルから頭の中にたちまち、記憶の情景が甦ってくるのは、シネコンで観た作品には少ない気がします。いい映画の思い出は、いい映画館の思い出でもある、ということに気づかされた一冊でした。


年間、最低でも50本は映画を観たいと思うし、50冊は本を読みたいと思う。その目標は、概ね毎年クリアしてきたのですが、今年は遠く及びそうにありません。映画なんて、本なんて、とてもそんな気になれない…という時期が確かに存在した、2011年というのはそういう年だったのだなぁ、と改めて思います。
やって来る新しい年には、また心ふるえる出会いがたくさん、待っていてくれていますように。切に願います。





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最終更新日  2011.12.08 15:43:02
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