草加の爺の親世代へ対するボヤキ

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草加の爺(じじ)

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2025年06月20日
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この度、お鹿嶋の寶殿よりでっかちけない光物が筑紫の方に飛び出し、お前の扉が八文字に開け、

神前の白洲が八角に割れ、神馬の御馬の四つ足に土をつけて大汗をかいて御座ある。

 去るによって禰宜・神主が是を歎いて、神馬の御馬に三石六斗の豆を食わせ、神楽の太鼓を打た

せ、御湯を捧げて七座の物忌、七日のおこたれ(過怠の意から転じて奉仕を意味させているのか)

と御座ある。

 時にお鹿嶋大明神、氏子を不憫と思し召してご託宣が御座やり申す。当年は乙酉(きのとのとり)

春から今まで氏子が繁盛、ゆるりくゎんと乙(きのと)の梢に酉の年のよろずの鳥が羽を休める如く

に、十分の世の中ではあるが、此処に一つの大事がある。娘を持ったお方は御用心なされ。

 むくりこくり(鬼の一種、蒙古高句麗の転。蒙古高句麗鬼の略)が以っての外に精が強くなって



んどと偽って、女御にあげい、妃に立てよなどと申して、おやおっかない偽り、後からはげる、は

げる禿げ頭、親はこれを誠と思い娘を手放すものならば、あったら娘も身代もむくりこくりにむく

り取られる(剥きとられる、剥ぎ取られる、強奪される)だろう。それは実に不憫であるとの御託

宣。

 嘘も飾も申さない、おうたがやり(疑う)申すな、出るまま八百万の神の御判のすわった事触れ、

無上神霊、神道加持とぞ申しける。

 長者はもとより遠国育ち、正直正路(心の真っすぐ)な老人であるから心にやかかりけん、奥から

立ち出でて、先ずこの度は御返事申されず。重ねての御相談は御縁次第と申された。

 宿祢は機嫌を損じて、是、物取り鳩の飼い(騙り、詐欺師)の偽りに脅されて、左様の御返事、こ

の検非違使はえ申さじ、どうぞ身が一分が立つような御返事を召され、返事が悪いと長者殿、姫の

代わりに和主の首を連れて帰る。さあ、首か姫か、どちらでも素手では帰らぬ、思案せよと、太刀



 長者もさすがに物師(物に馴れた人、巧みな人)であって、いや、これ、検非違使殿とやら娘も我

らが秘蔵の子、首も秘蔵の物であるから、渡そうとは申し難い。ただし貴殿の勝手次第、取れるな

らば取って帰られよ。と、なかなかゆすりは食わないのだった。

 宿祢も止まり(決着、始末)がつかないので、身が勝手なら首を取らん、と飛んで掛かれば検非違

使は跳び上がって立ち塞がり、やあ、騒ぐまい揺るぐまい、揺るぐともよもや抜けじの要石、鹿嶋



めぬ野太い奴め、これこれ長者、きゃつは王子の家臣伊駒の宿祢と言う大盗人で真の検非違使は某

である。ここはわれに任せなさい。と言って打ってかかれば下人共が宿祢を囲んで勝舟をあます

(逃す)まいと立ち向かった。

 検非違使はからからと笑い、これやこなたに御免なろう、これは鹿島や香取より悪人の首を取っ

て廻る事触れであるぞ。いかなるむくろこくりがもと首でも、この事触れが太刀先で、むくってこ

くって斬りまくって敵の種を三合(大凶)にしてくれんとの御託宣でござりやすと申して、無二無三

に切りまわし浜辺を指してぞ追いかけける。

さんろ玉世の姫道行

 私三路が草刈り笛を吹くと、妻を呼ぶ牡鹿の声でもないのに、雌鹿が寄って来るのに契りを交わ

した玉世姫は私が此処にいるとは知りもせずに、思いもしないのか、来てもくれない。

 心憎さと床しさと、都の空が恋しくて、心も乱れて毛色の乱れた斑牛(まだらうし)の引き綱を取

って引き延ばししの字にしては丸めては、のの字に読んで我故に死のうと見えた辻占の姫の変わら

ぬ心が頼もしくて、襷掛けの乃の字に手繰りかけ、肩や腰の身も軽く草の露、こぼれ出でさせ給い

けり。

 野飼いの童、何時となく知り人得たり、友を得た。後に続く者には次々と声をかけて、先の者に

は薄を押し靡けさせてかくれんぼ。走りこぎり(走り比べ)こぎりや、ころびうつ野の花摺り衣、草

刈り、衣は綻びて、子供遊びの果ては時雨の雨雲の硫黄が嶋に立つ煙、同じ思いを焚きつけになれ

も焦がれる姫嶋や、沖に恋路の、沖には恋路のまだいろは船、惚れてほの字の帆が見える。

 誰にほの字の、誰にほの字の、誰にほの字の初尾花(初めて開いた薄の花)、小菅・白菅。岩間

菅、この一叢は刈り残せ、妻籠目の夜の床にせんねぐらの虫ともろともに、刈り取る鎌の鋭くも声

切りぎりす、クツワムシ、牛の鞍にも音を鳴いて帰る家路をマツムシや、さらば笹原、笹ガニの秋

に染め糸繰り出して、五百機(いほはた)立てた機織りや、そのフジバカマを破るなと、鳴くか茨の

蔓先に、野飼いの駒のやさしくも、古郷の風の北にいばえて嘶けば、越路の雪に故郷の空を慕って

鳴く犬のべうの声ではないけれども、別府(べう)の湯本はあれとかや、如何にいわんや久方の天つ

雲井をあまざかり、しづのわざはいつ君が絵にかくならで思いきや、見しや聞きしやとばかりに、

草も刈り兼ね、忍び兼ね、涙を浮けて研ぐ鎌の、砥石も心砕けと彌夢にもかくと白玉の、玉世の姫

は胎内のまだ見ぬややの別れであるとつれなき母にいざなわれ行く道筋は多けれど、笛に誘われ

妻恋うる牡鹿の苑の法の導き、これなれや、互いにそれと見る、道芝のすがるばかりの恋草も芽も

繁りそう、母子草、千草、八千草、思い草、恐ろしい鬼の醜(しこ)草に隔てる中の垣根草、力草な

く、泣きかわす心ぞおもい遣られたる。草し刈るな、笛を吹け、後に二人が悔やみ草、毒の草を

も身の上と知らぬ手元の暗さには、燈臺草を思い出す。

 思い出さないですか、在りし夜の乱れ逢いにし枕には、かづら草をぞ思い出す。かのほのぼのの

仄暗い誰そ彼(夕暮れ)早くと寝た時には、蚊帳釣り草を思い出し、人目を思わないで肌を触れた。

起きつまろびつささめ(私語)・沙草をして、すまう取草(すみれ、又は、昼顔)を思い出す。

 通い路が遠い一人居の、班女(はんにょ、漢の成帝の寵姫)の閨の寂しさは、茶引き草をも思い出

して心細い限りの糸薄、えい、えい、えい、風かと聞けば山の下には嵐が吹く。嵐吹く、さりとは

嵐が吹く。山を離れて風と成り、風も昔に吹き返れ。

 葛の裏葉のうらぎぬ(着物の裏)もありしその夜の移り香を、洗い落とすなすもの草(汚れを洗い

落とす時に用いる)、連れ立つ道のおそかれと祈る心のあやにくに、早く射る矢の靭(うつぼ)草、

浮かぶ瀬もない水草に、身を埋め草と捨て草も誠を照らす月草(露草の異名)の、光の隙を仲立ち

に、顔を見合わせてようよう歩みつき給う。

 野飼いの牛馬のとつなぎ(繋ぐための柱)をとかく設えて小袖巻く、女房達は姫君の気持ちを思い

やり何をするのもうろうろと、叱られ廻るばかりであるよ。

 後からは下部の荒男が薬風呂にに火を起こし、敷き皮や毛氈を持ち運ぶ。継母は辺りを見回して

今参りも山路と言う草刈は何処に居るのか。言い付けた五種の草刈を取ったのかとありければ、か

かる事とは露知り給わずに、さん候、仰せに任せ刈り候。あかりもとは燈心草・ねずみ尾花はみそ

はぎ、末摘花は紅の花、二十日草とは芍薬、午膝とはいのこづち、何れも仰せに従って今宵満月の

露もこぼさずにそのまま刈り整えて候と出だし給えば継母は悦び、腕まくりをして薬の釜が煮えた

つのにねじわげて絞り入れ、まがり(盃の類)注ぎ込み、さあ、姫君、これへおじゃ、此処へ来てみ

て飲みやいの。と、言うのだが姫は返事をせずに、わっとばかりに草筵ひれ伏してこそおわしけ

る。母は小腕を引っ立てて、ええ、卑怯な、人やら水やら知れはしない。お腹の餓鬼めがそれほど

に惜しいのか、餓鬼めが父にそれほどに名残が惜しいのか。忽ちに親が迷惑するが、親が大事か子

が大事か。夫が可愛いか親が可愛いか、ちっと世上も思えかし。鰓骨(口)を割ってなりとも飲まさ

なければおかないと責めたところは地獄での責め苦もこうであろうかと容赦ない。

 この時に親王が気が付いて、この上は名乗って出て、とにもかくにもなろうと、御懐中の守り刀

に手をかけ手をかけし給いしが、姫の心を計りかねて涙を抑えていらっしゃる御心底こそは切なけ

れ。

 姫君は声を挙げて、ああ、心強い母上様でいらっしゃるよ。父こそは知らなくとも、わらわが子

を孫とは思いなさりませぬか。如何に私が憎い継娘とは申しながら、左程にはないものでしょう

に、犬や猫が孕んでさえ馴れていれば不憫と感じる物、親たるものは身に受けて、子の愛しさを知

ったのでせめてはこの子を産み落とし、月日の光を見せてから殺すなりしてくださいなと手を合わ

せ、声を惜しまずにお泣きなさる。

 なう、山路とやら、御身は都人と聞く。都に帰り、忍んで玉世姫の忍び夫を尋ねあい、このあり

さまを語ってくださいな。

 かくと御聞きなされたのなら、共に死なんとさぞやお嘆きなさるでしょう。構えて、構えて御命

が大事で御座いましょう。当座の歎きで御命を捨て、多くの人の苦しみと言い、末代末世までの御

名の穢れ、国の為、人の為に御身を代えて今の無念を堪え給えと伝えてたべ。

 とてもこの子は過去の約束、去りながら人もこそあれ御身が刈った毒草にて、この子を流し殺す

事は因果の上の因果ぞやと、夫婦は目と目を合わせて叫びあげ、咽びあげ咽び入り、袖にも膝にも

はらはらと落ちる涙は水晶の数珠が切れたる如くにて、草葉の露と争うのだった。

 継母はいよいよ腹を立てて、ええ、ここな者、あいら風情を相手にして言って埒が明く事か。こ

りゃ、冷めぬ先にちゃっと飲みや、押し伏しさせれば、女房達、先ずはしばらくと取りつくのを、

取って突きのけ、口を押し分けて思う様に注ぎ入れた。それは天狗道を成就するために日夜三度づ

つ飲む三熱のその熱湯とも言えるのだった。

 姫君はたちまちに腹が痛み、五體を悩み給いければ、すはや印がありけると駒繋ぎの草陰に御手

を引き女房達は様々にいたわり奉る。

 あら不思議や、ありがたや、清風が四方に芳しく、玉世の姫の御肌を潤すと見えたが、玉の様な

る若宮を易々と御誕生させたのだ。心地は涼しくなられたのだ。

 変毒、爲薬の仏法の不思議、たっとかりける奇瑞であるよ。

 悲しき中にも姫君は悦びを抱き奉り、御かおばせを見給えば、穢れにもそみ給わず、濁りにしま

ぬ白蓮の淤泥(おでい)を出でたる御形。柔和の相好忍辱の笑みの眉、教主釈尊の再誕かとは後に思

い合わせたのであるよ。

 継母は驚き、こは如何に、おろし薬を飲ませたのに、却って平産したるとは、むむ、合点、この

わっぱめが他の草を与えたのだな、待て、おのれただではおかないぞ、いで、餓鬼めをひねり殺し

てくれんとて、飛び掛かれば姫君は、なう、今生まれたこの若に何の恨みが候ぞや。と、泣き叫び

逃げ惑う。助けてたべと泣き給うのを聞き入れもせずに追いかける。

 時に不思議や、野飼いの牛がむっくと起きて駆け隔たりにれを噛みたて角を振り、継母をめがけ

て飛び掛かったのだ。追い回し追い散らし遥かの岡辺に追って行く。

 かかる折に伊駒の宿祢、勝舟に追い立てられて命だけは助かりたいと無二無三に逃げて来た。

 草籠をひきかずき、上に刈り草を取り覆い、身を縮めてぞ隠れたのだ。

 百嶋太夫は都の使者の帰るさに、姫君がかくと風聞があった。直ぐにこの野を此処かしこと手分

けして尋ねたが、姫君も親王も、やれ百嶋やれ大夫、これ、此処にこれはさて、様子を具に承り、

御屋形にも参らずに直ぐに尋ねて参ったがやたけ心の一念の黒星(急所、ずぼし、一番大切な目当

て)を見知らせたのだ。





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最終更新日  2025年06月23日 20時44分47秒
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