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【送料無料】アメリカの鱒釣り価格:578円(税込、送料別)<人物>わたし(俺)アメリカの鱒釣り:俺の空想の中で?俺に答える鱒釣り師。<粗筋>導入(-19)「アメリカの鱒釣り」の表紙はサンフランシスコのフランクリン像だ。午後5時には教会で貧乏人にサンドイッチが配られる(表紙)。子供の頃俺はアメリカの鱒釣りについて初めて知った。1942年夏。義父が話したのだ。(俺の空想の中で、以下同文)アメリカの鱒釣りは俺に答える、「俺も、夜明けに釣りをする三角帽の男たちは好きだ」と。あるときポートランドで鱒のいそうなクリークを見かけて近寄ってみたら白い階段だった。鱒釣りは言う、「さすがに階段をクリークには変えられねえよ。ま、俺も婆をクリークとまちがえて人違いだって言われたことがあるんだがな」と(木を叩いて1・2)。兆し(-149)17年後俺は釣り道具を抱えて蠅を捕っている。廃れた公衆便所に向かって「死ね。俺は川下に行く車を拾いてえだけなんだ」と俺は唸る(赤い唇)。子供の頃クールエイド中毒になった友達がいたが奴はいつも儀式と称してクールエイドを2倍に薄めて振舞っていた(クールエイド中毒者)。鱒釣りとその彼女のマリア・カラスには林檎の砂糖煮、パイの皮、匙一杯のプリン、胡桃ケチャップが相応しい(胡桃ケチャップの一風変わった作り方)。ムアズヴィルでは地下に大量のネズミを見つけた男が撃ち始めたが、ネズミは他のネズミの死骸を食った。俺たちはスチールロッド・ヘッジにいた(グライダー・クリーク)。コブラ百合はバレエのように優雅に昆虫をワナにかける(鱒釣りのためのバレエ)。俺は公園で二人の画家と話す。画家たちは冬を精神病院で過ごそうかと話す(アル中たちのウォルデン池)。トムマーティンクリークで鱒を釣ったがあそこで鱒釣りをするのは俺ぐらいのものだとわかった(トムマーティンクリーク)。墓場の間を流れるクリークでも俺はときどき釣りをする(墓場の鱒釣り)。本屋の主人は俺に抱く女を見つけてきて、俺はその男連れの女とセックスした。その後店主は俺と女の物語を勝手に二つでっち上げて聞かせた(海、海乗り)。ヘイマンクリークの由来となったヘイマンは現地の名物男で、彼が亡くなったら川を昇って来る鱒がいなくなった。あとで鱒を放流してもすぐに死んだそうだ(ヘイマンクリークに鱒が登ってきた最後の年のこと)。釣り仲間で鱒をポルトワインで殺した奴もいる(ポルトワインに寄る鱒死)。ちなみに、俺は例えばバイロン卿をアメリカ鱒釣りと見立てた死体検案書を想像したりもする(アメリカの鱒釣り検死解剖報告)。車で移動中ヒトラーのような羊飼いを見た。眠る羊たちにスターリングラードのメッセージが届いた(メッセージ)。小学校のころ俺たちは背中にアメリカのます釣りと書きあうテロリストになった(アメリカノンます釣りテロリスト)。パードはアメリカのます釣りに手紙で、FBIがます釣り狂を指名手配したと知らせる(FBIとアメリカのます釣り)。ワースウィック温泉には流れ込んだ魚がたくさん死んでいる。そこで女房とセックスした(ワースウィック温泉)。アメリカのます釣りちんちくりんという脚のないアル中もいた。彼を作中に登場させるネルソン・オルグレンに彼を保護するよう頼む手紙は結局出さずじまいだった(ネルソン・オルグレン宛アメリカのます釣りちんちくりんを送ること)。アメリカのます釣りの変装をして夜な夜な殺人をする男もいる。彼は今市長だ(20世紀の市長)。羊まみれのパラダイスクリークでも釣りをした(パラダイス)。以前ミズカマキリ研究をしていたころよく浮浪者を交えてさくろんぼを摘んだ(カリガリ博士の実験室)。ソルトクリークにはコヨーテ退治の青酸カリがしかけられていてナチスのガス室を連想させる(ソルトクリークのコヨーテ)。ある電話ボックスがたくさん並んでいるように見えるクリーク(白い岩がところどころあり、昔見た死んだ白い猫に似ている)で背中にこぶのあるせむしますを釣ったこともある(せむします)。テディ・ルースベルトが作ったチャリス国有林にも行った。モルモン教にいう「霊魂の牢獄」があるらしい。靴下の保証書をなくしてショックだった。赤ん坊が雪を食べたので怖くなってとめた。クリークは釣り禁止とあったのでびびってやめておおいた。モルモン教徒の食堂マダムの話も聞いた。キャンプ場は寂れていた(テディ・ルーズベルト悪ふざけ)。アイダホではフライパンで雑魚をとった(スタンレー盆地ではプディングで勝負)。アメリカのます釣りホテルで友人から208という名の猫を買うぜげん崩れの男と愛人の女に紹介され、何度か訪ねた。猫の名の由来はホテルの部屋番号ではなく、友人を保釈させるために裁判所に行った時の担当部署の番号だった(アメリカのます釣りホテル208号)。リトルレッドフィッシュ湖であった外科医は医者がいやだとぼやき、幻想地平アメリカを目指していた(外科医)。子供の名を思い出すにはキャンプでます釣りがいいといわれたノリスはテントで寝ていたら隣に遭難者の死体を置かれ怒鳴って追い出すと、まもなく下のほうでほかのやつらが同じように怒鳴る声が聞こえた(目下アメリカ全土で大流行のキャンプ熱について一言 ※珍しく普通に面白いコント)。久しぶりにアメリカのます釣りに手紙で「君の友人のフリッツが無罪になったと伝えろとさ」と書くと「そりゃよかった。NYは暑い、風呂で水を浴びると犬や死人が集まってきてうざいからアラスカに行きたい」と返事(本書の表紙への帰還)。絶頂(-213)ヘルダイヴァー湖で制限いっぱいのますを釣ると赤ん坊が吐いたがすぐ治った(ジョセファス湖の日々)。永劫どおりを行きながら昔を思い出す。隣人の屋根修理の手伝いをして失敗したこと。その屋根裏で死んだ女主人の弟のます釣り日記を見つけたこと。釣り損ねたます平均10・8。7年かかって一度もつれない、もうたくさんだ、と書いてある。でも誰かがます釣りに行かねばならぬと、エイハブ気取りで(永劫通りのます釣り)。さて、メルヴィル+ヘミングウェイ的な一種のパスティーシュという見方も存在するこのふざけた作品もいよいよ佳境に入るはずだ。とある森の記念館で戦18年前の死者の写真、感慨深い(タオル)。再び表紙の広場。子供が砂場で遊ぶ。赤いドレスの女にFBIに売られここで殺されたジョン・ディリンジャーを思い出す(砂場からジョン・ディリンジャーを引くと何が残る?)。最後にアメリカのます釣りとあったのはヘミングウェイが死んでまもなく、二人ともその事実を知らなかった。グレイとフォールズの話をした。ディアナ・ダービンは嫌われていた(・・・と最後にあったときのこと)。ます釣り旅行が終わると俺は友人男女のとまるキャビンに居候する。走り回る鹿を見てびびった(カリフォルニアの未開地で)。娘が生まれてまもなく、公園で娘はアメリカのます釣りちんちくりんを見たことがある(アメリカのます釣りちんちくりんに関する最終記述)。アメリカのます釣り共産主義者が行った平和デモはすごかった。アメリカはもう赤の巣窟なのだ(アメリカのます釣り平和行進に関する証言)。カリフォルニアの未開地ではごみをトイレに捨てていたがすぐにいっぱいになった(赤い唇への脚注)。クリーブランド建造物解体会社に小川を買いに行った。展示されているばらばらに分解された滝や川や動物を見た(クリーヴランド建造物とりこわし会社)。俺はアメリカます釣りのダヴィンチが最後の晩餐のルアーを発明するのを妄想する(レオナルドダヴィンチ賛歌うたう日曜日の半日)。シュモルトへクリスマスツリーをきるバイトに行ったが給料をもらえず自分で木を売って換金して帰ってきた男が金のペン先のペンをくれた(アメリカます釣りペン先)。収束(-217)エスキモーは氷の中ですごすが氷という言葉を持たない。言語の起源についてワンワン、どんどん、プープー語源説があるが決め手はない。木の上の動物は文明を起こせない。俺はずっとマヨネーズの言葉で終わる本を書きたかった(マヨネーズの章へのプレリュード)。1952年2月3日、母ナンシーが危篤のグッド氏に会いに行ったフローレンスとハーヴにお悔やみをいう手紙の追伸はこうだった。「あげるのを忘れてしまってごめんね、例のマヨネーズ」(マヨネーズの章)。<分析>視点 一人称現実・論理・幻想 幻想コード・カオス 徹底的にカオス基調感情、読者の期待と実現 アメリカの大自然と人情への憧憬、ほろ苦く皮肉なユーモア機軸人物の欲望と行動俺(ますを釣りたい)→(ひたすらますを釣って歩く)物語的新奇性人物間対立性なし。顕在的な葛藤性なし(そもそも心理描写もそれを暗示する描写も少ない)。環境対立性あるもののさほど敵対的でもない(思うようにますが釣れなかったり、いろいろな変な体験をしたりすることはある)。美的新奇性アメリカ西部の田舎の自然、人情。とぼけたユーモラスで皮肉な文体。所々顔を出す幻想モチーフ。分析感想普通の意味での物語性はほぼない。おちのない短いエピソードが脈絡なく時系列にも沿わずにえんえん羅列される(2つほどおちのある話もあるが例外中の例外)。読んでいる質感はほぼ紀行文のそれ。芭蕉のおくの細道とか。ますのモチーフはメルヴィルの白鯨を思い切りスケールダウンしたパロディのようにも見えるし、えんえん釣りをして歩く内容や題名、心理描写を省く簡潔平易な文体はヘミングウェイのパロディに見える。また短いスケッチを重ねる構成はワインズバーグオハイオなども連想させる。いろんなアメリカ文学をハイブリッドさせて自己流に仕上げたポストモダン文学。これが小説なのか詩のようなものなのかは分からないが、見た目の平易さに反しかなりラディカルな実験作なのは確かだ。ただ面白さという観点でいうと、ふつうの物語性を重視する俺としては、物語性がほとんどない以上、正直面白くはない。文学史的な意味に敬意を表して6点がせいいっぱい。もちろん、(内容は残念だが)文体はとても面白いと思う。ぜひ真似してみたい。
2012.04.13
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【送料無料】後藤さんのこと価格:777円(税込、送料別)短編集。粗筋を要約しても意味がない作品が多いから、原則として粗筋項目は設けない。●後藤さんのこと★★★1/2様々な一般名詞の意味を兼ねる「後藤さん」という固有名詞のような一般名詞について、スチャラカ真面目な考察を展開する言語実験ギャグ小説。タイムマシンで遡って自分を殺そうとする存在に始まり、囚人のジレンマ、量子力学、光の3原色、蛇、質量とエネルギーなど様々な議論に使われる基本概念と似た存在でもあるらしきこの謎の存在について、ときどき「後藤さん」という固有名詞的な人物の意味も顔を出しながらの摩訶不思議な世界が現出する。面白いがちょっとくどい感じもする。普通は半分ぐらいでやめるよね。個人的な好みよりちょっとおちゃらけ過ぎているのも微妙。むしろ一般名詞と固有名詞の関係性などについてもうちょっとシリアスな議論をしたほうが面白かったと思う。●さかしま★★★★ある官庁からウルと呼ばれる領域に調査分析のため送り込まれ帰還した存在への語りかけのスタイルで、読者の住む宇宙とは異なる物理・論理法則の支配するメタ宇宙についての宇宙論が展開される。マクロな揺らぎだのマイクロ凍結領域だの、すべてを反転させたような架空概念から構築される異常な宇宙像が過剰なまでに論理的に語られていており、くだらなさと難解さが絶妙にマッチして楽しい。●考速★★★★起 草稿はここで途切れている。承 目覚めると佐倉の声が聞こえる。奴は(1)2通り以上の意味に解釈できるひらがなの羅列、を板書しながら、あるいは、(2)左下に文字を付け足すことによって文字や文の意味を変化させて行く練習をさせながら、定義と公理と定理と系の関係について、エチカの神の存在証明が循環論法として自己完結しながらも一個の公理となっていることについて、語り続ける。転 彼は様々の論点に矢継ぎ早に触れ続ける。思考より速い速度で考えられるか。無理だ。ならどうして思考が可能なのか。あるいは面積が同じなのに周の長さが無限となる図形について。すべての量子が光速で動いており、ただ歪んだ軌道を動いているために遠くから見たら遅く見えるだけだというシュレディンガーの異端解釈。夜の間も脳は活動しており、電力消費の有無と思考は関係がないということ。神の存在証明は平面図には表せないから文字で表すしかないということ。結 「他の者によって考えられないものはそれ自身によって考えられねばならない」というスピノザの循環的な公理系に結局帰って行く。俺は目を開けて佐倉の声の源を捜す、すると冬を経て去年の枯葉が地表に出てざわめく。(冒頭に戻る)評 言語論理の持つ循環的構造や相対性を、論理学の言葉を用いながら、スピノザの公理や掛詞的な言葉遊びを通じて表現した思弁小説。言葉の不思議さを一つの小宇宙として表現できており、これが物語といえるかどうかは別として、少なくとも傑作である。●The history of the decline and fall of the Galactic Empire★★★1/2起 銀河帝国は墓地の跡地にある学校のような帝国ないし帝国のような学校であり、給食のメニューで闘争し滅亡を早めたといわれる。臣民には骨格を持つ者と持たぬ者があり、骨格を持つ者は自己の出身地の夜にのみ動き、骨格を持たぬ者はピアノを弾く。校庭にはときどき旧銀河帝国が出没する。異なる時間が接しているのか時間のずれた別個の並行宇宙なのかそれともそれ以外の二重存在あるいは単なる幻だったりするのかは分らない。皇帝の座は階段の上にあり、そこでは幼帝の霊がよく遊んでいる(怪奇)。承 銀河帝国は極めて広大で、超空間通路で網目状に覆われ、これをつかむことで銀河帝国を持ち歩くのが超空間航法だ。超光速航法は年々進歩する。最近人口が爆発的に増えた。幼帝の霊たちが超空間通路で柄杓をあさり空白を注ぎ込む(地勢)。銀河帝国はオタク商品あるいは単なる世間の人としての属性も場当たり的に持つ。予約不可ですぐに完売、初回特典入手困難、無許可撮影禁止。銀河帝国趣味はきもいから銀河帝国たちが陰口を聞く(巷間)。銀河帝国は人でもある。偽物は髭が黒い、酔って踊子に手を出す。幼帝が家に戻ると銀河帝国一家が荼毘に付されており幼帝は仇討ちを望む。銀河帝国は必ず滅びるのだ(人倫)。銀河帝国は貴重品でもある。謎でもある。被害者でもある(怪盗)。銀河帝国は全人口が全人口の倍はあり、何度でも甦る等等(質疑)。銀河帝国は戦艦のようなそうでないような存在でもある。つまり、銀河帝国は銀河帝国で銀河帝国に乗って銀河帝国を救いに行く的な存在である(大戦)。転 銀河帝国は学生服のボタン、友達、部活の名称、その他もろもろだ。文脈から分ったり分らなかったりする(卒業)。銀河帝国は呪いの手紙あるいは箱、犬、ゴミ、アレルギー性の食べ物、などである(残余)。結 いよいよ銀河帝国に決着がつく。二人の幼帝が相撃ちで滅びる(終局)。評 例によって「銀河帝国」の語を様々な語と置換して遊ぶ言語実験ギャグ小説。面白いけど普通半分ぐらいでやめるよね、という感想もいつもと同じだ。<二次創作>同じようなもの(語義の入れ換えごっこ)はいくらでも書けると思うので今更やらない。というか夢日記でしょっちゅうやっている。そもそもただのレトリックであって、大々的にテーマにするようなものでもあるまい。もっとも、文体実験は面白いので他にもいろいろ思いつく。たとえば、びっこを引く時間というアイデアを思いついた。普通の物語のように進行するのだがところどころで文章が反転し、ある時点まで戻って別の歴史を刻みだす。これを繰り返してバラバラの物語が展開するというもの。●ガベージコレクション★★★1/2これは羽山亨という友人が書いた遺書についての物語だ。遺書といっても時間の逆行が可能であるか、換言すれば可逆な計算が可能であるかについての彼の仕事だ。彼はチェスの王手から過去に遡ることによってその問題を把握しようとする。時間が進むにつれて、計算が進むにつれて、通常はゴミ情報が放棄されその分エントロピーが増大する。このゴミ情報をゴミではないものとして捨てずに記録すればいい。情報をこちら側と向こう側で互いに互いを不必要なものとすることでこの過程は成り立ちうる。そして向こう側では時間が逆に流れるはずだ。羽山はチェス盤を真逆に戻そうとする女の姿を見、そして女を消したという。その女は向こう側の俺たちなのか。羽山の研究が遺書だというのはこの意味だ、俺たちと彼女たちは一瞬接触しそして時間の逆方向に遠ざかって行くのだから──という熱力学、情報理論の観点から時間逆行の可能性を探った思弁小説。ハードすぎて一般性には欠けるが、力作だ。●墓標天球★★★★球面の上を時間を逆行しながら溝を掘り続ける男(「私」→最終章では「男」)が他の2人の登場人物、少年及び少女と偶然に出会いながら時間の原初へと遡り続けて行く話。登場人物はこの3人のほか、天使と豚。天使は天球を作ったり回したり壊したりする存在で、階層秩序を做している。世界は球体であり、3人の人物は直交する三本の輪を回っているのだが、視点人物だけが時間を逆行している。その原因なり動機は記されていない。この世界は3次元であるのだが3人の人物はただ輪に沿った「階段」をを一定速度で進むだけであり、4次元目の時間を順行する(登る)か逆行する(下る)かの2つの選択肢しかないようである。また、地面を掘ることは可能らしく、この地面を掘るという行為は、天使が失敗作の天球の皮を剥がして行く作業と一体(動作主と道具)の関係にあるのかもしれない。この球体世界を時間発生後に動かしている力はインペトゥムと呼ばれる。この概念は誰が発見したというのでもなく、少女と時間を逆行する男の間で無限ループでやり取りされている。そして、時間を順行して行けば真の時間のある世界に入ることができると少女は信じているが、男はそのような概念を持たないか少なくとも疑っているらしく只管時間の原初を求めて逆行し続ける。少女は男が物語の中で忘れられずにいられる視点を見つけられればいいのにと願う。始原に達して自分の存在もろとも消える前に。──ほぼ要約するとこのようになる。作中に示唆があるとおり、球面を直角に交叉する3つの輪に沿って3人の人生が交叉する世界があるとしたら、という世界原理改変に基づいて導かれた物語世界を舞台とする作品である。この舞台世界を暗喩の如く用いて(完全な暗喩ではなく、暗喩的に転用して着想に利用している程度にとどまるが)時空を支配する原理についての思弁的議論を登場人物たちに行わせている。3人の人物の繰り広げる図式的な物語は、人間の出会いと別れの象徴物語にもなっている。環境対立性と葛藤性の物語を中心に、対立性は弱いながらも人的物語性も含んでおり、本書収録作の中では最も物語性(対立的新奇性)と思弁性(美的新奇性)のバランスのよく取れた佳作である。本作品の持つ思弁性と物語性の結合をより推し進めたのが例えば「道化師の蝶」であるし、本作後半の時間逆行のメッセージのループのアイデアは最近SFマガジン掲載になった短編でも再利用されていることからも分るとおり、本作は最近の円城の作風推移の原点ともいうべき内容になっている。●目次INDEX★★★★円城塔が魔法使いにして少年であり、自分が登場する本が自分自身を読む話を書く、という話。巻末付録のミニ本。目次自体が本文であり、目次のみで物語が成立するという人を食ったメタフィクションである。ウリポ的実験作だが書かれている内容も物語として面白く、傑作である。最後に円城ならぬ「炎上」するのが嗤える。
2012.04.13
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