SF拡張の原理

SF拡張の原理

2009.06.21
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カテゴリ: SF

虐殺器官
伊藤計劃「虐殺器官」
人の良心中枢を停止させ、殺戮衝動の優先順位を高めるトリガーとなる深層言語を各国語に紛れ込ませ、米国へのテロを行いそうな後進国に撒き散らして内戦を引き起こすことで米国の平和を守ろうとする言語学者と、これを追う殺し屋の話。正直、本筋と直接結びつかない紛争地域での死体の描写や母親を安楽死させたトラウマのエピソードなどがだらだらと続く序盤はかなり冗長である。ようやく本筋であるジョン・ポールが登場するのは第2部中盤に入ってからだ。デビュー長編ということもあり、あまりストーリーテリングがうまいとはいえない。
だが、中核にある「進化上のひとつの器官に過ぎない言語」という観点から案出された、虐殺を引き起こす深層言語というアイデアは非常に強固でthought-provokingなものだ。それ自体は広告などで使われるサブリミナル効果を言語学的な疑似科学説明で掘り下げたにすぎないようなものであるにせよ、ここまで徹底的な破壊兵器と結びつけた力技はすばらしい。
物語自体もジョン・ポールとその愛人が本筋に深くかかわってくる中盤以降は急激に面白くなり、殺伐として悲劇的で衝撃的なエンディングまで突っ走る。
軍事諜報SFとしてもなかなかのものだろうが、中核にあるSF的な洞察力、思考力、問題意識は間違いなく本物だ。





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Last updated  2009.06.21 17:55:12


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