SF拡張の原理

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2009.06.23
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カテゴリ: SF

産霊山秘録

半村良「産霊山秘録」
安土桃山から戦後までの歴史をピンポイントでたどりながら、歴史の陰の立役者=謎のエイリアンの末裔である<ヒ>一族である、という仮説の下に描かれた反戦歴史小説。
正直に言うが、つまらなかった。<ヒ>一族の仮説に寄りかかりすぎて、その辻褄あわせと歴史上の事件の要約に筆をとられるあまり、肝心のイマジネーションの広がりが陳腐で凡庸なものにとどまっている。とりあげられている歴史上の事件も、戦国から江戸時代へという人口には膾炙しているがそれだけに情報過多でいまさら興味を引かない時代であったり、鼠小僧に坂本竜馬といった手垢のついた人物のエピソードであったりして、冗長で読み飛ばさずにはいられない。とにかく前半が冗長。ヒ一族の三種の神器を使った超常能力もテレポーテーションで新味に乏しいし、肝心のヒ一族の来歴や位置づけについての肉付けにも乏しい。唯一面白かったのは、前半の終わり近くになって出てくる<オシラサマ>=ヒ一族の女性の怪異な姿のみだが、これも結局単なるホラー要素程度のままで終わってしまい、それ以上のイマジネーションの広がりがない。後半に面白くなると思いきや上記した鼠小僧に坂本龍馬で話に進展のないまま、いきなり話は東京大空襲へ飛び、単なる<タイムスリップした男の焼け痕奮戦記>になってしまい、もはや<ヒ>一族という設定の必然性の全くないただの戦後普通小説に堕してしまう。世界中に産霊山があったという最後の大風呂敷もいかにも「話の収拾がつかなくなってごまかしてみました」という感じのくだらなさで、どっちらけなままに話が無理やり終わってしまう。
伝奇SFの嚆矢であるという歴史的意味は認めるが、正直、のちの「妖星伝」に比べると相当落ちる作品だと思った。失敗の原因はやはり雑誌連載作品だったことではなかろうかと思う。





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Last updated  2009.06.23 16:04:59


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