SF拡張の原理

SF拡張の原理

2009.08.29
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カテゴリ: SF
KEN MACLEOD "LIGHTING OUT"

作者の一連の未来史シリーズと同じ設定の話と思われる。人々は自分のコピー人格を大量に作り、様々な技術に活用している。ところが、このコピー人格が形成するVR社会が高速度で発展し、あっという間に滅亡してしまう「FAST BURN」という現象が頻発。この事態を防止するため、コピー人格はなるべく削除するべきだという倫理ルールが普及しているが、やはり漏れがある。その漏れが一大災厄を招いてしまう話。
この未来史は、最初期の3部作を既読。詳細は忘れているが、コピー人格が形成する社会と、アナログ人類との闘争を描いていた作品だったと記憶している。3部作の最後の作品では、「コピー人格は人間ではないから滅ぼしてもかまわない」という過激なイデオロギー主張が強烈で、ついていけないものを感じた。またパラレルワールドのような空域に存在するもうひとつの火星?へと人類が退避するエピソードもあったように記憶している(ウィルスンのSPINにも同じようなエピソードがあったような?)。コピー人格の蔓延という基本設定が共通するので、かすかに昔読んだ記憶を探りつつ読んだ。
本作品は、母親の多数のコピー人格と携帯無線通信カードを使って話しながらビジネスを行う女性が主人公。地球は氷の星になっており、人類のほとんどは太陽系外に出て行っている。残った人類は、月や、太陽光エネルギーを集めて動く宇宙空間の巨大な<インナー・ステーション>などで生活している。月からステーションに来た主人公は、ここで「太古の地球のような、宇宙に星だけが見え、人類が宇宙に住んでいない情景」に憧れている少年と出会い、彼とともにビジネスをはじめる。ところが、母親のコピー人格が<fast burn>への野望を抱き、暴走を始め、少年が使っている物質合成機を利用して大量のナノ機械を製造し、ステーション内に放ってしまう。オリジナル・生身の母親がここでやってくるが、一歩遅く、コピー人格の暴走を止められなかった。ステーションは次第にコピー人格たちやその製造するナノ機械たちに汚染され、人間の住めない環境へと変わって行く。自らもコピー人格となって生き延びないかという母の勧めを断り、二人は太陽系をあとに、地球に似た遠くの惑星へと旅立って行くというあらすじ。
オチにひねりがないまっすぐなストーリー展開で、正直なぜこれがイギリスの年間ナンバーワン短編として受賞したのかいまひとつ理解できないが、おそらくコピー人格が暴走し、多数のナノ機械生物を放つ(例えば、物質合成機に「食べられる」金属ベッド、無数のロボットゴキブリ、多数の機械虫が寄り集まって形成される中年女型集合生物など)場面の不気味な視覚的描写のインパクトが評価されたものだろう。
ストーリー的面白さには乏しい作品だと思うが、いちおう英国sf協会賞受賞作だから、暇を見て訳するかもしれない。
★★★





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Last updated  2009.08.30 00:32:45


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