SF拡張の原理

SF拡張の原理

2009.09.01
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カテゴリ: SF
ディーノ・ブッツァーティ「
石の幻影
イタリア作家の中短編集。
「石の幻影」★★★★
短めの長編といってもいいぐらいの長さ。マッドサイエンティストもの、人工知能もののかなり本格的にハードなSFで、軽めのファンタジー短編が多い作者だけに驚いた。ある学者夫妻が、巨大コンピュータ(人工知能)の言語解析の仕事の依頼を受けて赴くと、その巨大コンピュータは、設計者が自らの死んだ妻を模して作り上げたもので、その妻の記憶や感情を持つようになっている。しかし、生身の肉体を持たない状況を苦痛に感じるや、暴走を始め、主人公の妻に危険が迫る・・・。カサーレスの「モレルの発明」と同様、女への愛を達成するためにすごい機械を作り出す話であるが、哲学的メタフィクションへと突貫するカサーレスと対照的に、ブッツァーティの本作は良くも悪くもパターンどおりの展開をし、エンタメ的収束をむかえる。最後に繰り返される「誰が私に誰が私に・・・」の連呼と、「盲目の無数のコンピュータが果てしなく数字を並べ続ける」光景の呼応の不気味さが秀逸。人間的な精神のアイデンティティなど、コンピュータの機械的単純作業と紙一重であるといわんばかり。

以下、ショートショート5編。星新一並にうまく、やはり作者の本来の才能はここにありそうだ。
「海獣コロンブレ」★★★★
コロンブレという幻の海獣を見た少年が再びその姿を見ようと頑張るうちに社会的に大成功する話。オチに至るまで、実に巧い。
「1980年の教訓」★★★★★

「誤報が招いた死」★★★★
新聞で訃報を誤報された男が新聞社の勧めで死んだふりをして、自分の絵の価値を吊り上げてもうけようとする。しかし、彼の幸福も長続きはしなかった・・・。
「謙虚な司祭」★★★★1/2
他人にほめられてうれしくなることに罪悪感を感じ懺悔に通ってくる司祭がどんどん出世し、遂には・・・という話。かなり筒井ぽくって大笑いした。
「拝啓 新聞社主観殿」★★★★1/2
ブッツァーティから新聞社への手紙をここに公開! なんと彼の作品は実はゴーストライターから買ったものだった・・・というメタフィクション的ギャグ。最後にこの作品を置くなんて、まるでこの本自体が実はゴーストライターの著作みたいで笑える。これは編者のセンスを褒めたい。





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Last updated  2009.09.01 23:20:00


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