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◆◆ 前立腺がんにおける骨関連事象 ◆◆前立腺がんの患者さんにおける骨転移と骨粗しょう症は、診断上治療上重要です。しかし、複雑な病態でもあります。いったん整理してみます。1. 前立腺がんは、高齢者に多い2. 高齢者では、骨粗しょう症の危険がある3. 前立腺がんの転移は骨が一番多い。 骨転移は進行すると骨折、疼痛、脊髄神経を圧迫して麻痺をきたすことがある4. 進行前立腺がんの治療には、内分泌療法(男性ホルモンを低下させる去勢術)やステロイドが 用いられることが多く、副作用は骨粗しょう症5. 前立腺がんの患者さんは治療前でも、同年代の健常人より骨粗しょう症の頻度が高い6. 前立腺がんで骨転移や骨粗しょう症が起これば、生活の質はおちて、寿命に影響前立腺がんの患者さんの骨の健康において、診断上治療上問題となるのは1. 骨粗しょう症であれ、骨転移であれ、骨折などを起こすと、生活の質は落ち、寝たきりになったりする。2. 骨転移の痛みは、ひどくなると、普通の鎮痛薬では効果がなくなり、医療用麻薬でないと効かなくなる3. 骨転移の痛みなどには、放射線照射が有効なことがある。4. 骨転移の部位が骨折すると、正常な骨組織ではないので、なかなか治らない5. 脊椎に骨転移が及んで、脊髄を圧迫すると、麻痺が起こり、時間の経過とともに(早く治療に取り掛からないと)、治療しても治らない→足などが麻痺して寝たきりになることがある前立腺がん骨転移前立腺がんは、経過中に高率に骨転移を起こすことが知られています。研究によっては、70%前後に起こるといわれていて、骨転移が判明してからの生存期間の中央値は1~4年といわれています。日本人を対象とした研究では、外国の研究より成績がいいようです。骨転移が見つかってから過半数の患者さんが、長期間(5年以上)生存できているという結果もあります。骨は肝臓や肺や脳などへの転移と違って、直ちに生命維持に影響を及ぼす臓器ではないこともあるかもしれません。しかし、だれしも痛みに苦しんだり、骨折や麻痺による寝たきりの生活したくはありません。つまり、骨転移を有する前立腺がん患者さんや、内分泌療法に伴う骨粗しょう症の患者さんは、長期にわたる骨管理が重要ということになります。泌尿器科医がよく用いる専門用語で、去勢感受性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、骨関連事象という言葉があります。簡単に説明します。去勢感受性前立腺がん:去勢術(手術で睾丸を摘出または薬剤リュープリン、ゾラデックス、ゴナックスで、男性ホルモンを低下させる治療)で効果がある前立腺がん去勢抵抗性前立腺がん:去勢術を行っても再燃した(効果がなくなった)前立腺がん骨関連事象:1)病的骨折 2)骨病変に対する放射線治療 3)骨病変に対する外科的手術 4)脊髄圧迫 5)高カルシウム血症前立腺がん患者さんで、上の事象が起こる場合があります。例えば、ある研究によると、骨転移を有する前立腺がん患者さんで、去勢抵抗性前立腺がん(内分泌療法、去勢術の効果がなくなった前立腺がん)になると、2年で半分の患者さんでこの骨関連事象が起こるといわれています。このような事態の予防や治療のため、さまざまな薬剤・方法が使用いられています。1. ゾメタ2. ランマーク3. カルシウムやビタミンD補充4. メタストロン(ストロンチウム-89)5. ラジウム-223 (Radium-223)6. カボザンチニブ(Cabozantinib)上の薬剤が骨関連事象の予防や治療に用いられています。まだ使えない薬剤もありますが、有効かどうかをさまざまな試験で、研究されています。ラジウム-223 やカボザンチニブは、まだ使えませんが、有望な薬剤です。前立腺がんは、進行がんであっても、他の臓器のがんと比較して長期間の生存を得られるといわれています。しかし、骨関連事象が起こると、生活の質が落ちてしまいます。骨関連事象の発生はできるだけ遅らせたり予防したいものです。前立腺がんの進行がゆっくりしている場合では、内分泌療法も長期間になります。内分泌療法による骨粗しょう症骨転移による骨関連事象骨管理は、泌尿器科医はなかなか不得手な分野ですし、痛みや骨折などが起きない限りおざなりになりがちです。前立腺がんが落ち着いている状態でも、骨粗しょう症はゆっくり進行しているかもしれません。私たちも整理して、勉強しておく必要があります。にほんブログ村前立腺がん ブログランキングへ月4回定期配信です。たくさんの方に購読していただいています。興味のある方は是非1度、試していただければと思います。最新情報 前立腺がんの診断と治療1/4 定期配信 『内分泌療法による副作用対策 - ほてり、顔面紅潮、女性化乳房 -』1/11 定期配信 『ドセタキセル化学療法は、いつどのような患者さんに行うか、治療のタイミング』1/18 定期配信 『ドセタキセル化学療法は、いつどのような患者さんに行うか、治療のタイミング その2』1/25 定期配信 『ドセタキセル化学療法は、いつどのような患者さんに行うか、治療のタイミング その3 高リスク、超高リスク患者には?』2/1 定期配信 『前立腺がんにおける骨関連事象とその対策』電子書籍の『前立腺がん、前立腺がん疑いと言われたら読む本 2016年1月版』や『内分泌療法の光と影 2016年1月版』は、随時最新情報を加筆していますので、ぜひ参考にしてください。
2016年01月31日
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◆◆ 局所進行がん(高リスク、超高リスク)患者に対する初期治療 ◆◆ 『高リスク、超高リスク患者に対する初期治療』におけるドセタキセルの化学療法の位置づけが少し変化しているようです。今回は、NCCNガイドラインの局所進行がん(高リスク、超高リスク)患者に対する初期治療を解説します。局所進行がん(高リスク、超高リスク)とは、明らかな遠隔転移や骨盤リンパ節転移はないものの、 がんが前立腺の外へ浸潤しているもの グリソンスコアが高値なもの PSAが高値なもの(20以上のもの)をいいます。前立腺がんの診療のガイドラインは世界中にたくさんあって、その1つがこのNCCNのガイドラインです。ガイドラインは患者さんの病期、状態によってお勧めの治療を提示しています。きちんと、治療効果が証明されたものを、順番に提示していて、個人の経験による行き当たりばったりの治療にならないように整理されたものです。お示しするNCCNのガイドラインが一番正しいというわけではありませんが、大変参考になります。遠隔転移がなくて前立腺の中に限局している前立腺がんであれば、手術や放射線療法で根治が可能です。しかし、PSAが20以上と高い患者さん、グリソンスコアが高い患者さん、生検でたくさんの本数がんが検出された患者さん、画像検査で前立腺周囲の波及が疑われる患者さんは、根治療法はなかなか困難で、治療の工夫が必要です。NCCNガイドラインの中で局所進行がんの治療について以下のように書かれています。NCCNガイドラインより抜粋。T3a、T3b、T4というのは、前立腺がんの前立腺周囲への拡がりぐあいを示します。-----------------------------------------------------------------------------------------------------T3: 前立腺の被膜をこえて浸潤する前立腺がん T3a:前立腺がんが前立腺の被膜をこえて浸潤している T3b:前立腺がんが前立腺の被膜をこえて精嚢腺まで浸潤しているT4:前立腺がんが精嚢腺以外の隣接組織に浸潤している-----------------------------------------------------------------------------------------------------つまり、前立腺がんが前立腺を越えて拡がっている状態で、手術で前立腺を摘出したり、放射線療法照射しても簡単には根治できない状態です。お示しした抜粋したガイドラインは、-----------------------------------------------------------------------------------------------------High:高リスク T3a(前立腺がんが前立腺の被膜をこえて浸潤している)または グリソンスコア8-10または PSA20以上Very High:超高リスク T3b(前立腺がんが前立腺の被膜をこえて精嚢腺まで浸潤している) ―T4(前立腺がんが精嚢腺以外の隣接組織に浸潤している) グリソンスコア5または グリソンスコア8-10の生検本数が4本以上--------------------------------------------------------------------------------------------------このNCCNのガイドラインの『高リスク、超高リスク患者さんの治療』の1番のお勧めは、『放射線体外照射+2~3年間の内分泌療法』です。Category 1というのが一番信頼性の高い証拠がはっきりしたお勧めという意味です。その他のお勧めの治療として『放射線体外照射を組み合わせたブラキセラピー+2~3年間の内分泌療法』『放射線体外照射+2~3年間の内分泌療法+ドセタキセルの化学療法』『前立腺全摘術+骨盤リンパ節郭清術(患者さんによって)』『内分泌療法(患者さんによって)』もちろんこれはすべての患者さんには当てはまりません。比較的年齢の若い患者さんもいれば、高齢で、併存疾患があって、激しい治療ができない患者さんもいるわけで、簡単には治療は決められません。あくまで理想というかお勧めの治療ということになります。『放射線体外照射+2~3年間の内分泌療法+ドセタキセルの化学療法』については、一番のお勧め治療にはなっていませんが有力な治療の1つになっています。これは最近改訂されたものです。この研究については、昨年のASCOという学会で発表されています。動画での解説もあります。参考にしてください。にほんブログ村前立腺がん ブログランキングへ月4回定期配信です。たくさんの方に購読していただいています。興味のある方は是非1度、試していただければと思います。最新情報 前立腺がんの診断と治療2015年12/28号 定期配信 『内分泌療法による副作用対策 - 性機能障害 -』2016年1/4 定期配信 『内分泌療法による副作用対策 - ほてり、顔面紅潮、女性化乳房 -』2016年1/11 定期配信 『ドセタキセル化学療法は、いつどのような患者さんに行うか、治療のタイミング』2016年1/18 定期配信 『ドセタキセル化学療法は、いつどのような患者さんに行うか、治療のタイミング その2』2016年1/25 定期配信予定 『ドセタキセル化学療法は、いつどのような患者さんに行うか、治療のタイミング その3 高リスク、超高リスク患者には?』電子書籍の『前立腺がん、前立腺がん疑いと言われたら読む本 2016年1月版』や『内分泌療法の光と影 2016年1月版』は、随時最新情報を加筆していますので、ぜひ参考にしてください。まぐまぐでは、過去の記事も見ることができます。
2016年01月24日
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◆◆ ドセタキセル化学療法とは その2 ◆◆米国泌尿器科学会の治療ガイドラインでは、ドセタキソルの化学療法に適した患者さんは、症状が無いかあっても強くない転移を伴う(転移性)去勢抵抗性前立腺がん患者さん症状を伴う、転移を伴う去勢抵抗性前立腺癌で、全身状態が良い患者さん症状の程度はともかくドセタキソルの化学療法は転移性前立腺がんの患者さんが適しているという意見です。現時点で、転移性前立腺がんに対する治療の第一選択は、男性ホルモンを下げる内分泌療法(去勢術)です。しかし、転移性前立腺がんは、内分泌療法のみでは、ある程度抑えることはできても根治は困難ですし、効果がなくなった時が問題です。多くの患者に内分泌療法に対する耐性が生じるため、転移性前立腺がんの患者の生存期間の中央値は約3年といわれています。もちろん3年以上長く効果がある患者さんもいらっしゃいますし、逆に残念ながら、3年以内にあっという間に悪くなる患者さんがいるのも現実です。日本では、ドセタキソルの化学療法は、内分泌療法の効果がなくなった、『去勢抵抗性前立腺がん』に対する治療として用いられてきました。しかし、延命効果は、他の抗がん剤治療と比較して数か月~1年といわれています。具体的な患者さんの状態は、つまり、ドセタキソルの化学療法を急ぐ患者さんは、そしてだらだらと種々の内分泌療法を行う時間がない患者さんは、選別できるでしょうか。『転移性前立腺がんの患者の生存期間の中央値は約3年』と前述しました。亡くなる直前は、体調は悪化してしまい、とてもドセタキソルの化学療法が行える状態ではないはずです。2014年11/2号のまぐまぐで(DLmrketの方はまだ発刊していませんでした)ドセタキソルの化学療法について解説しています。1年以上前の記事で、今の私の考えと多少の違いはありますが、特別に、掲載します。参考にしてください。\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\◆◆ 転移性前立腺がんに対するドセタキセルの化学療法は早めがいい!? ◆◆前立腺がんの増殖は、男性ホルモン、テストステロンに依存しています。男性ホルモンを低下させることによって、前立腺がんの増殖を抑える治療を、内分泌療法と呼んでいて、前立腺がんが、前立腺の外に進展しているときに主に用いられます。内分泌療法は、一旦は効果が出て、前立腺がんの進展を抑えますが、前立腺がんは大部分の場合また増殖を始めます。進行前立腺がんに対しては様々な治療法が開発されていますが、これらの治療は、内分泌療法が効かなくなった去勢抵抗性前立腺がんに用いられます。例えば、ドセタキセルの化学療法、イクスタンジ(エンザルタミド)、ザイティガ(アビラテロン)、ジェブタナ(カバジタキセル)の化学療法ですね。『内分泌療法は、一旦は効果がある』と、言いましたが、ヨーロッパ泌尿器科学会の2012年の前立腺がんの診療ガイドラインには『内分泌療法は、進行した前立腺がんの症状を確かに和らげることができる。しかしながら、現時点で、寿命を延ばすという明らかな証拠はない』と記されています。つまり症状はある程度和らげることはできても、前立腺がん患者さんの寿命をはっきり延ばすとまでは言えないと結論付けているのです。もちろん内分泌療法を受けている方で効果を実感している患者さんはたくさんいらっしゃるかもしれません。大部分の患者さんでPSAは低下します。ただし、そういう方は、内分泌療法を受けずに経過観察しても、さほど進行しないのかもしれませんし、生存期間という意味では、治療を受けても受けなくても変わらないのかもしれません。内分泌療法の心血管系への副作用は、反対に寿命を短くする可能性もあります。現状では、進行前立腺がん、転移性前立腺がんにおいては、内分泌療法が治療の中心です。高齢だったり併存疾患が重篤で余命が短い方で、症状がない方は、内分泌療法は必要ないかもしれませんし、かえって悪影響が出るかもしれません。最近の新薬は、去勢抵抗性前立腺がんに用いる薬剤がほとんどです。進行前立腺がんの最初の治療の内分泌療法(男性ホルモンを下げる治療)がそれほどの効果が認められないということであれば、『最初から去勢抵抗性前立腺がんに用いる薬剤を使えばいいじゃないか』私も前から口酸っぱくいっていますが、『いい薬は後に回すな、先に使え』ですね。実は世界中で、近年この考え方から、新しい研究が行われていて、成果が上がっているようです。1.E3805-CHAARTED試験結果は2014 ASCO Annual Meetingで発表されました。2014年6月に発表された米国での臨床研究です。内分泌療法を受けていない診断されたばかりの転移性前立腺がんの患者さんを2つのグループに分けて、治療しています。 1. 内分泌療法のみ2. 内分泌療法+ドセタキセルの化学療法2のドセタキセルの化学療法は、3週間毎のドセタキセルの治療を6サイクル行っています。ドセタキセルの化学療法は、日本では、去勢抵抗性前立腺がんになった患者さんで初めて使える治療です。去勢抵抗性前立腺がんになって初めて使えるドセタキセルの化学療法を、最初から使おうという臨床研究です。内分泌療法は、外来でできて、強い副作用が少ないので患者さんの負担が少ない治療なのですが、前述したように寿命を長く延ばすというわけではありません。結果は、転移性前立腺がんの患者さんで、『内分泌療法のみ』393人、『内分泌療法+ドセタキセルの化学療法』397人で治療を開始しています。平均29ヶ月観察して、『内分泌療法のみ』では137人の死亡、『内分泌療法+ドセタキセルの化学療法』では104人の死亡が認められました。生存に関しては、『内分泌療法のみ』では平均生存期間 44.0ヶ月『内分泌療法+ドセタキセルの化学療法』では平均生存期間 57.6ヶ月明らかに『内分泌療法+ドセタキセルの化学療法』が『内分泌療法のみ』より長期間得られる事が分かりました。また、転移の重症度でみてみると、特に、転移が重症な患者さんほど『内分泌療法+ドセタキセルの化学療法』をした方が長期生存できることが分かりました。逆に軽症な転移性前立腺がんの患者さんでは、『内分泌療法+ドセタキセルの化学療法』と『内分泌療法のみ』では差がないことが分かりました。この『転移が重症な患者さん』とは、内臓転移(肺、肝臓など)がある、または/かつ4ヶ所以上の骨転移がある患者さんとしています。こういう患者さんでは、『内分泌療法のみ』では平均生存期間 32.2ヶ月『内分泌療法+ドセタキセルの化学療法』では平均生存期間 49.2ヶ月この研究は、私たち泌尿器科医にとっては衝撃的な結果でした。いままで、転移性前立腺がんには、まずは『内分泌療法のみ』の治療を行ってきました。このメルマガを読んでいただいていいる方も『内分泌療法のみ』を続けていらっしゃる方が多いと思います。もし、この研究が正しければ、内臓転移(肺、肝臓など)がある、またはかつ4ヶ所以上の骨転移があるならば、ドセタキセルの化学療法を最初から治療した方がいいということになります。日本では、去勢抵抗性前立腺がんになる前のドセタキセルの化学療法は、保険上許されていません。前回お話ししたように、PSAの下がりが悪い方、骨転移が4ヶ所以上ある方、内臓転移がある方は、早急に内分泌療法に加えてドセタキセルの化学療法を開始した方がいいかもしれません。もちろん体力のあって余命も長い方がいい適応と思います。\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\ 今月の電子配信では、ドセタキセル化学療法に関して、新たな知見追加し、私の意見をさらに加えて解説しています。興味のある方は、是非参考にしてください。にほんブログ村前立腺がん ブログランキングへ月4回定期配信です。たくさんの方に購読していただいています。興味のある方は是非1度、試していただければと思います。最新情報 前立腺がんの診断と治療2015年12/28号 定期配信 『内分泌療法による副作用対策 - 性機能障害 -』2016年1/4 定期配信 『内分泌療法による副作用対策 - ほてり、顔面紅潮、女性化乳房 -』2016年1/11 定期配信 『ドセタキセル化学療法は、いつどのような患者さんに行うか、治療のタイミング』2016年1/18 定期配信予定 『ドセタキセル化学療法は、いつどのような患者さんに行うか、治療のタイミング その2』電子書籍の『前立腺がん、前立腺がん疑いと言われたら読む本 2016年1月版』や『内分泌療法の光と影 2016年1月版』は、随時最新情報を加筆していますので、ぜひ参考にしてください。まぐまぐでは、過去の記事も見ることができます。
2016年01月16日
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◆◆ ドセタキセル化学療法とは ◆◆去勢抵抗性前立腺がんになっても、患者さんは、強い症状が無ければ、どうしても、外来での内分泌療法継続を希望されます。抗がん剤治療、ドセタキセル化学療法は、なかなか受け入れがたい治療のようです。医師側も、いやがる患者さんを説き伏せてまで、ドセタキセル化学療法を勧めるには、説得力がいります。前立腺がんが見つかった最初の時に、提示される治療にドセタキセル化学療法は入ってきません。手術、放射線療法、内分泌療法、監視療法でスタートするのが前立腺がんの治療ですから、なかなかドセタキセル化学療法に入るタイミングがわかりにくいですね。どうしても、抗がん剤による治療と聞くと、みなさん、アレルギー反応というか悪いイメージがあるようです。そうはいっても、一定の割合でドセタキセル化学療法の効果が長期間認められる患者さんが存在します。というか、去勢抵抗性前立腺がんとなれば、ドセタキセル化学療法は標準治療なのです。つまりドセタキセル化学療法は去勢抵抗性前立腺がんに効果が証明された治療法です。最近効果が確認され日本でも承認された新規抗がん剤のジェブタナの化学療法は、ドセタキセル化学療法後にしか使えない薬剤です。つまり、去勢抵抗性前立腺がんに効果が証明された抗がん剤治療としてのスタートはドセタキセル化学療法ということになります。聞くところによると、ドセタキセル化学療法で効果が無くなってジェブタナの化学療法を開始した患者さんで、20コースを超えて長期間効果があって、副作用もドセタキセル化学療法のときよりより軽い患者さんがいるようです。少し話がそれますが、問題はこれらの化学療法の効果や副作用を予測する術(すべ)がないということです。前立腺がんの組織を調べて、ドセタキセル化学療法の効果が簡単に予測されればいいのですが(効かない前立腺がんなら治療を受けないし、効く可能性が高ければ受ける)・・・・また患者さんの体質を調べて、ドセタキセル化学療法による副作用の程度が予測されればいいのですが(ドセタキセルの使う量の調整や中止ができますし、)・・・・薬剤のがんへの効果と患者さんへの副作用の程度が予測できれば、つまり個別治療ができれば、前立腺がんの治療も、大変やりやすくなる(受けやすくなる)のですが、いまのところまだできていません。一定のガイドラインは、作られていますが、どれも、効果から見た平均点の高い治療法のお勧めとなっています。去勢抵抗性前立腺がんに対して、日本では、さまざまな化学療法(抗がん剤)が用いられてきました。ドセタキセル(商品名タキソテール)の化学療法とカバジタキセル(商品名ジェブタナ)の化学療法は、その中で治療効果が。延命効果が、明らかに証明されている抗がん剤治療法です。延命効果がはっきりと証明されている治療法なのです。そうはいっても、去勢抵抗性前立腺がんとなった患者さんは、なるだけ外来での内服治療を希望され、ドセタキセル化学療法は、なかなか選択されません。そうこうしているうちに、患者さんの状態が悪くなり、貧血や肝腎機能もおち、寝たきりとなり、ドセタキセル化学療法が行えないまま緩和医療に移行してしまう患者さんが、わたしの診療でも少なからずいらっしゃいます。やはり抗がん剤治療と聞いただけで拒否反応を示す患者さんは多いですね。ジェブタナの化学療法はドセタキセル化学療法の後にしか使えないため、去勢抵抗性前立腺がんの抗がん剤治療と言えば、まずはドセタキセル化学療法となります。<ドセタキセルの化学療法の実際>私の病院では、最初の1クール目は入院して、以後は外来で続けることが多いです。患者さんそれぞれの病態や併存疾患(糖尿病、腎臓病、肝臓病、貧血の程度)で、ドセタキセルの使用量を調節する必要があります。ドセタキセル化学療法は、点滴の治療で、3週間毎に治療を繰り返します。ステロイド剤(プレドニン)の内服を併用します。ドセタキセル化学療法後は、PSAがすぐに下がるほうがいいのですが、治療開始後に、一過性にPSAが上昇する現象が、約10~20%に認められます。PSAの値は重要ですが、なかなか下がらない場合でも、4クール以上試してみるのが、良いでしょう。PSAの下がりが悪くても、可能なら辛抱強く4コースぐらいはみてみましょう。体調が悪いと、なかなか開始・継続ができませんので、症状が出ている場合、転移がある場合、去勢抵抗性前立腺がんの状態であれば、早めに、体調が良いうちにこの治療を開始することが重要です。最初の1コース目は、患者さんも不安でしょうが、2コース目以降は、ある程度副作用の予想がつきますし、効果や副作用をかんがみて、使うドセタキセルの量を増減していくことができます。10コース以上継続できて効果が持続する場合は、効果が上がっていると考えていいでしょう。<ドセタキセルの化学療法の副作用>日本での臨床試験で認められた主な副作用は、脱毛(88.4%)、食欲不振(65.1%)、全身倦怠感(53.5%)、検査異常としては、白血球減少(97.7%)、貧血(32.6%)、つめの変化や脱落(30%前後)、その他浮腫(時に歩行困難)、流涙があります。頻度は少ないけれど、重篤になる可能性があって注意が必要なものに、間質性肺炎、肝障害、末梢神経障害があります。ドセタキセルは、肝臓で代謝されるため肝機能が低下している患者さんでは、血液中のドセタキセルの濃度が上昇して、副作用が強く出る恐れがあります。ドセタキセルの投与回数が増えてくると、しびれなどの末梢神経障害がみられる事が多くなります。それではドセタキセル化学療法をいつ、どのような患者さんに使ったらいいのでしょう?私たち泌尿器科医にとっても、もちろん患者さんにとっても、大変重要な問題です。まだよくわかっていないところもありますが、1月11日の電子配信では、現時点での医学的見解と私の考え方を、わかりやすく解説したいと思います。にほんブログ村前立腺がん ブログランキングへ月4回定期配信です。たくさんの方に購読していただいています。興味のある方は是非1度、試していただければと思います。最新情報 前立腺がんの診断と治療2015年12/28号 定期配信 『内分泌療法による副作用対策 - 性機能障害 -』2016年1/4 定期配信 『内分泌療法による副作用対策 - ほてり、顔面紅潮、女性化乳房 -』2016年1/11 定期配信 『ドセタキセル化学療法は、いつどのような患者さんに行うか、治療のタイミング』電子書籍の『前立腺がん、前立腺がん疑いと言われたら読む本 2016年1月版』や『内分泌療法の光と影 2016年1月版』は、随時最新情報を加筆していますので、ぜひ参考にしてください。まぐまぐでは、過去の記事も見ることができます。
2016年01月09日
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新しい年がスタートしました。仕事のある方は、明日から。今年もよろしくお願いします。◆◆ 内分泌療法と『LOH 症候群』 ◆◆更年期という言葉。女性では、よく使う言葉ではないでしょうか。女性では、閉経(月経が止まる)で代表される女性ホルモンが低下した時期です。更年期には、程度の差こそあれ、様々な症状が起こります。症状が強ければ、女性ホルモン補充療法を行う場合もありますね。男性においては、実は更年期、更年期障害という考え方は、近年、注目されるようになってきています。男性の更年期は、個人差があります。比較的若い方から起こる場合もあれば、高齢になってもお元気な方もいらっしゃいます。『LOH 症候群』という言葉を聞いたことがありますか?泌尿器科医は知っていますが、他の科の医師は知らないかもしれません。簡単にいうと、『加齢に伴う男性の性腺機能低下症』ということになります。英語の『Late-Onset Hypogonadism』の頭文字から名づけられた疾患名です。日本泌尿器科学会・日本Men’s Health 医学会のLOH 症候群診療の手引きが、少し難しいですが、参考になります。加齢に伴う男性ホルモンの産生低下による疾患で、新しい概念です。LOH症候群の症状および徴候1)リビドー(性欲)とぼっき能の質と頻度,とりわけ夜間睡眠時ぼっきの減退2)知的活動,認知力,見当識の低下および疲労感,抑うつ,短気などに伴う気分変調3)睡眠障害4)筋容量と筋力低下による除脂肪体重の減少5)内臓脂肪の増加6)体毛と皮膚の変化7)骨減少症と骨粗鬆症に伴う骨塩量の低下と骨折のリスク増加これはどこかでみたことがある症状ですね。そうです。前立腺がんの治療で用いられる内分泌療法の副作用の症状です。『LOH 症候群』と診断され、男性ホルモン分泌が低下していて、程度が強い場合には、男性ホルモンの補充療法を行うこととなります。一方、前立腺がんの治療としての内分泌療法は前立腺がんの増殖を抑えることを目的とした標準治療です。しかし、内分泌療法は、男性ホルモンを抑えることで、いままで解説したように、人為的に『LOH 症候群』を引き起こしていることになります。メリット(利益)がデメリット(不利益)を上回る故に、内分泌療法を行うわけですが、デメリットがメリットを上回ってしまえば何をしているかわかりません。進行前立腺がんの治療の柱は内分泌療法です。長期間内分泌療法を受けるのであればなおさらです。治療を継続しながら、できるだけ内分泌療法のデメリットを小さくすることは重要です。<ほてりや顔面紅潮>身体のほてりや顔面紅潮は、内分泌療法で最も多くみられる副作用です。内分泌療法を開始して数ヶ月で現れ内分泌療法を継続している間は、長く続き、一部の患者さんでは苦痛となる場合があります。内分泌療法を開始して、約20~40%の患者さんに顔面紅潮(ホットフラッシュ)が現れるといわれています。具体的には、ほてり、のぼせ、発汗、熱感、顔面紅潮の症状を訴えます。これは、先ほど説明した、『LOH 症候群』でも高頻度に現れる症状です。<女性化乳房(乳房腫脹、乳房圧痛)>これらの副作用は抗アンドロゲン薬(カソデックスやオダイン)の単独治療で時々認められます。カソデックスの単独治療の約2割に乳房腫脹が認められ、約3割に乳房圧痛が認められるといわれています。女性化乳房の大半は治療開始後6ヶ月以内が多いとされています。抗アンドロゲン薬は、男性ホルモンが、働く所でブロックする薬剤です。そのため、男性ホルモンそのものの、分泌は抑えられず、血液中の男性ホルモンは高い値となります。この高い男性ホルモンが女性ホルモンに変換され、乳腺組織の増殖が起こり乳房の腫脹や圧痛を引き起こすと考えられています。今年第1回の電子配信は、内分泌療法による副作用である『ほてり、顔面紅潮、女性化乳房』に焦点を当て、対策を解説します。にほんブログ村前立腺がん ブログランキングへ月4回定期配信です。たくさんの方に購読していただいています。興味のある方は是非1度、試していただければと思います。最新情報 前立腺がんの診断と治療12/28号 定期配信 『内分泌療法による副作用対策 - 性機能障害 -』2016年1/4 定期配信 『内分泌療法による副作用対策 - ほてり、顔面紅潮、女性化乳房 -』まぐまぐでは、過去の記事も見ることができます。
2016年01月03日
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◆◆ 2016年の初日の出 ◆◆2016年の初日の出は、7時22分。やがてまぶしい太陽となって、晴れ渡った空へ昇っていきます。素晴らしい幕開けです ← 手がかかっています(笑)。にほんブログ村前立腺がん ブログランキングへ
2016年01月01日
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