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はい、新年度の始まりです。これから、面倒な利用者データの年次更新をしなくてはいけません。しかも、なるべく早いうちに、最低4月17日には完了しなくていけません。2週間もあるでじゃないか、とお思いの方、年次更新だけなら十分ですが、この他にも、今年度予算、図書費と図書室の備品の予算について事務方と図書担当の先生と打ち合わせをしなくていけませんし、1年生対象の図書館オリエンテーションの準備もあります。私にとって運が良かったのは、同じ学校に居座れた事と図書担当の先生が異動もなく、担当も外れそうもないことです。これで、打ち合わせの手間が大分、省けました。ともかく、年度初めの4月いっぱいは忙しくなりそうなので、ブログの更新が疎か&簡単なものになりそうです。わざわざ覗きに来て下さる方々には申し訳ないですが、ご理解のほどを。でも、この忙しい最中にもやはり帰り道には本屋に寄ってしまう悲しい性…。で、今日購入したのが、以前4・5回ほどこの日記でも取り上げました、この4月8日にNHKBS2の衛星アニメ劇場にて午前9時から放送が始まる『彩雲国物語』の外伝、雪乃紗衣さんの『彩雲国物語(藍より出でて青)』(角川書店、2006年3月1日)です。実は、この本。日曜日に何時もの如く名古屋に出かけたときにうっかり買い忘れてしまったのです。不覚!さて、3月に終わった『今日からマ王!』の後番組として始まる『彩雲国物語』。実はこの2冊、同じ角川ビーンズ文庫から出ているのですよね。確かに今、このビーンズ文庫の人気は急上昇中。リクエストボックスには『マ』シリーズの他に、『少年陰陽師』シリーズ(これも、アニメ化企画進行中だそうですが)やら『オペラ・スピラーレ』などのビーンズ文庫が良く入っています(ちなみに『彩雲国物語』はまた、私の独断と偏見でサッサと入れました)。これに対して、落ち目なのが『十二国記』の講談社ホワイトハート文庫と『マリア様がみてる』のコバルト文庫。まあ、コバルトは大看板があるのでアレですが、最近パッとしないのがホワイトハート。なんでかな~。あぁ、話が横に逸れそうになったので本題の『彩雲国物語(藍より出でて青)』に戻りますが、今回は前回出た『彩雲国物語(光降る碧の大地)』で完結した茶州編の幕間を描いたショートストーリー『夢は現に降りつもり』と後日談『心の友へ藍を込めて』、それから『彩雲国物語(漆黒の月の宴)』と『彩雲国物語(欠けゆく白銀の砂時計)』の幕間を『初恋成就大奔走!』。そして、私が一番笑った秀麗、影月、龍蓮の3人が国試試験を受けた直後のお話『王都上陸!龍蓮台風』の四篇からなる短編集になります。このうち、『王都上陸!龍蓮台風』はその題の示すとおり、脅威(驚異ではありません!)の天才にして、国王、紫劉輝の側近である羽林軍(近衛)将軍藍湫瑛の弟、藍龍蓮の国試を受け終わり発表を待つまでの間の普通の行動を描いたお話なのですが、秀麗曰くこの男「筋通っていてもやっぱり人と五十二度違う筋の通り方なのよね」、「龍蓮は全部がぶっ飛んでて、まるで共有部分がないからすべてにおいてヘンなのよ」というような(詳しくは本を買って読んでみましょう!ワンコインで買えますよ)真性の天才さんです。ただ、このような性格と思考回路、それによる諸行動により龍蓮の存在自体が「傍迷惑」になってしまっていて、勝手に「心の友其の一(秀麗)、其の二(影月)」になってしまった二人に降りかかる災難とは一体…。そんな、龍蓮ともう1人の飛んでる天才、秀麗の幽霊叔父さん、紅黎深が奇妙な競演をしているこの『王都上陸!龍蓮台風』。お馴染みの仮面尚書、黄奇人に美貌の女親分胡蝶妓(ネエ)さんなど、外伝にふさわしく王都組総出演の物語です。という感じで、今回の2冊目の外伝はこの『藍より出でて青』という主題の通り、藍龍蓮が主役です!ちなみに残りの3作品を簡単に紹介すると、茶克洵と茶春姫の結婚秘話を描いた『初恋成就大奔走!』。このお話にはシリーズ本編で重要な役割を果たす神祇の一族、縹家の当主璃桜とその息子、リオウ君が登場しています。『心の友へ藍を込めて』は茶州の事件で、心の友を助け出した龍蓮が、州牧解任直前の秀麗と影月にべったりと貼り付いてその様子に香鈴が嫉妬するという仄々(ホノボノ)としたお話です。しかし、お休みのお出かけに龍蓮が選らんだのが「琥連(茶州州都)最新妖怪名所」というのがいかにも、という感じですね。ここでは、茶州組総出演、葉医師に「茶州の禿鷹」翔林・曜春の兄弟、そして特別ゲストに素敵なおじい様、櫂州牧まで登場するお話です。このお話でも、何やら彩八仙と関連のある2つの黒い鞠や秀麗自身に関する秘密など、本編に関わる謎を散りばまめてくれています。最後の『夢は現に降つもり』は、茶州に行った秀麗を待つ、孤独な王、劉輝の切ない話です。 このようにシリーズものの外伝では、著者が本編では書き切れなかったりやりそこなった事を、思う存分やってくれるので最近、シリアス気味な『彩雲国物語』の本編と比べても笑えるところも多く、さりとて感動のポイントもきっちり押さえて、さらに本編の今後の展開の鍵となりそうな伏線をシッカリと置いている点など、さすが雪乃紗衣先生、抜かりはありません。しかし、今年のNHKは土曜日には『少女チャングムの夢』をやりますし、なにか東洋風ファンタジーの香り、ムンムンですね。 本文で紹介した結城光流さんの『少年陰陽師』の第一巻目と最新刊を並べて置きます。これも最近読み始めたのですが、ナカナカ面白いです。昔、日本古代史の講義で読まされた史料『栄華物語』やら『大鏡』、『小右記』等をふと思い出してしまいます。ちょうど、摂関政治の頃をやっていたので。当時は、私は近現代史専攻なのに…、と思いながら必死で漢和辞典をめくっていたものです。
2006年04月03日
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みなさま、お久しぶりです。今日は樫木祐人さんの『ハクメイとミコチ(1)』(エンターブレイン、2013年1月)を紹介したいと思います。(左奥がミコチ、右手前がハクメイです。)この漫画は、私が珍しく毎号購入している雑誌(書籍扱いですが)『fellows!(volume 26(2012) 』(エンターブレイン、2012年12月)に連載されている作品です。『fellows!』は森薫さんの『乙嫁語り』や笠井スイさんの『ジゼル・アラン』など、質の高いマンガを連載している雑誌です。これまでは隔月発行でしたが、今年から、年10回の発行となり雑誌名も『ハルタ(1)』に新しく変わって、心機一転して発売されます。このため、私は月刊アニメ雑誌の購読を1つやめることになりました(>0<)話がずれてしまったので、元に戻します。この漫画の主人公は、ハクメイとミコチという2人の女の子の小人です。彼らの身長はわずか9cm。とても小さいですね。そんな2人は、森の奥の木の洞を利用して作った家に住んでいます。そして時々、仕事や買い物のため、街に出かけたりします。で、主人公の紹介ですが、まずはハクメイから。最初見た時は、一瞬男の子?と思ったほど活動的な子です。ミコチと暮らす前は、宿無し生活をしてたと言っていて、第4話の『星空とポンカン』で収れん火災(水を入れたガラスの容器や、ビー玉などが、レンズとなっておこる火災)で家が粉みじん(ハクメイが知り合いからもらった黒色火薬に引火したため)に吹き飛んだ時、修理のために外泊することになった際、手際よくポンカンの木の下に柿の葉で作ったテントを作り、食事のためのかまどを作ったりするなど野宿の手際の良い、アウトドア派です。仕事は修理屋さんで、第5話『仕事の日』では、風車の修理をしています。その他にも、刃物研ぎなどもしているそうです。体を使う肉体派さんでもあります。次に、ミコチの紹介をしますね。これはどこにでもいる普通の女の子です。家では料理などの家事を担当しているようです。街に住んでいたことがあるようで、第6話の『舟歌の市場』では、港町アラビで手際よく買い物をしていますし、荷物を預かってくれる常連の喫茶店兼呑み屋さんを知っているなど、本当の街娘みたいです。この第6話では、ミコチが買い物の途中に財布を落として、街の中を探すことになるのですが、街の住人、小人さんだけではなくて、タヌキや猫、トカゲにスズメ、カエルに猿などから「ミコっちゃん」と呼ばれたり、財布を落としたことを知った市場の人たちから干物や佃煮、漬け物等々をプレゼントされるような人気者のようです。また昔、洋裁のアルバイトをしていたので布に詳しく、とくに貴重な「ヒロムタ綿」で作った生地には目がなく、触っただけで綿と麻の配合がわかるぐらいの目利きでもあります。また、市場の飲食店から漬け用の醤油の味や粕汁の出汁、なめろうの味見を頼まれるぐらいに味覚が鋭いようです。ちょっとミコチの紹介が長くなりそうなので、段落を変えます。そのミコチの普段の仕事は、味覚の鋭さと料理の腕などを生かして保存食や日用品を作ることです。第7話の「仕事の日2」では、そのエピソードが綴られています。第2話「ふたりの歌姫」で山間の街マキナタの収穫祭で、歌姫として一緒に歌を歌った吟遊詩人のコンジェが、新築祝いにミコチの家にやって来ます。そこで、ミコチがジャガ谷の麓にある夢品(むじな)商店に先ほど述べた保存食や日用品を卸していることをコンジェに告げます。コンジェはそのお店のリピーターであると言って、ミコチが出す黒豆クッキー(コンジェの大好物)や、自分が新築祝いに持ってきたお茶がミコチの作ったものだと知って驚きます。そして、コンジェはなぜか安心します。なぜかというと、ハクメイとミコチが大食らいのくせに、働いているように見えなかったからです。このことを言うと、ミコチはコンジェの頬を思いっきりつかんで引っ張っています。そんな小人の2人が織り成す普通の日々を、2人以外の様々な登場人物、吟遊詩人のコンジェや研究者のセン、イタチの鰯谷(いわしだに)親方、喫茶店兼呑み屋のマスター、呑み屋・吞戸屋の姉妹が出てきてにぎやかにお話が進みます。あと、この漫画で面白いのは、先に述べた鳥や動物の他に昆虫も小人や動物たちと混ざって一緒になって働いている点です。例えば、ゴライアスオオツノハナムグリ(体長100mmを超える世界一思い昆虫)は個人輸送業をやっていたり、その同業者には小型輸送ひとり旅用のカブトムシなどがいたり、バッタが新聞配達をしていたりと、中々面白い世界観で描かれています。そのような世界観と登場人物の細かな設定が魅力的なこの漫画。とくにミコチの説明が長くなった原因の、出てくる食べ物が美味しそうに描かれている点も見どころの一つ。また、先にも出てきた動物や虫が意外とリアルに描かれていることも評価が高くなるところです。まあ説明しようとすると、書いてきたようにいろいろ書けますが、読まないとこの漫画の何とも言えない良さは、分からないと思います。また、これは『fellowes!』の作家さんの一部に言えることですが、絵が程よく細かく描き込まれ、これがお話に厚みを持たせています。絵の描き方も、びっしり描き込まれた背景なのですが、適度に空間があって息苦しくないのも良いです。日常系やほのぼの系、癒し系等のマンガが好きなら、間違い無く購入して大丈夫な作品だと思います。某ネット系本屋さんのレビューを見ると森薫さんの『乙嫁語り(5)』に挟んであった試し読みチラシを読んで購入した方が多いようですが先にも色々書いた通り、購入して損をしない1冊です。ぜひ樫木さんの描く、この世界観にどっぷりはまって楽しんでみてください。
2013年02月08日
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はい、とうとう出ましたね。広江礼威さんの『Black lagoon(6)』(小学館、2006年11月)が。そして今回の表紙は、キリング・マシーン(殺戮機械)、南米ベネズエラの旧家、ラブレス家のメイドさんのロベルタさんが表紙を飾っております。しかしながら、メガネのメイドさんがシステマ・コルト・モデロ1927(米軍がベレッタM92Fの前に正式採用していた45口径コルト1911をアルゼンチンでライセンス生産した代物です。)を両手に持って、恐っろしい目つき(殺気のこもった)でこちらを見つめる姿は、どうもいただけませんね。純粋なメイドさん派、『エマ』大好き人間にとっては、ロベルタさんは邪道になるわけなのですが、まぁ、お話が面白いので良い事にしておきましょう。さて、今回の『Black lagoon(6)』は、前半が偽札騒動で後半がロベルタさんが暴れるお話の導入部となっています。私としては、偽札騒動の方が面白かったですね。この偽札騒動は、旧ドル札を密造しようとしていたフロリダのカルテルと期限とお金を惜しまずセッセと自分たちの勝手な世界に篭って「完璧な」偽ドルを作ろうとしていた一味が仲間割れして、偽ドル作りの主犯格の「破滅的」にさっしの悪いインド系のお嬢さん、ジェーンちゃんがロアナプラまで逃げてきて、こともあろうに暴力教会の扉を叩いて救いを求めるという、見当ハズレも甚だしい行為を行うところからお話が始まります。折りしも、熱帯雨林気候の当地でクーラーが壊れた礼拝堂の中では、主人公のレヴィと暴力教会の修道女(シスター)エダが、暑さを凌ぐための氷を積んで酒盛りの真っ最中。そこへ「助けて!」と礼拝堂の扉をドンドン叩かれもしようものなら、暑さで気が立っている2人のこと、エダは「営業時間外だ」と言うのですが、あまりのしつこさ&騒音に扉を開けてひと言「ヨハネ伝第五章でイエスが言ったのを知ってるか?厄介事を持ち込むな、この“アマ”だ」と言い放ちます(そんな事、聖書に書いてあるか!)。それに、「それでも修道女!?」と抗議するジェーンちゃんに対してエダはバッサリ「神は留守だよ、休暇を取ってベガスへ行っている。」、「そういう街で、そういう教会だ。」と切り捨てます。さらに「追われてるの」と助けを求めるジェーンちゃんに対して「審判の日に来るンだね。そうすりゃ神も―」と言っているところへ、追っ手の「よそ者」のカルテルのこれまたお馬鹿なフロリダ人(某国の大統領の弟が知事なんぞやっている州ですからね。)のミスタ・エルヴィスが銃をぶっ放してしまいます。その行為に顔が真っ青になるカルテルの一員で地元を仕切るロボスさん。さあ、ここからが大変です。暑さで気が立っている気の短いレヴィとエダのいる暴力教会に銃を撃ち込んだのですから。たちまち、レヴィのカトラス2丁(ベレッタM92Fのオーダーメイド品)とエダのグロック17からお馬鹿なカルテルの追っ手に向かって9mmパラペラム弾が乱射されます。これだけならカルテルの面々にも救いがあったのでしょうが、「姐さんッ!加勢に来ました!!」と言って新顔の見習い神父のリカルド君が、7.62mmのM-60汎用機関銃と弾薬箱に首から弾帯をさげてやって来たのですから救いようがありません。M-60は強力な機関銃ですので(え~、普通のコンクリートのブロック塀なんぞ、簡単に穴が開きます。)車なんぞ、盾にもなりません。ですので、慌ててロボスさんが「銃を収めてくれ、手違いなんだ。頼む!」と叫んだところで、撃ち合いが収まるはずもなく、修道女曰く「教会に鉛玉撃ち込んで五体満足で帰ろうなんざッ、虫がよすぎンだよッ!!」という事になり、悪党のロボスさんが「ああ神様、やっぱり駄目だ。」と耳をふさぐ有様。そこへ、火に油を注ぐように、エダが頭が上がらないシスター・ヨランダが出てきて「この不信心者どもを、ベテシメシ(旧約聖書の中にでてくる、唯一ユダヤ人に屈服しなかった町)の連中と同じ目にあわせてやらにゃアね。」と言って金ピカ象眼入りのデザート・イーグル(マグナム弾を自動式で撃つという文字通りのハンド・ガン、注:Gunには鉄砲の他に大砲という意味もあります。ちなみに、金ピカ象眼入りってなぜわかったかと言いますと、単行本が出るまえにアニメでこのエピソードを先に放映していたからなんですよね。)をぶっ放します。で、結局カルテルがトンズラこく訳ですが、その後の、ジェーン嬢ちゃんと撃ち合いをやった面々やカルテの連中の会話が面白いのです。延々と、カルテルに追われる経緯から偽札作りの詳細まで話す嬢ちゃんに対して、エダが「その話、最後の辺りはどの辺りだ。「バルジ大作戦」みたく、トイレ休憩を挟むのかい?」と半ギレしてみたり、暴力教会の銃撃戦で怪我をしたミスタ・エルヴィスが「この街に住んでいる連中ときたらとんだ野蛮人だ。洋服きて「エアロ・スミス」を聴いているだけで中身はモロ族と大差ねェ!信じられるか、教会の尼までもが銃をぶっ放してくるんだぞ!イカレポンチを煮詰めて作った神のクソ溜めだ、この街は!!」(なんて、端的な表現なのでしょうか!)と叫ぶシーンや、さらにエダが「あたしゃ希代のトリックスター、ガリヤラの湖上を歩く男に仕えてンだ。」というセリフなど、中々細かいところでアクセントが効いています。でもこのミスタ・エルヴィスを見ていると私が毎週観ているWOWOWの「CSI:マイアミ」のホレイショ・ケイン警部補率いる科学捜査班に事を起こしてあっという間に両手が後ろに廻りそうな気がするのですが・・・。という感じで、巻数を重ねるごとに面白くなっていくこの『Black lagoon』シリーズ。今回は、妙な話し方をする刃物使いの女殺し屋、「ですだよ」シェンフアが再登場したり、中々味のある掃除屋(死体の始末屋)でチェーンソー使いのゴスロリソーヤーが登場してきたり、ただの脇役のような存在かな、と思っていた修道女・エダさんの故郷がヴァージニア州ラングレイだったことが明らかになり(分からない人は、トム・クランシーの本を読んで勉強しましょう!)結構、今後のお話の展開に影響を与えてきそうな人物であることがはっきりしてきたり(だとすると、碧眼のシスター・ヨランダは、「約束の地」に住むダビデの星の関係者か?と邪推してしまうのですが・・・。だって碧眼と言えばダヤン将軍ですもの。)、ロベルタ話で出てくるかわいらしい雑役女中さん(中身は婦長・ロベルタさんとドッコイドッコイですが)など、書こうと思えばいくらでも書く話があるのですが、文字数の関係で今日はこの辺りで止めておきます。それでは。【余談がありますので、よろしければ、続きなどを】
2006年11月22日
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ようやく、5日ぶりにパソコンの前に座ることが出来ました。自分で自由に使えるパソコンが家に無いという事が、こんなに辛い事とは・・・。すっかりパソコンとインターネットの魔力に取り付かれてしまったようです。ヤレヤレですね、本当に・・・。さて、そんな修理に出したパソコン君が戻ってくるまでの夜の無聊を慰めるにために購入しました、広江礼威さんの『Black lagoon(1)』シリーズから、少々考えた事を書いてみます。それは、「国家の戦争についてのトラウマ」と言うことです。この「国家の戦争についてのトラウマ」は世界中、すべての国が持っています。私たち日本人が未だ「太平洋戦争」(最近では「アジア・太平洋戦争」と言ったり、右の方々は「大東亜戦争」と呼称したり、簡単に「第二次世界大戦」とまとめてしまいますが、私は簡単に「太平洋戦争」でいきます)のトラウマを延々60年以上も引きずっているのと同様、アメリカやロシア等の国々も同じような「トラウマ」を様々な形で抱きかかえているのです。その中で一番重症なのが、われらが日本国なのですがね。未だに、自衛隊を「軍隊」として認めず歪な形で保有しつづけ、国家が国民の生存権を確実に守れないと言う冗談にもならない状況を、一部の狂信者たちの声を恐れて改革しないという体たらく。最近ようやく、マシな方向へ動いていますが、好い加減に世界は日本国憲法が夢想したのとは違う方向へ向かっていることに気が付いて欲しいものです。理想は理想として高く掲げるのは良いことですが、理想のために無辜の国民(市民)が殺傷される事態を否定し続けることは、軍国主義者と同じくらい危険な事だと思いませんか?話が逸れてしまいましたが、「国家の戦争についてのトラウマ」について有名なところを紹介しますと、まずはアメリカとベトナム戦争が一番有名でしょう。『ブラック・ラグーン』でもロックたちのボス、ダッチはベトナム帰還兵です(作中で「ケサンの攻防戦がピクニックに見えるぜ」というセリフがあるので、海兵隊あがりかな?)。このベトナム戦争、様々な政治的思惑により純粋な意味での軍事行動が阻害されて、結局軍事力では勝っていたのに、政治で負けてしまい、超大国アメリカの面子が丸つぶれとなって、「ベトナム帰還兵問題」等々様々な問題を引き起こしたベトナム戦争。この「トラウマ」は何と湾岸戦争まで引きずられてしまうのです。このベトナム戦争を描いた面白い作品としては戦争劇画を描かせましたら日本一!小林源文氏の『キャットシットワン(v.1)』シリーズ(ソフトバンククリエイティブ、1998年)がありますが、この劇画、何故かアメリカ人がウサギで、ベトナム人がネコ、中国人がパンダで、韓国人がイヌという少し風変わりな作品です。ただし、中身はかなり濃いです。興味のある人は、手にとって見てください。さて、折角湾岸戦争で「トラウマ」を断ち切ったアメリカですが、この後すぐに、ソマリアに首を突っ込みモガデシオで散々な目に会い、また「トラウマ」を作ってしまいます。このソマリアについては、マーク・ボウデン著、伏見威蕃訳『ブラックホーク・ダウン(上)(下)』(早川書房、2002年)に詳しいので、これも読んでみてください。こんな感じで、「トラウマ」を克服したらまた「トラウマ」を作るこの繰り返し・・・。イラク戦争はどうなるのでしょうか?この他にも、イギリスにとってのフォークランド紛争、フランスにとってのインドシナ(ベトナム)にアルジェリア、旧ソ連・ロシアにとってのアフガニスタン(バラライカ姐さんの「トラウマ」ですね。作中では「アフガンに取り付かれている」とありました)等、例を挙げたら切が無いので今日はこの位で。
2006年04月22日
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最近、奇妙な方向の本ばかりを重点的に紹介してきたので、今日は反省&方向転換(一時的であれ。)しまして、私の敬愛する小野不由美大先生の『くらのかみ』(講談社、2003年)を取り上げたいと思います。これまで、『十二国記』大好き~!!!と、声高らかに叫んできたのに、一度も『十二国記』で日記を書いていないじゃないか!と、指摘される方もいるでしょうが、これには、深~い理由があるのです。それは、気に入っているシリーズなので、筆が進んで止まらずエライコトになるのではないか?という不安です。現に、『ナポレオン戦争に関する諸考察』編では、調子にのって「範囲内(半角 8~10000 文字)の長さの文字列を入力して下さい(現在: 半角 15704 文字)」という警告を出してしまった位、書くことが出来るので、もうしばらく…、と思っているうちにココまで来てしまったと言うわけです。ただ、そろそろ訪問者も2千人を越えそうですし、プロフィールにも『十二国記』大好き~!!!(&『星界シリーズ』も!!!)と書いてあるので、ボチボチとこの2つのライトノベルの巨塔の世界について語らなくてはなぁ~、と思い、先ずは手始めに図書便りでも紹介を書いた『くらのかみ』を攻略して、『十二国記』へ進もうと思い、今日のテーマとなった訳です。さて、この『くらのかみ』は、このブログを書き始めた最初に紹介した、田中芳樹先生の『ラインの虜囚』(講談社、2005年)と同じ講談社の『ミステリーランド』シリーズの最初の配本のうちの一冊となります。もう一度、解説を入れておきますが、この『ミステリーランド』シリーズは『「本」の復権(ルネッサンス)を願い…』と題して講談社が小野先生、田中先生に有栖川有栖、篠田真由美、二階堂黎人の各先生等々、日本を代表する超大物作家が「かつて子供だったあなたと、少年少女のために」というテーマで書き下ろしている作品集です。この栄えある『ミステリーランド』の第1回配本に選ばれた(シツコイ!)『くらのかみ』ですが、私、まだ買っていません。正直、すごく欲しいのですが、この『ミステリーランド』の本は中身も一級品なら装丁も同様で、1冊2,100円するのです!この値段を見る度に「文庫が何冊…」と悲しい計算をしてしまうので、まだ、未購入という次第なわけです。前振りが何時もの如く長くなりましたが、ココから『くらのかみ』の紹介へと入ります。そこで、ちょっと内容紹介は楽をしまして…。小説『十二国記』シリーズで有名な小野不由美さんが書いた怪奇ミステリー。でも登場するのは、悪いことはしないという、座敷童子なんですね。事件現場は、行者に祟られ座敷童子に守られているという田舎の古い旧家、そこで起こる事件は財産相続にからんだ殺人未遂事件、のはずなのだけど大人たちはただの偶然、事故だと言います。それに納得できない子どもたちと、子どもたちの中に紛れ込んだ座敷童子は、犯人を見つけるために少年探偵団を結成するのですが、さらなる事件が発生します。子どもたちは犯人を見つけられるのでしょうか?そして座敷童子はいったい誰なのでしょうか?というわけで、この上の文章は、私が図書便りに書いた新刊紹介の文章です。これから少し文章を削って載せたと思うのですが、大体こんな感じです。私がこの『くらのかみ』が気に入った理由の第一は、小野先生の作品である事もさる事ながら、この物語の世界観が気に入ったことです。ひと昔前まで日本の何処の田舎にあった白壁と門、そして蔵があってとどめに「行者に祟られ座敷童子に守られている」という伝承がある旧家のお屋敷が舞台。そして、遺産相続のために親戚が呼び集められて、そこで殺人(未遂ですが。)が起こるとパターンは金田一耕介が「どうも。」と出てきてもおかしくない、古き良き昭和の時代を感じさせます。(小野先生の作品は『黒祠の島』もそうですが、なぜか横溝正史大先生の作品の雰囲気を感じるのですよね~。設定が似ているからかな?)また、「少年探偵団」というネタは江戸川乱歩を連想させますし、こう考えると、小野先生は「かつて子供だったあなた=大人」が必ずといってよいほど読んだことのある、日本の二大探偵小説を見事に作品の中で利用していると思います。あと、座敷童子という身近な妖怪(?)を登場させたことにより、小野先生お得意のファンタジー・ホラーを絡めて座敷童子と、食べ物に毒を混ぜた犯人探しという2つの謎解き、をするという設定は、上手い!のひと言です。この物語で重要な役割を果たす座敷童子が登場する場面も、大人たちが難しい話をしている間、退屈になった4人の子どもたちが、「おくらさま」という家の守り神が祭られている蔵の中で、「4人ゲーム」というまっくらな部屋の四隅に四人の人間が立ち、肩を順番に叩きながら部屋をぐるぐる回るゲームを始め、そこで、とうぜん四人では成立しないはずのゲームのはずなのに、5人目の子どもが出てきて、この子が座敷童子、という仕組みはもう、天晴れとしか言いようがありません。子どもたちが「あれ?」と思って顔を見合わせたけど、どうしても最初からいたとしか思えない顔ぶればかり、というのも、初めて顔を合わせた親戚の子同士、という設定に、大人が全然気づかない(or目に見えない。)という座敷童子が登場する昔話の定番(実は他に小野先生は、昔から座敷童子が行ってきた「子どもを見守る」という二重の役割を掛けて、物語を膨らませています。)をフルに生かしているもので、読んでる者まで納得して、すんなりと物語の中に入り込めてしまいます。そして、普段の生活とは逆に、子どもたちが大人を守るために一団となって知恵を絞って探偵をするという、子どもたちの夏休みの「非日常」を昔風の(江戸川乱歩の『怪人二十面相シリーズ』みたいな、子どものグループが冒険するノリの。)児童文学的な作風で、子どもたちの視点から描いているところも大好きです。という次第で、本日はリハビリを兼ねて『くらのかみ』を紹介&解説してみました。でもこの本、冬じゃなくて夏休みに紹介する本だったな~、と書いてから気が付きました…。
2006年01月16日
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