濫読屋雑記
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はい、とうとう出ましたね。広江礼威さんの『Black lagoon(6)』(小学館、2006年11月)が。そして今回の表紙は、キリング・マシーン(殺戮機械)、南米ベネズエラの旧家、ラブレス家のメイドさんのロベルタさんが表紙を飾っております。しかしながら、メガネのメイドさんがシステマ・コルト・モデロ1927(米軍がベレッタM92Fの前に正式採用していた45口径コルト1911をアルゼンチンでライセンス生産した代物です。)を両手に持って、恐っろしい目つき(殺気のこもった)でこちらを見つめる姿は、どうもいただけませんね。純粋なメイドさん派、『エマ』大好き人間にとっては、ロベルタさんは邪道になるわけなのですが、まぁ、お話が面白いので良い事にしておきましょう。さて、今回の『Black lagoon(6)』は、前半が偽札騒動で後半がロベルタさんが暴れるお話の導入部となっています。私としては、偽札騒動の方が面白かったですね。この偽札騒動は、旧ドル札を密造しようとしていたフロリダのカルテルと期限とお金を惜しまずセッセと自分たちの勝手な世界に篭って「完璧な」偽ドルを作ろうとしていた一味が仲間割れして、偽ドル作りの主犯格の「破滅的」にさっしの悪いインド系のお嬢さん、ジェーンちゃんがロアナプラまで逃げてきて、こともあろうに暴力教会の扉を叩いて救いを求めるという、見当ハズレも甚だしい行為を行うところからお話が始まります。折りしも、熱帯雨林気候の当地でクーラーが壊れた礼拝堂の中では、主人公のレヴィと暴力教会の修道女(シスター)エダが、暑さを凌ぐための氷を積んで酒盛りの真っ最中。そこへ「助けて!」と礼拝堂の扉をドンドン叩かれもしようものなら、暑さで気が立っている2人のこと、エダは「営業時間外だ」と言うのですが、あまりのしつこさ&騒音に扉を開けてひと言「ヨハネ伝第五章でイエスが言ったのを知ってるか?厄介事を持ち込むな、この“アマ”だ」と言い放ちます(そんな事、聖書に書いてあるか!)。それに、「それでも修道女!?」と抗議するジェーンちゃんに対してエダはバッサリ「神は留守だよ、休暇を取ってベガスへ行っている。」、「そういう街で、そういう教会だ。」と切り捨てます。さらに「追われてるの」と助けを求めるジェーンちゃんに対して「審判の日に来るンだね。そうすりゃ神も―」と言っているところへ、追っ手の「よそ者」のカルテルのこれまたお馬鹿なフロリダ人(某国の大統領の弟が知事なんぞやっている州ですからね。)のミスタ・エルヴィスが銃をぶっ放してしまいます。その行為に顔が真っ青になるカルテルの一員で地元を仕切るロボスさん。さあ、ここからが大変です。暑さで気が立っている気の短いレヴィとエダのいる暴力教会に銃を撃ち込んだのですから。たちまち、レヴィのカトラス2丁(ベレッタM92Fのオーダーメイド品)とエダのグロック17からお馬鹿なカルテルの追っ手に向かって9mmパラペラム弾が乱射されます。これだけならカルテルの面々にも救いがあったのでしょうが、「姐さんッ!加勢に来ました!!」と言って新顔の見習い神父のリカルド君が、7.62mmのM-60汎用機関銃と弾薬箱に首から弾帯をさげてやって来たのですから救いようがありません。M-60は強力な機関銃ですので(え~、普通のコンクリートのブロック塀なんぞ、簡単に穴が開きます。)車なんぞ、盾にもなりません。ですので、慌ててロボスさんが「銃を収めてくれ、手違いなんだ。頼む!」と叫んだところで、撃ち合いが収まるはずもなく、修道女曰く「教会に鉛玉撃ち込んで五体満足で帰ろうなんざッ、虫がよすぎンだよッ!!」という事になり、悪党のロボスさんが「ああ神様、やっぱり駄目だ。」と耳をふさぐ有様。そこへ、火に油を注ぐように、エダが頭が上がらないシスター・ヨランダが出てきて「この不信心者どもを、ベテシメシ(旧約聖書の中にでてくる、唯一ユダヤ人に屈服しなかった町)の連中と同じ目にあわせてやらにゃアね。」と言って金ピカ象眼入りのデザート・イーグル(マグナム弾を自動式で撃つという文字通りのハンド・ガン、注:Gunには鉄砲の他に大砲という意味もあります。ちなみに、金ピカ象眼入りってなぜわかったかと言いますと、単行本が出るまえにアニメでこのエピソードを先に放映していたからなんですよね。)をぶっ放します。で、結局カルテルがトンズラこく訳ですが、その後の、ジェーン嬢ちゃんと撃ち合いをやった面々やカルテの連中の会話が面白いのです。延々と、カルテルに追われる経緯から偽札作りの詳細まで話す嬢ちゃんに対して、エダが「その話、最後の辺りはどの辺りだ。「バルジ大作戦」みたく、トイレ休憩を挟むのかい?」と半ギレしてみたり、暴力教会の銃撃戦で怪我をしたミスタ・エルヴィスが「この街に住んでいる連中ときたらとんだ野蛮人だ。洋服きて「エアロ・スミス」を聴いているだけで中身はモロ族と大差ねェ!信じられるか、教会の尼までもが銃をぶっ放してくるんだぞ!イカレポンチを煮詰めて作った神のクソ溜めだ、この街は!!」(なんて、端的な表現なのでしょうか!)と叫ぶシーンや、さらにエダが「あたしゃ希代のトリックスター、ガリヤラの湖上を歩く男に仕えてンだ。」というセリフなど、中々細かいところでアクセントが効いています。でもこのミスタ・エルヴィスを見ていると私が毎週観ているWOWOWの「CSI:マイアミ」のホレイショ・ケイン警部補率いる科学捜査班に事を起こしてあっという間に両手が後ろに廻りそうな気がするのですが・・・。という感じで、巻数を重ねるごとに面白くなっていくこの『Black lagoon』シリーズ。今回は、妙な話し方をする刃物使いの女殺し屋、「ですだよ」シェンフアが再登場したり、中々味のある掃除屋(死体の始末屋)でチェーンソー使いのゴスロリソーヤーが登場してきたり、ただの脇役のような存在かな、と思っていた修道女・エダさんの故郷がヴァージニア州ラングレイだったことが明らかになり(分からない人は、トム・クランシーの本を読んで勉強しましょう!)結構、今後のお話の展開に影響を与えてきそうな人物であることがはっきりしてきたり(だとすると、碧眼のシスター・ヨランダは、「約束の地」に住むダビデの星の関係者か?と邪推してしまうのですが・・・。だって碧眼と言えばダヤン将軍ですもの。)、ロベルタ話で出てくるかわいらしい雑役女中さん(中身は婦長・ロベルタさんとドッコイドッコイですが)など、書こうと思えばいくらでも書く話があるのですが、文字数の関係で今日はこの辺りで止めておきます。それでは。【余談がありますので、よろしければ、続きなどを】
2006年11月22日
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