今、僕がいる場所は、
ちょっとした観光地にある茶屋。
わびさびがあって、いい感じの茶屋なんだけど、
なにせ所詮、ちょっとした・・・・観光地だ。
お客は僕だけだ。
お客と言っても、
ここでバイトを始めた転校生の魔法を使う少女に、
呼び止められただけだけど。
うん・・・・でも、
茶屋の看板娘用の着物を着た少女が、
やたら可愛かった。
だから・・・
部活でやたら走らされ、どんなに疲れていようとも、
つい呼び止められてしまった。
「有機と無機の違いも、原子番号の違いも、
本当は大した事じゃないんだよ。
宇宙創生の瞬間は、みんな1つだった訳だし。
いーい見てて・・・」
転校生の魔法を使う少女は唐突にそう言うと、
綺麗な透明な瓶に変身してしまった。
茶屋のテーブルの上には、ピッカピカに輝く透明な瓶。
瓶の中には乳白色の液体が入っている。
一見すると甘酒っぽい。
瓶はビール瓶の様に蓋がしてあった。
そして、瓶の横には彼女が出してくれた、
みたらし団子。
「僕にどうしろと?」
とりあえず僕は、透明な瓶をじっと見つめた。
彼女が変身した瓶だと思うと・・・ちょっとドキドキ。
だって透けてるんだよ。
じっと見つめる事、数時間・・・日も暮れてきた。
そして、とうとう閉店時間の7時を過ぎてしまった。
この時間になるとまだ肌寒い。
僕は再び、
「僕にどうしろと?」
と呟いてみた。
みたらし団子と甘酒ぽいの・・・・・やはり食べて飲むべきだろう。
僕はそう決断した。
瓶は無事な訳だし。
彼女は魔法が使える。
なんとかなるだろう。
栓抜きで瓶の蓋を抜くと、瓶の蓋は
彼女が付けていた髪飾りの簪(かんざし)へと変わった。
簪(かんざし)の先は、鋭利だった。
「勝手にこんな事をしたら、
これで殺されるかも知れない・・・」
と思うと、身体が震えた。
「でも・・・今更!」
僕はみたらし団子を口に入れた後、
彼女が変身した瓶を掴んだ。
瓶は冷たく無機質だったけど、
瓶のその緩やかなラインは、色気を放っていた。
瓶の口は、彼女の何に当たるんだろうか?
そして、瓶の中身の液体は?
僕は、みたらし団子と供に、その液体を喉に流し込んだ。
身体の中に、彼女の優しい感触が沁みわたった。
「幸せ・・・・」
それ以降の記憶は定かじゃない。
多分僕は酔ったんだ。
気がついた僕の目の前には、
転校生の魔法を使う少女の口が、
そして、僕はみたらし団子に変身させられていた!
彼女の歯が・・・・
こうして僕は、転校生の魔法を使う少女に、
食べられてしまいました。
おしまい
漆(うるし)のお弁当箱 May 10, 2012 コメント(2)
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