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カテゴリ: 教育



 しばらく前に亡くなった倉橋由美子さんが「私の大学時代は、文学に対して恋人に対するような思いを抱いている友人に囲まれて幸せでした」と書いている。
 その幸せな学生時代なくして、あの倉橋文学が生まれることはけっしてなかったにちがいない。

 そこには、偏差値や世間の価値観を超えたものがある。本当は、これこそが大学を選ぶときに最も重きを置くべきものなのではなかろうか。

 高校時代の同級生に、北杜夫が好きだという理由で東北大学を選んだやつがいる。海が見える大学に行きたかったぼくよりも、はるかに「あっぱれな」動機である。
 海が見えるかどうかなど、大学を選ぶうえで本質的なことでも何でもないと思われるかもしれないが、人生の岐路に立たされたときに決断を下すことができたのは、学生時代毎日のように見ていた海をもう一度見ることができたからである。

 ぼくの母校、桃山学院高校には同名の大学があるが、高校が先にできたので、本当は桃山学院高校付属大学と言うべきものである。高校には、こんな小噺のような言い伝えがある。
 高校に入学したときは、だれが桃山学院大学になんか行くものかと思っている。
 二年になると、選択肢のひとつに加えてもいいかなと思う。


 ぼくらの学年はなぜかできがよかった。あちこちの大学にみな現役で合格してしまった。
 進学指導の先生が「こんなにみんな現役で通ってしまったら、来年、弾がなくなる」という科白を口にした。今なら、生徒を弾に喩えるなんて実に不謹慎、問題発言としてつるしあげられるかもしれない。しかし、ぼくたちは先生の人柄をよく知っていたからでもあるが、そこにはどこに何人合格したなんていう「くだらない世間体」を笑い飛ばすような何かがあって、それだけにいっそう生徒に対するその先生の愛情を強く感じたのだった。
 その先生、パチンコをやっている生徒を見つけてどやしつけたことがある。
「お前ら、高校生のくせに授業さぼって何やっとんのや。実はな、えらい負けてんねん。玉余ってたら分けてくれへんか」
 そういう教育を受けてきたからこそ、ぼくらは今、こうやってたくましく生きているのである。

 あれから30数年、合格人数を水増ししたとして大きな騒ぎになっている。
 くだらない。その一言に尽きる。

 くだらない世間体など笑い飛ばし、その先にある本当に大切なものを見据えて教育してくれたわが母校と比べて、何と大きなちがいがあることか。

 合格人数など、はじめから延べ人数に決まっている。ぼくらのときにも飛行機で移動して全国の大学を19校受験し、6勝13敗という成績を残したやつがいる。
 もちろん、旅費も受験料も親が出したものだ。

 これなんかは、豪傑の存在を語り継ぐ笑い話になっている。



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最終更新日  2007年08月10日 10時55分58秒
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