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カテゴリ: 翻訳



 かれこれ20年前、フランス経済が傾いたとき、フランス語の通訳や翻訳者の証言を総合すると、やはりその時にフランス語の仕事が激減した事実がくっきりと浮かび上がった。

 ぼくが駆け出しのとき、イタリア経済が上り調子だった。面白いようにイタリア語の仕事が来た。単価は英語の2倍。あの時期を乗り切れたのも、歴史の偶然によるところが大きいとも言える。

 株が暴落した。ユーロが暴落した。

 それが翻訳の仕事に影を落とさないわけはない。

 そういうことにかけては、ぼくは金融専門の翻訳者よりはるかに敏感なのだ。
 案の定、かなり信頼できる筋から、仕事が減っている気がするという感触を得た。ただし、その翻訳者の仕事が減っているわけではない。もともと、自分の処理能力をはるかに超える問い合わせがあるので、ぼやっとしていると気がつかないが、問い合わせそのものは「確実に」減っているという。

 TOEICで何点取ったと騒いでいる気楽な連中がうらやましくなるのも、このときである。

 そんなことを言っている場合ではない。TOEICで990点取ろうが、1100点取ろうが、後退する景気は止めようがない。



 春先から、受注状況に妙な胸騒ぎを覚えていたが、やはり現実になってしまったか。
 EU経済の主役が周辺に移行しつつあるような雲行きである。

 このところ、イベリア、スカンジナビア、バルカンの景気がよい。

 もちろん、これは経済学者の観測とは異なっているが、翻訳の受注動向には、1年先、2年先を見越した読みが反映されている。

 英語しかやってこなかった翻訳者の大失業時代は、もちろん目に見えている。


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最終更新日  2008年10月07日 22時48分14秒
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