売り場に学ぼう by 太田伸之

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Nobuyuki Ota

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2025.08.09
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カテゴリ: ファッション
マーチャンダイジングの講義をするとき、よくこんな話をします。デザイナーを画家とするならばマーチャンダイザーは画商。画家のクリエーションを受け止め、それを市場でしっかり売るのは画商の仕事、画商の力量次第で売れるはずの絵が売れない場合もあれば、逆に売れることもある、と。マーチャンダイザーはデザイナーのクリエーションをしっかり受け止めて仕事するべきと説明してきました。

画家と画商の関係で一番印象深いのはなんと言ってもオランダの画家フィンセント・ヴァン・ゴッホと実弟で画商テオ(テオドルス・ヴァン・ゴッホ)の関係です。


テオ・ヴァン・ゴッホの曾孫と

2018年初めてオランダを訪ねたとき、幸運にもテオの曽孫にゴッホ美術館を案内してもらいました。彼の解説によれば、初期のゴッホは貧しい農民の絵を描いていたが、テオは「こんな暗い絵は誰も買ってくれない」と兄にアドバイス、ゴッホは方向転換して明るい南仏の絵を描くようになりました。

しかし、それでも絵は売れません。次に浮世絵のコレクターでもあったゴッホは歌川広重などの浮世絵を模写、その構図や色使いなどを取り入れましたが、これも売れません。生涯に売れた絵画はたった1枚だったそうですが、テオは兄の才能を信じて亡くなるまでずっと兄フィンセントを支援しました。

1890年ゴッホは自殺します。その半年後今度はテオも急逝、残されたテオの妻ヨー(ヨハンナ)の手元にはたくさんの売れなかったゴッホの作品がありました。ヨーは義兄の才能をなんとか世間に伝えようと尽力、合同展示会などに出品するうちに少しずつゴッホの絵は評価されるようになります。そして、ヨーの子孫は多くの作品を政府に寄贈する代わりにゴッホ美術館を建ててもらいました。つまり実弟テオ一家によってフィンセント・ヴァン・ゴッホは歴史的な画家になりました。


​兄の才能を信じた実弟テオ・ヴァン・ゴッホ​






アムステルダムのゴッホミュージアム


生涯にたった1枚しか売れなかったフィンセントの才能を信じ、一家の力で彼を歴史的画家にアップグレードしたのですからすごい信頼関係、まさしく画家と画商の良い関係でした。




先日関西方面に出かけた際、大阪市立美術館で開催中の「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」をのぞいてきました。アムステルダムのゴッホ美術館所有の作品のほか、一族の交流が読み取れる手紙などが展示されゴッホ好きの私には魅力的な展覧会でした。後日この展覧会は9月東京都美術館、来年1月愛知県美術館に巡回する予定です。

ゴッホはアントワープ王立芸術学院でも絵画を学んだとか。つまりマルタン・マルジェラ、ドリス・ヴァン・ノッテン、ラフ・シモンズらファッションデザイナーをたくさん輩出しているベルギーのあの学校ですよね。17世紀創立の歴史ある美術学校、ここで学んだというだけでも私にはゴッホがとても身近な存在に感じられます。

存命中はなかなか売れなかった画家のクリエーションを理解し、それを世界に広めその評価を高めた画商一家の情熱物語、デザイナーとマーチャンダイザーの関係もそうありたいです。





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Last updated  2025.08.10 11:56:15
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