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知られざる名曲シリーズ


2006年09月10日
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カテゴリ: 連載小説「復活」
 先週から掲載を始めた漫画用原作ですが、間抜けなことに古い原稿を載せてしまいました。何度も推敲しており、手違いで最終稿ではないものを掲載してしまいました。

 比べて頂くと分るのですが、最初の稿は背景説明が多すぎて、漫画の原作というより小説に近い構成になっています。その辺を指摘され、修正したものがこれから掲載する第五稿(最終稿)です。お楽しみいただければ幸いです。




『復活』


第1部「邂逅」


1.  8月4日



 第一次世界大戦終結から13年、 1931年(昭和6年)8月4日 、ドイツ・ワイマール共和国、バイロイト。

 この地にある祝祭劇場では、毎年恒例のバイロイト・フェスティバルが開催されている。

 大混雑の中、バイロイト祝祭劇場に向かって歩く大群衆の中に、 二人の日本人

 一人は真っ白な海軍礼装。身長高く、がっしりとした体格、日焼けした精悍な顔立ち。もう一人も背は高いが、色白、細身でモダンな三つボタンのスーツを着ている。

 坂道を早足で登りつつ後ろを振り返り、軍服の男が
「おい 貴志 、もっと急げ。開演に間にあわんぞ」

 スーツの男 
「駅でイタリア女にちょっかいを出して時間を食ったのはお前じゃなかったのか、 西園寺

 西園寺と呼ばれた軍人、苦笑しながら
「きれいなご婦人を見かけたら、声をおかけするのが帝国軍人の勤めだろう?」

 貴志、笑いもせずに
「その帝国軍人様は、ドイツに何をしに来なさったのかな?」


 西園寺、とぼけた顔で云う。

 貴志、皮肉っぽく
「帝国軍人というのは優雅で結構なご身分だな」

「まぁそういうなよ、大体俺はこんな田舎町の音楽祭なんざイヤだといったろう?」

「確かに」と貴志。



「幼なじみの縁で教養を付けさせてやろうと思って連れてきたが、やはり無駄だったか」
貴志、諦めたように首を振る。


 その時、


「ちょっと待て、貴志。あれを見ろ!」
西園寺が立ち止まった。

 「なんだ?」
 「あれさ」
 西園寺が顎をしゃくって示した方向には、道路を挟んだ歩道を、真っ赤なドレスが一際目立つ、金髪の美しい女が颯爽とした足取りで劇場への坂を上っていく。

 「たまげたな、おい。ドイツに来て10日になるが、間違いなく一番だな、ありゃあ」西園寺、デレっと見送っている。

 「全く君という奴は、軍服を着ていなかったらとても軍人には思えんよ」
貴志、呆れたようにぼやく。

 「誉め言葉だと思っておくよ」
西園寺、にやりと笑う。

 二人、なおも人混みの中を歩いていく。しばらくして祝祭劇場の正面に出た。

「想像していたよりも随分地味なもんだな」西園寺は劇場を見上げた。

「ロビーもバルコニーもない、ワーグナーが自分の音楽のためだけに造った劇場さ」貴志が説明する。

 二人、入り口付近で入場待ちの列に並んでいると、急に辺りが騒がしくなり、20人ほどの集団
が近づいてきた。

 殆どが褐色の制服らしきものに身を包み、その集団の中心で背広姿の男二人と派手な服装の女が談笑している。

 「なんだ、あの連中は」
 「あれは・・・真ん中で髭をはやしているのが ナチス党党首のアドルフ・ヒトラー 。君も名前くらい知っているだろう」貴志が答えた。

 「ほう、あれが噂のヒトラーか、思ったよりも小男だな。で、その横の奴は?」
 「あれは同じくナチス党宣伝部長の ヨーゼフ・ゲッペルス 。女の方は ヴィニフレッド・ワーグナー 。彼女がこのバイロイト音楽祭を仕切っている女王様さ」とすかさず貴志が答えた。

 「貴様、本当に詳しいな」西園寺は驚いたが、貴志は気にするふうでもなく、
「三年もドイツにいればいやでもわかるぜ」と云う。

 「すると、あの周りを取り囲んでいる連中は?」
「あれは突撃隊といってナチス党の私兵連中さ」貴志が続ける。

 「ヴィニフレッドは熱狂的なナチ崇拝者、ヒトラーは熱烈な ワグネリアン だしな」
「なんだそのワグネリなんとかってのは?」
「ワーグナー信望者のことだよ。君はそんなことも知らんのか?」貴志が見下すように云う。

 「知るかそんなこと。でも今日の演目はワーグナーじゃなくてベートーヴェンだろう?」
「ああ、今日は指揮者のフルトヴェングラーを見に来たんだろう、とにかく有名だからな」
西園寺はなるほど、と頷きながら、日本を出発前に読んだナチスについての報告書を思い出していた。 

ナチス党(国家社会主義ドイツ労働者党)1919年結成。1921年にヒトラーが党首になって以来、激烈な反共主義、反ユダヤ主義を展開、次第に党勢を拡大。1930年9月の共和国議会選挙で107議席に躍進し、一躍国会内で第二勢力となる。現在、推定党員数20万人


 やがて、女主人に先導された集団は劇場入り口に近づいた。

「道をあけろ!」「どけ、どけ!」

 突撃隊員数名が並んでいる人々をかき分けて通路を確保していく。その中を、ヒトラー達が悠然と歩いていく。

 西園寺、腕組みしながら
「気にくわねぇな、ああいうやからはよ」と眺めていたが、

 「おい西園寺、あの女、さっきの坂道で見かけた女じゃないか?」貴志の声に振り返った。
貴志が指さした30メートルほど先に、あの赤いドレスの女が居た。

 「そうだ!やっぱりここに来てたんだ!貴志よ、先に座っててくれ。ちょっくらご挨拶してくるからな」西園寺、女の方に歩き出す。

 「おい!ったくなんとかにつける薬はないな・・・開演に遅れるなよ!」貴志、人並みに押されて劇場の中に入っていく。

 赤い服の女は、西園寺には気づかず、正面入り口から劇場内に入りつつあるヒトラー一行の10メートル程後ろにいた。

 「ったくあんないい女がなんでこんな辛気くさい所にくるのかね~」無邪気に女の後ろ姿を追っていた西園寺だが、次の瞬間



 軍人の直感がなにかを知らせた。すぐに目を凝らし、神経を集中する。

「変だ。今数人の男達が一瞬、彼女の周りに集まってすぐに散った気がしたが・・・」

 集団は入り口にさしかかった。女がヒトラーの集団から離れていくのが見えたその瞬間、

「人殺し野郎、くたばれ!!」

 という罵声と共に数人の男達が人混みの中から褐色の集団を包囲するようにしながらピストルを乱射し始めた。

「パン!パン!」

「うわっ」「うぐっ」
たちまち二人の突撃隊員が倒れた。観客、パニックに陥り、我先に出口へと殺到する。

 ゲッペルスとヴィニフレッドは床に伏せたが、ヒトラーだけは暴漢達をにらみつけながら傲然と立っている。

 「みんな伏せろ!」
西園寺、叫びながら抜刀、集団の後ろにいた暴漢二人を瞬時に打ち倒し、
 「うおりゃー!」
雄叫びをあげながら前方の二人に突進する。暴漢、西園寺めがけて発砲するが間に合わない。次の瞬間、

「ぐわっ」肩を打たれ一人が吹っ飛ぶ。すかさずもう一人は銃を握った手を強打された。全員、峰打ちだった。暴漢達はたまらず逃げ出した。その直後、

 「馬鹿者ども、さっさとテロリストを捕らえろ!!」ゲッペルスの甲高い声が響く。
我に返った突撃隊員達が追いかけていく。

 「あの女は?」西園寺が素早く辺りを見渡したときには、遙か彼方を急ぎ足で去っていく女の後ろ姿が見えた。後を追おうとした瞬間、

「ご助力に感謝する」
西園寺の前にヒトラーが歩み寄り、手を差し出した。

「ご無事で何よりでした、閣下」
西園寺、追跡を諦め、刀を鞘に収めてヒトラーに敬礼。

「見たところ東洋人のようだが」
ヒトラーが尋ねた。その時、人混みをかきわけ、貴志がやってきた。
「おお、無事だったか」と合図を送る。

「自分は 大日本帝国海軍駐在武官、西園寺一誠大尉 であります。こちらは友人で 音楽家の貴志康一 であります」西園寺が挨拶した。

ヒトラー目を細めて、
「日本のサムライの技を初めて見せてもらった。実に素晴らしい。しかし、何故切らなかったのかね?」と尋ねた。

 「実は閣下。私は軍人のくせに血をみるのが嫌いでして」

「軍人のくせに殺生は嫌い、か。西園寺大尉はなかなか面白い男のようだな、ゲッペルス君?」

「さようですな、マイン・フューラー。でもそろそろ参りませんと」
抜け目のない感じでゲッペルスが促す。

 ヒトラーはそうか、と頷きながら
「いずれにせよ大尉は余の命の恩人だ。ベルリンに戻ったら是非私を訪ねてくれたまえ」
西園寺を見据え、しっかりと握手したかと思うとヒトラーとその一行は何事もなかったかのように劇場内に消えていった。

 「やったな、西園寺」
と貴志は西園寺の肩を叩いた。しかし西園寺は微動だにせず、

「見たか貴志、奴の目を。今命を狙われたってのに、全く動揺してなかったぞ」と絞り出すように云った。

「さすがに指導者は腹が座っている、ということじゃあないのか?」

「いや、そんな生やさしいもんじゃない。あれは、命のやりとりを何とも思わねえ奴の目だ」

「お前、震えているのか?」

 西園寺、ヒトラーと握手した手が微かに震えている。
「おれは今まであんな冷徹な目をした奴を見たことがない。遠くドイツくんだりまでやってきた甲斐があったかもしれん」
西園寺はつぶやいた。

「彼はこの国の次の大統領候補だぞ」と貴志が云った。

 二人が褐色の集団を見送っている間に、開幕を告げるファンファーレが鳴り響いた。

「それにしてもあの女、一体何者だ・・・?」

 西園寺は赤いドレスの女が去っていった方角を今一度振り返ってから、劇場内に入っていった。



                                  ~続く~






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最終更新日  2006年09月10日 18時27分37秒
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