悠久の唄 ~うたの聴けるブログ~

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ゆうとの428

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2005年11月01日
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   27. 夏の終わりに


 ─ 夏は冬に憧れて
   冬は夏に帰りたい

   あの頃の事 今では
   素敵に見える…   ─


 駆け抜けて行く夏の終わりは、私にも哀愁と言うものを感じさせた。
「もう夏の匂いも、薄らいで来たわね…。」
香織は云った。
「唄う事だけは、諦めないでね。

残暑の部屋で、私と香織は音楽に耳を傾けて居た。
専門学校は大学よりもずっと早く後期の授業が始まるので、私が金沢から東京に帰って来た時、香織と世樹子とフー子は既に中野に戻って居た。
敏感な彼女は、私に「元気が無いわね…。合宿で何か有ったの…?」と訊いた。
「季節の変わり目だからさ…。」とだけ、私は答えた。


 ─ そっと其処に 其の儘で
   微かに輝くべきもの

   決してもう一度 此の手で
   触れてはいけないもの…  ─


 9月13日、柳沢が戻って来た。
「美穂にさ、フラれちゃったよ…。」
「いつ…?」

「へえ。
何だ、落ち込んでるのか…?」
「否、もう立ち直った…。」
当時私は、大妻女子短期大学に通う、西谷美香と言う女性とも関係を持って居た。
夏休み前の時点で、4人の女と付き合っていた理由だった。

柳沢は云った。
「確かに、ストックが1つ減ったと言うだけの事なんだが…。
東京に来てから、ずっと順調に増え続けてたストックが、此処へ来て、1つでも欠けてしまったのは、痛いな…。」
「まだ増やす積もりだったのか…?」
「否、そうじゃ無いけど…。
一角が崩れると、一気にバラバラと全部崩れて終いそうな気がするんだ。
一度フラれ癖が付くと、中々抜けないとも云うし…。
3人残ってるなんて呑気に構えて居ると、立て続けにフラれちまう様な、悪い予感がするんだ…。」
「下がっちゃ、怖いからな…。
でも、そんな事有る理由無いさ。
心配要らない、自信を失くしてるだけさ…。」

 住宅街の一角に在る古いアパートは、又賑やかになった。
「トレーナーを作ろうと思うんだが、どうだろう…?」
柳沢が云った。
「トレーナー…? 
何で…?」
香織が訊いた。
「前から鉄兵には話してたんだけどさ…、俺達は『中野ファミリー』って、サークルだか何だかよく解らない様なものを拵えて、現に今も、此処に集まってる理由だけど…、何か、眼に見える、想い出が欲しいんだ…。」
「其れで、トレーナーを作るの…?」
フー子が云った。
「ああ。
『中野ファミリー』のオリジナル・トレーナーを作るんだ。」
「素敵だわ…。
作りましょう。」
世樹子は愉しそうに云った。
「俺も賛成。」
ヒロシが云った。
「でも、どうやって作るのよ…?」
香織が訊いた。
「大学のサークルなんかの、オリジナル・トレーナーやスタジャンを、専門に扱ってる処が有るんだ…。」
私は云った。
「既に調べて、依頼する処も決めて有るんだが、10枚以上だと、料金が大変割安になる…。
其れで、10枚作る事にして、俺達の他にも買い手を見付けて置きたいのさ。」
「後、4人ね…。」
フー子が云った。
「男2人、女2人と言うのが、理想的なんだが…。」
「男の方は、先ずドロに買わせるさ。」
「もう1人は川元にしよう。
彼奴は金の余ってる奴だから、大丈夫だ。」
「女の子で誰か買って呉れそうな娘、居ない…?」
「そうねえ…。」
「ノブちゃんは、買って呉れないかな…?」
「あ、彼女は絶対買って呉れるわ。
此処へ遊びに来たいって、云ってたわよ。」
「誰だい、其れ…?」
「私のクラスの娘よ。
一度此処に、泊まった事が有るの。」
「ああ…、鉄兵が不祥事をやらかしたって時…?」
「さて、後1人だ。」
「どんな娘だい…?」
「とっても可愛い娘よ。」
「本当…? 
早く逢いたいな。」
「全く、俺が帰った後に、そんな可愛い娘が来るし、焼肉パーティーをやったと云うし…。」
「あなたが、さっさと先に帰っちゃうから、いけないのよ。」
「其れより、女の子もう1人考えて呉れよ。」
「誰が好いかしらね…?」
「出来れば、可愛い娘が、好いな…。」
「そうだ。
ノブちゃんは可愛いらしいが、せめてもう1人位、可愛い娘が居ても…。」
「あら、私達じゃ不満って理由? 
其れなら、自分達で捜せば…。」
「冗談だよ。
誰でも好いから、トレーナーを買って呉れる娘を捜して呉れ。」
「私達だって、もっとカッコ好い男の子に居て欲しいわよねぇ…。」
「だから、冗談だって。
お願いします。
見付けて下さい…。」
「まあ、好いわ。
友達に訊いてみて、1人捜しとくわ…。」

 9月17日から、大学の後期の授業が始まった。
西沢と野口は、夏休みに新島へ行き、十数人の女とセックスをして来たと云った。
「俺は生まれて初めて、もうセックスはしたく無い、女を視るのも厭だ、と言う気分を味わったよ…。」
其の日は後期の初日と言う事で、夕刻から、男許で飲みに出た。
「酎ハイ、5つ。」
「俺は水割が好いな…。」
「後からにしろよ。
取り合えず、みんな酎ハイで乾杯しようぜ。」
「お通し」をアッと言う間に食べてしまって、つまみに不自由し始めた頃、やっと「つくね」と「焼き鳥」と「肉じゃが」が出て来た。
「此処の『煮込み』は、美味いのか…?」
「さあ…? 
食った事無い…。」
我々は、「煮込み」の美味しい居酒屋は、他の料理も全て美味しいと言う、奇妙な方程式を造っていた。
唯「煮込み」程、店に依って味の格差の激しいものは無い事は、確かであった。
「他に御注文は…?」
「若鶏の唐揚げ…。」
「イカ丸と、あさりバター…。」
「酒蒸しの方がうめえよ。
酒蒸し…。」
「月見とカニサラ…。」
「ホッケ…。」
「おめえ、頼むから、ホッケは止めて呉れよ。」
「好いじゃねえか。
安くて量が有って…。」
「つくね追加…。」
「又食うのかよ…?」
「ほっとけ、好きなんだよ。
つくねが…。」

 「…だからさ、クリトリス神話は絶対だよ。」
我々は、「合コン愛好会」を結成以来、常により高度なセックスを求めて、真実の飽く無き追求を続けていた。
「女がオルガスムスを知って、欲情する様になれば、楽なんだよな。」
「そりゃ、そうさ。
でも問題は、そうなる迄の間、如何に充実したセックスを行えるかって事だ。」
「経験の浅い女の特徴は、濡れ易く、渇き易いって事だ。
いきなり濡れて、前戯が終わると、緊張で渇いちゃうんだ。」
「ゴムを素早く着ける事が大事なんだよな。
着けるのに手間取って、其の間に女の方は渇いちゃってて、もう一度クリニングスしなきゃなんない、なんてのは最低だよ。」
「そんな、前戯の意味が全然無くなる場合は、男に問題が有るさ。
前戯と本番は、連続してなきゃ駄目だ。
片手でゴムを着ける事の出来ない男には、セックスをする資格は無い。」
「然し、ゴムを着ける処って、性行為の中で一番間抜けな場面だよな。
あれは何とかならないものだろうか…? 
出来れば、消して終いたいシーンだ。」
「此の前、口内射精させて貰ったら、えらく彼女がむせてな…。」
「ちゃんと教えて遣れよ。
あれは口の中で一度溜めてから、飲み込むんだ…。」

 私と柳沢は、東急ハンズで、固い方眼紙と様々な種類のレタリング・シートを買って帰った。
夜、トレーナーのプリントの図案を、全員で考えた。
図案はスムーズに進行したが、トレーナーの色に就いては、大変揉めた。
「黄色いトレーナー、俺、沢山持ってるんだよな…。」
「私、緑は厭よ…。」
結局、色はワイン・カラーに決まった。
最後の1人は、「ヒロ子」と言う女性が、買って呉れる事になった。


 ─ 夏は冬に憧れて
   冬は夏に帰りたい… ─


 誰よりも懐かしい人は、あの街の空が好きだった。
私が彼等を愛した様に、今、彼等が又誰かを愛して居るとしたら、
ああ…、時は、さらさらと流れているのだ…。


 ─ そっと其処に 其の儘で
   微かに輝くべきもの… ─


                           〈二七、夏の終わりに〉

※引用:オフコース「 夏の終わりに





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Last updated  2007年02月24日 08時34分04秒
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