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2023年08月31日

「飲むだけで痩せる」は存在しない!SNSで拡がるダイエットサプリの危険性サプリ





SNSやネット広告でよく見かける「ダイエットサプリ」や「ダイエット漢方」。“飲むだけで痩せる”、“食べるだけで痩せる”などと謳っているものが多いことで知られていますが、本当にそんな魔法のような医薬品や食品があるのでしょうか?

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本記事では、「ダイエットサプリ」をはじめとした健康食品や「ダイエット漢方」の実態、医薬品の個人輸入のリスク、実際に報告された副作用や健康被害について、金沢大学で偽造医薬品ならびに不適正流通医薬品の研究に従事する吉田直子助教に伺いました。

監修:吉田直子助教(金沢大学・医薬保険研究域薬学)
富山医科薬科大学薬学部薬科学科を卒業したのち薬剤師免許を取得。2009年より金沢大学にて様々な研究に従事し、現在は偽造医薬品ならびに不適正流通医薬品などの検出法開発に関する研究に尽力している。金沢大学医薬保健研究域附属AIホスピタル・マクロシグナルダイナミクス研究開発センター助教。

ネットで見かける「ダイエットサプリ/漢方」の危険性


10年以上前から市場に出回りはじめたと言われる「ダイエットサプリ」などの健康食品。最近は、「ダイエット漢方」と言われるダイエットをしている方たちをターゲットとした医薬品の広告を、SNS上で見ることも多くなりました。

そもそもネット上で宣伝・販売されているもので、本当にダイエット効果が得られるのか疑問に思ったことがある人も多いはず。その効果について、吉田先生は次のように話します。

「種類や成分はそれぞれなので、一概に効果について答えることは難しいですが、効果云々よりも副作用や健康被害などのリスクが高いことを理解してほしいです」

◆「飲むだけ・食べるだけで痩せる」は存在しない

実際に2022年に、国内でネット経由で販売されていた「Detoxeretゼリー(Detoxeret Jelly)」を購入した人たちから健康被害の報告が続出。調査の結果、Detoxeretゼリーからは未承認の医薬品成分シブトラミン※が検出されました。
(※シブトラミンは、食欲抑制作用が認められたため、一度は医薬品として承認をされたものの、医薬品として使用するには安全性に関するリスクが高く、副作用が重すぎるため、後に承認を取り消されることになった成分。日本では、製造販売承認申請が取り下げられた成分。)

「“飲むだけで痩せる”といったものは存在しないのが現実です。ネット上には“痩せる”と謳っているものが出回っていますが、実際に服用したことで副作用が起きた場合には、健康に支障をきたすだけではなく命を落とす危険性もあります」

◆欧米では副作用による死亡例も
日本では2022年、医薬品成分シブトラミンを摂取したことによる体調不良を訴えた人が複数人確認されています。またアメリカでは過去、同成分によって死亡した方がいることも報告されました。

厚生労働省の委託を受けて、一般社団法人「偽造医薬品等情報センター」が運営する「あやしいヤクブツ連絡ネット」によると、シブトラミンは高血圧、不整脈、幻覚、気分の落ち込みなどの症状を引き起こす可能性があることがわかっています。

他にも「ホスピタルダイエット(MDダイエット)※」などと称されるダイエットのために薬を購入した人を巡って、過去に多数の健康被害が報告されています。
(※ホスピタルダイエットは、海外の病院を利用してダイエット効果が期待できる薬をインターネット上で処方・発送してもらい、服用するというもの。)

◆ダイエット目的の“不適切”な薬の使用が増加

最近では、血糖値をコントロールするために必要な医薬品として使われている糖尿病の治療薬である「GLP-1受容体作動薬」をダイエット目的で服用している人も見られます。本来、GLP-1受容体作動薬は医師の処方のもとで服用するべきものですが、処方なしで手に入れられるケースがあり問題視されています。

「糖尿病の治療に使われる薬なので、そういう意味ではダイエットをしている方たちが期待する作用があります。ただ、それはあくまでも血糖値をコントロールする必要のある方々が使うものであって、糖尿病でない人が使うものではありません」
吉田先生によると、GLP-1受容体作動薬を含むいくつかの薬は、体重減少に対しても治験が進んでいるそう。しかし、その結果の一部だけを切り取って「これらの薬がダイエットに適しているかどうか」を判断するべきではありません。

GLP-1受容体作動薬をはじめ、肥満症の改善に効果があるとされる防風通聖散などの漢方薬も、流通しているからといって全員にとって安全なものだとは限りません。副作用のリスクなども含めて、薬の効果や服用が推奨される人などをしっかりと理解する必要があることを覚えておきましょう。
フリマアプリやSNS広告で拡がる「未承認薬」
Getty Images

法律上、宣伝広告や販売が禁止されている「未承認薬」。一方で、未承認薬やその成分が入ったダイエットサプリや食品が流通しているのが現実です。吉田先生は「私たちが把握できているのは、あくまでも氷山の一角」として、そのケースの多さを伺わせました。

未承認薬が国内に入ってくるときは、その多くが「個人輸入」。従来のダイエットサプリ/食品は、インターネットや電話で注文することが主流だったものの、現在はフリマアプリやSNS広告を経由して購入している人が増えているよう。実際に2022年に起きた「Detoxeretゼリー」の健康被害の件も、SNSを通じて購入したあとで体調不良になった人がいることが報告されています。

「最近は、自分の体内に入れるものを知らない相手から買う、安いからといってSNSで買う、というケースが増えているのだと思います。買ったものが国内から発送される場合もあれば、海外から届く場合もありますし、その流通ルートも様々です」

◆自演クチコミや偽造された医薬品の販売も…

さらに、未承認薬を売るための“公式サイト”の偽造や、パッケージの偽装、偽物の医薬品の製造・販売、若者に人気のインフルエンサーやアイドルの画像を使って消費者を引き付ける場合も。また、サイト上での口コミやSNSで拡散されている口コミなどが実は利用者の“リアルな声”ではなく、販売者側が自演していることもあります。

個人輸入の危険性
国外の販売店などから医薬品を個人的に購入して国内に輸入する、医薬品の「個人輸入」。

吉田先生によると、法律上では原則禁止※されているものの、このケースが後を絶たないと言います。実際に、韓国系のショッピングサイトで「ダイエット」を謳った漢方が販売されていて、容易に手に入れることができるため、軽い気持ちで購入してしまう人も。

一方で、これまでに報告された健康被害を受けて、輸入確認を求めるケースを増やすなど、個人輸入の規制も厳しくなってきたそう。

◆安全性や品質、保管状態が悪い製品も

しかし、サプリなどを含む健康食品は、医薬品のように販売自体に規制がかかっていないため、日本で未承認の成分を含むものが「ゼリー」や「お茶」などの食品を装って販売された場合、取り締まることが難しくなります。

「海外では、日本人の体格などに対して安全性が保障されてない薬、偽造された薬が多く販売されています。さらには品質が悪いものや、保管状況が悪い薬が届いたりもします」
「医薬品を自己判断で使用することほど危険なことはありません。本来はちゃんと専門家の指導のもとで使うものです」
(※医薬品の個人輸入は、外国で受けた薬物治療を継続する必要がある場合や、海外からの旅行者が常備薬として携行する場合などへの配慮が必要な場合のみ認められます。(参照:厚生労働省))

◆購入することで罪に問われる可能性も

数量に限らず個人輸入しただけで法律違反になる可能性がある医薬品も存在します。

たとえば、ホスピタルダイエットで健康被害が報告された薬のなかには、向精神薬が含まれているものがあることが判明しました。この場合は、故意であるかどうかに関わらず、麻薬及び向精神薬取締法違反の罪に問われる可能性があります。

また2022年には、覚せい剤原料である「プソイドエフェドリン※」が10%以上入ったダイエット薬を、多くの人が知らずに韓国の医院から輸入していた事例も。

※プソイドエフェドリンの含有量が10%以下の場合は、覚醒剤原料に該当しません。

「このように、法律で厳しく取り締まっているものを、知らず知らずのうちに入手してしまうこともあります。犯罪者になってしまう可能性もあるので、個人輸入はもちろんのこと、知らない相手、信用できない相手から薬や食品をむやみに購入しないようにしましょう」「これだけで痩せる」の言葉を信じない
Getty Images

「飲むだけで/食べるだけで痩せる」などといった謳い文句は、安易に信用せずに、まずは疑ってみることが大切。

「『これだけで痩せる』などといった言葉に興味をもつ気持ちは、すごくよくわかります。ですが少し冷静になって、『そんなものが本当にあるのかな』と考えてほしいです。いくら“クチコミ”がすごく良くて多くの人が購入している、と宣伝されていても、現に健康被害を引き起こす未承認医薬品成分が入っていたことが報告されています」

◆成分記載やパッケージなどを細かくチェック

「口に入れるものは、自分の健康に直結するものです。販売している相手がどういう人なのか、製造している人がどういう人なのか調べてもわからないような場合は、まずは疑うべきだと思います。『危ないんじゃないか』と思ってほしいです」
「『これって実際どういう成分が入ってるのかな』『記載通りのものが入ってるのかな』『パッケージがなんか怪しいな』など、そういう目で見てもらえると良いと思います」

相談窓口
健康被害についてはもちろん、個人輸入のリスクや相談窓口は「あやしいヤクブツ連絡ネット」や「国民生活センター」で確認してください。

■あやしいヤクブツ連絡ネット
Tel. 03-5542-1865                        

■消費者ホットライン「188」
Tel. 188(相談窓口によって受付時間が異なります)

■国民生活センター「お昼の消費生活相談」
Tel. 03-3446-0999(平日:11時〜13時)
タグ: ダイエット
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