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武庫川女子大学 甲子園会館(旧甲子園ホテル)
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遠藤新(えんどう あらた1889-1951)によって設計され、1930年に竣工した甲子園ホテル(現武庫川女子大学甲子園会館)は日本における代表的なアールデコ建築の一つである。日本の近代建築に様々な影響をもたらしたフランク・ロイド・ライト(1867-1959)に師事した遠藤は、アールデコ建築のスタイルを確立した巨匠ライトの理想を継承し、戦前に花開いた阪神間モダニズムの先駆的デザインを随所に盛り込んだ華やかな社交場としてのホテルを完成させた。二つの世界大戦に挟まれ、ホテルとしてはわずか14年で幕を閉じた甲子園ホテルであるが、装飾性を極力排除したミニマリストの近代建築とは一線を画した建築・インテリア・庭園のデザインは訪れる者を戦前のモボ・モガが闊歩していたであろう優雅でありながら、革新的でエネルギーに満ちた時代に一気に引き戻すだけの魅力と意匠に満ちている。
「アールデコ」という用語は1925年に開催されたパリ万国博覧会の正式名称の一部を借用して、1920年代から1930年代に流行したスタイルを、1960年代後半以降に「アールデコ」と呼称するようになったのがその起源である。「アールデコ」はその前に流行した曲線的、有機的、非対称といった特徴を持つ「アールヌーボー」と比較されることが多い。その特徴は直線的、幾何学的、左右対称的、立体的といったモダニズムのフォーマットをベースにしながらも、様々なモチーフを組み合わせ、繰り返し使うことにより、優美でありながら、都会的でスタイリッシュでもあるというクラシックとモダンという双方の魅力を併せ持つ独自のスタイルを確立したのがアールデコ様式である。
またアールデコは都市の時代にふさわしく、インテリアや建築だけでなく、当時の工業や産業が生み出す様々な製品、例えばバッグやシガレットケース・食器・花器等のデザイン、そして女性のファッションにも多大な影響をもたらした。そして、アールデコの時代とはそれらのデザインに彩られた高級品を販売する百貨店が欧米や日本の都市の商業中心地に立地し、新しい都市文化とライフスタイルが隆盛を極めた時期でもあった。甲子園ホテルの内装にはその時代のデザインの先進性を体現した様々な意匠や遊び心が随所にみられる。また、現代にも通じるグローバリズムにより、欧米発祥のアールデコの建築やデザインも日本の和室や庭園と融合し、他所では見られない独自のスタイルを保っているのが、甲子園ホテルの魅力でもある。ぜひ一度訪問して、建物の外観だけでなく、日本式の回廊庭園、ホテル内の細部の意匠や和洋折衷のデザインにも注目し、ユニークな発展を遂げた阪神間モダニズムとその時代の息吹をを感じていただきたい。
参考文献
柏木 博/共著(2013)デザイン/近代建築史 鹿島出版会
NHK「美の壺」制作班/編(2008)アール・デコの建築 (NHK美の壺)
日本放送出版協会
吉田鋼市(2005)アール・デコの建築 合理性と官能性の造形 中央公論新社
吉田鋼市(2016)日本のアール・デコの建築家 王国社
三宅正弘(2009)甲子園ホテル物語 東方出版
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