特捜最前線の初期のレギュラーだった 滝刑事こと桜木健一氏は、わずか1年弱の出演で降板しています。後半は出番も極端に減り、特命課での立ち位置も中途半端なまま終わってしまったという印象です。
警察組織の中で出世することを最大の目標にしていた滝刑事は、念願だった特命課に配属されました。ところが、段々と「人を疑う刑事という仕事」に対して、違和感を覚えていくのです。
地下鉄を舞台にした連続殺人事件では、重要参考人である夫婦の境遇に同情してしまい、いつしか「疑いのある者は徹底して捜査する」という刑事の基本を外れ、「この夫婦は犯人ではない」と勝手に思い込みます。
その思い込みは、やがて見当違いの捜査へと脱線し、夫を本ボシだと断定する特命課の刑事たちと意見が対立。ついには「夫が犯人だったら、 俺は刑事を辞める」とまでタンカを切ってしまったのです。
結局、滝は退職へと追い込まれてしまいました。ただ、滝の気持ちは意外とサバサバしていたのかもしれません。見方を変えれば「辞めるためのきっかけが欲しかった」のだろうとも思えます。
それは滝が、飲食店を共同経営するという 「次の道」を決めていたことにも表れています。終身雇用が当たり前だった昭和の時代には、異色の考え方だったかもしれませんが、今なら共感できるでしょう。
そして皮肉にも、滝刑事というキャラクターが去ったことにより、特捜最前線はエリート集団による本格的な社会派ドラマとして、刑事ドラマ史に残るような名作を次々と生み出していくことになるのです。
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