ある重大犯罪の捜査中、容疑者のアリバイを裏付けるため、一人の青年に聞き込みをする 紅林刑事(横光克彦)。青年の証言が嘘だったと分かりましたが、なぜ嘘をつかなければならなかったのかと疑問に思ったのです。
その日、駅のホームで悪質な痴漢にからまれた女性を助けようとした男が、誤って痴漢を転落させ、痴漢は列車にはねられて死亡するという事件が起きていました。紅林は青年がその男ではないかと疑うのです。
運送会社で働く青年は、誰に聞いても真面目で誠実、一生懸命働くので社長の信頼も厚いという人物。青年について調べる紅林は、関係者から厳しい言葉を投げかけられ、自分の捜査に対して 自問自答を繰り返します。
刑事の立場とすれば、未解決の過失致死事件の容疑者を突き止めようとするのは当然です。一方で心のどこかに「情状の余地が十分ある事件なので、見逃してもいいのでは」という引っ掛かりがありました。
容疑が濃くなってきた青年を逮捕すべきかどうかの葛藤に苦しみ、無精ひげを生やし、焦燥とした顔つきで、特命課の仲間たちからも心配される紅林。そこに助け舟を出したのが神代課長(二谷英明)だったのです。
神代は、同じような犯罪の容疑をかけた男を逮捕できなかったことで、男が自殺に追い込まれてしまったという過去を告白。 「青年も同じように悩んでいるはずだ」と、紅林を励ましました。
紅林が出した結論は青年に自首させること。青年と相対した紅林は、自分の思いを真正面からぶつけます。犯した罪に苦しんでいた青年は、自らの心を解き放つかのように事件の容疑者であることを認めたのでした。
特捜最前線の中でも、刑事の苦悩をここまで描いたドラマは珍しく、紅林役の横光さんの迫真の演技もあって印象深い作品に仕上がっています。 人間ドラマの真骨頂とも言える名作の一つです。
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