現代ビジネス より先日の開票特番で 池上彰さんから 自民党の中で 安倍晋三首相に批判的なことを 言えなくなっているのではないかと 問われた小泉氏は 「新聞の軽減税率反対だって言ってもね、 なかなかテレビで報じてもらえないんですよ。新聞なんかほとんど書かな いんですよ」 と嘆くも、中継はそこで終了。 ということがあった。 小泉さんが最近色々と積極的に発言するのは 池上さんへの ちょっとしたレジスタンスのようにも見える。 そうであれば 安倍政権を批判しつつも実は 一強独裁というイメージを払拭するという意味で 政権を支えている。 安倍さんへの対立軸の代表格とも言える石破さんも 安倍政権との距離を絶妙に保つことで 自民党全体のイメージを損なうことなく 存在感を示している。 つまり 考え抜かれた目的のための行動をしているということだ。 それにつけても 希望の党や 旧民進はそれができないのが 致命傷。 希望の党は 本当のところ 小池さんが追い出されたのか 小池さんが見捨てたのかは わからないが どちらにしても 面倒見ようとは思えないのが普通の人の感覚。 当事者は 民進党がなぜ支持されなかったのかが 全くわかっていなかった ということが明らかになったというのは 確かだ。 石破さんにしても 小泉さんにしても 共通するのは読みの深さだ。 野党は自らの置かれた座標を 認識する必要がある。小泉進次郎がどんどん過激になってきた「ある事情」
人気がうなぎ登りになればなるほど、進次郎をやっかむ議員は増える。男の嫉妬だ。だからこそ、圧倒的実力を見せつけねばならない。同じ「元総理の息子」を女房役に得て、進次郎はますます過激だ。
菅が「一皮剥けたな」
いま707人いる国会議員の中で、 もっとも国民的な人気を持っている男・小泉進次郎は、 腹の底で何を考えているのか。 肉声を克明に記録した 『小泉進次郎と福田達夫』(文春新書)で、 著者・田崎史郎氏(時事通信社特別解説委員)から「 他人からのジェラシーを感じるときはありますか」と問われ、 進次郎はこう答えている。 〈 腹の底では相当厳しい評価をされてるんだろうなと思っています。 他の人なら評価されるぐらいの結果を出しても、 絶対に評価されない立場なんだろうなっていう自覚はありますね。 80点で頑張ったねと言われることは決してなく、 120点取って初めて、 まあ、褒めてやってもいいかっていう立場なんだろうと。 じゃないと、次のチャンスが与えられないだろうなって 〉 (同書より、以下同) 進次郎の言う「結果」は、 決して選挙の「客寄せパンダ」となり、 自民党を勝利に導くことだけではない。 魑魅魍魎蠢く永田町にあって、 他を黙らせるには、 目に見える仕事の成果が必要だった。 それが、 '15年10月から自民党農林部会長として手がけた 「全農改革」だった。 農家は、自民党にとって文字通りの大票田だ。 大きな抵抗勢力だったが、 進次郎は改革案をまとめ上げ、 '17年の通常国会で 「農業競争力強化支援法」 など8本の法律成立にこぎ着けた。 進次郎を農林部会長に推薦したという 菅義偉官房長官は同書でこう語る。 〈(農林部会は)とりまとめる苦労が 党内でも一番必要なところなんですよ。 それをうまくまとめましたよね。 ですから私、これで一皮剥けたなという話をしたんです 〉 全農改革で、 進次郎の女房役として、 緻密なサポートを行ったのが、 部会長代理の福田達夫だ。 福田康夫元首相の長男として生まれ、 三菱商事で11年間サラリーマン生活を行った後、 父のもとで総理秘書官を務め、 代議士となった。 将来の総理候補の一人とも目される人物である。 小泉もこう語っている。 〈 福田さんはあれだけの知的なレベルの高さで、 常に何か一つの事象を 全体の中で最適になるかどうかということを考え、 その上で判断する。 マクロの発想を持ってると思う。 それはすごく大事で、 僕に欠けている部分を補ってくれた 〉 進次郎と福田のタッグで思い起こされるのが、 二人の父親どうしの関係である。 小泉純一郎が総理時代、 官房長官を務めたのが福田康夫だった。 全農改革では、 既得権を手放すまいとする全農側との激しい応酬が続き、 日本農業新聞では、 次郎批判の見出しが連日躍った。 だが、進次郎は、常に好戦的だった。 〈 戦わなければ政治家じゃないと思っていますからね。 こっちとこっちの意見を聞いてまとめて、 パパパッと繕ってお化粧して、 はい、出来上がりっていうのは、 僕じゃなくてもいいと思っています。 (略)戦うことによって突破力が生まれますよね。 誰でも落としどころが見える世界だったら、 ある意味誰でもいいわけじゃないですか 〉父・純一郎の忠告
強気のパフォーマンスは、 努力に裏打ちされたものだった。 スポーツ紙を含めて毎日10紙の新聞をむさぼり読み、 睡眠時間を削って勉強を重ねた。 〈 寝るのが午前2時、3時……。4時になるときもある。 部会長って部会を開くまでの仕事がすごいんですよ。 政治の世界は会議の場が勝負ではなくて、 会議までが勝負という部分があるじゃないですか。 根回しをして、 そのときまでに仕込んで、 徹底した電話かけと同時に、 自分もインプットを重ねなきゃいけない 〉 この勉強家ぶりを福田も称え、 二人はこう語り合っている。 〈 福田: 素直で勉強家。だからお父さん(純一郎)が、 「あいつは勉強しすぎてダメだ」 って言ったのがよくわかった。 「(兄の)孝太郎のほうがわかってるんだ。 あいつ勉強しないから。 進次郎は勉強しすぎるんだよな」 って言ったのがよくわかる。 ほんとに真摯に勉強するし、 自分の見られ方もよくわかっている。 小泉: うちの親父が、 「勉強しすぎはダメなんだ」 って言うじゃないですか。 それね、やっぱり年齢と立場がありますよ。 僕の立場、年齢で 「いや、勉強しすぎちゃダメなんですよ」 なんて言ったら、 ただの勉強不足じゃないですか。 そうでしょ 〉 人たらしの術も「さすが」のひと言。 『小泉進次郎と福田達夫』のなかでは、 「海軍カレー」や「かりんとう饅頭」といった 横須賀名物を手土産に持ってきた話を引き合いにだして、 農水省の官僚がこう語っている。 〈 資料を作った課の若手職員に差し入れを持ってこられたり、 若手職員を議員会館の事務所に招いて、 そこでランチを振る舞いながら、 資料作りの苦労話を聞かれた。 そういうねぎらいをしてくれるんですね 〉 2人のタッグは成功だった。 進次郎がこう総括している。 〈 ある意味、 僕らは発言する入場券を農林部会長と 部会長代理をやったことによって得たと思う。 もしも一度も経験をしてなかったら、 発言権すらもなかったと思う 〉 事実、発言権を得た進次郎は、 どんどん過激になっている。 「党は何も聞いてないし、議論もしてないですから。 このままだったら自民党必要ないですよ!」 11月1日のことだ。 小泉進次郎による、 公然の安倍批判とも受け取られかねない発言だった。 安倍首相は、 幼児教育無償化の財源として、 約3000億円の拠出を財界に求めたが、 自分は聞いていないと言うのだから。 翌日には自ら呼びかけて総選挙の 「反省会」を自民党本部で開催し、 こう語った。 「議席の数ほど自民党の信頼が回復していないという危機感の表れだ」 こうした発言は、むろん、メディアに逐一流れる。 印象的なワンフレーズを連発し、 世論の流れをつくっていった純一郎を想起させる。 進次郎は、 「お父さんに似てしまったところは?」 という田崎氏の問いに対して、こう答えた。 〈 うちの親父、ワンフレーズってよく言われたじゃないですか。これは必要だったからワンフレーズになったんだということが、自分がこの立場になってよくわかりました。 というのは、マスコミは自分の都合がいいように発言を切るから。ワンフレーズだったらどこも切りようがない 〉本当の下積みができるか
田崎氏は、進次郎のメディア露出の戦略を、こう分析する。 「きちんとメッセージを出すときと、 様子をみるときと使い分けていますよね。 たとえば国会での質問時間配分の問題は、 踏み込んだ発言をしていない。 『世の中の多くの人が共感するだろう』 という段階になるまで、 軽々な発言はしないんです」 非の打ち所がなさそうな進次郎。 弱点はないのか。 実は女房役の福田は、 「女房」としてこう進次郎に苦言を呈している。 〈 やっぱり下積みの経験がないんですよ。 (略)人の苦労はやっぱりわからなきゃいけない。 下積みの苦労って、 たぶん彼はこの2年間やってきたことが 下積みだと思っているかもしれないけど、 それはエリートの下積み。 本当の雑巾がけは知ってたほうがいいだろうなあ 〉 進次郎より14歳年上で、 サラリーマン生活の長い福田らしい発言だ。 全農改革で、 進次郎は福田に対して、 JAや全農の組合員の前で 「若手の議員に、(農家に対して)厳しい意見を言わせてほしい」 と伝えたが、福田はこう反論したと言う。 〈 それね、いいですけど、処遇できるんですか。 言わせたあとに何かポストとか、 選挙で万全の応援をして絶対に落とさせないとかできない限り、 そういうことを軽々にしちゃダメですよ 〉 ただし、今の進次郎に対し、 福田のように耳の痛い話もできる立場でいられるのは、 ほんの数人だろうと田崎氏は言う。 「影響力が格段になったため、 政権が発言を気にするのは、 小泉さんのものだけ。 だから先日、 3000億円の話で政府批判したという時は、 僕も心配して、 『小泉さんの注目度は衆院選を通じて ものすごく上がっているのだから、 言う時期や場所を選んだほうがいい』 と申し上げましたよ。 ボールを繰り返し投げ続けていると、 摩耗して小池百合子さんのように スポイルされてしまう可能性だってありますから」 進次郎は、 福田という女房役を得て、 さらに成長した。 田崎氏が続ける。 「小泉さんは、どこかで気を抜いたほうがいい。 安倍首相も、第1次政権の失敗があって今があるわけで、 人間だから必ず大失敗するときがある。 そこから這い上がるときに、 小泉さんの真価が試されると思います」 進次郎が将来の総理というのは衆目の一致するところ。 「小泉首相、福田官房長官」 という2代にわたるコンビが誕生する日は来るのか。 (文中一部敬称略)
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