今回は前回の続きです。
前回は長くなり過ぎたので二回に分けました。
こちら
その他の違い
次は外観以外の部分での違いを書いてみます。
エンジンと駆動系など
ここからは主にS41Dについて書いています。
S41Dの1型初期まではエンジンルームを見るとすぐわかる部分として、エアクリーナーケースの色がゴールドだったことが挙げられます。(V43のカタログ写真ですが確認できます→ こちら )
これは途中から黒に変わり、2型の途中からは排ガス対策でブローバイのリターンホースが付くようになります。
これに伴いシリンダーヘッドカバーにあったエアクリーナーという部品が無くなり、そこにエアクリーナーケースから出たホースが?がるようになりました。
ただしこれは2型でも途中からのようで、66年度版のパーツリストにも部品の記載がありません。
そもそも、66年度版になると初期の部品番号は記載されていないことが多く、基本的に互換性のあるものはそちらで代用しなさいという事のようです。
実はゴールドのエアクリーナーケースも既に64年版には記載がありません。
恐らく63年版のスーパー6専用カタログにのみ記載されていたのではと考えています。
しかし、完全に廃止されたと言う訳ではなかったようで、古いパーツリストの記載されている番号で発注を掛けるとその番号の部品が出たりしていたようなので、在庫のあるうちは対応していたのでは。
他にエンジンマウントブラケットが1型初期まではアルミ製で、途中から鉄に変更。
サーモスタットカバーやステアリングギアボックスも初期はアルミボディです。
他にも初期は各部にアルミを使っており、後期に比べるとコストがかかっています。
その他ウォーターポンプは初期の物はグリスカップが付いていましたが後期の新型では廃止されていたり、フューエルストレーナーの位置といった見た目で分かるもの以外にもデスビやキャブは数種類あったり、エキゾースト関係も数タイプあります。
ウォーターポンプは大まかに旧型と新型に分かれるのですが、どちらも基本は互換性があったので補修部品としては初期型の方は早いうちに無くなったのではないかと想像します。
他にもオプショナルでカップリング付きのものが存在しますが、その辺りはいずれまた。
エキゾーストは1,000台のみ二分割仕様が存在(S41D-13831~14830)し、その車番だけオイルポンプがオプションのギア式(通常はトロコイド式)が付いていたようです。
(二分割エキマニ装着車については こちら を参照)
このエキゾーストはS44Pグランドの1型途中(~S44P-929)までの部品と共通です。
このデュアルエキゾースト仕様を含めるとS41Dだけで少なくとも3種類存在します。
ディストリビューターに関しては未確認ですが、ごく初期のみダブルポイント仕様だった可能性があります。
恐らく生産開始後すぐに一般的なシングルポイント式に変更されたものと思われますが、初期の取扱説明書などの写真にはダブルポイント仕様のデスビは写っているので、試作車のみなのか初期生産車にもあったのかは不明ですが存在したことは確かなようです。
本来の変更では2型になると早い段階で新型に変わり、デスビキャップもサイズが違う別ものになっているので見ると分かります。
因みにメーカーは三菱です。
エンジンのヘッドカバーも番号で見ると2種類存在しています。
この他一時期のみ HYPER6とネームが入っているものがあります。
これはプリンスがエンジンのペットネームを募集した際にG7エンジンの愛称として決まった名前で、その後極一時期のみ装着されたカバーになります。HYPER6カバーは恐らくですが部品単体としては番号の設定は無かったかもしれません。
シリンダーヘッドカバー上についている黒い部品が【エアクリーナー】で、その奥に四角い枠で囲まれた【HYPER6】が見えます。
エンジン内部に関しても、バルブ径の変更など書ききれないくらい生産途中で細かく変わっています。
これには途中S54スカイライン発売の影響もあり、54用G7と仕様の共通化を図ったりといったことも関係します。
ミッションとクラッチ関係も1型2型で違い、2型はクラッチカバーがダイヤフラム式になったのが大きな変更箇所です。
ミッションも細かく変わっているのですが、体感できる部分では加速時の音でしょうか。
1型の頃は加速時にジェット機のようなキーンという音が割とはっきり聞こえたのですが、2型になるとだいぶマイルドになります。
どうもギアの焼入れ方法が変更になっているようで、当たり音が変わったらしいです。
まあ、普通の人はそこまで気にしないでしょうけど、所有しているオーナーにしてみると気になるところは沢山あるわけです。
自分のクルマは果たしてオリジナルのままか?
どの部品が組まれている仕様なのかといった部分は、深く知れば知るほど興味がわいてきます。
もう一つ、エンジンルーム向かって右手前にあるシリアルプレート(コーションプレート)の縁取りの色が1型では金色ですが、2型になるとシルバー(プレート地金の色)に変わります。
キリが無いのでこの辺で。
次に室内です
一番の違いはシートと内張りの生地がまるっきり変わったので、オリジナルの内装のままであればすぐにわかります。
1型ではボディーカラーに合わせて三色の内装が組み合わせられるようになっていました。
グレー系とブルー系、それとブラウン系の三色です。
但し、3色だったのはS40Dの1型とS41Dの1型だけで、S40Dの2型では同じ生地ですがブラウン系は無いみたいです。
下はS40D-1とS41D-1の車体色と内装の組み合わせの一覧です
S40DとS41Dの車体色が一緒に記載されているのでちょっと分かり難いですが、ブルー系の内装はブルー系の車体色にしか設定が無かったことが分かります。
このS40Dデラックスも3型になった際にやはりシート生地が変わっています。
1型と2型まではスーパー6の1型とほぼ同じ西陣織の生地でした(正確にはスーパー6の1型がデラックスと同じと言うほうが正しい)が、3型になるとスーパー6の2型と同じ生地となります。
この2型の生地は1型とはだいぶ雰囲気が変わり、色味もブルー系とグレー系の2種類だけとなり内張り等の内装も1型とは意匠が違う別物です。
スタンダード系も1型2型で生地や色等が変わっているのですが今回は省略します。
他に2型になると1型では装着されていたフロントピラーとセンターピラーの内張は省略されボディむき出しとなってしまいます。
しかし実際には1型の最後期ごろから内張は省略されているようで、1型でも車両番号24000番台の車両には付いていないのを現車確認しています。(1型はS41D-24527まで)
自分が所有していたのは23000番代半ばでしたがまだ装着されていました。
しかしパーツリスト上では既に無いことになっている車番だったのが謎。
実際の生産現場では在庫が切れるまでは取付けていたのでしょうか?
メーカーとしての一応の区切りと、実際の生産車との食い違いと言うのは恐らく他にもあったのではないかと思います。
この他にはリアドア上にあるコートハンガーも1型途中から片側だけになり、これ以外にも言われなければ気が付かないような部分も変更があります。
ダッシュボード真ん中にあるスピーカー取り付け部分の作りも変わり、2型以降(S40Dも2型以降はこのタイプ)はスーパー6もスタンダード系と同じくスピーカー取り付け箇所がカバー別体の取り外し可能なつくりとなります。
これも部品の共用化の影響でしょう。
ちょっと面白い装備としては1型途中(スーパー6はS41D-15555〜1型最終まで)から設定されたスロットルがあります。
これは運転席からエンジンのアイドリング回転数を調整するために装備されたもので、ワイヤーがキャブレターのリンケージに繋がっていて、引くことにより回転数を上げることが出来るようになっていました。
このスロットルノブにはTと刻印されています。
この装備はグロリアでも6気筒車(41D、41S、43A、41A、44P)にしか装備されていないものでした。
これはグランド専用のメッキのノブですが、スロットル用のTとなっているもの
因みにスイッチノブは全て同じデザインで、ワイパーはW、ルームランプはR、リヤデフォッガーはD、シガーーライターはCLなどと頭文字が各々刻印されたスイッチノブでした。
オプションのフォグランプスイッチはF、エアコンのスイッチはCCとなっていて、オプションのスイッチ関係はメータパネル下の追加パネル部分に取り付けられていることがほとんどです。
このスロットルですが、恐らくエアコン使用時にアイドリング回転数が落ちてエンストするのを防止する観点から採用されたのではないかと考えられます。
当時のエアコンは今のように自動的にアイドルアップするようにはなっていなかったようなので、エアコン使用時にはスロットルを引きエンジン回転数を上げていたのでと思います。
これは2型になるとオプション扱いになってしまうので、1型でも中期〜最終の限られた時期のみの装備です。
因みにこのスロットルだけでも速度の調節は出来るので、高速道路などでスロットルを一杯に引いておけば一定の速度で走行することが出来ますがこれで出せる速度は精々80キロどまりです。
クルマに詳しくない人にはクルーズコントロールだと言って騙すことも可能?でした。
しかし、ブレーキを踏んでも自動で解除するわけではないので、クルマが多い所で使用するのは極めて危険です(笑)
他にもステアリングホイールもS41D極初期はS40Dの1型と同じものですが、割と早い時期に変更されます。
ウインカーレバーも初期は先端にステアリングと同じ色の樹脂製部分がありますが、1型の途中から樹脂のない全て金属製のものになります。
細かい所では時計のノブが初期はメッキ仕上で途中から黒い樹脂に変更されていたりして、まるで間違い探しレベルで細かく違いがあります。
足回りやボディ構造など
足回りで一番有名なのはリアサスペンションのリーフスプリングが2枚から1枚へ減ったことでしょうか。
これはコストダウンと言うよりは足回りの軽量化の要素が大きいように思います。
1枚にしても乗り心地や操安性に悪影響が出ないという事で採用したと思われ、事実特に乗り心地で大きな差異は無いように思います。
とは言っても、じっくりと乗り比べたわけではないのであくまでも個人的な感想です。
しかし、実はLPG車(S40S-5791以降とS40TF)のみ 3枚リーフ なのはあまり知られていないのではないかと。
それ以外にデフやプロペラシャフトなどの部品番号もかなり変わってるので、2型になる際に相当細かい箇所まで見直しがあったという事でしょう。
他にはフロントのボールジョイントなどのグリスアップ箇所が減らされ、本来グリスアップする必要のある部分にはグリスカップが装着され給油の手間が軽減されています。
それ以外にも、1型と2型ではフロントの足回りの作りが変わっており、部品の互換性は一部を除いてありません。
そっくり入れ替えることは可能かもしれませんが、調べたわけではないので自信はありません。
フロントだけではなく、デフの吊り下げ方法なども変更があったりするので詳しい人でもすべては把握できていないかもしれないです。
あとこれはS44Pグランドのみの変更点ですが、2型になるとフロントブレーキはディスクブレーキへと変わります。
1型はドラムブレーキなのですがS40やS41とは違いオートアジャスター付きでしたので、ブレーキの隙間調整が基本不要でした。
なのでマスターシリンダーもグランドのみ2型になるとマスターバック付きとなっていますが、元々グランドはマスターシリンダーが当初からタンデムなので系統が違いますけどね。
電装系など
S41Dのスピードメーターは1型後期から製造メーカーが変わり、スピード警告の作りが変わりました。
1型(厳密には1型後期途中まで)ではメーターセンターにある速度表示を警告音を出したい数字(速度)に合わせると、その速度に達したときに警告音と共に警告ランプが点灯するというものでしたが、2型になるとメーター内の針を任意の速度位置へ合わせると警告音のなる方式へ変わりました。
この警告装置はスタンダード系には付いていない装備です。
・・・後のPA30グロリアも同じ方式だったはずです。
このメーターも1型途中までは最高速度が160までの表示で、後期は180になります。
180キロメーターに変わるのは恐らくグランドグロリア登場後です。
グランドは当初から180キロメーターでしたので部品共用化をしたのでしょう。
実は水温計なども初期と後期ではメータ表示のライン太さなどが違っていたりと細かなところも変更があるので違いを探すとキリが無いかもしれません。
このスピードメーターに関してはどうやら途中で交換された個体が存在します。
1型でも割と初期の方の車に後期のメーターが装着されているのを見たことがありますので、互換性はあるのかもしれません。
電装関係で大きな変更点としてはヒューズの数が全くかわり、1型ではわずか4本でしたが2型になって数量が倍以上増えました。
まあ、1型がそれで足りるのか?ってレベルで少なかったんで、この辺りは確実に進化した部分です。
それに伴い当然ワイヤーハーネスも別物です。
1型にはあったオプションで、2型になってから廃止されたものもあるのでそのあたりの配線は不要になったはずですが、逆にヒューズの数が増えたりしているのでそう言った部分が変わっていると思います。
まあ、それ以外の部分は流用可能かもしれませんが、ちゃんと検証していないので確証はありません。
この他にも部品の製作方法や材質の変更など違いは多岐にわたるので、私自身が把握しているのは恐らくそれらのうちの一部だけだと思います。
そういえば、ネジの規格がJISからISOに変わるのも2型に変わる時期と重なっているようです。
まだまだ細かすぎて伝えきれていないこともあろうかと思いますが、とりとめなく書いてしまったので今回はこの辺にて終わりにしたいと思います。
一応大まかに1型2型と分けて書いては見ましたが、部品だけで見ると分けられないことが多いです。
部品によっては1型途中から2型になるまで継続して使われている部品もありますし、逆に2型の後期から採用されてあまり見る機会のない部品と言うものも存在します。
なので厳密には部品の違いで見た場合には1型2型と言う分け方があまり意味をなさないかもしれません。
最後に
ここまで書いてふと思ったのですが、興味のない人が見ても恐らく1型2型の違いには気が付かないでしょう。
マイナーチェンジと言っても31系セドリックのように年式ごとにグリルの意匠が変更されたり、41系クラウンのようにテールライトのすぐ下にバックランプがぶら下がったような 所謂涙目 から、バックランプが四角い別体化されたものに変更というような分かりやすい部分は殆どありません。(今あげた例も興味が無ければまあ気が付かないでしょうね)
これら2台に比べると、グロリアの場合はデザイン的にも形を大きく変えるような変更は難しかったのかと個人的には思います。
しかし、それとは反対にS50系スカイラインは2型になった際にグリルの意匠とテールランプの形状がガラッと変わりましたね。
S50の2型はグリル形状が後のS57に繋がるデザインになり、テールランプも丸型から独特な四角い形状の 通称チューリップテール へと大きく変わりました。
それにしても、スカイラインの場合はS50系以前のS21系でも大掛かりなマイナーチェンジを行っているので、グロリアに比べてテコ入れが頻繁に行われていたように見えます。
しかし今回グロリアも見えない部分ではかなりの改良箇所があったということを知っていただけたのではないでしょうか。
巷ではコストダウンの事ばかり語られているようですが、1型よりもメンテナンスフリー化を進めていたり、信頼性の向上を図った改良も決して少なくなかったと個人的には思ってます。
なので外観の変更は確かに少なかったですが、S4系グロリアも蔑ろにされていたわけではないということですね?
寧ろ外観上はあれで完成の域に達していたということで結論付けても良いのかもしれません。
今回は以上です。
結局前編よりも長くなってしまいました。
ではまた
実際には現役に間に合わなかった世代ですが、旧型国電とともに大好きなんです。
それでも旧型国電で営業運転しているのを見れたのは辛うじて鶴見線のクモハ12くらいですけれど。
旧型客車は本当にギリギリでしたが、小学5年生の頃に東北本線の黒磯以北で乗ることが出来ました。
クルマに関しては、戦前はアレですが戦時中の軍用車は好きなんです・・・
最近は車が異常に高騰してますね。
ハコスカのGT-Rでさえ以前は500万なんてしませんでしたが、いつの間にか70年代後半〜80年代初めの車まで数百万円は当たり前になってしまいました(泣)
私も戦前型の旧型国電・客車・電機・蒸機など大好きです。
車は古過ぎて興味の対象ではないのも同じですね
鉄道好きとしては生まれてくるのが遅かったと思うのですが、旧型国電や客車には間に合ったのでまあ良かったかなと。
19才の息子と話をしていて「お父さんは国鉄時代を知ってるし、車好きとしては平成の黄金時代を生きてたじゃないか。羨ましい!俺なんかどっちも間に合わなかった」とボヤくので「今だったらまだ買える」と励ますと「高過ぎて買えないよ!どうして20年落ちのR34が300万円もするの?」と言い返されて返すべき言葉も見つからず…(笑)。
書き忘れましたが、自分も今の鉄道車両はつまらないですよ。
やはりこちらも1950年代から60年代位までが1番好きですね。
でも車と違うのは、戦前型の国電なんかも好きな所ですかね。
車の戦前型になると、ちょっと古過ぎて趣味の対象からは外れてしまうんですけどね〜
おはようございます
前編後編見ていただいたのですね。
後半は細かくなりすぎて上手くまとめられなくて読み難くなってしまいました。
中には思い違いもあるかもしれないので、参考程度に思って頂くと良いかと思います(笑)
あの時代は急激に技術が進歩して、自動車工業も日進月歩で進んでいた頃なので、プリンスに限らず各社常に改良を進めていて、それこそ毎年のように何かしらの変更が行われていましたね。
そんな時代の車だから趣味的にはとても面白いんですよね〜
個人的にはプリンス全般好きなんですが、やはりグロリアが1番好きです。
S41D解説の続きほんとよくまとめられていると思います。
外観上ではあまり変化がなかったように思ってましたが、内外とも細かく手が入れられていたことに驚きです。マイナーチェンジがコストダウンだけでなくよりメンテナンスフリーの方向になっているのも技術が日進月歩だったこの時代ならではのことでしょう。戦後20年足らずで世界的に誇れる高級車を生み出したプリンス自動車に敬意を表します。
しかし本当にカッコイイ車ですね。数年前にトヨタ博物館に行きましたが、帰って写真を見るとグロリアばかり(笑)、今の車にない美しいクロームメッキの各部品に気品と魅力を感じます。反対にステンレスやアルミ剥き出しでただ合理化一辺倒の今の鉄道車両に魅力を感じないのは私だけでしょうか?