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2017年10月13日

追っかける

おう、走ってどうした?

さっきスリにあったんだ

へぇ、町内一足が速いお前でも追いつかないのか?
スリはどっちに逃げたんだ?

後から追っかけてくる






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posted by 落語の世界 at 07:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小噺

2017年10月11日

二人癖

私に何か用って言うのは?

ご隠居さん知恵を借りようと思ってね

私はそんな知者ではないが何だな

私の友達の建具屋の半公を知っていましょう

あぁ建具屋の半次郎さん

えぇあいつは二言目にはつまらねぇ、つまらねぇって言うのが癖なんです。
聞いていて嫌な気分になるから、やめろって言ったんだ
そうしたら俺はいいけどお前にだって癖があるという
私は酒飲みでしょ
二言目には一杯飲めるって言うのが私の癖なんです。

お互いに評判の良くないからやめようじゃないかと
普通ではやまないから手拍子三つピタリとやめたんだ
新たにやったものは百円ずつの罰金と決めて来たんです。
あいつは落ち着いていてなかなか言いそうになんです。
先に取られるのは癪に障るんだ。
奴につまらないって言わせる工夫は御座いますかね

ほぉお、なかなか面白い事を言ってきたな
成程、ちょっといいことがある
その恰好では具合が悪い
汚いと言っては失礼だが仕事袢纏(はんてん)を裏返して手にちょっと糠を付けていく
これが道具だから忘れないように
それで向こうの半さんの家に慌ただしく行く

お前に話すのは初めてだが田舎に親類がある
そこから大根を百本ばかり送ってきた
これを漬け込んでしまおうと思うんだがあいにく一斗樽が無い醤油樽ばかりだ
百本って言っても細い大根でもかさがある
醤油樽なんてわずかなものだ、どう考えたってこれはつまらない

上手い事考えましたね
醤油樽に漬け込む、これはつまろうか?これはつまらない
誰だって言いますよ
どうも、ありがとうございます。
百円とれますので甘味は買ってきますのでお茶のご用意をお願いいたします。

宇治だけは私の方で用意いたしましょう
それではしっかりやっておいで


当人は大喜び。恰好はご隠居さんの言った通りにし、
手の先だけでは物足りないだろうと思い頭から糠を浴びてしまいました


おい居るか?

誰だ?
なんだ勝さんじゃないか

お前に話すの初めてなんだが田舎に親類がいる

へぇ永の付き合いだが田舎に親類がいるのは初めて聞いたよ

そうなんだよ、俺も初めて聞いた、、、って何か言うんじゃないよ
ここはトントンっていく所なんだからな
そこから大根を百本送ってよこしてきた

おぉしめたな
俺の所に半分くれ

黙って聞いてくれ
漬けようと思うんだがあいにく一斗樽がねぇ
醤油樽しかないんだが百本の大根がつまろうかな

何を言っているんだ。
考えてごらんよ
細い大根が百本って言ったらかさがある
醤油樽なんてわずかばかり、どう考えたって百本の大根はつ



この野郎上手く考えて来たな

どうだ?
つまろうか?

駄目だ

駄目だじゃ、、、
駄目なんだが、、、
つまろうか?

余るよ

余らないように上手く詰めるんだ

箍(たが)がはじけちゃう

百本だよ・・・

泣き面するな、ご苦労さん
お茶でも入れよう遊んでいきな
あ、お密や下駄を出してくれ

どっかに行くのか?

なに横町のうなぎ屋の開業式よ
伊勢六の若段に誘われてな
これから行ってくる

しめた一杯飲めるな

ありがとう

え?

飲めるって

あぁわわわ

もう言っちゃったよ

今のは五十円にまけてくれ

しみったれな事を言うな
約束だからな
下駄出さなくっても良いよ、行かないから

うなぎ屋で一杯・・・

嘘だよ

嘘?
ひどいよぉ今のは
大根が

もう駄目だよ
出直しておいで

さようなら


どこで間違えたんだ?


ただいま

おぉ早かったな
お茶の支度が出来ております

駄目なんだよ
お茶はいけないんです
トントントンって言ったんです
どうだつまろうか?って言ったら向こうがグズグズ言って
どう考えても百本の大根はつ・・・・って言ったきり後が出てこないんです。
駄目だって、余るって、うんと詰めたら箍がはじけるって、強情な野郎ですよ
それでどっかに行こうとしてますから、聞いたら若旦那と一緒にうなぎ屋に行くってもんだからしめた一杯飲めるって、、とられちゃった
とられたのを取り返したいんだ。
もう一つ考えて頂きたい

私も味方、身びいき
お前さんがとられてしまうとわしも残念だ
もう一つもしやと思って考えてはあるんだが
半さんは将棋は好きか?

将棋は三度の飯よりすきだ

それは好都合だ
お前さんは、、、
そうかまるっきり知らないでは困るがそれぐらい知っていれば大丈夫

将棋を指すのではない、詰め将棋だ
向こうに行くと悟られるから、半さんが来るのを待ちなさい
玄関に盤を置いて、並び方は私が教えてあげます。
手には金銀と歩三枚だ。他の駒を持っちゃいけないよ
二、三度声をかけられても黙っている
これは夢中になっている様子を相手に見せる
何をしているんだと聞くでしょう
王を都詰めにする詰め将棋、
雑誌の懸賞金に出ていたって言うと本当だと思うでしょう
お前に分かるはずがない貸なって必ず言うでしょう
向こうに盤と駒を貸して、暫くたってからつまろうか?って聞きなさい
本当は詰まないと言うが、口癖でつまらないと言うでしょう
好きなものには心奪われる
しっかりやっておいで

ありがとうございます。
今度は大丈夫でございます。
それと将棋盤を貸してください。

駒をなくさないようにな
並び方を教えてあげましょう


遅いな、まだ来ない
いつも来るんだけど何をしてるんだ?

おう勝さんいるか?
風呂に一緒に行こう

二、三度は聞こえないふり

なんか言ってるなぁ
居るんだろ?開けるぞ

表で怒鳴ってみっともねぇじゃねぇか
なんだ、盤に向かって珍しいな
詰め将棋か面白いな
何かに出ていたのか?

これはね雑誌に出ていた懸賞金付きなんだ

どこに駒を打つの
あぁ駄目だよそんな所は
お前には一生考えても分からないよ
ちょっと貸しなよ

あぁっと、そうだなぁ

つまろうかね

まだ考えてもいないんだよ
馬鹿だな


えっとここに打つとこう逃げて

どうだ、ここに金が効いている

こう打つと

つまろうかね?

えっとここにこう打つと




つまろうか?

うぅ〜〜ん

唸ってる
もう一息だな
つまろうかね?

これは駄目だ
俺にはつまらねぇ

言いやがった!!

飛びかかって来やがった
待ってくれ、俺が一生懸命考えていたら・・・
上手い!これは駒が取れない
へぇよほど将棋の上手い人が考えたんだな
お前の考えじゃないな、誰の考えにしろ敵ながらあっぱれだ
金銀歩三枚で王を都詰めとはなぁ

おい百円、百円くれよ

逃げも隠れもしないよ
良く出来てるなぁ
決めは百円だな

百円だ

あんまりにも出来がいい
二百円やろうかな

二百円!
ありがたい一杯飲める

おっと、差し引いとくよ





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posted by 落語の世界 at 06:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 落語

2017年10月09日

一眼国

おはようございます

おう、おはよう

どうも昨晩は厄介になりまして有難うございます。

なぁに、またこっちに来たらね六部さん泊めるよ
私はさんざん親に不幸をさせたからお前さん方の面倒を見るんだよ
来たら泊まってご飯でも食べて行っておくれ

どうも有難うございます。

しかし六部さんは方々歩いているから珍しい者を見やしないかね
私の方見世物をやっていてね
でも最近のお客は見世物が見慣れてしまって刺激が足りないんだ

左様でございますな
あまり在りませんなぁ

なんか無いかな
私はね、ネタが欲しいんだ
こういう者が在るって聞いたらそこに行って人間を買って来て
動物でもいいんだ
足がないのに駆け出すとか、臍でものを食べるとか
変わってれば見世物になるんだよ

さぁあまりそういう者はみませんな

方々歩いているんだから何か無いのか

ありませんなぁ

お前だってうちに泊まるんじゃないか
私の方はお前を泊める義理は無いよ
けどうちに泊めるんだから

そう言われましても

そうか無ければしょうがないね
え?あぁお茶なんか入れなくってもいいよ
御飯もいいんだ帰ってもらうんだから

そう御腹立ちでは困ります
そう言えばこんなことが御座いましてな

どんなこと?

ちょっと凄いことで

そうかい
お茶を早く入れな
御飯はまだ用意できないのか?
どういう事なんだい?

私が江戸から東へ三日ばかり参りまして日が暮れてしまい
宿をとることが出来ないと思って居りました
ある森の中へ入って一服吸って居ましたら後ろの方から
「おじさん、おじさん」と声がしました
何だろうと思ってひょいっと振り返ってみますと五歳か六歳くらいの女の子
傍にかけて来たからかわいい子だなと思い顔を見ますと
一つ眼なんです
真ん中に眼が一つしかない

私はゾォーっとしましてそこを夢中になって駆け出してようやく町に出まして
宿を取りましたが当分の間は一つ眼の女の子の顔が眼に焼き付いて離れなかった
寝てもうなされてしまう始末でして

おぉ!!一つ眼か!良いね!
見世物にするといい金になるな
江戸から東へ三日行くと森になるのか

ちょっと幾らか包んでこの六部さんへお渡しな
またこっちに来たら寄んなさいよ
いつでも世話しますからね


支度をしまして六部さんが言った通り江戸から東へ東へ三日ばかり歩きましたが
一つ眼の子供に出会わない


あの六部のやろう
人が怒ったものだから出鱈眼を言いやがったな
三日も歩いたのに全然合わないじゃないか
あぁ損したな


あれ、あそこに森が在る


おじさん、、、おじさん

振り返ってみると五歳か六歳くらいの女の子がいました
良く顔を見ると眼が一つしかない
あっ!っと思い飛びついて駆け出すと
女の子が声の限り泣き出した
急いで駆け出すとブーっと法螺の音がする
お百姓たちは鍬(くわ)をもって「この人さらいめ!!!」

道が不案内であっという間につかまってしまった

不定野郎だ!こん畜生め!

ぼこぼこにされた挙句縛られてしまった
奉行所にて調べという事になる

おい、その方は小国はどこだ?
貴様はなぜ子供を黙ってさらう
さらわれた親の心配は一通りではない
子供が欲しいなら親に訳を言ってもらわないんだ
不届き至極な奴め

申し訳ございません


顔を上げて見たらお奉行は一つ眼

(おや、お奉行だけでなくまわりの家来もみんな一つ眼だ
一つ眼ばかりだな、、一つ眼の国だ)

面を上げろ

へい


うん??!!
こやつは眼が二つある!
おい眼が二つあるぞ!みんな見ろ!珍しいな
余りに珍しいから調べは後回しにしてこの方を見世物にだそう






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posted by 落語の世界 at 05:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 落語

2017年10月08日

手と足の喧嘩

手と足が喧嘩というお話があります


おい手!

なんだい足

いま表を歩いてきてお前より俺の方がぐっと疲れている
家に帰って座るとたんに俺の上に乗ってくるってどういう了見だ!
置き場を変えろ!

あはははは!
生意気言うな手と足では貫録が違う
人様に物を上げるときだって貰うときだって手で貰ったりやったりする
足じゃできめい!
神仏を拝むときだって手で拝むんだ足で拝んでみろ罰が当たる
そんな身の程を知らないことを言ってると力を入れて押すぞ!

押さなくたっていいよ・・・

押したからってどうしたんだ

バシッ!!


おっ殴ったな!覚えてろよ!!

しょせん足だ!
何もできめい!!

今度風呂に入ったらその手で俺を洗わせてやる!





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posted by 落語の世界 at 11:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小噺

2017年09月28日

目黒のサンマ

これ金弥、金弥を居らぬか

お呼びで御座いますか?

うむ今日は良い天気であるな

はっ、秋晴れとはこの事か存じます

かような上天気の折に屋敷内居っては誠に無粋である
何処ぞに出かけようと思うがどうじゃ?

はっ、それは誠に結構で御座います。

遠乗りを致そう

はっ、遠乗りは武術鍛錬の為にも誠に宜しい事で御座います。

うむ、いずれに参ろうかのう

下屋敷にもほど遠からぬ目黒あたりが如何かと心得まするが

おぉ目黒、以前も参ったことがあった
良いところじゃ
然らば目黒に参ろう
馬を引け!

はっ

ひらり馬上の人となりますとパッパカパッパカ
殿様が出かけたと聞いて家臣がそれはいけないと急いで追いかけていく


遠乗りも疲れるものだなぁ

遅れて家臣団も追いつくと

その方たちに尋ねるが戦場にて馬を射られてらどうする?

はっ、その場合は徒歩にて戦います

うむ
足は鍛えておかなければいけないぞ

御意に御座います。

向こうを見ろ、小高い丘がある
あそこの上に松の木が在るから、その方どもとかけ比べする
いいか?後れを取るなよ

家来も畏まって御座候
駄々っ子を遊ばせているようなもので
しかし中には要領が良くないものがお殿様の前に出ようとすると


これ、なぜ余の前に出る

は?いえ、駆け比べでして

たわけ者、家来が主人の前に出るやつがおるか
控えておれ!

これでは前に出ることが出来ない

やはりその方は余にはかなわないな

恐れ入りました。

空腹を覚えた
弁当をこれにもて

恐れながら火急な為、弁当を持参しておりません

そうか・・・
弁当は無い・・・
左様か
左様であるか・・・

なぜ弁当を持ってこないんだと言うと家臣の中から責任を取るものが出てくる
小さいころからそのような事を言ってはいけませんよと教えられております。
我慢をしたのですが余計にお腹がすいてくる
主従で松の根方に腰を下ろして秋の空をぼんやりと眺めている
空に鳶が飛んでいるのを見て

これ金弥、あの鳥は弁当を食したのであろうか?

御いたわしい、御いたわしゅう御座います。

主従でがっかりしていると少し離れた農家でサンマを焼いている
ちょうど時期ですから脂がのったサンマ、匂いと煙がすごい
お殿様の鼻に入って


これ金弥この異なる匂いは何じゃ?

異なる香り?
あ、サンマで御座います

サンマとは何じゃ?

下魚でして高貴なお方が口には合いません

黙れ!何を言っておる
いったん戦場に出てこれは食べれる、これは食せんなどと言っておられるか
サンマをこれへ
苦しゅうない目通り許す

家来者達も匂いを頼りに農家を見つけ出して

おぉ焼いておるな

申し訳ございません
すぐに消しますので

消さなくてよい
どのくらいあるかな?
殿のがサンマを召したい

そうでございましたか
町に出ましたら安く売っておりましたので二十匹御座います

悪いな全てくれ、飯はどうだ?
一升炊いておるか
そうかそれもそっくり頂こう
これは少ないがお礼だ

いやぁ、小判なんぞ出されましてもお釣りが

みんなその方にやる

そう致しましたらもう一遍、町に出ましてサンマを・・・

いやいやこれだけで十分だ

農家の人も喜びまして、焼きたてのサンマをふちの欠けたお皿に乗っけまして、
大根おろしをつけて悪い醤油では御座いますがジューッとかけましてお殿様の前へ

金弥、これは食して大事ないか?

天下に美味で御座いますぞ

左様か

もぐもぐ


もぐもぐ

これは美味である!!!!!


美味しいでしょうね
運動してお腹がすいているなか、焼きたての脂がのったサンマを初めて食べたんですからまずい訳がない

代わりを持て!

二十匹のサンマを全て食してしまった

あぁ、美味であったぞ
その方たちには骨をつかわす
金弥、余はかように美味しい魚があることを存ぜぬであった
館に帰ったら三度三度サンマを食す

恐れながら申し上げます。
ここでサンマを食したことはご内聞に御座います。

余がサンマを食したらいかんのか?

サンマは下魚
もし館にてサンマを食したと知られたら責任を取るものが御座います。

そうか、その方たちに迷惑をかけるのであるならば余は口外致さん


ご機嫌麗しく帰ってくると、あぁサンマは旨かったなと思う
しゃべってもいけないと言われると寝ても覚めてもサンマ


これ金弥、また目黒に行きたいの

目黒は風光明媚な所にて

風光はどうでもよい
あの時食した、長やかなる、黒い魚

ご内聞に御座います。

分かっておる。余は口外致さん
サンマの事は言わん!



四、五日経ってからお客様として親類方においでになった
御大名はそんな生活をしておりますから楽しみはお料理のご注文
お殿様も知っておりますのでその日が来るのを指折り数えておりした。
当日になるとそわそわしております。

恐れながらお料理の御名を承りたく

余はサンマであるぞ

はっ



お客様のお料理をサンマだと

お殿様がサンマを知っているわけない

いやでも、サンマと言っていました。

お前は粗忽だから聞き間違えたのであろう
もう一回聞いて参れ


恐れながらお料理の御名をもう今一度

分からぬ奴だな、サンマだ
黒き長やかき魚であるぞ

はっ


聞いて参りました。
やはりサンマで御座いました。
黒き長やかき魚とおっしゃっておりましたので間違いありません

へぇ、どこでサンマを・・・
用意していない、まぁそうであろうな
直ぐに仕入れて参れ!

早馬で当時の日本橋にあります魚河岸で極上のサンマを仕入れて参りました。
しかしこんな脂ののったサンマを出してお殿様の体に障ったらどうする?
首になるかな?
脂を抜いてしまえっと言うことで蒸器にかけて脂を全て抜いてしまった
ばっさばっさのサンマの出来上がり
また小骨が在りますので、目のいい職人が毛抜きで一本一本抜いた
だらしのないぐちゃぐちゃのサンマになってしまった
焼く訳にはいかないからお椀に入れて出した
お殿様の方は目黒で食べたサンマを思い描いておりましたところにお椀が出てきた


これ、これはサンマか?

御意。サンマで御座います。


蓋を取るとかすかにサンマの香り

おぉサンマである
そちも堅固で何よりである

もぐもぐ


これ即答を許す
このサンマは何処で仕入れた?

日本橋の魚河岸で御座います。

魚河岸、、それはいかん
サンマは目黒に限るぞ





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posted by 落語の世界 at 06:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 落語

2017年09月25日

つかさ

ごく昔は字を知らない無筆の人が多くいました
ちょっと知っていただけで学者で御座います。

ちょっと教えてもらいたいんだけど
「つかさ」って字が分からないんだ

あぁそんなこと俺に聞いても分からん
魚屋の大将に聞いてみろ
あいつは中々の学者だ


魚屋のおやっさん

なんじゃい

ちょっと字を教えてもらいたんだけど

どんな字だ

「つかさ」という字が分からないんだ

つかさ、、、あぁ司(つかさ)か
それは「同じ」という字を二枚に下ろして骨付きの方だ


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posted by 落語の世界 at 07:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小噺

2017年09月18日

貸した羽織

あいつ置手紙をしていったって?

そうよ
あなたが留守って言ったら手紙を読んでくれるようにって

この頃ちょっと字を書けるようになったからって生意気に置手紙って
ミミズがのたくったような字を書いて
えぇ「借りた羽織は七(しち)に置いた」
・・・何をさらすんだ
三日だけって言うから貸してやったのに黙って質に置くなんて!


そう言っていると

おう、手紙読んでくれたか?

お前か!
三日だけって言うから羽織を貸してやったのに
黙って質に置くとは

そんな事するか
お前が留守って言うからそこのたなの上に置いておいたんだ

あぁ本当だ、在った
でもなお前、借りた羽織は七に置いたって書いてあるぞ

お前は字を知らんな
それは七夕(たなばた)の「たな」っという字だ





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posted by 落語の世界 at 07:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小噺

2017年09月17日

高野違い(こうやちがい)


八っつぁんしばらくだな

いえ、ごぶさたしちゃってね

どうしなすったよ
お前はお職人衆、あたしは隠居の身だ
気が合うってというのは不思議だな
まぁゆっくり遊んでおくれよ
今お茶でも淹れましょう

いえいえお構いなく

いいじゃないかお茶ぐらい

お茶ぐらいったって
火を沸かして湯を沸かして茶の葉っぱを入れないといけないよ
そう手数をかけちゃ悪いよ
冷やで飲めますよ酒のほうが

面白いことを言う人だ
そうそう、今度来ておくれ一杯ご馳走しようと言ったきり
お前さん留守に来て下さったそうで借りがある
お酒を今日は出そう

へぇありがとうございます
そういえば、いま横町の床屋で隠居さんの噂をしていたんですよ

あたしの噂・・・
どうせ人の噂だからろくな事じゃないだろ

それがろくな事

なんだい?ろくな事ってのは?

隠居さんって商売は良い商売だってね
あんな柔らかい着物を着て大きな家に住みうまいものを食べて
実に幸せで

ちょいと待っておくれよ
隠居の後に商売って言うのがおかしいじゃないか
隠居とは文字にすると隠れ居ると書いて隠居だ

へぇそうですかね

あたしに一人の娘がいるんだ

お前さん産んだのかい?

あたしが産んだんじゃない

おばぁさんが産んだんだ

あのばぁさんが!

今じゃないよ!

あぁそれ聞いて安心したよ
女かい?

娘だから女だよ

それでどうしたんです

片づけたんだ

邪魔だから茶箪笥のほうに

いえ、縁づけたんだよ

足の裏でぐしゃりと

それは踏んづけただよ
嫁にやったんだ
そっから月々分米が来る

いいねぇ
ぶんまいってなんです?

分ける米と書いて分米だ

へぇ分けない米はやるまいだ

やるまいってもんは無い

いいなぁ
俺も隠居しようかなぁ

どっか掛かる所があるのか

隠居さんと一緒にここで

あたしはいやだよ

大変散らかってますね

孫娘がな学校で古今集を習うんでね
百人一首を出してくれって言ったのに
出したら見もしないでどっかに遊びに行ってしまった

見せてもらってもようございますか

こっちに本になったものがあるから
札を見るより本をご覧

そうですか見せてください
これなんですか

百人一首だよ

いくら月給取るんです

なに

役人衆

役人衆じゃない
百人一つの首と書いてある

あぁ労働問題ですね
百人で一人くらいの首はしょうがない

なにを言うんだよ
百人が一首ずつ歌を詠んだんだ

素人喉自慢大会ですね

分からない人だなぁ

和歌だよ

あぁ馬鹿

さんじゅういちもじ、みそひともじ(三十一文字)

のどが渇くだろうね
三十一匁(もんめ)の味噌をひとなめにするって

どこまで間違うんだよ
本をご覧よ

これですか
へぇなるほど軽業ですね

軽業??

へぇ冠かぶったやつがひょっとこ立ちして
畳を足で持ち上げてるじゃないですか

本が逆さまだよ

あ゛ぁそうか、どうりで変だと思ったんだ
天神様すりこぎの中落ちを持ってますね

天神様じゃない天智天皇様だ
「秋の田のかりほの庵の苫をあらみ我が衣手は露にぬれつつ」

へぇすりこぎの中落ち持ってるじゃないか

すりこぎ中落ちとはうまい見立てだな
蘭(あららぎ)でこしらえた胸に当てているのは笏(しゃく)だ

昔の人はうまいねぇ胸にあるから癪(しゃく)だ
腰にあれば疝気だ

疝気ってのは無い

あっここに女がいました

それが名代の小野小町と言う人だ
「花の色は移りにけりないたづらに我が身世にふるながめせしまに」

こまっちゃんですか

こまっちゃんって知ってるのかい

へぇ噂には聞いていますがあったことがないです

誰があう奴がいるか

小野小町って良い女だったんですってね

古今稀なる美女だ

雨ふりを傘なしで歩いたな

なにが

びっしょ

びっしょじゃない美しい女で美女だよ

あぁ良い女は、悪い女は?

悪女だ

悪い女は悪女
おたくのおばぁさんは美女ですか悪女ですか?

そんなこと言うんじゃないよ

美女じゃないでしょ悪女でしょ

そんなこと言うとおばぁさんが怒るよ

怒ったって悪女だよ
いいかげんあくじょ〜しろ

何をいうんだい

小野小町は良い女だけどいろんなこと言うじゃないか
良い女で何でもできたら口説いた奴が大勢いるでしょ

あぁ

当ててみましょうか・・・建具屋の半公でしょ
あのくらい女を口説くやつはいない

時代が違うよ
深草少将(ふかくさのしょうしょう)という人だ

へぇうまくいかなったろ

よくわかるな

名前がよくねぇ
少々不覚だって

何を言う

いやだわよぉ〜って言って引っ叩かれた

そんなはしたない事はしないよ
小野小町のお母さんが亡くなって百日経たない
百日のものが取れるまで待ってくれって言ったな
「忘れずの元の情の千尋なる深き思いを海にたとへむ」
というお歌をそえてやった
雨の夜、霜の夜、雪の夜もいとわず小町のもとへ通う
世に言う「少将百夜(ももよ)通い」と言うのはこれだ

なぁ〜るほど汗臭いから桃湯に入ってこいってんですね

そうじゃない
百の夜と書いて百夜

五十湯が菖蒲湯、三十湯が柚子湯

湯屋の話じゃない

それでどうなりましたか?

九十九夜目に大雪のために凍えてお亡くなり
「恋しなんみはいとわねど後の世の罪つむ君の身こそ悲しき」
という呪いがましい歌を詠んで亡くなった
果せるかな小野小町という人は終わりが良くなかったな
旅の途中で行き倒れ小町となりお亡くなりになった

ざっまぁ〜みやがれって言いたいね!!
いくら女が良い女でもツーンとしてお高くとまっちゃ行けねぇ
だいたい九十九晩通ったんだから一晩くらい良いじゃねぇか

たいへん怒るな

えぇ通ってうまくいかなかったっていうと思い当たることがあるんです

おまえさんが
色っぽいじゃないか

いや綾瀬川に鯉を釣りに行ったんですよ
ひと月も通って一匹も釣れない

何を言ってる
お前のはお魚の鯉、少将は色恋

こいに上下の隔てがない

なさすぎだよ

おもしろいね
ここにいる女はなんです

赤染衛門(あかぞめえもん)
「やすらはで寝なましものをさ夜ふけてかたぶくまでの月を見しかな」

あ、ここにも女がいました

周防内侍(すおうのないし)
「春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなく立たむ名こそ惜しけれ」

へぇ〜、いたいた!この女はなんです

右近(うこん)だよ
「忘すらるる身をば思はず誓ひてし人の命の惜しくもあるかな」

あとは男だ・・・・あっいたここに女がいました

お待ちよ
男を飛ばして女ばかり探してるじゃないか

おれは男は嫌いなんだよ
この女はなんです

紫式部(むらさきしきぶ)
「めぐり逢ひて見しやそれともわかぬ間に雲隠れにし夜半の月かな」
恋人を月にたとえて詠んだ歌だ

やっぱり年増は色っぽいね
いい都々逸だ

都々逸じゃない

これはなんです
変な恰好してるいろんなの

源五十四帖、桐壺にはじまり夢の浮橋に終わるんだ

へぇ面白いな
この人はなんですか

太田道灌(おおたどうかん)
「急がずば濡れざらましを旅人の後より晴るる野路の村雨」

こっちはんなんですか
鳥籠から雀が逃げ出してますね
ほうきがおったてて、流れの所に坊さんが立っているじゃないか

六玉川だよ

六玉川?

玉川っていう川の名前が日本に六つある
山城国の井出の玉川
近江国の野路の玉川
武蔵国の調布の玉川
摂津国の卯の花の玉川
陸奥国の野田の玉川
紀伊国の高野の玉川

一番お終いに言った高野の玉川は
高野の毒水と言って弘法様のお戒めの歌がある
「忘れても汲みやしつらん旅人の高野(こうや)の奥の玉川の水」

ちょっと待って下さいよ
前に赤染があって蘇芳(=周防)があって鬱金(=右近)があって紫があるだろ
そしてここに紺屋(こうや)があるじゃないか
ここで染めているんですね

染物屋の紺屋じゃないよ

うちの親方は大和からねこうやに行くんだよ
知らねぇで毒水を飲むといけないから注意してくらぁ

お前さんの親方ならこれくらい知っているだろう
それに今じゃない昔の話だ

それでも良いんです
親方は俺の顔を見ると「わからずや、わからずや〜」って
悔しくってしょうがないから年増の歌なんか並べて感心させてきます!





居るかね親方

誰だね
あぁわからずやか

大和からこうやに行くって言うじゃないか

行ってくるから留守を頼むぞ

行ってもいいけど飲んじゃいけませんよ

酒か?

酒じゃない水だ

のどが乾けば水ぐらい飲むだろ
そ〜こが素人の浅ましさ!
毒水だから飲んじゃいけねぇって弘法様のお戒めの歌があるじゃねぇか

なんて言うんだ?

なんて言うんだって・・・・思い出せ

お前が思い出すんだよ
忘れたな

あっ「忘れても・・」

変なところで思い出したな

「忘れても汲みやしつらん旅人の」さ

偉いえらい後は

「あとより晴るる野路の村雨」??

何を言うんだよ
それじゃ歌が二つくっついてるじゃないか
後はこう言うんだ「高野(たかの)の奥の玉川の水」だ

そうだ!
たかの奥の・・・いや「たかの」じゃない「こうやの奥の」だ

だからお前は馬鹿なんだよ
高野(こうや)と書いて「たかの」、「たかの」と書いて「こうや」と読ませる
音と訓の違いだよ「こうや」と読むと仏説になるから「たかの」ってんだ

俺が字を知らないと思って誤魔化そうったってそうはいかない
年増の女がついてるんだ

お連れさんか
中に入ってもらいなさい

そうじゃないんです色っぽい都々逸だぜ
「めぐり逢ひて見しやそれともわかぬ間に雲隠れにし夜半の月かな」ってどうだい

えらい!
誰が詠んだ歌だい?

あの赤・・いや鬱金・・・・
あっ鳶色式部だ

何を言ってるんだ紫式部だろ

おっとっとそこだ!
紫(むらさき)と書いて「とびいろ」、「とびいろ」と書いて「むらさき」
音と訓の違いだよ「むらさき」と読むと仏説になる

なにが仏説になるだ
紫と鳶色じゃ色が違うよ

色が・・違う訳だ
先の紺屋(=高野)が違ってたから



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2017年09月07日

夏泥(なつどろ)

こそ泥棒が仕事にあぶれてしまい、こういう長屋に入ってみよう
仕事が無かったら、このままここを通り過ぎてしまおう
時間は夜の十時過ぎになります。しかし行き止まりになってしまいしょうがない
後を戻ってきてちょっと脇を見ると一軒雨戸が開いており蚊いぶししております。
この蚊いぶしがぼぉっと燃え上がってしまいました


危ねぇなまったくな、誰も居ないのかな?
ひどく汚い家だな・・・
消しといてやるか
こんな明かりもつけずにな

でもこんな小汚い家でも小銭ぐらいはあるよ
廊下じゃなくって玄関にぼろっ布に包んで置いてある
誰か居そうだな・・・
蚊いぶしをしたまま寝てしまってるんだ

おい!起きろ

あぁうん、、、え、あれ?誰だい?
見慣れない人だな
ずいぶん大きい人だな

何言ってやがるんだ
お前は寝て見ているから大きく見えるんだろ

それもそうだ
誰だお前さんは?

分かってるだろ
夜、夜中に黙って他所の家に上がっているなら泥棒に決まっているだろ

あ、泥棒か・・・
安心した

なんで泥棒が入って安心するんだ?
盗人だぞ!!

馬鹿だなこいつは
近所があるのに大きな声出しやがって新米か
泥棒や盗人は親孝行と違うんだぞ

さあ出せ
有り金を残らず出せよ

有り金?
そんなもの無いよ

嘘を付け
考えてみろ

本当に無いんだよ

俺がな、ここに入ってこなかったら蚊やぶしがぼうっと燃え出して
消してやらなかったらこの家は火事になっていたところだ
お前も焼け死んでいたかもしれない
俺は命の恩人だ

こんな家は燃えてもいいんだよ
どうせ借家だからな

お前も死んじゃうんだぞ

良いよ別に死んだって
よしんば逃げようと思えば体一つあれば飛び出せば済むことだ

何言ってやがるんだ
在るの無いの言っていたら二尺八寸の段平物、伊達に腰に差しちゃいないんだぞ
てめぇの横っ腹にお見舞い申すぞ!

うん、薄暗くってよく分からないが、腰には何も差さってはいないように見えるがな

今日は忘れてきた

忘れてきたらしょうがねぇじゃねぇか

良いから金を出せ

分からない人だな
もっとも分かっていたらこんな所に入ってこないよな

幾らかはあるだろ

昨日の明け方まで五円あったんだが、

盗られたのか?

まあ、ね。
おとといの晩から博打を始めてな
すっかり取られちまった

気の利かないくせに博打なんかしやがて
何か出せよ
金が無かったら商売道具が在るだろ

そんなものありはしない
俺は土方なんだから、道具も親方の家にあるし

本当に無いのか?
しょうがないな

雨ばっかり降っていて仕事も出られない
水ばかり飲んでいて腹が減っているんだ
まぁお前も縁が在って俺の所に入って来たんだからゆっくりしていきなよ

お前の商売も大変だな
でも元が無くっていいよな
力もいらないしよ
おい、どうだい?俺も弟子にしてくれないかな

馬鹿にするなよ

どうだろう、こうやって縁あって来たんだから
俺に三十銭貸してくれないかな?

何言ってやがるんだ

いや、くれって言ってるわけじゃない、貸して欲しいんだよ
そうすれば米でもなんでも買ってな
お粥を食べて力も尽くし仕事にも出られようと思うんだよ
わずか三十銭だよ
可哀想だと思ってさ

何言ってやがるんだよ
泥棒に可哀想もへったくれも無い

頼むよ

駄目だ

どうしてもくれないと言うんだな
良いんだよ

おい、どこに行くんだよ

路地の木戸を閉めて、鍵をかけちゃうんだよ
そして大きな声で「泥棒!!!」と叫んじゃうからな
長屋三十六軒あるんだ。土方もいれば相撲取りもいる
腕っぷしの強いのがいくらもいるんだ
お前が暴れてもな、押さえつけて警察にしょっ引いてやる

脅かすなよ

分けないんだ
叫べばいいんだから

悪い野郎だな
・・・良いよ。やるよ
ほら三十銭

あぁ助かった
米と薪を買って、、、あとおかず代をもう二十銭ほど貸して

それでいいだろ

お前の方で決めるなよ
いくら土方でも米だけでは食べられないよ
駄目かい?良いんだよ別に。泥棒って怒鳴ればいいんだからね

ちょ、ちょっと、待て待て、肝心なところに来ると脅かしにかかる
いいよやるよ、ほら
えらい所に入ったなぁ

すまねぇな、ありがとう
これでおかずも食べれて明日仕事にも出られる
本当に親戚みたいだな。これから親戚付き合いなんか

何言ってやがるんだ

あぁ!そうだ俺は裸なんだよ
もも引きや袢纏は質に入っているんだよ
それを出さないと仕事にも行けない

そんなの知るものか

ここまで来たんだから、ちゃんと面倒見てくれないとな
あと三十銭貸してくれないかな?
駄目なのか?駄目なら良いんだよ
叫んで・・・

分かったよ!やるよ!

これで仕事に出られる
これからちょいちょいと来てね
来てくれたらこの金返すから、、って言っても
苦しかったらまた借りるかもしれないけど
助かったよ

俺は行くからな
大きな声を出すなよ

大きな声なんか出さないよ
お前が大きな仕事をして捕まらないように俺は神仏に拝んどくからよ

じゃいいな

大丈夫だよ、心配するなよ
きょろきょろするなよ
気を付けてな

おいおい!!

この野郎大きな声を出すなよ

分かっていると思うけどな木戸を出て右に行くなよ
角に交番が在るからな
だから左に行ってすぐに裏道に入っちゃえよ
気を付けろよ


ありがたいな
これだけあればな三、四日はつながるよ
あれ?こんな所に煙草入れを落っことしてやがる
新米だな
おれは煙草は吸わないしな、
屑屋に売るのもなぁこれだけ貰って悪いしな
これだけは返してやるか
すぐに追いつくだろう





足の速い野郎だな
あっ居た!

おいおい!!!
おーい!!
待って、そこの、この・・・
泥棒!!!!

ふざけんなこの野郎
てめぇに銭をやったじゃねぇか
泥棒って言い草が在るか!

勘弁してくれ、お前の名前が分からないからよ





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posted by 落語の世界 at 07:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | 落語

2017年09月05日

喧嘩長屋(けんかながや)


昔から「女房の焼くほど亭主もてもせず」という川柳がございます。
川柳とはうまいこと言ったもので、またその通りですね
家で奥様が、夫のことを心配するほど男というものはもてはしないんです。


おい、帰ったで

なに??!!
今帰った??!!
二時間も三時間も前に帰ってこなきゃいけないのに
今まで何処をうろついてたんだ!
このあんけらそが!!!(このあほたれ!!)


こう言われたら(あぁまたうちの嫁の悪い病気が始まった)
と済むんですが男のほうもそう機嫌が良い日ばかりじゃない
朝は満員電車で揺られ、会社に勤める、一生懸命に働いて
残業までして帰ってきたらいきなり「あんけらそが!!!」って言われたら
かぁっ!!!!となって


おれは残業してるんじゃ!


この言葉が終わらないうちに、先ほど用意していた道具がばぁーっと飛んでくる!
これが早いのなんの!夢の超特急より早くって言うくらい
こんなのが向こう脛に当たったら痛いのなんの・・・


このガキ!!亭主に何しやがるんだ!


言うが早く男も気が荒く拳骨をばんばん!!
そこで嫁さんも「うちが悪いございました」と
謝れば事は大きくならずに済むものをこの女が中々歌いよらん


叩いたな?!
叩け!叩け!!叩け!!!!
女子叩くのも、犬猫叩くのも同じこっちゃ!!
いっその事殺しやがれ!!!!!!!!!!!!

殺してしまうわ!!!

殺しやがれ!!!

殺してやるわ!!!

殺しやがれ!!!

殺してやるわ!!!


これを聞いた隣が災難ですな。。。
生かす殺す言っているのを黙ってみている訳にはいかず
一人か二人は仲裁に入らないといけない・・・。
しかし仲裁に入った人が災難ですな

ちょうど通りかかったのが家主さん


ちょ、ちょっと待った!
痛たたたた、、何をすんねん
これ、佐久さんもお松さんも待ちっちゅうねん!
わしの頭をど突いてどないすんねん
まっまぁ振り上げている手を降ろし、まぁ手を降ろし!

降ろし降ろしってあんたが突き上げとんのや

あぁそうかいな
待ちなはれ待ちなはれ、わしが中に入ったんじゃ
一体どないしたちゅうんじゃ

このガキはほげた(口答え)の偉いガキやで
今日はな、そのほげたの叩売りを叩き伸ばしてやる

叩き伸ばす?!抜かしやがったなほんまに!
お前らみたいにな女遊びして骨の髄まで腐っている人間と人間が違うんじゃ

女遊び?!
女遊びしよう何しようとほっとけ!
男の甲斐性やほっとけ!

男の甲斐性ぬかしやがったな!
甲斐性ってそんなもんあるか?
そうやないか、今日は芝居、明日は遊山と好き候にさせておいて
それからやるのが男の甲斐性やないか!
女に手仕事させてそれが男の甲斐性かい?!

手仕事ぬかすな!
手仕事、手仕事ってなんぼ程の銭儲けている
家賃にも程足らん、はした銭儲けやがって!

家賃にも足らんはした銭でも儲けなんだら
やっていけんのは誰の為じゃほんまに!
お前らなぁ女遊びするんだったらな雌の後でも追いかけて行け!

このガキャ!亭主を犬と同じように扱いやがったらな!

まっ、まぁ待ちなはれ!待ちなはれ!
そうお前はんら二人がな、わちゃわちゃわちゃわちゃしたら
わしが中に入んがなんのこちゃ分からんやないか。
わしが中に入ったんじゃ、任しなはれ話は順番に聞こうやないか

お松さん、あんたから話してみはれ
どないしったちゅうんじゃ?

まぁ!家主さんかいな
毎度すいまへんな・・・

もう帰ってくるか、帰ってくるかって
二時間も三時間も前から待ってまんねんやないか
一向に帰ってきまへんの
聞いたら女遊びしてまんの
そんな事しやがったなって言うたらな
「男の甲斐性やほっとけ」って言いまっけどな
男の甲斐性って言うたら、そんなもんおまへんやないか?

今日は芝居、明日は遊山と好き候にさせておいて
それからするのが男の甲斐性おまへんか?
わいは毎日手仕事してまんの
その金持ち出して女遊びするなんて
これが男の甲斐性って言えまんのか家主さん!!

う〜ん、、なるほどな
いやいや、そうか分かった
お松さんが言うのが本当なら、これはがいかんな
よしよし、わしが安生話をしよう

佐久さん、これはお前さんが分が悪そうだな。わしの話を聞きなはれや
お松さんは口は達者や、また手も達者
口八丁手八丁ってお松さんのこと言うんね
こんな貧乏所帯をしてたらこういう女子じゃなかったら
所帯の切り回しはしていけん

それなのにお前は今何言うた?
「家賃にも足らんようなはした銭儲けやがって」ってこれはえげつないやないか
家賃にでも足らんはした銭でも、儲けて所帯の足しにしようという気持ちを汲んだやらんといかん
それなのにそれを持ち出して女遊びするなんていかんな
これはど〜もお前が分が悪い
いやいや、ちょっとこの頃お前はボーっとし過ぎているのと違うか?
いや考えを改めないかんな、この頃野放図(のほうず)やで

ほっといてくれ家主!!
うちは気持ちよく夫婦喧嘩してるんじゃ!!
出て行け!ほんま!

お前んところは夫婦喧嘩は気持ち良くするんか?
気持ち良くするならしたらええ
わしはその仲裁に入っとんのじゃ

その仲裁が気に入らんじゃ!

なにかわしの仲裁じゃ気に入らんか?

気に入らんわ!家主、良く聞けよ!!
喧嘩仲裁って言うのはな五分と五分で裁くもんじゃ
そりゃろ!黙って聞いてりゃ俺のドタマばっか押さえ込みやがって
なんや嬶(かか)にペコペコさらしやがって!
・・はっは〜ん、そうかおのれ嬶にペコペコして
俺の居ぬ間に嬶に一膳呼ばれようっていうのか?

・・・お前今何を言うたんじゃ??
嬶に一膳呼ばれる??
そんな事はな己の嬶の面と相談してからぬかせ
よ〜く聞けよ、お前の所がこの長屋に宿替えして来た時はな
晩は誰ひとり表によう出なかったんやろ
何でか知ってるか?
お前んとこの嫁さんの顔の怖さにやないか
なんぼ、わしみたいな大男でもな
こんなほってんとっとの餡パンみたいな顔した女子
銭くっつけてもこちらから断るわ!

家主さん今何言いなはったの?
ほってんとっとの餡パンって誰言ってなはる!!
何だすねん家主、家主って付き上がりやがってこのデキボコ親父が!

デキボコ親父、、、
あぁそうか、、いやぁ分かった分かった
お前らなんやな、こういう喧嘩の筋書きを作っといて
わしを仲裁に入れて今まで溜まっている家賃を踏み倒そうって腹だな

誰が家賃を踏み倒すって言うたんじゃ

文句を言うならな今まで溜まっている家賃をここに並べてから文句ぬかせ

すると何か?
己は今日は家賃の催促に来たんか?
それとも喧嘩の仲裁に来たんか?
どっちや!
ごてごて抜かすと己からいてこますで!

いてこます?!
面白いなぁ家主の頭に手をかけられるならかけてみ!

抜かしやがったな!!この家主が!!

バシ!

このガキは家主に手を掛けやがった!


喧嘩が大きくなりました。
これを見ていた長屋の者達は


えらいこっちゃなぁ
家主が入ったら喧嘩が大きくなってしまった

どつき合いしてる
なんか派手な喧嘩やな
えっ見てみっちゅうの家主の茶瓶の頭に茶瓶が飛んでる

阿保なこと言うてんあらへん
そんなこと言うってないでお前も中に入らなあかへんがな

いやいやいや、あかん
あんな喧嘩を・・・

お前入っとかなあかん
お前が入ってみ、家主が気が違うがな
家賃溜めてんやろ
今中に入ってってみな家主が気が違うで

そうか?

そりゃそやがな

やっぱ入ってた方が得か?

そりゃ得やがな

いっぺん入ってこようか?

風呂に入るんとちゃうんやアホ
そんなこと言うってないで入って来い

よし!入ってくるけど、こうなったら決死の覚悟や
もしどつかれたらみんなで助けてくれ


ううぉっと!!ちょ!
まっっぁちょ佐久さん!お松さんも待って!
まままっ!家主さんも待ってください!!
お腹立てはごもっとも、ごもっとも
わて何もかも表で聞いておりました。
表で聞いてて中に入らないのは不都合に思いますけどな
ここの夫婦喧嘩は毎度のことたってがな
誰か入ってくれはったらええのになって思ってました
そこにがバッと入ってくれてこれで話が丸く収まると思ってました
それが偉い事になってしもうて・・・
いえ、わてが中に入ったんで任してくんなはれ

佐久さん、これはお前がいかんがな
そうやないか
夫婦喧嘩やで命のやり取りまでいき
せやけどな家主さんが中に入ってくれはったんや、
そこの所家主さんの顔も立てないかんがな

それやのに家主さんの頭に手をかけるってえげつない事しないな
そりゃお前の怒る気は分からん事は無い、分からん事は無いけどもやな
ここん所は折れてやな、長い物には巻かれてね家主さんに謝り
そうした方が得やからな
家主さんに謝り、謝り

居ね!カス!ヒョットコ!!

佐久さん、俺はヒョットコか?

黙って聞いてりゃ!
俺のドタマばっか押さえ込みやがって家主にペコペコさらして
己なんやな、今まで溜まっていた家賃を帳消しにしてもらう腹やろ

・・・佐久さん、言うって良い事と悪い事があるで
こんな生易しい事で家賃を帳消しにしてくれる家主か?この家主は?
そりゃな、お前の所がこの長屋に宿替えして来た時はな
晩は誰ひとり表によう出なかったんやろ
お前んとこの嫁さんの顔の怖さにやないか
なんぼ女ったらしの家主でもな
お前さんの所の嫁さんみたいな渋柿食べた顔みたいな
そんな鬼瓦みたいな顔した女は銭くっつけても断るのは当たり前やないか

こら!女ったらしって誰のこと言うとんのじゃ?!

まっ、わてが安生話しますんで

女ったらし助平親父って誰のこと言うとんじゃ!!

バシ!!

仲裁に入った俺をど突きやがった!!!



えらいこっちゃ・・・
また喧嘩が大きくなった
誰ぞ中に入る者ないんか?

ここに居る者がみんなでうわぁっと中に入って行こうか?
あの喧嘩を二つに分けたらどうや?

なるほど、そりゃええこっちゃ


みんなでうわぁっと中に入って行きよった
その中をかいくぐって嫁はんがすっと表に出てくるなり
ぽんっと何か貼りおった


『満員につき場所ございません』





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タグ: 喧嘩 長屋 夫婦
posted by 落語の世界 at 07:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 落語
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