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2015年11月21日

【麦子さんと】出演者・感想・完全ネタバレ(セリフ完全再現)


【麦子さんと】
麦子さんと.jpg

【出演者】
小岩麦子:堀北真希
小岩憲男(兄):松田龍平
赤池彩子(母):余貴美子
井本まなぶ(タクシー運転手):温水洋一
ミチル(墓地の受付):麻生祐未
麻生春男(旅館店主):ガダルカナル・タカ
麻生夏枝(旅館女将):ふせえり
麻生千蔵(春男の息子):岡山天音
やまだ(麦子の同僚):田代さやか

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【感想】
静かな映画です。
基本的に私の好きなタイプの映画。
主人公の考え方が変わっていくタイプの映画。

一人一人の役者さんの表情に注目です。
みんな実力者の俳優揃いなので、
演技を見ていて面白かったです。

ストーリー性に後一押しあったなら〜。
でも、この手の映画はこれくらいで良いのかも!
それが持ち味なんですね!

母の思いを感じたいときに見る映画です。
基本的に家庭環境的に感情移入はしにくいので、
その中でも見ていられる映画という点では、
良かったんだな〜。って感想書いていて思います。

【あらすじ】(ネタバレあり)
ある町に着いた小岩麦子は駅員に話しかけられた。
「本当に会ったこと無い?」
「なんか会った事あるような気がするんだけどな〜」

麦子は駅を出てタクシーに乗った。
八幡浜旅館までと伝えた麦子は帽子を脱いだ。
ミラー越しに麦子を見た運転手の井本まなぶは、
「なっ!!!」
と後ろを見た。
前を見ずに運転する井本に麦子は、
「前!前!前!」
自転車に乗った警察官をひいてしまう井本。
直ぐにタクシーを降りた井本は声をかける。
小さな町では警察官も知り合い。
鼻血を出す程度でおとがめなし。
タクシーに戻った井本は麦子に、
「昔の知り合いにあまりに似てたもんで。」
そして警察に再び話しかける井本。
「昔ここにいた彩子さんって覚えてない?」
警察は答えた。
「誰ですか?」
「鼻血出ちゃったじゃないですか。」
麦子は自分の持っていたポケットティッシュを、
警察官に渡した。

再び走り出したタクシーで井本は言った。
「30年くらい前かな?」
「君にそっくりな子がいてさ〜」
「赤池彩子ちゃんって言うんだけど。」
「みんな彩子ちゃんに夢中だったもんな〜」
それを聞いて麦子は答えた。
「もしかしてその彩子って言う人、
             この人だったりして?」
そう言って骨箱を見せた麦子。
「その彩子って言う人、私の母親っぽいんだけど。」
またもや後部席を見る井本。
「だから前!」
怒られて前に視線を戻した井本は言う。
「そうか〜。彩子ちゃん亡くなったのか〜」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
バイトから家に帰った麦子。
マンションの前で兄の憲男が、
中年のオバサンと話をしていた。
「だから帰れって言ってるだろ。」
中年のオバサンさんは麦子を見て言う。
「麦ちゃん?」
それをあしらう様に憲男は言った。
「二度と来ないで。さようなら。」

家に入った麦子は憲男に聞いた。
「今の誰?」
憲男は答えた。
「ババアだよ。」
「ババアって言ったら母親だろ。」
戸惑う麦子に憲男は、
「そっかお前小さかったから覚えてないか。」
「あれババアだよ!」
「大体何年も連絡無かったに、
 今更一緒に暮らそうなんて虫が良すぎるよ。」
「親父が死んでから3年間、
    俺がこの家の家賃やら何やら
           やりくりしてきたわけだし・・・」
「俺がさ。今はお前の親父だし、
            母親みたいなもんじゃん。」
「だからさ。どうだっていいだろババアなんて。」
麦子は答えた。
「お兄ちゃんがいればいい。」
「本当感謝しているよ。」
その後もグチグチとお金について話す兄。
「あ〜。もう感謝してるって言ってるでしょ!」

次に日バイト先に来た彩子。
「麦ちゃん大きくなったね〜」
「お兄ちゃんから聞いていると思うけど。」
麦子は言った。
「私はあなたと暮らす気ないので。」
「今更あなたのお世話にならなくても、
           2人でやっていくんで。」
母は続けた。
「一緒に生活したら、
     その分楽になると思うんだけど。」
「このままだと今まで通り、
 入金するの大変になると思うんだけど。」
麦子は驚いた。
「えっ?」
憲男の言っていることとは違い、
彩子は毎月15万入金していた。

その夜、彩子と憲男は家で話していた。
一緒に住むことを反対していた憲男。
しかし結論として一緒に暮らすことになった。
憲男は麦子に言う。
「一緒に住むことになったから。」
「正直言って、入金無かったらきついでしょ?」
彩子も麦子に言った。
「麦ちゃ〜ん。よろしくね〜。」

彩子の引っ越しが終わると、憲男は麦子に言う。
「俺さ〜。近々家をでようと思ってるんだよね。」
「だってあいつ、うぜ〜じゃん。」
「それに彼女から、
   同棲したいって言われてるんだよね〜。」
嫌がる麦子の意見は聞かず、
数日後に憲男は引っ越していった。
残された麦と母。

彩子の目覚まし時計の音は大きく、
それでも目覚めない彩子。
週刊誌を捨てていいと伝えると、
単行本まで捨てる始末。
日々の慣れない生活が続いた。
毎日コンビニ生活の麦子だが、
彩子は手料理を作ってくれた。
どう接してよいのか分からない麦子。
ある日麦子は食材を買いに出かけ、
帰りの遅い彩子に料理を作った。
帰ってきた彩子に聞く。
「ねえ。豚カツ好きだっけ?」
彩子は答えた。
「私最近脂っこいものダメなんだよね〜。」
「どうして?」
麦子は言った。
「聞いただけ。」
しかし、麦子の作った豚カツを見つけた彩子。
「あれっ?この豚カツ麦ちゃんが作ったの?」
「ひょっとして?これ私に?」
麦子は照れながら答えた。
「そういうわけじゃないけど、余ったから。」
喜んだ彩子は言う。
「これ頂こうかな?」
強がる麦子。
「じゃあ勝手に食べれば。」
豚カツを口にして彩子は満面の笑みで、
「麦ちゃん。美味しいよ!」

しかし彩子はトイレに駆け込んだ母。
トイレから出て来た彩子は言う。
「ごめんね。ちょっと体調悪くてさ。」
心配そうに聞く麦子。
「ねえ。どっか悪いの?」
今度は彩子が強がり言う。
「ちょっと寝れば全然大丈夫。」
「麦ちゃん。ちょっとお願いしたいんだけど。」
「足が痺れちゃって。」
「ちょっとマッサージしてくれない?」
麦子は不機嫌そうに彩子に言う。
「私も疲れてるんだけど。」
そう言いながらもマッサージをしてあげた麦子。

ある日麦子は憲男の職場に行った。
「お願い。30万でもいいの。」
声優の専門学校へ入るための
入学資金を借りようとお願いしたのだった。
憲男は麦子に言った。
「悪いけど俺も金ねえし、無理だわ。」
「ババアに頼めば?」
「何時までも夢ばっかり追いかけないで、
         俺みたいに真面目に働けば?」
そんな上から目線の憲男に麦子は、
「何よ偉そうに。もういい。」
そう言ってその場を後にした。

麦子が家に帰ると入学の資料が届いていた。
しかし、それを勝手に開けて見ていた彩子。
麦子の不満は爆発した。
「ねえこれ。何勝手にあけてるの?」
「それに台所何なの?散らかしぱっなしだし。」
「いつも寝てばっかじゃん。」
そのタイミングでなる目覚まし時計。
「だからうるさいって。」
そう言って目覚まし時計を投げつけた。
それでも怒らずに笑いながらに言う彩子。
「私に何かできることがあったら言ってね。」
「頼りないかもしれないけど、一応母親だし。」
麦子は怒りながら続けた。
「私あなたのこと母親だと思ってないから。」

数日後。彩子が死んだ。
駆けつけた麦子に憲男は言う。
「ババア。末期の肝臓がんだって。」
「意味分かんねえよな。」
「いきなり訪ねて来たと思ったら、
             急に死にやがって。」
「まあ。ざまあねえよな。」
「家の家賃はどうするんだよって話だよ。」

そして麦子と憲男だけで彩子の葬儀を行なった。
骨となった彩子を見て憲男は言った。
「こんなに小さくなっちゃうんだもんな」
彩子の遺骨の前で憲男は泣いていた。

家に戻ると憲男は麦子に言った。
「四十九日のとき仕事休めないかも。」
「納骨くらい1人で大丈夫だろ。」
頷き憲男に聞いた麦子。
「あの人もしかして、
 一緒に暮らそうって言ったのって、
  自分が死ぬの近いって分かって・・・」
「そんな訳無いか・・・」
憲男は答えた。
「たまたまっしょ!」

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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
タクシーは八幡浜旅館に着いた。
旅館に入ると店主の春夫と女将の夏枝が
麦子の顔を見て驚いた。
夏枝は昔の彩子の写真を持って来た。
初めて見た若かった頃の彩子の写真。
それは麦子と瓜二つであった。
「似すぎてて気持ち悪いな〜」
そう言った麦子に対して夏枝は言う。
「アイドル歌手目指してただけあって、
            違う感じだったよね〜」
「本当あの時の佐江子ちゃんは可愛くて、
     本物のアイドルみたいだったよ。」

旅館には彩子の娘が来たと知り、
続々と集まってくる町民たち。
みんな彩子との思い出話をする。
それは彩子を中心とした同窓会の様になっていた。

翌日麦子は墓地を訪れた。
受付にいたミチルは麦子を見て言った。
「信じられないわね〜。」
「綾子ちゃんが。まだ若いのに。」
「それにしてもそっくりね〜。」

しかし埋葬許可書がないと言われ、
埋葬が出来ない事になった麦子。
兄に電話したが直ぐには届かない。
宿に泊まるお金のない麦子を、
ミチルが家に泊めてくれた。
彩子と仲が良かったと話すミチル。
「綾子ちゃんが歌手目指して、
     上京するまでよく遊んでたの。」
「実際難しかったんだろうけど、
 彩子ちゃん本気で頑張ってたんだよ。」

翌日ミチルは観光案内をしてくれた。
そして作ってくれた料理は、
以前に彩子が作ってくれたカボチャ炊き込みご飯。
町民は皆、彩子にそっくりな麦子に優しかった。

ミチルの姿に彩子を照らし合わせた麦子。
麦子は声優を目指していることを教えた。
そしてミチルに言う。
「ミチルさん見たいな人が、
   お母さんだったら良かったのにな。」
それを聞きミチルは言った。
「彩子ちゃんだって良いお母さんでしょ。」
すぐに反論した麦子。
「あの人はお母さんじゃないです。」

町で会った八幡浜旅館の息子の千蔵に誘われ、
町の祭りに行った麦子。
千蔵は麦子に井本とミチルの話をした。
井本は昔、彩子のストーカーだったという噂。
ミチルはバツイチで子供がいるとの話。

祭り会場のステージでは町民の演奏。
このイベントは40周年。
司会者は麦子を見て突然言った。
「これは珍しい人が着てますね。」
「以前この町に住んでいた、
 赤池彩子さんのお嬢さんがお見えになってます。」
「せっかくなんで、
       ステージに上がってきてもらいましょう。」
観客から拍手を送られ、
嫌々ながらもステージに上がった麦子。
「麦子ちゃんにステージに上がってもらうと、
 まるでタイムスリップした気分になりますね。」
「タイムスリップついでに麦子ちゃんにも、
 赤いスイートピー歌ってもらいましょうかね〜。」
断る麦子だが、半強制で曲が流れ出す。
しかし歌えない麦子・・・

祭り会場で麦子は夏枝に会った。
麦子は夏枝に言った。
「お祭り凄い盛り上がってるみたいですね〜。」
夏枝は返した。
「でも昔はもっと盛り上がったのよ。」
「綾子ちゃんが歌ったときが、
   ピークだったんじゃないかな?」
そんな話に水を差したのは千蔵。
「ババアさ〜。金貸して。」
相変わらずの態度を見て麦子は言う。
「私帰ろうかな?」

帰るとミチルはご飯を作って待っていた。
そんなミチルに麦子は言う。
「子供に会いたいと思わないんですか?」
ミチルは答えた。
「え〜。誰かから聞いちゃった?」
「もちろん会いたいよ。」
「今は会わないほうがいいかなって・・・」
「麦子さんなら分かると思うけど、
      お互いいろいろあるじゃない。」
麦子は言った。
「私には良く分からないです。」

翌朝、麦子をボウリングに誘った井本。
井本に麦子は彩子のことを聞いた。
「あの人のこと好きだったんですか?」
井本は答えた。
「そりゃ好きだったけど、
    俺だけじゃなかったけどね〜。」
麦子は続けて聞く。
「まさか、告白とかしてないですよね?。」
井本は昔の事を話した。
「彩子ちゃんが上京するとき、
     たまたま駅で会ったんだよね。」
「歌手になること、
 ずっと両親に反対されてたんだよね。」
「それでついに家を飛び出そうと決心したんだよ。」
「最後に気持ちだけでも伝えようかと思ったけど、
                結局言えなかったよ・・・」

家を出た彩子は凄い荷物を抱えて駅にいた。
そこで井本に会い井本に話したという。
反対していた両親がお金や荷物まで渡してくれた。
鍋やら目覚まし時計やら沢山を・・・
「向こうじゃ起こしてくれる人いないだろうって、
 目覚まし時計まで無理やり渡されちゃった。」
「本当。おかしいよね。頑張らなきゃだね。私。」

その話を聞き、
自分が投げた目覚まし時計を思い出した麦子。

その後ミチルと合流して居酒屋に行った麦子。
お酒が入りミチルに絡む麦子。
「なんで子供に会わないの?」
「いつでも会おうと思えば会えるのに何で?」
ミチルは濁す。
「それは色々と事情があるじゃない。」
麦子は食い下がらず続ける。
「はあ?どんな事情があるって言うんですか?」
ミチルは言い訳を始めた。
「別れた旦那だってまだ若いし、
              再婚だってするでしょ?」
「そしたら新しいお母さん、
          子供たちは迎えるわけでしょ?」
「そしたら私って・・・」
麦子はミチルの言葉を遮り言った。
「そんなのそっちが勝手に決めているだけで、
            子供には関係ないでしょ!」
その言葉を聞いて逆に質問するミチル。
「麦子ちゃんはどんな事情があるにせよ、
      お母さんに会いに着て欲しかった?」
麦子は答えた。
「私は別に親なんてどうでもいい。」
それを聞いてミチルは悲しそうな顔をした。
その顔を見て麦子は続けた。
「悲しそうな顔するのやめて欲しいんだけど。」
「何そうやって悲壮感だしまくってるの?」
「結局会えないのはさ、
    自分で理由膨らましているだけじゃん。」
「それなのに、
 私も会いたいの〜。辛いの〜。って顔して。
  自分を正当化して逃げているだけじゃん。」
「いい大人が本当にバカみたい。」
大人の対応をするミチル。
「そうよね〜。麦子ちゃんの言う通りね。」
「麦子ちゃんは、
 本当に会いに着て欲しいって思わなかった?」
「会いたいって思わなかった?」
麦子は答える。
「私は一度も思ったことは無かったです。」
「あの人が死んだ時だって、
             まったく悲しくなかったし。」
「ミチルさんの子供も、
    会いたいと思わないんじゃないですか?」
「もしかしたらミチルさんが死んだときも、
 私みたいに涙1つ見せないかもしれないですよ。」

ずっと話を聞いていた井本がとめた。
「麦子ちゃん。
    そんなガキみたいなこと言うの止めなよ。」
麦子は怒った。
「ガキってなんですか?」
「私別に間違ったこと言ってないと思うけど。」
井本は諭した。
「それがガキだって言ってるんだよ。」
「本当はお母さんに
  会いたくてしかたなかったくせに。」
「もっと素直になったほうがいいんじゃないの?」
「ミチルちゃんは彩子ちゃんじゃないんだよ。」
「お母さんにいえなかったこと、
  ミチルちゃんにぶつけたって仕方ないでしょ。」
「麦子ちゃん。佐江子ちゃんはもういないんだよ。」
「麦子ちゃんも色々辛かっただろうし、
   腹立つことも色々あるだろうけど、
                 もう許してあげなよ。」
「麦子ちゃんのお母さんは1人しかいないんだよ。」
「彩子ちゃん1人なんだよ。」
その日麦子は、遺骨を抱えて旅館へ言った。
ミチルの家には泊まり難く、旅館で一泊した。

翌日。いよいよ納骨の朝。
旅館を後にしようとした麦子。
そこに千蔵が来て夏枝に言う。
「ねえ、一万円貸してよ。」
夏枝は鼻で笑い言う。
「どうせパチンコでも行くんでしょ?」
笑った夏枝を千蔵は突き倒した。
その瞬間麦子は千蔵の頬をぶっていた。

墓地に着くとミチルがいた。
「昨日は泊まるとこ大丈夫だったの?」
酷い事を言ったはずなのに、
優しく大人の対応をするミチル。
麦子は素直に謝った。
「昨日は私酔っ払っていろいろすみませんでした。」
「私ってガキですね。」
「昨日井本さんが言ってたことその通りだなって。」
「ずっとお母さんに会いたいって思ってたのに、
   実際会ったらどう接していいか分からなくて。」
「ミチルさんも子供にあってあげてください。」
「きっと会いたいって思っているはずですよ。」

そしてミチルと共に納骨を終えた麦子。
「お母さんがっかりしただろうな〜。」
「結局最後まで心開かなかったし。」
麦子の言葉にミチルは言った。
「がっかりなんてしてないわよ。」
「私ね。佐江子ちゃんが東京行った後、
        一度だけ会ったことがあるのよ。」
「お母さんのお墓参りに来たことがあってね。」
「そのときおなかの中には麦子ちゃんがいて。」
「歌手になる夢はかなわなかったけど、
            今人生で一番幸せだって。」
「その時の彩子ちゃん、ものすごい綺麗だった。」
「麦子ちゃんに会えて嬉しかったはずよ。」
「でも安心したわ。」
「麦子ちゃんいつも彩子ちゃんのこと、
  あの人って呼んでたけど、
  今日はちゃんとお母さんって呼んでるから。」
麦子は言った。
「私お母さんにひどい事言ったんです。」
「母親と思ってないって・・・」
「そしたら、
 母親じゃなければ何?父親と思ってるの?
 ってくだらないこと言って笑ってたけど、
  そのときのお母さん。凄い悲しそうだった。」
「その悲しそうな顔、毎日思い出すの。」
そう言って泣き出した麦子。
ミチルはそっと後ろから抱きしめた。

納骨が終わるり墓地を出ると、
井口が駅まで送ろうと待っていた。
そんな井口に麦子は言った。
「電車まで時間があるし歩いていきます。」
「歩きたい気分なんです。」
「いろいろとありがとうございました。」
井本のタクシーからは、
『赤いスイートピー』が流れていた。

駅まで歩く麦子。
麦子は『赤いスイートピー』を口ずさんでいた。
道ですれ違った警察官は、
以前渡したポケットティッシュを出して言う。
「これさ、こないだもらったやつ。」
「その中にさ、こんなの挟まってたんだけど。」
「これ大事なやつじゃないの?」
「返しておくから。」
それはなくしたと思っていた納骨許可証。

そして麦子は憲男に電話した。
「今から帰る。」
「来てよかったよ。本当はもっと居たいくらいだし。」
憲男は言う。
「もう少しゆっくりしていけば?」
麦子は答えた。
「そういうわけにはいかないよ。」
「帰ってバイトして、入学金ためなきゃだし。」
憲男は思い出したように言った。
「埋葬許可書探すときに家の中見たら、
 ババアの通帳があって、
 大した金額は入ってなかったんだけど、
 それにメモが入っていて、
 『少ないお金だけど麦子の夢に使ってください』
                  って書いてあったよ。」
「良かったな。じゃあ気をつけて帰れよ。」

横を通り過ぎた自転車。
その後ろに乗る小さな女の子。
自分と母と照らし合わせた麦子の脳裏に、
母の顔が思い出された。

駅につくと駅員は言った。
「なんかどっかで会ったような?」
「もしかして芸能人の人?」
麦子は笑った。

(終わり)

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