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2022年01月13日

皇位継承策 店晒(たなざら)し懸念 与野党隔たり参院選も意識



皇位継承策 店晒(たなざら)し懸念

与野党隔たり 参院選も意識



1-13-1.png 1/13(木) 7:08配信



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安定的な皇位継承の在り方に関する政府の有識者会議の検討結果の報告書を細田博之衆院議長(中央右)山東昭子参院議長(同左)に手渡す岸田文雄首相(右から2人目)12日午前 国会内 1-13-2


岸田文雄首相は12日、細田博之衆院議長・山東昭子参院議長等と国会内で会談し、安定的な皇位継承を巡る政府有識者会議の検討結果を報告した。

【図解】有識者会議が示した皇族数確保策


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皇族数確保へ2案 女性皇籍維持と養子縁組 安定継承 議論先送り・有識者会議


 只、女性・女系天皇の是非等抜本対策には踏み込んで居らず、各党間の立場も隔たりが大きい。夏には参院選が控えて居り、国会での議論が店晒しと為る恐れも在る。首相は有識者会議がまとめた報告書を細田氏等に手渡し「政府として尊重する」と伝えた。

 報告書は、減少する皇族数の確保策として

(1) 女性皇族が結婚後も皇室に残る
(2) 旧宮家の男系男子が養子として皇籍復帰する

 の2案を軸とする一方、女性・女系天皇の是非への言及は避けた。保守層に男系堅持を求める声が強い事などが背景に在る。自民党の茂木敏充幹事長は12日、党本部で記者団に 「事柄の性格上、静かな環境の中で意見集約を進めたい」 と述べるに留めた。
 首相は昨年の自民党総裁選で、女系天皇容認への反対を明言して居り、同党は与野党協議でも皇族数確保を優先課題とする方針。閣僚経験者は 「旧皇族を復帰させ、将来的には女性天皇を認めれば好い」 としつつ 「女系は駄目だ」 と釘を刺した。  

 これに対し、立憲民主党は女性・女系天皇の容認も含め、抜本的な安定継承策や 〔女性宮家〕 創設を求めて行く構え。西村智奈美幹事長は記者会見で 「先延ばし出来無い筈の課題を、更に先延ばしにして居る」 と批判した。野田佳彦元首相をトップとした検討委員会で党内議論を進める。
 日本維新の会の馬場伸幸共同代表は会見で 「我が党には女性天皇を容認する考え方もある」 と指摘。共産党の穀田恵二国対委員長も会見で 「憲法の精神に基づく考え方からすれば女性を排除すると云う事は無い」 と述べた。  

◇18日から与野党協議

 衆参両院の議長は12日、連名で談話を発表した。2017年に天皇退位を巡り与野党が議論した事に倣い、各党・各会派の議論に委ねる方針で 「政府の検討結果、国民各層における幅広い議論を踏まえつつ、慎重かつ丁寧に検討を進めて行きたい」 と表明した。 与野党の代表は18日、松野博一官房長官から説明を受け今後の議論の進め方も話し合う。

 只、参院選を前に、与党側には国論を二分しかね無い問題を回避しようとの姿勢が滲む。自民出身の細田議長は記者団に 「十分な時間を掛けて検討して貰う段取りだ」 と強調した。  17年6月に成立した天皇退位特例法の付帯決議は、国会が政府に対し皇位安定に関する課題を速やかに検討し報告する様求めたが、安倍・菅政権で議論は遅々として進ま無かった。5年近くたって要約検討結果が提出されたが、国会での議論は早くも停滞する懸念が出ている。





皇位継承策 国会で熟議せよ 「国民の総意」形成への道

【解説委員室から】2022年01月11日



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2020年の新年一般参賀で手を振られる天皇・皇后両陛下と皇族方 2022年も新型コロナ感染拡大防止の為取り辞めと為った 2020年1月2日 皇居【時事通信社】1-13-4


 安定的な皇位継承の在り方を検討して来た政府の有識者会議(座長・清家篤元慶応義塾長)の最終報告書が2021年12月末に提出された。肝心の秋篠宮家の長男悠仁さまの後の皇位継承策の問題には触れず、現状の論点整理として出て来た皇族数の確保に付いて、軸と為る2案を提示するに留まった。報告書の内容は国会に報告され、議論の舞台は国会に移った。

 只、皇位継承問題の中核に在る女性・女系天皇の議論は全く為され無かった。女性天皇の子供が即位する女系天皇に付いては保守派が頑なに反対。各種の世論調査で大半の国民が容認する姿勢とは対照的で在る。憲法は天皇の地位を 「国民の総意に基づく」 として居る。その基盤を崩し兼ね無い難題に、国会はキチンと向き合い回答を出す事が出来るのか。
「国論を二分する」 ことを恐れて議論し無ければ 〔総意〕 への道は見えて来ない。国会議員が国民の代表としての能力を全開にし、その矜持(きょうじ)を見せる時が近づいて居る。 (時事通信解説委員 橋詰悦荘)

本質論を回避した報告書


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安定的な皇位継承の在り方を検討する有識者会議の清家篤座長(左)から報告書を受け取る岸田文雄首相 2021年12月22日、首相官邸【時事通信社】1-13-5


 先ず、報告書の内容を確認しよう。報告書は冒頭で 「天皇陛下、秋篠宮さま、悠仁さまが居られる事を前提にこの皇位継承の流れを揺(ゆ)るがせにしては為ら無い」 と指摘する。これは、週刊誌等で頻繁に登場する 〔愛子天皇〕 誕生を事実上否定した事に為る。
 続けて 「悠仁さまの次代以降の皇位継承に付いては議論するには機が熟して居らず」「将来において悠仁さまのご年齢やご結婚等を巡る状況を踏まえた上で議論を深めて行くべき」 として先送りした。
 未婚の男性皇族が悠仁さま一人と云う現状を踏まえて 「先ずは、皇位継承の問題と切り離して、皇族数の確保を図る事が喫緊の課題」 として、議論の方向性を限定。求められた 「悠仁さまの後を如何するのか」 と云う本質的な問いへの回答を避けた。

女系の否定

 報告書が示した皇族数の確保策は  ?@ 女性皇族が結婚後も皇室に残る ?A 皇族の養子縁組を可能にして、旧宮家の男系男子を復帰させる・・・ と云う2案だ。
?@ 案は女性・女系への道を模索(もさく)したものでは無い。 結婚した相手やその子は皇族としての身分を持たず、一般国民としての権利・義務を保持し続けるとして、 女性・女系天皇の誕生を否定 した。



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現在の皇室の構成と皇位継承順位【時事通信社】1-13-6


?A 案は明確な男系男子の継続を意味する。 宮内庁関係者が好く例示として口にするのが、子供が居らずお二方とも高齢と為られた常陸宮家の養子縁組。戦後間も無い1947年に皇籍離脱した11宮家51人の旧皇族の流れを汲む男性を養子として迎えると云うものだ。

 何れにしても、報告書には皇位継承策を議論する際の中核を成す女性・女系天皇に付いて検討した部分は出て来ない。安倍政権下の2017年に退位を認めた特例法が成立し、その後の菅政権で設置されたこの有識者会議の議論は、女系天皇を拒否する保守派政権の意向を完全に取り込んだ形だ。
〔悠仁さまの後〕 の本質的な議論を避けて先送りし、当面は 「男系男子で行けるとこ迄行く」 と云うのが報告書の基本的スタンスと読み取れる。

今後10年で解決

 報告書は最終部分で、福沢諭吉の〔帝室論〕を引用  「帝室は政治社外のものなり 」との指摘を紹介して 「国論を二分したりする様な事は在っては為ら無い。静ひつな環境の中で落ち着いた検討を行って頂きたいと願って居る」 と結んで居る。
 確かに悠仁さまの 恋愛⇒結婚等 の流れを考慮して行くと云うのは当然だが、現実の問題はその 恋愛⇒結婚 が希望通りに上手く進むかどうかだ。



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結婚後、記者会見する小室圭さん(左)と眞子さん=2021年10月26日午後、東京都千代田区[代表撮影]【時事通信社】1-13-7


 一人一人がスマートフォンを携帯し、何時でも何処でも発信出来る様に為った環境で、恋愛の成就に必要な秘密性をどう確保するのか。或る程度の段階に進行したとしても、相手の女性に対する度を越した誹謗(ひぼう)中傷が、ネット上に溢れる事は簡単に想像が出来る。
 美智子さまの時も雅子さまの時も 〔静ひつな環境が必要〕 との理由で、日本新聞協会加盟各社は一定期間の報道自粛(協定)を申し合わせた。メディア環境は格段に複雑・高度化している。平成の結婚を取材した経験から言えば、この報道協定は次は成立し得無いだろう。結婚へのハードルは、過去と比べものに為ら無い程高く為って居る。



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秋篠宮ご夫妻と長男悠仁さま 2019年8月20日 ブータン・ティンプー[代表撮影]【時事通信社】1-13-8


 更に、仮に結婚迄至ったとしても、男系男子と云う制度は、悠仁さまの相手に男子を産む事を要求する非人間的制度で在り、自然の摂理に従い人間らしく生きる事を否定するものである。若い女性にこれを強制する事が出来るのか。
 雅子さまが適応障害で苦しまれたのも、この制度の大きなプレッシャーが要因だったのではないか。私達はこの雅子さまの苦しみと教訓を次に生かす事を考え無ければ為ら無い筈だ。

 先送りで時間を浪費しては為ら無い。悠仁さまは今15歳。結婚の時期を考えれば、今後10年程度で男系男子と云う大きなプレッシャーを取り除く制度改正をする必要が或る。これこそが安定的皇位継承への道を切り開く事である。

国会に常置の皇室運営委員会を

 死ぬ迄天皇と云う終身天皇制を前提にする法体系の中で、上皇さまが退位を考えて居た事は宮内庁幹部の一部が知って居るだけで、国民は当初、誰も知ら無かった。皇室と国民の間のコミュニケーション回路が無かったからである。
 それを代議制民主主義の中で実現しようとすれば、矢張り国会の中に常置の専門の委員会(例えば皇室運営委員会)を設けて、こうした役割を果たす様にする事が必要なのではないだろうか。

 平成の退位の際に〔天皇の意思の暴走〕を危惧する意見を表明した渡辺治一橋大学名誉教授は、近著の「『平成』の天皇と現代史」(旬報社)の中で、国会に超党派の常置委員会の設置を提案して居る。
 憲法改正を議論する憲法審査会が在るが、その皇室バージョンとして設置する。その委員会で審議し、時には皇族側から生の意見も聞き取る。そう云う場が在れば、誕生日会見で突然表明された 「大嘗祭は私費で」 と云う秋篠宮さまの主張なども柔軟に検討する事が出来る様に為る。

 勿論、今後の皇位継承策についてもこの委員会の場を利用して、熟議を積み重ね、合意を広げる事ができる様にすれば好いのではないか。女系を認めるかどうか。「国論二分」を克服して、日本の民主主義を強靭(きょうじん)にするチャンスが到来していると楽観的に考え進むのが好いと思う。




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皇居・宮殿 東京都千代田区【時事通信社】1-13-9


【筆者略歴】 社会部 ロサンゼルス特派員 福島支局長 編集局次長等を経て現職 昭和から平成への代替わりを宮内庁担当として取材した 象徴天皇制 司法行政 文教政策などを中心にコラムを執筆 (2022年1月12日更新)











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