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2022年01月19日
コロナ禍を機に「日米地位協定」を根本から是正すべき理由
コロナ禍を機に 「日米地位協定」
を根本から是正すべき理由
1/13(木) 11:01配信
米海兵隊が調達津を進める地対艦ミサイルシステム(出所 米海兵隊 以下同)1-13-10
文章 軍事社会学者 北村 淳 1-19-1
2021年12月30日掲載の本コラム「沖縄米軍で感染拡大 露わに為った『異常な日米合意』の大問題」を参照
但し、中国政府が国際社会に向かって喧伝して居る様に〔日米地位協定〕や〔日米地位協定合意議事録〕の問題を 「アメリカ軍は新型コロナウイルスのスーパースプレッダーだ」 と云った視点に集約してしまうと、それ等の協定や議事録の本質的問題を見失ってしまう事に為ってしまう。
今回多くの人々にその存在が知れ渉った〔日米地位協定〕や、更に問題の在る〔日米地位協定合意議事録〕そしてソモソモ日米同盟と云うものが、第二次世界大戦後の勝者(占領統治国)と敗者(被占領従属国)の関係をそのママ引きずって居り、日本政府や国会もその様な屈辱的現状を卑屈な態度で容認し続けて居る状態に付いて、国民的議論を高める契機とせねば為るまい。
■ 在日米軍・日米同盟は抑止効果を発揮して居るのか?
そもそも、何故〔日米地位協定〕や〔日米地位協定合意議事録〕に依って米軍関係者に治外法権的な数々の特権を与えて居るのか・・・もしも日本が外敵に軍事攻撃を受けて居て、自衛隊だけでは全く太刀打ち出来無い状態に陥ってしまった為、アメリカが安保条約に基づいて日本に支援軍を送り込み、その外敵と戦闘を交えて居る・・・と云う状況に在るの為らばそれは止むを得無いと言えよう。
そして、沖縄を初めとして日本各地に駐留する在日米軍や、横須賀と佐世保を本拠地にする第7艦隊の存在が、現実的に日本に対して軍事攻撃を実施しようとして居る外敵に対して抑止効果を発して居ると考えられる場合には・・・米軍関係者に与えて居る特権は或る程度は容認せざるを得無いと言えるかも知れない。
しかしながら、現在日本は外敵との戦闘中では無い。そして、日米同盟を崇(あが)めアメリカの軍事力に縋り付いて居る人々が最大の軍事的脅威と見做して居る中国に対して、在日米軍や日米同盟が抑止効果を発揮して居るのか? と問う為らば、甚だ疑問と言わざるを得無い。
■ 海洋戦闘の戦力強化を怠って来た米国
アメリカはソ連との冷戦終結後、湾岸戦争・アフガニスタン戦争並びにイラク戦争と砂漠地帯や山岳荒れ地、そしてそれ等の地域の市街地での戦闘を、2021年8月にカブールから撤退する迄30年にも渉って継続して来た。
取り分け2001年9月の同時多発テロ事件以降は、米軍は戦略組織訓練の全ての努力を 〔国際イスラムテロリスト集団との戦争に集中〕 させた。その結果、米軍は砂漠地帯・山岳荒地・イラクやアフガニスタンの市街地での戦闘能力は充実したものと為った。
処がトランプ政権がアメリカの主たる仮想敵を 〔中国・ロシア〕 に転換すると、それ等の新たな主敵に対する戦闘力が欠乏して居る事が深刻な問題と為った。
万が一にも中国との戦闘が勃発した場合、核戦争に発展しない通常兵器レベルの戦いに限定された為らば、海洋戦力とサイバー戦力に依る対決と為るのは明らかである。処が、アメリカは過去四半世紀以上に渉って本格的な海洋戦闘(海上・海中・空中での艦艇・航空機・各種ミサイルを駆使しての戦闘、場合に依っては海兵隊に依る海岸線エリアでの地上戦も必要と為る)に対する戦力強化にはそれ程力を入れて来無かった。と云うよりも、油断して怠って来たのである。
■ 接近阻止戦力の強化を推し進めた中国
一方、中国は、台湾統合と云う国家目標を達成する場合に起こり得るアメリカによる軍事介入を事前に跳ね返してしまう為に、アメリカが対テロ戦争に没頭して居る四半世紀に渉って 〔接近阻止戦力〕 の強化を徹底的に推し進めて来た。
詰まり、中国近海域に接近して来るアメリカ海洋戦力を出来るだけ遠方海洋に於いて撃退する為に、長射程対艦ミサイル・長射程防空ミサイル・潜水艦・水上戦闘艦・戦闘機・爆撃機・早期警戒機等の戦力を強化して来た。現在も対米接近阻止態勢の充実努力は継続中である。
その結果、中国の「第一列島線」周辺海域(上空域を含む)迄の接近阻止戦力の充実には質量共に目覚ましいものが在り、アメリカ国防当局もその強力さを認めざるを得ない状況に至って居る。
それに対して、米軍の接近侵攻戦力は、旧態然とした空母艦隊や水陸両用戦隊に依る威嚇を主力として居り、表看板として居る空母艦隊に搭載される航空機も、中国接近阻止戦力に対してはプロジェクション能力が欠乏して居る有様だ。
■ 海兵隊は大変革を開始
そしてこれ迄永きに渉ってアメリカ軍の先鋒部隊を任じて来た米海兵隊も、最早伝統的戦術と戦力では、強力な接近阻止態勢を構築した中国軍との対決にはとても打ち勝つ事が出来無い為に、抜本的な戦術転換とそれに伴う組織と装備の大変革を開始して居る。
即ち、敵の領域に勇猛果敢な侵攻部隊を着上陸させると云う第二次世界大戦スタイルの戦術は少なくとも中国軍相手には捨て去り、地対艦ミサイルや地対空ミサイルを装備した海兵隊部隊を中国軍の支配が及んで居ない島嶼等に送り込み、それ等の陸地から迫り来る中国軍艦艇や航空機を攻撃し中国軍の接近を阻止する・・・と云うのが、海兵隊の中国との海洋戦闘の新戦術なのだ。
その為、海兵隊は地対艦ミサイルや対艦攻撃用ロケット砲・それに防空システム等の調達や部隊編成を開始して居る。その反対に、これ迄海兵隊のシンボルとも云えた水陸両用強襲車の水上に於ける使用は中止されて居る状態だ。
要するに、対中国戦に於いては 〔海兵隊の主戦力は機動力の在る地対艦ミサイル部隊〕 と云う事に為り、これ迄沖縄に陣取って来た海兵隊部隊とは様相を異にする事に為るので在る。
■ 在日米軍と中国海洋戦力の現状を再認識せよ
この様に、海兵隊自身がこれ迄の戦術を捨て去って 〔ミサイル部隊化しよう〕 として居るので在るから、現在の海兵隊戦力は中国に対しては抑止効果は持って居ない事を、海兵隊自身が認めて居る事に為る。
海兵隊が推し進める 〔地対艦ミサイル戦力〕 が完成して、沖縄だけで無く対馬から与那国島迄数多くの海兵隊ミサイル部隊が配備される様に為った場合には、中国艦隊に対するする抑止効果が生ずる可能性は在る。
しかし、その様な戦力を海兵隊が手にする迄は、抑止効果は発揮され無いのが現状だ。日米地位協定の問題が浮上したのを契機に、この様な在日米軍と中国海洋戦力の現状を再認識して、日米同盟そのものの改善策を検討する時期に立ち至って居る。
北村 淳
【管理人のひとこと】
北村 淳氏が云わんとして居る本旨は〔アメリカ軍の変質〕であり〔米海兵隊の変質〕なのである。言い換えれば今迄の軍略とは異なる思想で替えられたのは、海兵隊が従来の様に艦船と航空機で敵の陣地に切り込み急襲するのでは無く(中国軍が重点的に島嶼部に軍備を補強したので) 地域ミサイル部隊化した海兵隊が広範囲な・・・中国軍の支配が及んで居ない島嶼等に送り込み、それ等の陸地から迫り来る中国軍艦艇や航空機を攻撃し中国軍の接近を阻止する・・・に変化した。
だから、沖縄・グアムに駐在する海兵隊の中身も自ずと変化する・・・無論沖縄に建設中の新基地も無意味なものに為ってしまう。今一方的に不平等な日米地位協定の問題を解決すべき時だ・・・の両方なのである。
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