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2022年02月11日
ロシアのウクライナ侵攻に備えよ! 日本が今すぐすべき事
ロシアのウクライナ侵攻に備えよ! 日本が今すぐすべき事
1/24(月) 11:01配信
文章 数多 久遠 小説家・軍事評論家・元幹部自衛官
ロシアがウクライナ周辺に軍事力を集中させて居り、今、この瞬間に侵攻が始まっても可笑しく無い状況と言われて居ます。その為アメリカ、そして欧州各国がロシアの侵攻を思い留まらせるべく動きを強めて居ます。処が、この様な情勢にも関わらず、日本政府はロシアと平和条約締結交渉を行って居る模様です。
各国がロシアに依る侵攻を阻止すべく動いて居る中で、日本がこの様な姿勢を取り続け、もしもロシアが攻撃を開始すれば(しなくとも)、日本は欧米諸国から非難される事でしょう。
思い出されるのは1991年の湾岸戦争です。日本は、金は出したものの人的貢献を行わず非難を浴びました。又将来、中国に依る台湾侵攻や北朝鮮に依る何等かの軍事行動が勃発した場合、日本にも被害が及ぶ可能性が大ですが、今回のロシアによるウクライナ侵攻に目を瞑り続けた日本を助けて呉れる国は無いでしょう。
ロシアによる東欧への侵攻は、極東日本のマスコミに取っては対岸の火事であり、大きな関心を持って報じられて居るとは言えません。しかしながらこのママでは、日本は深刻な外交的損失を招きかねません。
そこで以下では、ロシアに依る軍事侵攻に対して日本が出来る事・そして日本がすべき事を、元自衛官の目線で考えてみたいと思います。
■「侵略は許さ無い」と各国がロシアを非難
イギリスは、急遽ウクライナに相当数の対戦車ミサイルを供給して居ます。 又バルト三国の二国、ラトビアとリトアニアは個人携行地対空ミサイルを、エストニアはイギリスと同様の対戦車ミサイルの提供を始めました。
アメリカは、これ等の行動に承認を与えては居ますが、アメリカ自体は、NATO加盟国であるルーマニア迄戦力を前進させて居るものの、直接ウクライナに対しては積極的に軍事力の提供には乗り出して居ません。
積極的な交渉を続ける一方、バイデン大統領が「小規模な侵攻」であれば容認するかの様な発言を行い、その後釈明に追われる等姿勢を決めかねて居る様にも見えます。この他にもウクライナへの融資を決めた国が在る等、欧米各国は程度の差はあれ、基本的にウクライナを支持しロシアによる軍事圧力を非難して居ます。各国は基本的に「侵略は許さ無い」としてロシアを非難して居ます。
特にバルト三国の場合は、ウクライナ侵略を許してしまうと次は自国が侵略される事に為ると云う事態を恐れて居ます。フィンランド等も歴史的経緯から同様のコンテクストで警戒を強めて居ます。
一方、ドイツの様に、ロシアに強い姿勢を取れずに居る国も在ります。ドイツは全原発の停止が迫って居ます。その状況で、パイプラインによるロシアからの天然ガス供給を止めた場合、エネルギー危機に為り兼ね無いと云う事情があります。
■日本はウクライナ侵攻を不問に?
日本の対ロシア外交はどう為って居るでしょう。 ロシアのラブロフ外相は、1月14日、平和条約締結交渉の為数カ月以内に訪日予定であると発言しました。日本側の情報が在りませんが、否定をしていない処を見ると、訪日調整を行って居る事は間違い無い様です。
日本は、今にもウクライナへ侵攻しようとしている国の外相を迎え、平和条約締結に向けた交渉を行おうとしているのです。これは、例え明言せずとも、ウクライナへの侵攻を不問にすると表明していることと変わりありません。
実は、こうした日本政府・外務省の姿勢は、今に始まった事ではありません。2014年のクリミア危機・ウクライナ東部紛争に際しても、日本政府は北方領土交渉を続けて居た為、ロシアと接触を続けて居ました。欧米諸国と足並みを揃えず対ロ経済制裁にも消極的でした。
その結果、2016年、当時の安倍首相が交渉の最終段階として場を設けた長門会談に於いて、日本は完全なちゃぶ台返しを食らいました。
昨年(2021年)末に安倍元首相が明らかにした様に、当時の交渉は、歯舞(はぼまい)・色丹(しこたん)の二島返還に舵を切って居ましたが、プーチン政権はそれにさえ応じ無かったのです。処が日本側はそれに懲りる事無く、今回も平和条約締結交渉を行うようです。
プーチン政権が今に為って譲歩して来て居るとはとても考えられませんが、何故か日本政府は交渉に前向きです。
2018年にプーチン大統領が主張した「前提条件の無い平和条約を締結した後、議論だけは続ける」と云う暴論を飲む積りなのかも知れません。しかしロシアは、2014年のクリミア危機・ウクライナ東部紛争の時と同様に、日本に譲歩の姿勢だけを見せて実質的には何も進展させ無いでしょう。要するに西側陣営を弱体化させる為に、先ずは最も脆弱な日本を切り崩そうと云う訳です。
■ 日本周辺でも実施されるウクライナ侵攻「支作戦」
ウクライナ侵攻がロシアの「主作戦」ですが、平和条約締結交渉による日本の切り崩し、それにガス等のエネルギー供給問題でのドイツの切り崩し等は、ロシアに取って主作戦を成功させる為の政治的「支作戦」だと言えます。
ロシアはウクライナに対して圧倒的な軍事力を保持して居ますが、西側の結束した非難・制裁があれば、ロシア国内の政治・経済がプーチンに取って好ましく無い状況に為る可能性は十二分に在るからです。
またロシアは軍事面においても「支作戦」を展開して居ます。1月20日、ロシア国防相は、1月から2月にかけ、ロシア近海や大西洋・地中海に留まらずオホーツクや太平洋でも大規模な演習を実施すると発表しています。
これは、政治的にも西側に対する牽制に為って居ますが、陸上戦力の1/3をウクライナ周辺に集結させて居るロシアに取って、戦力を引き抜かれた地域に於ける軍事的な不安を払拭する為の行動なのです。
一般の方に取っては、この感覚を理解するのはナカナカ難しいと思います。ウクライナに侵攻する為太平洋に海軍を押し出す意味は見え無いでしょう。しかしながら、軍人の目線では自然な感覚です。ウクライナ周辺に送る為に戦力を引き抜いた極東域等の地域の防衛力が弱く為って居る為、それを補う目的で海軍を進出させ、警戒に当たって居ると云う訳です。
この点を考えると、1月初めに発生したカザフスタンの争乱も、暴動を仕掛けたのはロシアだったのではないかとの憶測が生まれます。争乱に対して、ロシアは最終的に軍隊を送り込んで鎮圧して居ます。これに依って、ロシアはウクライナ侵攻前に、カザフスタン周辺の不安を払拭する事が出来ました。
■ 日本に出来る事、日本がすべき事
この状況で、日本に出来る事・日本がすべき事は何でしょうか。最も大切なのは、ラブロフ外相の訪日をキャンセルし平和条約締結交渉を即刻ストップさせる事です。日本は、中国による「力を背景とした現状変更」を拒否する姿勢を示して居ます。
しかし、ロシアによる「力を背景とした現状変更」即ちウクライナ侵攻を認めてしまえば、対中国で筋が通ら無く為ります。
1月21日に実施されたバイデンアメリカ大統領とのオンライン協議に於いて、岸田首相は「ロシアによるウクライナ侵攻を抑止する為に共に緊密に取り組み、如何なる攻撃に対しても強い行動を執る」と述べ「米国や他の同盟国・パートナーとの緊密な連携を継続」する事を約束しました。ロシアとの平和条約締結に向けた交渉は、この言葉を裏切る事に為ります。何よりも、この情勢下に於いて平和条約締結交渉を行うのは、ロシアを支援する事でしかありません。
日本は、もっと積極的な方策を執る事も可能です。イギリスやバルト三国の様に武器を供与したり、カナダの様に資金融資をする方法も在りますが、日本が使用して居る武器でウクライナが即座に使えるものは少なく、国内法的にも手続きが煩雑で時間が掛かります。それよりも「日本がウクライナとは遠く離れて居てもロシアとは近い位置に在る」と云う事実を有効活用すべきです。
間も無く始まる見込みのロシア海軍の演習は、日本近海でも実施されます。これに対して偵察等の妨害行為を徹底的に行う事が有効です。
1つには、妨害行為自体が「侵攻を許さ無い」と云う政治的なメッセージと為ります。そして何より、ロシアが更に極東域の戦力をウクライナ方面に移動させる事の牽制に繋がります。平和条約締結交渉を継続してロシアを安心させるのでは無く、逆に極東方面不安にさせる事で、ウクライナに集中出来無くさせるのです。
■ 日本とウクライナの共通点
2月7日は「北方領土の日」ですが、ここ数年、ウクライナ首都キエフの外務省やロシア大使館周辺では、ウクライナ人に依る「日本への北方領土返還」を迫るデモが開催されて居ます。日本は北方領土を、ウクライナはクリミアや東部を、共にロシアに奪われて居るからです。
両国共ロシアに領土を奪われて居る点で、日本とウクライナは協力し合える立場なのです。処が日本のマスコミは、こうした点を殆ど報道しません。
2018年末筆者は、日本とウクライナが外交・軍事面で協力し、ロシアの謀略に対抗する小説『北方領土秘録 外交という名の戦場』(祥伝社)を上梓しました。作中でモデルとさせて頂いた、駐ウクライナ大使で在った角茂樹氏に伺った処、この小説は外務省内でも話題と為ったそうです。しかし、残念ながら日本の外交は、紛争が間近に迫ったこの状況に於いて平和条約締結交渉を続けて居る様な状態です。
ウクライナが更なる侵攻を受けそうな今こそ、ロシアを非難する事で各国と連帯して、北方領土がロシア領として固定化される事を防が無ければ為りません。
数多 久遠
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