2019年07月16日
書評−あしたの君へ
またまた書評で恐縮です。作者の柚月裕子氏については、以前に「検事の使命」などの
そして今回の「あしたの君へ」については、家裁調査官補の物語なので、従来の検事・
検察物ほど重くはなく、気軽に読めそうと勝手に解釈していましたが、とんでもござい
ません、失礼いたしましたという内容の濃いものでした。丁度良い機会になりましたの
で、改めて紹介させていただきたいと思います。
内容は5話から作られておりまして
?@ 背負う者 (17歳 友里)
?A 抱かれる者 (16歳 潤)
?B 縋る者 (23歳 理沙)
?C 責める者 (35歳 可南子)
?D 迷う者 (10歳 悠真)
夫々が、けっこう考えさせられる重いテーマを持っています。詳しくは読んでからのお楽
しみという事ですが、現代に蔓延する普遍的なテーマとでもいうものでしょうか。大きく
共通するのは、家庭・家族です。そこにそれぞれ病気、夫婦関係、親子関係、離婚問題な
どが複雑に絡み合って、人間関係をより修復不可能なものにしてしまう。それに気後れし
ながらも、果敢に立ち向かっていく家裁調査官補の物語です。
主人公は望月大地。裁判所職員採用総合職試験に合格し、現在は福森市で2年間の養成課
程研修の真っ最中。同僚の藤代美由紀、志水、先輩の溝内、上司の真鍋、露木などのかか
わりの中で、時に喧嘩し、悩み、諭され、元気づけられしながら、自分では自信の持てな
い家裁調査官という仕事について戸惑う事ばかり。そんな大地に次々と解決が難しいと思
われる案件が降りかかる。果たして大地の運命は?
この本を読んで痛切に感じたのは、当事者同士でも関わりたくない親子問題、家族問題、
夫婦問題、その他諸々の家庭・家族に関する事案に、真摯に寄り添っている家裁調査官と
いう職業があり、そういう人たちが現実にいるんだという事。つまり今までは離婚調停、
あっ、家庭裁判所ねという軽い感覚で、家裁調査官という人がいる事も、他人の事案にこ
れほどかかわって仕事している事も、全く知らなかったという反省です。
正直やりがいのある仕事であるし、第3章の理沙の言葉で「自分では問題を解決できずに、
調停委員や家裁調査官という他人に、頼るしかない人間もいるの。望月君も、頑張って悩
んでいる人の力になってあげて」という泣かせるシーンもあるが、お前にやれるかと問わ
れれば、例え資格があったとしても考えてしまう程、重い仕事です。
毎度の事ですが、柚月さんの小説には本当によく泣かされます。でもその後はとても清々
しい気分になります。それでは又。
【相場師朗】のショットガン投資法
紫垣デイトレード塾
人気ブログランキングへ
にほんブログ村
にほんブログ村
株式投資ランキング
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/8781753
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック