差し込んでくる街灯の明かりが、埃塗れの姿を映し出す。
ふと気づいて、捲れたタイトスカートの裾を直す。
埃に塗れた身体は、あちこちに血も滲んでいる。
よく見ると、上着には、何箇所か裂け目ができている。
徐に、深く呼吸する。
一つだけ残った、上着のボタンを留める。
思った以上に、奴のナイフに掠められている。
ボタンが跳んで開けた、シャツブラウスの前をあわせる。
胸元に紅いbraが覗くが、剥き出しになるわけではない。
外は暗いし構わない、自分に言いきかせる。
それから、フラフラの下肢を引きずるように、再び階段に向かう。
埃に塗れたピンヒールで階段を上る。
一段毎に、ピンヒールが静かなビルに響き渡る。
漸く、踊り場に辿り着く。
壁に凭せ掛けた彼女、両脇を抱えるように引っ張る。
意識のない彼女の身体に、全身が軋む気がする。
なんとか彼女を、踊り場の端に座らせる。
ワタシは、二段下の階段で腰を屈める。
段差を利用して、もう一度、彼女をおんぶする。
動かない彼女の重みがのしかかる、さすがに堪える。
前屈みのまま、階段の壁に手をついて、上着の袖から上半身を滑らせる。
腰まで過ぎると、臀筋に力を加えて壁を押す。
壁にお尻をつけると、背中の彼女の重みを預ける。
その状態で、お尻を横に滑らせる。
タイトスカートのお尻を壁に摺りながら、一段ずつ横歩きで下りていく。
ピンヒールがよろけないよう気をつけながら、ゆっくり階段を下りる。
漸く、フロアに辿りつく。
思わぬ息の荒さに、あらためて呼吸を整える。
背中の彼女を揺するようにして、しっかりとかかえ直す。
玄関ロビーを抜ける。
倒れたままの奴等を残して、ビルを出る。
通りに出た途端、目の前に車が滑り込む。
ワタシが借りた車?なぜ?
疑問にこたえるように助手席のドアが開く。
「乗って、送るわ」
例の、今回の彼のパートナー。
運転席でハンドルを握るブロンドの彼女。
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