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2021年08月10日
face to face 〜 client
旧知の彼?から依頼された仕事。
ある女性議員のボディガード。
対面の約束は、今日のお昼。
会期中の今、何かと忙しいらしく、昼食時に偶にしか時間がとれないらしい。
約束の議場近くのホテル、ロビーのカフェ。
その女性は、秘書らしい男女と書類を見ながら、なにやら打ち合わせしている。
少し離れて控えていると、彼女がワタシに目を留める。
秘書達に何か言うと、男女二人がソファから立ち上がって、その場を離れる。
遠目から軽く会釈して、彼女の座るソファに近づく。
彼女が立ち上がって、右手を差し出す。
「今日からよろしくね」
微笑む彼女にこたえる。
「よろしくお願いします」
彼女の手を握り返す。
手を放して、彼女が言う。
「ところで、あなた、お昼まだでしょ?」
「えっ、ええ」
「じゃ、つきあって」
「あっ、はい」
先に歩きはじめる彼女を追うようにして、エレヴェータに向かう。
ワタシたちに気づいたポーターが、先導するようにエレヴェータのボタンを押す。
扉が開く。
「ありがとう」
彼女がポーターに言って、乗り込む。
ポーターに会釈して、後に続くワタシ。
エレヴェータの中で彼女が、展望レストランのフロアのボタンを押す。
扉が閉まると、静かに箱が上昇する。
並んで立つ彼女が切り出す。
「ここ割といけるのよ、あなた、好き嫌いはない?」
「ええ、好きなものはありますが、基本的に何でもいただきます」
扉が開いて、レストランに向かう。
レストランに入ると、ウェイターが誘導して、奥の一角に案内する。
ウェイターに椅子を引かれて、彼女が座る。
「ありがとう」
彼女が、微笑みながらウェイターに言う。
会って間もないが、既に何度か耳にする彼女の言葉。
自然に言える政治家は少ないかも知れない。
ワタシも座りながら言う。
「ありがとう」
メニュを置いてさがるウェイター。
ある女性議員のボディガード。
対面の約束は、今日のお昼。
会期中の今、何かと忙しいらしく、昼食時に偶にしか時間がとれないらしい。
約束の議場近くのホテル、ロビーのカフェ。
その女性は、秘書らしい男女と書類を見ながら、なにやら打ち合わせしている。
少し離れて控えていると、彼女がワタシに目を留める。
秘書達に何か言うと、男女二人がソファから立ち上がって、その場を離れる。
遠目から軽く会釈して、彼女の座るソファに近づく。
彼女が立ち上がって、右手を差し出す。
「今日からよろしくね」
微笑む彼女にこたえる。
「よろしくお願いします」
彼女の手を握り返す。
手を放して、彼女が言う。
「ところで、あなた、お昼まだでしょ?」
「えっ、ええ」
「じゃ、つきあって」
「あっ、はい」
先に歩きはじめる彼女を追うようにして、エレヴェータに向かう。
ワタシたちに気づいたポーターが、先導するようにエレヴェータのボタンを押す。
扉が開く。
「ありがとう」
彼女がポーターに言って、乗り込む。
ポーターに会釈して、後に続くワタシ。
エレヴェータの中で彼女が、展望レストランのフロアのボタンを押す。
扉が閉まると、静かに箱が上昇する。
並んで立つ彼女が切り出す。
「ここ割といけるのよ、あなた、好き嫌いはない?」
「ええ、好きなものはありますが、基本的に何でもいただきます」
扉が開いて、レストランに向かう。
レストランに入ると、ウェイターが誘導して、奥の一角に案内する。
ウェイターに椅子を引かれて、彼女が座る。
「ありがとう」
彼女が、微笑みながらウェイターに言う。
会って間もないが、既に何度か耳にする彼女の言葉。
自然に言える政治家は少ないかも知れない。
ワタシも座りながら言う。
「ありがとう」
メニュを置いてさがるウェイター。
2021年08月11日
menu 〜 client
女性議員がメニュを開いて言う。
「私に任せてくれる?」
「…えっ、ええ」
突然の申し出に、一瞬躊躇するが、ここは、よく通う彼女の舌を信じよう。
彼女が手を上げると、ウェイターが静かに控える。
彼女がメニュを指しながら、いくつかのものを二つずつオーダーする。
ウェイターが、メニュを受け取り、畏まってさがる。
ワタシより結構年上のはずだが、そんな素振りは微塵もみせない。
年下のワタシに対等に接する。
しばらくして、スープカップが運ばれてくる。
辺りに漂うトマトベースの香り。
一匙掬う。
ゆっくり舌の上に広げる。
絶品というほどではないが、なかなかいける味わい。
時々ワタシの反応を確認するように、彼女がワタシを伺う。
「どう?このテのレストランにしては悪くないでしょ」
「ええ、おいしいですね」
スープを終えると、小さなサラダが運ばれてくる。
一口運んで、思わぬドレッシングの旨さに舌をまく。
ともすると、ただの添え物になってしまう一品。
こういうところの丁寧さが、その店の品格を現す。
今度は訊かれることもなく、素直に口に出る。
「なかなかおいしいですね」
彼女が、にっこり笑ってサラダを頬張る。
そこにパスタが運ばれてくる。
トマトソースのシンプルなパスタ。
彼女が言う。
「会期中はよくいただくの、腹もちもいいし、トマトのリコピンは美容にもいいから」
後半は、少し笑いながら話す彼女。
彼女の自然な笑顔と気安さに、いつのまにか自然と受け答えするワタシ。
「ワタシも、トマトは好きです、自分でピクルスにするくらい」
パスタをいただく合間に、彼女が訊いてくる。
「あなた、自炊するの?」
「ええ、たいていは自分で作っていただきます」
「今の若いヒトは皆コンビニ弁当で、自炊なんかしないのかと思ってたわ」
「珍しいのかもしれませんが、出来合いのものは滅多に買いません、何がどう使われているか分からないので」
「そう、でもあなたのような仕事をするヒトは、自然にそうなるのかも知れないわね」
言われて気づく今まで考えてもみなかったこと。
「私に任せてくれる?」
「…えっ、ええ」
突然の申し出に、一瞬躊躇するが、ここは、よく通う彼女の舌を信じよう。
彼女が手を上げると、ウェイターが静かに控える。
彼女がメニュを指しながら、いくつかのものを二つずつオーダーする。
ウェイターが、メニュを受け取り、畏まってさがる。
ワタシより結構年上のはずだが、そんな素振りは微塵もみせない。
年下のワタシに対等に接する。
しばらくして、スープカップが運ばれてくる。
辺りに漂うトマトベースの香り。
一匙掬う。
ゆっくり舌の上に広げる。
絶品というほどではないが、なかなかいける味わい。
時々ワタシの反応を確認するように、彼女がワタシを伺う。
「どう?このテのレストランにしては悪くないでしょ」
「ええ、おいしいですね」
スープを終えると、小さなサラダが運ばれてくる。
一口運んで、思わぬドレッシングの旨さに舌をまく。
ともすると、ただの添え物になってしまう一品。
こういうところの丁寧さが、その店の品格を現す。
今度は訊かれることもなく、素直に口に出る。
「なかなかおいしいですね」
彼女が、にっこり笑ってサラダを頬張る。
そこにパスタが運ばれてくる。
トマトソースのシンプルなパスタ。
彼女が言う。
「会期中はよくいただくの、腹もちもいいし、トマトのリコピンは美容にもいいから」
後半は、少し笑いながら話す彼女。
彼女の自然な笑顔と気安さに、いつのまにか自然と受け答えするワタシ。
「ワタシも、トマトは好きです、自分でピクルスにするくらい」
パスタをいただく合間に、彼女が訊いてくる。
「あなた、自炊するの?」
「ええ、たいていは自分で作っていただきます」
「今の若いヒトは皆コンビニ弁当で、自炊なんかしないのかと思ってたわ」
「珍しいのかもしれませんが、出来合いのものは滅多に買いません、何がどう使われているか分からないので」
「そう、でもあなたのような仕事をするヒトは、自然にそうなるのかも知れないわね」
言われて気づく今まで考えてもみなかったこと。
2021年08月12日
residue of espresso 〜 client
話をしながらも、二人食べ進める。
しばらくして、互いにパスタの皿が空く。
ウェイターが皿をさげる。
彼女が、見計らったように言う。
「初めて会う人とは、なるたけ食事を一緒にするようにしてるの」
「…?」
「食事の仕方をみれば、そのヒトのことは、ほぼ分かるから」
そうなのかしら?と思いながら、彼女の言葉を待つ。
「少なくとも、これまで会ってきたヒトの判断は、間違ってなかったわ」
「…それで、ワタシは?」
恐る恐る訊いてみる。
彼女が、満面の笑みを浮かべて言う。
「最高よ、今まで会った中で、一番気が合うはずよ」
「あっ、ありがとうございます」
思わず俯いてる。
面と向かって言われると、相手が同性でも嬉しい反面、照れくささも募る。
俯いていると、ウェイターが飲み物を運んでくる。
辺りに、いい香が漂う。
「あなたも、好きだといいけど」
彼女が言いながら、グラニュウ糖を一匙、エスプレッソに入れる。
ワタシも、いつものように軽く一匙入れる。
一口含む。
苦味が、口中から鼻腔に広がる。
思わず呟く。
「うん、おいしい」
瞬間、エスプレッソの飲み方を教えてくれた彼との思い出が蘇る。
知ってか知らずか、ワタシの仕草をみて、彼女が言う。
「よかったわ、気に入ってくれて、あなたも一匙なのね」
「ええ、甘党ではないですし、苦味のほうがおいしく感じられて」
彼女が大きく頷く。
「やっぱり、あなた、きっと私と最高の相性よ」
彼女が、エスプレッソの最後の一口を残して、カップを置く。
その様子を見て、ワタシと同じと思いながら、ワタシもカップを置く。
「あなたも、最後の一口残すのね」
「ええ、ワタシにはどうにも甘くて、それに残骸にしか見えなくて」
「残骸?エスプレッソの残骸か、面白いことをいうのね」
「可笑しいですか?」
「いえ、何となく分かる気がする、私も使わせてもらうわ、エスプレッソの残骸」
最後は笑いながら言って、彼女が席を立つ。
席を立って後を追う。
斜め後ろを歩くワタシ。
しばらくして、互いにパスタの皿が空く。
ウェイターが皿をさげる。
彼女が、見計らったように言う。
「初めて会う人とは、なるたけ食事を一緒にするようにしてるの」
「…?」
「食事の仕方をみれば、そのヒトのことは、ほぼ分かるから」
そうなのかしら?と思いながら、彼女の言葉を待つ。
「少なくとも、これまで会ってきたヒトの判断は、間違ってなかったわ」
「…それで、ワタシは?」
恐る恐る訊いてみる。
彼女が、満面の笑みを浮かべて言う。
「最高よ、今まで会った中で、一番気が合うはずよ」
「あっ、ありがとうございます」
思わず俯いてる。
面と向かって言われると、相手が同性でも嬉しい反面、照れくささも募る。
俯いていると、ウェイターが飲み物を運んでくる。
辺りに、いい香が漂う。
「あなたも、好きだといいけど」
彼女が言いながら、グラニュウ糖を一匙、エスプレッソに入れる。
ワタシも、いつものように軽く一匙入れる。
一口含む。
苦味が、口中から鼻腔に広がる。
思わず呟く。
「うん、おいしい」
瞬間、エスプレッソの飲み方を教えてくれた彼との思い出が蘇る。
知ってか知らずか、ワタシの仕草をみて、彼女が言う。
「よかったわ、気に入ってくれて、あなたも一匙なのね」
「ええ、甘党ではないですし、苦味のほうがおいしく感じられて」
彼女が大きく頷く。
「やっぱり、あなた、きっと私と最高の相性よ」
彼女が、エスプレッソの最後の一口を残して、カップを置く。
その様子を見て、ワタシと同じと思いながら、ワタシもカップを置く。
「あなたも、最後の一口残すのね」
「ええ、ワタシにはどうにも甘くて、それに残骸にしか見えなくて」
「残骸?エスプレッソの残骸か、面白いことをいうのね」
「可笑しいですか?」
「いえ、何となく分かる気がする、私も使わせてもらうわ、エスプレッソの残骸」
最後は笑いながら言って、彼女が席を立つ。
席を立って後を追う。
斜め後ろを歩くワタシ。
2021年08月13日
change of clothes 〜 client
エレヴェータに乗ると、彼女が言う。
「じゃ、夕方事務所に来て、はい、これ」
彼女が、名刺を差し出す。
名刺には、事務所の住所と電話番号が印刷されている。
受け取りながら訊く。
「あの、何時に伺いますか」
「そうね、今日は6時には終わってると思うから、その前後にお願い」
「分かりました、では6時に伺います」
エレヴェータが止まり、扉が開く。
彼女に続いて踏み出すと、二人の背中で扉が閉まる。
歩きながら、思い出したように彼女が言う。
「あっそうそう、着替えも用意してきて」
「えっ、着替え?ですか」
「そうね、ひとまず一週間分」
「あの、どういう?…」
ワタシの疑問には取り合わず、彼女が続ける。
「昼間は、秘書と一緒だから、プライヴェイトの時間を一緒にいてほしいの、だから、ウチに寝泊りして」
「寝泊り?ですか」
「本当は、ボディガードなんか要らないって、言ったんだけど、最適な女性(ヒト)がいるって奨められて」
「最適?誰に奨められたんですか?」
それには答えず続ける彼女。
「でも頼んでよかったわ、相性ピッタリのあなたが来てくれて」
「それで誰に?…」
しつこく駄目元でくいさがってみるワタシ。
やはり無視して続ける彼女。
「あなたのこと、あまり気にかけられないし、あなたも、その方が仕事しやすいでしょ」
「それはそうですが、お邪魔じゃありませんか?」
「あなたに会う前ならそうね、そう考えてたわ、でもあなたなら、お互いリラックスして過せると思うわ」
「それならいいですが」
「じゃあ、後でね」
そういい残すと、彼女に近づいてくる男女の秘書と言葉を交わす。
そのまま、連れ立ってロビーの一角に向かう。
一人佇むワタシは、思わぬ依頼に頭を巡らせる。
一週間分って、いったい何を持っていこう。
あれこれ考えながらホテルを出るピンヒール。
「じゃ、夕方事務所に来て、はい、これ」
彼女が、名刺を差し出す。
名刺には、事務所の住所と電話番号が印刷されている。
受け取りながら訊く。
「あの、何時に伺いますか」
「そうね、今日は6時には終わってると思うから、その前後にお願い」
「分かりました、では6時に伺います」
エレヴェータが止まり、扉が開く。
彼女に続いて踏み出すと、二人の背中で扉が閉まる。
歩きながら、思い出したように彼女が言う。
「あっそうそう、着替えも用意してきて」
「えっ、着替え?ですか」
「そうね、ひとまず一週間分」
「あの、どういう?…」
ワタシの疑問には取り合わず、彼女が続ける。
「昼間は、秘書と一緒だから、プライヴェイトの時間を一緒にいてほしいの、だから、ウチに寝泊りして」
「寝泊り?ですか」
「本当は、ボディガードなんか要らないって、言ったんだけど、最適な女性(ヒト)がいるって奨められて」
「最適?誰に奨められたんですか?」
それには答えず続ける彼女。
「でも頼んでよかったわ、相性ピッタリのあなたが来てくれて」
「それで誰に?…」
しつこく駄目元でくいさがってみるワタシ。
やはり無視して続ける彼女。
「あなたのこと、あまり気にかけられないし、あなたも、その方が仕事しやすいでしょ」
「それはそうですが、お邪魔じゃありませんか?」
「あなたに会う前ならそうね、そう考えてたわ、でもあなたなら、お互いリラックスして過せると思うわ」
「それならいいですが」
「じゃあ、後でね」
そういい残すと、彼女に近づいてくる男女の秘書と言葉を交わす。
そのまま、連れ立ってロビーの一角に向かう。
一人佇むワタシは、思わぬ依頼に頭を巡らせる。
一週間分って、いったい何を持っていこう。
あれこれ考えながらホテルを出るピンヒール。