無意識にアイコンタクトする。
カウントなしに呼吸が合う。
SUVの少し高い後部席に、二人で議員を持ち上げる。
彼女がSUVの後部席に乗り込んで、シートベルトで議員の身体を固定する。
ワタシはその様子を見ながら、乗ってきた車の後部ドアを、身体を凭せかけるようにして閉める。
彼女がSUVの後部ドアを閉める。
ワタシに向きなおって言う。
「あなたも乗って」
「…」
応える気力もないワタシ。
促されるままに、少し高い助手席に苦労して乗り込む。
彼女が、対照的にキビキビと運転席に乗り込む。
初めて気づいたように訊くワタシ。
「…どこに?」
SUVは、既に駐車場を出ている。
朦朧とする中であらためて訊く。
「…ここ…彼女の…マンション…どこに…行くの?」
「彼女もあなたも、手当てが必要よ」
「…病院に…行くの?」
「彼女を連れて行くと騒ぎになるわ、それに、もっといいところがあるわ」
彼女がウィンクして微笑む。
車は走り続ける。
「起きて、手伝って」
なぜか懐かしさを感じる声に、目が覚める。
いつのまにか、うとうとしていたらしい。
我に返って、軋む身体を助手席から引っ張り出す。
彼女が、後部ドアを開けて、議員の両腕を肩にかけて言う。
「彼女を、私の背中に載せて頂戴」
ワタシは、後部席に頭から突っ込んで、議員の腰を両腕で抱きかかえる。
そのまま車の外の彼女に、議員の身体を預ける。
彼女が、議員をおんぶして歩きはじめる。
後部ドアを閉めるワタシに言う。
「ゆっくりでいいから、ついてきて」
「…」
応える気力もないワタシ。
ズンズン進む彼女のピンヒールを、視線の先にとらえる。
促されるようにピンヒールを踏み出すワタシ。
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