そんな様子を見て、青い瞳を丸くするブロンドの彼女。
彼女が、運転席を降りて車をまわってくる。
助手席の前で、前屈みのまま、なんとか議員をおんぶしているワタシ。
彼女が、ワタシの背中にまわる。
不意に背中が軽くなり、身体が浮くように感じる。
彼女が、背中から議員を持ち上げて、後部席に乗せている。
その様子を目で追うワタシ。
車の屋根に両手をついて身体を支えている。
なんとか、助手席に身体を沈める。
彼女が、後部席のドアを閉める気配。
カツカツと近づく音を聞いて、彼女の顔がワタシの前に現れる。
そのままワタシに覆いかぶさるようにして、シートベルトを締める。
彼女が助手席のドアを閉めると、車の前をまわって、運転席に乗り込む。
運転席のシートベルトを締める音。
次の瞬間、車がスキッド音を残して発進する。
前を向いたまま、肩で息をしながら彼女に訊く。
「…どういう…こと?」
彼女が、車列を縫うようにハンドルを切りながら応える。
「協力してるのよ、別にいいでしょ」
「…どう…して?」
言葉少なく、呼吸を整えながら、もう一度訊くワタシ。
彼女が、助手席のワタシを一瞥して言う。
「今のあなたには、必要なはずよ、彼も、私達が協力すること、願ってたでしょ」
「…」
応えられずにいるワタシに、彼女が続ける。
「車を変えるから、もう少しの間、頑張って」
気づくと、議員のマンションの駐車場。
黒いSUVの隣にとまる。
彼女が、運転席から降りながら言う。
「ちょっと手伝って」
身体が軋むのを感じながら、助手席から降りる。
彼女が隣のSUVの後部ドアを開けたまま、乗ってきた車の後部席を開ける。
隣あうドアの間に、議員を降ろそうとしている。
彼女と向かい合うように、議員の脇の下に腕を入れて、議員の身体を支える。
議員の身体が、二台の車の間に出る。
支えながら向き合う彼女とワタシ。
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