金髪にミニの彼女が先頭。
そして、議員、ワタシと後に続く。
彼女が黒いSUVの運転席に乗り込む。
後部席に、議員、そしてワタシが乗り込む。
議場に黒いSUVが乗りつける。
後部席からワタシが降りても誰も気にしない。
続いて議員が降りて一歩踏み出すと、砂糖に群がる蟻のごとく、待ち構えている記者たちが詰め寄ってくる。
ワタシが一歩、議員の前に出る。
一瞬、記者たちが固まる。
その隙に議員を先導する、が、すぐにまた取り囲まれる。
ワタシが前に出て制しても、一瞬離れるだけで、直ぐに詰め寄ってくる。
なかなか進めずにいると、腹に響く怒鳴り声、しかも英語。
皆の動きがとまる。
その隙に、議員とワタシがすり抜けるように入口を目指す。
しばらくして振り返ると、恐る恐る振り返る記者たちの後ろから、金髪の彼女が颯爽と登場する。
記者たちを圧倒するその姿は、まさに圧巻。
ワタシですら、格好いいと思う。
心強い味方を得て議員を誘導すると、議場の入口で秘書達に引き渡す。
議員が振り返って言う。
「ありがとう、今度は私が生命を懸ける番よ、みててね」
秘書達と話しながら議場に向かう彼女を見送る。
「さぁっ、帰るわよ」
朗らかな声に振り返る。
金髪を靡かせる彼女が、ミニで仁王立ちしてワタシを見ている。
頷いて、彼女に向かって歩きはじめる。
不意に前を塞がれる。
「あなた、議員との関係は?」
「その傷、どうしたんですか?」
「何があったんですか?」
記者たちが、今度はワタシに詰めよる。
そこに、また英語で怒鳴り声。
記者たちが固まる。
その間に、彼女がワタシの腕をとって、強引に歩きだす。
ミニの裾を気にせず大股に歩く彼女、遅れぬように歩を速めるタイトスカートのワタシ。
黒いSUVが近づいてくる。
彼女が、助手席のドアを開けて促す。
ワタシが乗り込む間に、彼女が運転席にまわる。
シートベルトを締めると、スキッド音を残して黒いSUVが発進する。
呆然とする記者たちが小さくなる。
運転席の彼女が、胸元からサングラスを取り出してかける。
口元に笑みを浮かべて言う。
「あなた、ああいうの嫌いでしょ」
「ええ、必要なら仕方ないけど、今は違う」
前を見たまま応える。
サングラスの横顔の彼女が、笑ったような気がする。
初夏に近い陽射しに、ワタシも上着からサングラスを取りだしてかける。
金髪にサングラスの彼女と、黒髪にサングラスのワタシ。
初夏の陽射しに煌く車列に紛れ込む。
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2021年09月28日
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