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2021年07月21日

in a locker

上着に伸ばそうとした腕がぼやける。

よろけそうになって、思わずパイプ椅子の背凭れを掴む。
薬をいくらか打たれているのか、やはり自白剤の類か。
巨漢がアッと言う間に意識を失うのも、ワタシの咄嗟の蹴りの力だけではないはず。
急がないと、まともな動作も思考も出来なくなる。

パイプ椅子から上着を取って、片袖ずつ通す。
羽織って襟を引くが、前ボタンはなくなっている。
シャツブラウスの胸の分だけ、上着も開ける。

本来なら、男の持ち物をチェックしたいところ。
今はその時間も惜しい。

非常灯の下の扉、静かに開けて様子を伺う。
人気はない。
逸る気持ちを静め、そっと扉の外に出る。
やはり店舗の倉庫代わりの部屋。

店内の様子を伺う。
とっくに片付けも終わって、誰もいないらしい。
そこを狙っての男の動きということか。

店の正面は警備システムが作動している。
裏口は?男の仲間がいるかもしれない。
迷うことなく更衣室に向かう。

無人の更衣室に入って、もう一度、自分のロッカーの前に立つ。
ロッカーの扉を開けると、バッグは置かれたまま。
中身は?とられてはいないが、ゴチャゴチャに入っている。
一応、調べられたらしい。

身元を示すものは、潜入調査のためのカードが一枚きり。
今のワタシには辿りつかないはず。

手にしたバッグを斜にかける。
ショルダーベルトが、前ボタンのなくなった上着をおさえる。

奥の壁沿いのロッカーに向かう。
少し気だるさが出はじめている。
急がなきゃ、自分に言いきかせる。

ロッカーの一つを選んで、扉を開ける。
両手でロッカーの天板を掴み、懸垂するような格好になる。
狭いロッカーで蹴上がりするように身体を持ち上げる。

扉の内側にある小さな棚。
ストッキングの右膝を目一杯あげて、ピンヒールの爪先を掛ける。

大腿筋に引かれて、自然と捲れ上がるタイトなスカート。
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posted by afakenation at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 1.escape
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