よろけそうになって、思わずパイプ椅子の背凭れを掴む。
薬をいくらか打たれているのか、やはり自白剤の類か。
巨漢がアッと言う間に意識を失うのも、ワタシの咄嗟の蹴りの力だけではないはず。
急がないと、まともな動作も思考も出来なくなる。
パイプ椅子から上着を取って、片袖ずつ通す。
羽織って襟を引くが、前ボタンはなくなっている。
シャツブラウスの胸の分だけ、上着も開ける。
本来なら、男の持ち物をチェックしたいところ。
今はその時間も惜しい。
非常灯の下の扉、静かに開けて様子を伺う。
人気はない。
逸る気持ちを静め、そっと扉の外に出る。
やはり店舗の倉庫代わりの部屋。
店内の様子を伺う。
とっくに片付けも終わって、誰もいないらしい。
そこを狙っての男の動きということか。
店の正面は警備システムが作動している。
裏口は?男の仲間がいるかもしれない。
迷うことなく更衣室に向かう。
無人の更衣室に入って、もう一度、自分のロッカーの前に立つ。
ロッカーの扉を開けると、バッグは置かれたまま。
中身は?とられてはいないが、ゴチャゴチャに入っている。
一応、調べられたらしい。
身元を示すものは、潜入調査のためのカードが一枚きり。
今のワタシには辿りつかないはず。
手にしたバッグを斜にかける。
ショルダーベルトが、前ボタンのなくなった上着をおさえる。
奥の壁沿いのロッカーに向かう。
少し気だるさが出はじめている。
急がなきゃ、自分に言いきかせる。
ロッカーの一つを選んで、扉を開ける。
両手でロッカーの天板を掴み、懸垂するような格好になる。
狭いロッカーで蹴上がりするように身体を持ち上げる。
扉の内側にある小さな棚。
ストッキングの右膝を目一杯あげて、ピンヒールの爪先を掛ける。
大腿筋に引かれて、自然と捲れ上がるタイトなスカート。
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