ファン
検索
<< 2024年07月 >>
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31
最新記事
写真ギャラリー
最新コメント
タグクラウド
カテゴリーアーカイブ
月別アーカイブ
プロフィール

2024年07月24日

ヒッコリーロードの殺人






ヒッコリーロードの殺人


agasa.png




このブログは
アガサクリスティーが好きすぎて
無人島になにを持って行きたいかと聞かれたら
「アガサクリスティーの本」と答えるくらいの熱量があります
この本のこの作品のココが好き
または
この本のこういう所が見所!
というのを紹介していくブログです
自分の独断と偏見で★を付けていますが完全好みの問題なので、皆様とは違う価値観かもしれません。
ご容赦願います


このブログの最初はこちら

ヒッコリーロードの殺人

たわいない話かと思いきや奥が深い度  ★★★

登場人物が意外と死んじゃう度    ★★★

ポアロの秘書レモン様が出てきます度  ★★★

無人島に持っていきたい度       ★★☆ 



この作品の舞台は、

日本で言うところの

シェアハウス、

若い男女が共同で住む

アパートのような住宅です。

寮母さんや管理人さん、

食事も付いているので、

寮とホテルの中間っぽい感じ

でしょうか。

そこで寮母をしていたのが、

あのポアロの優秀な

機械のような正確さを

持つ秘書のミスレモンの

姉であることから、

雇い主のポアロは相談に

乗るという形で事件に

かかわっていくのです。


登場人物も個性的で

多国籍になり、

アガサの感情の感覚で

書いてるのか、わざとなのか

かなり人物像に偏りがありますが

身近に同じような

モデルの人がいたのでは

ないかと思ってしまいます。

この作品の面白いのは

意味のないと思われる

靴の片方とか、聴診器とか、

一見つながりがないものが、

最後には一本の線で

繋がるところです。

そのためには、

盗まれたのもの持ち主の

それぞれの性格や特徴が

合ってなくては疑問が出るのですが

そこはアガサのこと、

ばっちり表現しているので

点と線がつながります。

そこに矛盾がないのが

素晴らしいです。

hikkori.png



ネタバレなしの紹介

ヒッコリーロードという番地にある、若い男女が住むシェアハウスで、色んな物がなくなっていきます。
靴の片方、リュックサック、化粧コンパクト、廊下と玄関の電球、など他愛のないものばかりなくなるのですが、そこの寮母として働いているのがポアロの秘書ミスレモンのお姉さんなので、様子を見に行く事になります。

初めて訪れるシェアハウスで、捜し物のなくなったはずの靴の片方を携えて現われるポアロは魔法使いのようです。

シェアハウスのみんなに、一瞬で”ただのおじサンではない”と思わせることに成功します

他愛もないことと思われていた数々の不可解な物達の紛失の意見を求められたポアロは『ただちに警察に連絡しなさい』と言い放ち、まさかそんなことを言われると思ってなかった住人は騒然とします。

”うそつきは泥棒の始まり”と言いますが、この作品は、『泥棒は凶悪犯罪のはじまり』と言いたくなるような作品でした

紛失事件は凶悪な殺人事件へ発展します

登場人物も多くそれぞれが個性的なので何回か読むたび魅力も新たに発見できる作品だと思います。

ちなみに、ヒッコリーという単語はマザーグースの一説にも登場しますがポアロが口ずさむところも出てきます。(本編とは関係ないのですがアガサはよくマザーグースを小説に登場させますね)




ここからは少しネタバレありです

この作品が好きなのはポアロの優秀な秘書ミス・レモンが事件を持ってくるところです。

ミス・レモンというのはポアロの完璧な秘書で事務的な処理については一切”失敗しない”のキャラなのです。
私はこのミスレモンのロボットみたいに正確なところ、ポアロも一目置くくらい優秀なところに憧れます!


ポアロはこの優秀な秘書を一体どのように見つけてきたのでしょうか
ただ
唯一の欠点は人間についての興味がないという点なのです。
そんな彼女がかかわる事件だというのが面白いなと思います。


ミス・レモンに実は姉がいて、姉の方は世話好きで人間に興味がありシェアハウスの管理人をしているというから、面白いのです。姉ハバード夫人はミス・レモンとは違って人間の世話を焼くのが好きなのです。

しかしそのシェアハウスで、不可解で不愉快な盗難事件が続いているため、悩んでいたのです。

ミス・レモンは自分の雇い主のポアロに相談したところ、ポアロは強い口調で『警察にすぐ行きなさい』と言います。すると驚くことにそれを聞いた住人のシーリア・オースティンが『私がやりました』とすぐに告白しに来るのです。

実は同じ住人の心理学に興味があるコリン・マックナブを振り向かせたいとやってしまった戯れだったのです。気軽ないたずらだったわけです。そのいたずら作戦が功を奏し、コリンとめでたく結ばれたシーリアだったのですが、ここら辺は目も当てられないくらい恋愛チックです。甘くて熱々で恋愛小説だったかな?と思ってると、そのシーリアが翌朝なぜか死体で発見されます。
kyuu.png

婚約して幸せの絶頂だったハズなのに、翌朝死体ですから大ショックの急展開過ぎます。盗んだいくつかは、弁償するという話だったのですが、電球やリュックサックについては知らない、もしくは言葉を濁します。そこらへんも、うまいなあと思うんですが、それが事件の謎の鍵になるのです。

結局は、寮を巻き込んでの犯罪の巣窟だったのです。ミス・レモンの姉は管理人をしてますがオーナーは別にいて、姉は犯罪には無関係でした。ですがオーナーのニコレティス夫人は犯罪に加担していたため、殺されてしまいます。(戸棚の酒瓶の秘密とか巧妙に書かれていますが割愛します)

最初から一番犯人らしくもあり、それで却って犯人らしくなかった住人が黒幕として、ポアロに最後にはあぶりだされます。本当に見事な話の組み立てです。

登場人物が皆、個性的で、ドラマにしたときそれぞれ俳優さんは誰がいいかな、なんて想像してしまう作品で面白い作品だと思います。

ちなみに、ポアロの別作品『死者のあやまち』の中に似たようなトリックが出てきます。どこが似てるかはこれから読む人のお楽しみとして言わないでおきます。

2024年07月23日

ハロウィンパーティ 感想







agasa.png


ハロウィンパーティ


このブログは
アガサクリスティーが好きすぎて
無人島になにを持って行きたいかと聞かれたら
「アガサクリスティーの本」と答えるくらいの熱量があります
この本のこの作品のココが好き
または
この本のこういう所が見所!
というのを紹介していくブログです
自分の独断と偏見で★を付けていますが完全好みの問題なので、皆様とは違う価値観かもしれません。
ご容赦願います


このブログの最初はこちら




ハロウィンパーティ



イギリスのハロウィンパーティーを感じてみよう度  ★★★
アガサの分身?!推理作家のオリヴァが出てくる度  ★★★
林檎林檎?カボチャじゃなくてリンゴ?度      ★★★
無人島に持って行きたい度             ★☆☆


はろうぃん.png



ネタバレ無し紹介

10月になると町中にカボチャやオバケの飾りが見られますが
この本の中には、イギリスの伝統的なハロウィンが出てきます

子どもを楽しますために地域の大人達があれやこれや用意したりしてる場面から始まりますので、日本で言う自治体の子ども会などで用意するお楽しみ会に近いのかなと思います。
そんなアガサの時代のイギリスのハロウィンの様子が分かるので、それも楽しみに読んでみても面白いかも知れません。
(でもよく言われる『トリックアトリート』”お菓子をくれなきゃいたずらするぞ!”のシーンは出てこないのですが、なぜでしょう?風習が違うのでしょうか)

名探偵ポアロと推理作家のオリヴァが出てきます。
晩年の方の作品になるので、作品中に過去に解決した事件の名前が出てきて懐かしくさせます。
(ポアロが”ヘラクレスの冒険”などについて思いをはせたりしてファンの心をノスタルジックにさせるんです)
スペンス警視が引退していて”元”警視で登場したりします。

ここで、推理作家のオリヴァについて説明しますと、
この女流作家は、アガサ自身をモデルにしてると言われる人物です
お茶目でおしゃべりで、林檎好きなユニークな存在でポアロの悪友です。
(本当にアガサはこんな感じの人なのかな?と、想像して楽しくなります)
オリヴァと林檎は 切っても切れない関係で
今までも散々オリヴァが林檎を食べるシーンが出てきます。
(ハロウィン、といえばカボチャのはずですが、今作はリンゴが目立っています)
波呂絵人.png

そして、この事件は人気推理作家のオリヴァがいるからこそ、起こる殺人だとも言えます。
そう考えたらある意味ひどい話です!

kabo.png


ちょっとだけネタバレ

ミステリーファンで推理小説をたくさん読んでる人なら、もしかしたらこのお話の中盤くらいで、犯人が分かるかと思います。

アガサにしてはとても珍しい単純なトリックです。(個人の感想ですよ)
とはいっても、それを思い付いて、矛盾のない内容にするのはやっぱりさすがだと思います。


事件としては人気推理作家オリヴァが、ハロウィンの子どもパーティーゲストとして呼ばれている所から始まります。
子ども達も楽しいパティーの途中でオリヴァが推理作家ということもあり自然に殺人事件の話になってしまい、その中の一人が『殺人を見た』と言うのです。
注目を集めたい子どもの戯言かと思われましたし、誰も本気にしないのですがハロウィンパーティーでなんとその子が殺されてしまうのです。

その子どもが言い放った『私は殺人を見た』という嘘とも本当とも分からない言葉が原因なのではないか、とオリヴァは気がつき、ポアロに助けを求めます。

そうなると子どもが見たという殺人は本当にあったのか?偶然なのか?なにか他の原因で殺されたのか?
ポアロは捜査に乗り出します。

実はその殺人が起こった村は、偶然にも昔一緒に事件を捜査していたスペンス元警視の終の住処なのです。(アガサファンとしては警察を引退してからも、ポアロと交流がある設定をうれしく思うでしょう)

ポアロはスペンス元警視から村人の情報を聞き出し、主要人物を訪ねて回りますが村人が一人一人、”こんな人いるよなあ〜”って人物描写が素晴らしいです。

子どもが殺される話だし、無人島までは持って行って読む感じではないので、★は少なめですが、素晴らしい文章力でゾクゾクする魅力がたくさんあります!

簡単に位箇条書きにするとこんな感じです

1.ポアロの旧友のオリヴァ、スペンス元警視が出てくる
2.アガサの時代のハロウィンの雰囲気が味わえる
3.美男美女が出てきます
4.前半の緩やかなストーリーから後半一気に解決に向かう時の緊迫の面白さ
5.終盤の殺人の瞬間をまさに見ているかのような臨場感の表現(ぞっとします)





ちなみに2023年映画化された『ベネチアの亡霊』は『ハロウィーン・パーティー』の原作を元にして作成されたと言われていますが、別物となっています。オマージュ的な作品だと思います。
映画は別物として面白かったです。
感想は全然別のブログのところに 『ベネチアの亡霊』 簡単に書いています。

良かったらこちらもどうぞ

bene.png







2024年07月22日

招かれざる客 感想







agasa.png


招かれざる客


このブログは
アガサクリスティーが好きすぎて
無人島になにを持って行きたいかと聞かれたら
「アガサクリスティーの本」と答えるくらいの熱量があります
この本のこの作品のココが好き
または
この本のこういう所が見所!
というのを紹介していくブログです
自分の独断と偏見で★を付けていますが完全好みの問題なので、皆様とは違う価値観かもしれません。
ご容赦願います


このブログの最初はこちら


mane.png




アガサクリスティーのミステリー戯曲のひとつです。
題名が秀逸です!
ポアロやマープルのような有名な登場人物は出てこない戯曲ですが、ミステリアスに登場する主人公がばっちり読者をつかみます。
そして、主人公はおそらく美人ですが、男運が悪い!と、思ってしまうような展開に、私はつっこみまくりました!
ですが面白い!
そういう方向で読んでも、違った印象の楽しい作品になるかもなと思います。

戯曲としての面白さ    ★★★
ドラマティック度     ★★★
どんでん返し度      ★★★
人妻のドラマティック度  ★★★
無人島に持って行きたい度 ★★☆

招かれざる客 (ハヤカワ文庫) [ アガサ・クリスティ ]

価格: 704円
(2024/7/22 12:24時点)
感想(2件)




ネタバレなしの紹介

この作品は戯曲、つまり舞台で上演されるのを前提とした作品です。
戯曲とは台本のようなシナリオなので本を開くと、舞台の配置図の記載があります。
そこで読み慣れてない人は『ん?』と思うでしょうが。大丈夫、十分面白く読めます!
長編ほどには時間がかからずサクッと読めますし
舞台としてどんな風に俳優が動くのかなとか、思ったりしながら読むのも楽しいです。

戯曲としては『ブラックコーヒー』というポアロの主人公のものがアガサの初めて書いた戯曲になりますが、この『招かれざる客』は、有名な登場人物はいない作品です。
つまりポアロなどの有名な探偵は出てきませんがすでに舞台でもヒットを飛ばしているアガサの腕は確かで、登場人物が無名であっても面白さ十分なのです。
そもそも、アガサは題名の付け方が抜群にうまいのです。
印象的な題としては『そして誰もいなくなった』『ABC殺人事件』『春にして君を離れ』などがあると思いますが、この”招かれざる客”も優れた題名だと思います。

manekarezaru.png

あらすじ

車の故障で困ってる男が、屋敷に助けを求めてくるところから始まります。
すると、なんとその屋敷の中には男の死体があり、その同じ部屋にいる美しい女性が『私が殺しました』と言い放つという、ドラマチックな始まりです。
そしてこの女性は死んでいる男の妻なのですが、なぜか偶然訪ねてきたこの男が、話を聞くうちに殺した女性に同情できる点があるとして、彼女を助けようとする話です。

ネタバレ少しあり

この作品の面白さは、観客をいかにロマンチックにだますか、ということを工夫している点かなと思います。アガサの作品は読者があっと驚くような仕掛けのミステリーが得意ですが、これはそれに愛憎劇が混じるのです。
突然現れた見ず知らずの男マイクル・スタークウエッターがやってきて、困っている美しい妻ローラを助けようとする、簡単に言えばその一部始終なのですが、そのやりとりが小粋でおしゃれというかなんというか、魅力的です。
お互いが一目惚れなんじゃ無いの?というくらい最初から二人っきりの掛け合いシーンが刺激的に続きます。大体、突然家を訪れたら人が死んでいて、傍らにたたずむ人が”私が撃ちました”とか言ったら、すぐに警察を呼ぶなり、捕まえるなりするものでしょう?相手がいくら美人でも怖いでしょうし!しかしそうはならない、なぜなら、いきなり恋に墜ちてしまったから!!と言わんばかりの冒頭の二人のやりとりなのです。キュンキュンきますね!

観客もそんなマイクル・スタークウェッターとローラの二人へ感情移入して同情的になっていくのだろうと予想されます。(そもそも、妻と言ってる時点で夫が死んでるとはいえ人妻にあらぬ心を抱くって道徳的にどうなのと思わなくも無いけど)そしていわば突然前現れたヒーローであるかのような彼のアリバイ工作、証拠隠しを観客は一緒に見ているので一幕終わる頃には”どうなるのだろう?犯人の女性を男は隠し通せるのだろうか”と引き込まれてしまいます。

しかし、だんだんと彼女の嘘が暴かれていき本当に彼女が殺したのか、それすらもわからなくなってくるのです。なにしろ、ローラには元々不倫相手がいるのです。なんということでしょう!
ほんとに人妻とはいえ、モテる人はモテるのね!とひがんでしまいたくなりますね(と納得させるほどにローラには魅力がなきゃいけません)
じゃローラは悪女なのか?と言われたら同情できる背景が用意されてるし、そんなに単純ではありません。さすがアガサは一筋縄ではいきません。
ローラは捕まるのか?と観客が思った頃にはまんまとアガサの罠にはまっているのです。
怒濤の後半の逆転劇にうなるしかない、そんな作品です。
あまりにロマンチックすぎるのでこの作品を読むシュチュエーションとして無人島に持って行くよりは、秋の夜などにお酒を飲みながら読みたいなと思う本です(個人的な感想です)エンタメとしてすばらしい脚本です。





ブラック・コーヒー【電子書籍】[ アガサ クリスティー ]

価格: 1056円
(2024/7/22 12:48時点)
感想(0件)







2024年07月21日

オリエント急行の殺人






agasa.png


オリエント急行の殺人


このブログは
アガサクリスティーが好きすぎて
無人島になにを持って行きたいかと聞かれたら
「アガサクリスティーの本」と答えるくらいの熱量があります
この本のこの作品のココが好き
または
この本のこういう所が見所!
というのを紹介していくブログです
自分の独断と偏見で★を付けていますが完全好みの問題なので、皆様とは違う価値観かもしれません。
ご容赦願います


このブログの最初はこちら

ennto.png


オリエント急行の殺人


アガサが好きなら絶対読んでる度 ★★★
トリックが前代未聞度      ★★★
超有名作品度          ★★★
無人島に持っていきたい度    ★☆☆ 




これは超有名な作品です

アガサクリスティーと言えば、これでしょう!
と言われる作品のうちの一つと言っていいでしょう。

アガサクリスティーか
オリエント急行

ミステリー好きなら
どちらかはきっと聞いたことがあるはずだと思います


アガサの作り出した大人気の探偵のポアロのが出てくるこの作品は
なんといっても奇想天外な犯人が有名です。

何度も映画化やドラマ化されてきました。
ご覧になった方も多いのではないでしょうか?

もちろん、奇想天外の犯人というのもあるでしょうが、それ以外にも
華やかな豪華列車が舞台であること、
登場人物が多い事、
そして列車を使った本格的密室ミステリーであるとういう
おいしそうな状況がそろっているから映像化のオファーが途切れないのだと推測します。

オリエント急行という題名の響きがまたいいではないですか!
いかにも異国情緒あふれる豪華な寝台列車というだけでも憧れでしょう。

映像化するにあたっては、
有名な俳優たちを沢山どっさり配役に使える利点がありますし!
(理由はお分かりですね、主要人物がたくさん出てくるのです)

ただ、設定の大雪と豪華列車が頭を悩ますところです。
そりゃ”タイタニック”という映画ほどには、製作費は掛からないかもしれませんが(あれは豪華客船を海に沈めちゃいますから)
列車をとにかく豪華にしないと映像がしょぼくなってしまうことは確かですし大雪も大事。
この作品の魅力の一つは状況の特殊さであり、そこが最大の舞台効果でもあるのですから、ここをケチると、映像作品にした時にしょぼくなってしまいます。




それはさておき、
この作品は、ミステリーだとしても、ある意味フィクションではないところもあります。
というのは、アガサが生きていた当時に実際に起こった誘拐事件にアガサ自身が心を動かされて書いたと言われているからです。
実話.png

復讐、敵討ちといった気持ちがあったのではないかと思われるのです。
そういったアガサの正義感をふまえて読むとまた違ったイメージになるかもしれません。

ただ、客観的にみた推理ミステリー単体としては、名探偵ポアロが初めて”迷”探偵になる作品でもあり、反則技も出てきます。
純粋に推理物としてはちょっとどうかな、とは個人的に思います。
しかしミステリーとして、すばらしい小説です。

今後どの小説家がこのジャンルに挑戦しても、二番煎じと言われることになるトリックなのです。
もし、まだ読まれていない方がいらっしゃったら、これから驚きが待ってるんだと思うとてもうらやましいと思います!

ori.png


うぐいす荘(ナイチンゲール荘) 感想




うぐいす荘(ナイチンゲール荘)


agasa.png



このブログは
アガサクリスティーが好きすぎて
無人島になにを持って行きたいかと聞かれたら
「アガサクリスティーの本」と答えるくらいの熱量があります
この本のこの作品のココが好き
または
この本のこういう所が見所!
というのを紹介していくブログです
自分の独断と偏見で★を付けていますが完全好みの問題なので、皆様とは違う価値観かもしれません。
ご容赦願います


このブログの最初はこちら

うぐいす荘(ナイチンゲール荘)


これはアガサクリスティーの短編集の中の一つの作品名です
とても素晴らしいので紹介します


女性の心理が分かる度   ★★★
ゾクゾクする度      ★★★
無人島に持っていきたい度 ★★★
youda.png

アガサクリスティーの短編集は戯曲の原案も含めて18編もあります。

(出版社によって増減アリ、重複する話もアリ)

アガサが描いた短編の中には

ポアロ、マープルなど

有名な探偵の出てくるものと

それ以外の

名もない登場人物のものも

いくつかあります

有名な探偵が出ずとも

作品の一つ一つは

どれも面白くすばらしいのです。

(好みでないものもありますが)

アガサクリスティーが

好きで読み込んできている自分が、

何度も読んで、

ポアロもマープルも出なくても

ネタバレもしているけど

『やっぱりアガサは天才だ』と

にやにやしながら読んでしまうのです。

そんな、有名な探偵が

出てこない作品の1つに

『うぐいす荘』があります

これは新潮社の

クリスティー短編集?Tの

巻頭を飾る一編です。

早川文庫では

『ナイチンゲール荘』という

別名でも収録されています。

私はこのお話も大好きです
かめら1.png

ネタバレなしの紹介

今の時代に

そぐわない言い方をすると、

アクリスという

結婚適齢期を

過ぎた女性が主人公なのです。

長い間付き合った

結婚直前の男性と

別れた直後に、

別のステキな男性と

出会い結婚してからの話です。

長いお付き合いの後に

破局した適齢期の女性の

切なさは置いといて、

すぐに

素敵な彼が現われて

結婚までしてしまうなんて、

読んでいる私は

”良かったね!”と

アクリスを誉めてあげたくなります。

真面目に長い間

頑張って働いてきた

アクリスに同情している所もあります。

しあわせけ.png


ところが

幸せな結婚生活を

送っているのに、

ある日突然、

元カレから電話が

あってから

胸騒ぎが止まらなくなるのです。

すとか.png

そう書くと

『え?恋愛もの?

三角関係?どこがミステリー?』

と言われそうですが

立派にミステリーになっているのです。

そこはアガサですから!

ある理由があって

彼女は命の危機に

見舞われるのですが、

頭をフル回転させて

たった一人で危機に

立ち向かうのです。

恐怖と、

心情の動きが

スリル満点に書かれています。

最後のセリフが

最高の一言です!



くりかえしますが

ポアロもマープルも

いないけど、

アガサクリスティーって

こういう話も書くんだ?!と

驚いていただきたい短編です。

『うぐいす荘』と

『ナイチンゲール荘』は

題名が違いますが

内容はほぼ同じです。


しかし最後のセリフの

ニュアンスが全然違うのです。

これは完全に訳の

仕方の個人の好みの

問題ですが私は

うぐいす荘の方が好きです。


ちなみに『うぐいす荘』は

井上宗次さん、石田英二さん訳、

『ナイチンゲール荘』は

田村隆一さん訳です。



どちらを読んでいただいても

短編でサクッと読めますし、

両方読んでいただいて

その微妙な違いに、

ぜひ驚いて

いただきたいと思います











耳で聞くならこちらを




自分と周りに優しいイヤホンも



耳の穴を塞がないから良いのです
IMG_20240728_062357~2.jpg
(充電中です)



IMG_20240728_062342~2.jpg

20240728_204936 1.jpg

posted by agata5 at 15:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編集

2024年07月20日

ポケットにライ麦を 感想






agasa.png




このブログは
アガサクリスティーが好きすぎて
無人島になにを持って行きたいかと聞かれたら
「アガサクリスティーの本」と答えるくらいの熱量があります
この本のこの作品のココが好き
または
この本のこういう所が見所!
というのを紹介していくブログです
自分の独断と偏見で★を付けていますが完全好みの問題なので、皆様とは違う価値観かもしれません。
ご容赦願います


このブログの最初はこちら


ポケットにライ麦を


読んでソンはない度   ★★★
トリックがすごい度   ★★☆
ワイドショー度     ★★★
マープルの魅力爆発度  ★★★
無人島に持っていきたい度★★☆

ミス・マープルが出てくる話です
”ポケットにライ麦を”なんて、かわいい題がついていますが、これは童謡の歌詞の一説です。アガサの作品でマザーグースの歌になぞらえた殺人事件の話『そして誰もいなくなった』がありますが、これも、童謡になぞらえた殺人になります。

牧歌的な歌詞と陰惨な殺人のミスマッチはアガサの得意な分野ですね。
探偵小説というよりミステリーというより最初はワイドショーを見てるような感じがします。

ネタバレぎりぎりで言うと

4ページ目で早速死体が出ます!早いです、展開が早いです。

金髪の美人秘書、お金持ちの家、会社の社長、お金目当ての後妻、後継者争い、という2時間サスペンスに出てくるようなラインナップ!面白くないわけがありません!
マープルの話といいつつ、マープルが出てくるのは中盤を過ぎてからです。
満を持しての登場となりますが、その登場の仕方もまたカッコいいのです。

poa.png


ネタバレなしの紹介

ミスマープルの数ある作品の中でも今回は犯人に対してマープルの最大級の怒りが爆発します!
あらすじとしては
大企業の社長がお茶を飲んだとたん死んでしまうところからはじまります。
ポケットには何故かライ麦が入っているのが最初の違和感でもあり、この作品の題名の元になっています。
若い不倫中の後妻はいるし、息子は罵倒されたばかりだし、怪しいのは家族か身内かに思えるのですが警察が調べているうちに第2、第3の殺人がおきてしまうのです。

詳しくは言えないですが、その関係者にマープルの知り合いがいて、事件に自ら乗り出してくることになります。
それは物語の中盤過ぎてからですが、それでもマープルの魅力たっぷりの作品です。
マープルが出てくるまで時間はかかりますが、それまで事件の起こるフォステキュー家に住む人物紹介や使用人の紹介などが興味深く書かれていますし、事件のヒントももちろん書かれています。
マープルおばさんの人生経験、それは現代のAI技術をもってしてもなかなか測れないもので、そう、まさにマープルのおしゃべりのテンポ、抑揚によって人間の本質を見抜くことは、その辺にいる刑事でも、警部でもできません。そういった意味でもマープルの事件はおもしろく読めます。

そして、犯人のどうしようもない腐った根性(エライ言われよう)、しかしそんな犯人も人間であり愛というものを知っているのだなあと感じさせるのは私がマープルを好きだからでしょう。現代とはちがって科学的な証拠もそろいにくい時代のミステリーですが、看護師として働いてきたアガサだから書ける特別な作品だと思います。








5匹の子豚 (アガサの作品の中で一番好き)

gohiki.png







agasa.png






このブログは
アガサクリスティーが好きすぎて
無人島になにを持って行きたいかと聞かれたら
「アガサクリスティーの本」と答えるくらいの熱量があります
この本のこの作品のココが好き
または
この本のこういう所が見所!
というのを紹介していくブログです
自分の独断と偏見で★を付けていますが完全好みの問題なので、皆様とは違う価値観かもしれません。
ご容赦願います


このブログの最初はこちら

五匹の子豚

gohiki.png


ポアロの推理が冴えてる度 ★★★

アガサの情熱を感じる度   ★★★

最高傑作度        ★★★

無人島に持っていきたい度 ★★★ 



私の独断と偏見ですが

ポアロの登場する小説が

沢山ある中で、

どれが一番好きかと聞かれたら

『5匹の子豚』と答えます。

私はそれぐらい大好きな作品です

題名こそかわいいですが、

内容はがっつり大人向けでございます。


この作品には

近代化に向かう女性の強さ、

若さ、芸術家へのリスペクト、

ゴシップ、スキャンダル、

母の愛、強い愛、

など沢山のことが詰っています!


謎解きもすばらしいのですが、

なんといっても登場人物の

魅力的な事と言ったら、

アガサクリスティーの

最高傑作と言ってもいいと思います。

多分、

アガサクリスティーは

ノリにノってこの作品を書いています!

(個人の感想です)


この作品は自分は

何回も読んでいるけれど、

飽きないんです

結末が分かってても

何度も読んでしまいます


映像化した時どんな

俳優さんがいいかなあ、

なんて思いをめぐらせて

読んだりしてるのも

楽しかったりします。


演じる俳優さん達も

きっと楽しいだろうと思う

作品じゃないかと思います。

個性的な

魅力的な

登場人物ばかりです



ネタバレなしの紹介
感想ネタなし.png


16年前に

有名な画家だった父を

殺した容疑で捕まった母の事を

知らずに育った娘からの

依頼を受けて

ポアロが過去の真実を

あぶり出す作品です。



母は最後まで無実を訴え、

夫は自殺だったと

かたくなに言い続け

獄中で亡くなってしまうのですが、

当時は状況的に母が

犯人以外にあり得ないのです。

この夫というのが

全くひどい男で、

絵を描くことに夢中になると

奥さんや子どものことなど

全然目に入らず、

浮気しまくる自分勝手な

ヤツなのです。
ほどい.png

何回目かの浮気の果てに、

若い愛人を絵のモデルとして

家族と避暑地に連れてきて

住まわせるような身勝手な

行動の夫に、

とうとうガマンの限界を迎えた妻が

殺したと思われても

仕方がないのです。

しかも、この愛人は

今までの愛人とは違い

とても若くて情熱的で

妻は今まで感じたことのない

敗北感を感じていた

時期でもあったのです。

もてる.png


母の犯行が確実かと

思われるのですが


しかし最後まで

無実を訴える母の気高い姿に、

知れば知るほど

”本当はどうだったんだろうか”と

疑問が沸いても来ます。

誰かをかばっているのか?

それとも本当に自殺なのか?


全ては、過去に

遡ることでしか

見えてきません。

芸術家の父、

若き美しき愛人、

そして妻、

この3人の三角関係だけでも

濃い話が出来そうなんですが、

ここに加わるのは

当時避暑地に一緒にいた

母の妹、

娘、夫の兄、親友で、

ポアロは当時の愛人を含め

5人から順番に

話を聞きに行き

五匹の子豚になぞらえて、

解決していくのです。


当時の関係者を

一人一人訪ね歩いて話を聞き、

彼ら、彼女から遙か昔の記憶を

鮮やかによみがえらせて

いくところも見事です。


人が過去を思い出すとき、

都合のいい事、

悪い事も一緒に思い出しますが、

ポアロはそれを

何一つ聞き逃さないのです。

矛盾を見つけ出し

辻褄を合わすことの

組み立てはすばらしいです。

読者は読んでいて、

過去と現在が入り交じり、

こんがらがりそうになるのですが、

ポアロの推理により

最後に鮮やかに過去の

タイムテーブルが合う時、

過去の矛盾に

読者の自分もやっと気がつき、

当時に実際に起こったことが

鮮やかによみがえります。


そこが素晴らしいのです!


魅力的な人物ばかり

登場するといったらそれまでですが、

この作品はそれぞれが

昔の同じ事柄、

人物を思い描き同じ時間を

思い返すことで、

その人なりの想い、

感情の書き分けが際立って

素晴らしい事が分かります。

本当に大好きな作品なので、

この作品に関して、つい紹介にも

特別に力がこもることを

お許し願いたいし、

是非この作品を読んでいただいて、

アガサの魅力に更に

ハマっていただきたいと思います。













ありがとう青白.png

象は忘れない 感想






agasa.png




このブログは
アガサクリスティーが好きすぎて
無人島になにを持って行きたいかと聞かれたら
「アガサクリスティーの本」と答えるくらいの熱量があります
この本のこの作品のココが好き
または
この本のこういう所が見所!
というのを紹介していくブログです
自分の独断と偏見で★を付けていますが完全好みの問題なので、皆様とは違う価値観かもしれません。
ご容赦願います


このブログの最初はこちら


象は忘れない

象は.png


アガサファンなら読んでおきたい度    ★★★
ポアロファンなら読んでおきたい度    ★★★
大逆転度                ★★☆
ちょっとしみじみする度         ★★★
無人島に持ってきたい度         ★★☆ 

象は忘れない (ハヤカワ文庫) [ アガサ・クリスティ ]

価格: 1056円
(2024/7/20 08:15時点)
感想(7件)





実は私が一番最後に紹介したかった作品です

なぜならアガサが書いたポアロものの本当に最後の作品だからです

チョット詳しい方ならポアロの最後の作品と言ったら『カーテン』じゃないのって言われるかも知れません


アガサクリスティーが、ポアロの最後の事件として書いたのは『カーテン』で間違いないのですが、実際には、『象は忘れない』はその『カーテン』の後に書かれています。
詳しくはいつか「カーテン」を紹介したときにしたいと思いますが、『カーテン』より後に書かれたと知るとまた味わい深く読むことが出来ると思います。

なので、作中に昔に解いてきた、過去に遡って解決する『5匹の子豚』とか『ひらいたトランプ』とか他にもそんな名作が出てきて、読みながらああ、本当にコレはアガサのポアロの最後の作品なのかとしみじみ思います
(今回紹介に至ったのは、世界情勢でのいろいろや災害いろんなことが起こるので、明日を後悔しないように、紹介したい作品を早めにしておこうと思った次第です!おおげさですけどね!)

過去の事件を掘り起こして真相にたどり着くポアロお得意の回顧推理ストーリーです
過去の事件自体は悲惨で悲しいのですが作品の構成はとても粋な作品です

ポアロの友人小説家のオリヴァが受けた依頼が発端で、過去の事件の真相を暴いていきますがオリヴァ自身もあちこち話を聞きに行く活躍ぶりです

その報告をもとにポアロは順序立て、真相を組み立てていきます

ポアロの友人で小説家のオリヴァは、売れっ子小説家でまるでアガサの分身のようです
有名人としてパーティーに呼ばれて行くことの滑稽さや“ファンです”と言われることの苦痛なども書いていて、アガサもそんな気の進まないパーティーに出ていたのかもと思ったりして面白いです

『象は忘れない』という題名から分かるように頻繁に”象”という言葉が出てきますが実際に本物の象は出てきません

”象は忘れない”の題名には”象は決して過去の事を忘れない”親切にしてくれた人の顔も、危害を加えた人の事も全て覚えている、その象の特性を比喩に使っています(アガサ自身も気に入っていたのでしょう)
関係者の過去や思い出を『象』と名付けて“象をさがしに言ってくるわ”とオリヴァに言わせながらユーモアたっぷりに捜査に出かけていくのでこの題名が付いているのだと思います

なので頻繁に”象”という言葉が出てきますが実際に本物の象は出てきませんよ!象が苦手な方は安心してくださいね(そんな人いるんでしょうか?)

トリックとしては、難しくはないです。
ミステリー好きならすぐに思い付くネタかもと思わないでもないですし、トリックというよりは人間関係、動機は何かという謎解きになると思います。ちょっと感傷的な作品です

なので自分としては無人島まではもって行くにはちょっと湿っぽいなという感じです
いつも強気なポアロが自分はすでに過去の探偵なんだと自覚しているようなシーンもあって切ないです
自分の灰色の脳細胞に絶対的な自信のある傲慢気味なポアロがそんなに弱気になるなんて今まであり得なかった事です
対比として未来に生きる若い人間のたくましさを書いています。
そんなところもアガサ的に最後のポアロ作品『カーテン』の後の作品らしいと言えばらしいです。

作品の中に重要なアイテムの住所録が出て来るのですが、その年代別の住所録の年代のままに作品も書かれているのを知った時、直接事件のトリックとは関係ないですがアガサが生きていた時代をリアルに感じることが出来て興味深いと思います。

一番素敵だなと思う台詞が、最後に出てきます。
最後のオリヴァの台詞を読み終えたとき、アガサはこの一言が最後にいいたかったのかなとハッとします

作品のあらすじ

小説家のオリヴァはあるパーティーの最中、一人の女性に頼み事をされます

以前オリヴァが名付け親になった女性がうちの息子と結婚する予定だが、その女性の親が過去に謎の心中事件を起こしている。男親の方が母親を殺してから自殺したのか、または逆なのかまたは第3者の殺しの可能性があるのか、それによっては息子の結婚に賛成しかねる、そんな内容です。
オリヴァにとったら、過去何人もの名付け親になってるうち一人のことだし、いきなりそんなこと言われたって“いい迷惑”。しかしまるっきり無視も出来ないので、そのパーティーの帰りに、早速ポアロの家に強引に押しかけ(事前に電話するだけマシ)“こんなこと頼まれたのよ!過去の事件を調べるのあなた得意でしょう!”てな具合でまくし立て、ポアロに協力させるのです。遠慮なんてオリヴァに存在しません!
ポアロは、その時にはすでに全くの引退状態で、引き受けるギリなんてありませんが、悪友のオリヴァはポアロを上手に使うすべを知っています。(オリヴァは上手ですね)
そんなわけで引き受けたポアロとオリヴァは事件の真相に迫っていくのです

オリヴァに依頼してきた女性にも、秘密があり、ただ息子を心配するだけじゃない”何か”もあぶり出します
依頼主はそこまで暴かれたくなかったでしょうが、ポアロはお構いなしです。
過去の事件なので関係者からの聞き取り、噂話の収集から始まります。思い出話も聞く人によって違う感想を持ち、事件の見方が違うことや、同じ家族の印象も違うので、何が本当か分からなくなってきます。
それでも、地道に過去の思い出を聞き取りに旅に出るオリヴァとポアロがいて、些細なこと、例えば飼っている犬のことやかつらのことなど関係無いことに思える全てが一つに線に繋がる瞬間がたまらない作品です。






2024年07月19日

エッジウェア卿の死 感想

agasa.png

エッジウェア卿の死 感想






このブログは
アガサクリスティーが好きすぎて
無人島になにを持って行きたいかと聞かれたら
「アガサクリスティーの本」と答えるくらいの熱量があります
この本のこの作品のココが好き
または
この本のこういう所が見所!
というのを紹介していくブログです
自分の独断と偏見で★を付けていますが完全好みの問題なので、皆様とは違う価値観かもしれません。
ご容赦願います

このブログの最初はこちら

エッジウェア卿の死
舞台.png

ポアロがだまされる度    ★★★
犯人に同情できない度    ★★★
女優の華やかさ度      ★★★
無人島に持ってきたい度   ☆☆☆



ネタばれなしの紹介

この作品は読み始めからドラマティックです
華やかなショービジネスが舞台、美男美女が出てきますし何しろポアロの友人のヘイスティングズが最初に”ある非常に魅力的な一女性の心からの願いを実現することにもなる”などと思わせぶりに読み手を誘うからです

この頃のショービジネスの風景も今と変わりがないようで、結婚離婚の繰り返しで世間を賑やかすのは定番
そこにはお金とスキャンダルがてんこ盛りです
しょー^ぶじねす.png

そんな中、よりによってポアロに離婚問題の解決を依頼する美人女優が出てくるのです
それがエッジウェア卿の奥様、ジェーン・ウィルキンスンなのです

エッジウェア卿は大金持ち、しかし性格に難ありで有名なひとなのですが前の夫人ともすったもんだでなかなか離婚に応じなかった過去があります

それが分かっていながら、その問題のエッジウェア卿と結婚するなんて女優っておかしな生き物ですねっ?と凡人の私などは思うのですが、大金持ちというのは変人を魅力的に魅せるものですから何回も問題おこしつつ結婚しちゃうわけです(だろうと思われます)

なので簡単にはいかない離婚に応じるように説得して欲しいと名探偵ポアロにお願いするのも分からないではないのですが、そもそもポアロがやることがない案件です

自ら面白いと思う事件しか引き受けないポアロも強引な女優に無理やりその離婚問題を引き受けさせられますがどちらかというと、ヘイスティングズがその女優のファンだったから、と言うのが理由ではないかと思います
ヘイスティングズは女性に弱いんだなと毎回思いますが、今回もその傾向は顕著です

とにかくその離婚問題が事件の発端になりますが離婚問題はあっけなく解決します
さすがポアロ!と言いたくなりますが別にポアロの手柄ではありません
ポアロが離婚問題に着手する前にエッジウェア卿はすでに離婚に応じていたというのです
そこもこの作品を惑わせるひとつの要因です

ウソをついているのは夫か夫人かどっちなのか?どちらもだまされているのか?
題名通りポアロが会ったその後にエッジウェア卿が殺されて亡くなるので、いうなればポアロは無理やり事件に巻き込まさせられたと言っていいと思います

離婚したい理由が、他の男と結婚したいからと言ってのけていた夫人の女優ジェーンは限りなく怪しい!
しかし、完璧なアリバイがあるのです
犯人は今の夫人と結婚したい新しい男なのか、前の夫人との間に出来た娘なのか、それとも他に恨みを持つ人間がいるのか?
一体エッジウェア卿を殺したのは誰なのか?
事件は解決出来るのか?そんな作品です

アガサの作品にはいくつか女優が出てくる作品があります
女優mutai.png

女優ってこういう生き物でしょって言わんばかりのアガサの表現の面白さがそこにあります
例えば『鏡は横にひび割れて』なども女優が登場しますが(この作品はエリザベステイラーが演じられていた事もあります)こちらの女優はまたちがう表現をされてます

沢山の女優さんの表現がある中で自分がどんなに魅力的か分かっている女優のエゴイストの表現は上手いなと思います

そして同時に芸術として賞賛される女優も出てきたりします
リスペクトもされているのでしょう

今作ではカーロッタ・アダムズという女優の存在が面白いです
とても面白いなと思います
それだけでも読む価値はあるかもしれません

それをふまえた上で、
この『エッジウェア卿の死』重要人物の女優が大げさと思いますし(そこが面白いと言えば面白いけれども)そこは置いといても、今作のポアロの推理はちょっと冴えが良くない気がするんです

ヘイスティングズの気に入った女性への盲目度は特に今回半端ないですし、イライラするほどです。ヘイスティングズのいい所でもあるんですけどね(アガサはわざとでしょうが)

そんなわけでこの作品が好きですか?と聞かれれば 私はポアロのキレが弱い気がしてあんまり好きではありませんと答えます。
でもこの作品を面白いか、と言われれば、面白いと答えるでしょう

矛盾するかも知れませんが、そんなわけで無人島までは持っていかない本ではあるんですけど単純に見えて複雑な事件にしている、あり得ない設定のそんな作品とだけ言っておきます

ポアロのクリスマス 感想


agasa.png





このブログは
アガサクリスティーが好きすぎて
無人島になにを持って行きたいかと聞かれたら
「アガサクリスティーの本」と答えるくらいの熱量があります
この本のこの作品のココが好き
または
この本のこういう所が見所!
というのを紹介していくブログです
自分の独断と偏見で★を付けていますが完全好みの問題なので、皆様とは違う価値観かもしれません。
ご容赦願います

このブログの最初はこちら


ポアロのクリスマス


poarpkurisu.png




クリスマスアドベントカレンダーのような作品   ★★★
アガサのクリスマスは陰と陽度          ★★★
内容は血に飢えたクリスマス度          ★★★ 
クズ男がモテるのは何故なんだ度         ★★★
無人島にもっていきたい度            ★★☆




ネタバレなしの紹介

人気作家であるアガサクリスティーの作品は出版社が『クリスマスにはアガサを』とキャッチフレーズにしてキャンペーンをしていたのは有名な話ですね。売るための出版社なりの作戦だったのでしょうが、それだけ楽しみにしていた読者のファンがいたということでしょう。そのための新作を出し続けるアガサも相当凄いと思います。

今回紹介するのは、そのキャンペーにのっとって書いたズバリ『ポアロのクリスマス』という作品です。
クリスマスと言えば、ケーキにツリーにリース、ご馳走の数々など明るいお祭りのように思う人も多いかもしれません。
実際、アガサもイギリスらしいクリスマス、プティング等のご馳走が大好きで『クリスマスプティングの冒険』では思う存分ご馳走を登場させて明るいクリスマスの作品を書いています。
しかし今回の『ポアロのクリスマス』は全く違います。

『クリスマスプティングの冒険』が陽だとすると『ポアロのクリスマス』は陰といったところでしょう。
何しろ、読者の一人に『もっと血まみれの殺人を書いて欲しい』と言われて奮起して書いているのですから、始末が悪い!
(とても誉めています)
くらいクリスマス.png

実際には12月22日から28日までの7日間の話になりますが、犯罪が起こる前の22日はこんなことがあった、23日は、というようにアドベントカレンダーをなぞるように始まります。作品事件が起こるのはクリスマスイブの24日、犯人が分かるのが27日、エンディングが28日、つまりポアロの灰色の脳細胞に掛かればクリスマスイブに事件が起ころうとも年内に解決してしまうのです。

殺されるのはお金持ちの老人、若い頃から散々女を(男も)泣かせてきた良心の欠片もない老人になったシメオン・リーという男です。

でもなぜ、こんなクズのような男が女に好かれるのでしょうか、私にとっては全く不思議でしかないのです。顔がイイとだけは描いてありますけど、中味はクズです。(何回言うのだろう)そしてクズがお金を持つとさらにタチが悪いし女好き、、、、となればまあ、殺されても仕方ないか!と思える人物に書かれています。

だからこそ血まみれになって殺害された時、マクベスの台詞『あの年寄りが、あんなにたくさんの血をもっていると誰が考えただろう』を登場人物に言わせて人間の愚かさを全面に出しているのかもしれません。

ネタバレちょっとあり

イギリスのクリスマスは、日本で言うところの『お盆』や『お正月』の行事と同じような感覚ではないでしょうか。

疎遠になってる家族、親戚等がクリスマスだから、と言って集まる口実がそこにあります。
当然、犯人は集まった親戚家族の中にいるわけですが、そんなクリスマスだからこその事件と言って良いでしょう。どうしてこんな話を思い付くのか、いつもながらびっくりします。私は最後まで犯人を見抜けませんでした!

なにしろアガサはびっくりする仕掛けを考えているし、タネを全部見せているようで、見せてない上手い書き方をしています。恋愛もからめて結局はハッピーエンドにするところもクリスマスのお慈悲と言ったところでしょうか。

ここでのクリスマスはイギリスの良きクリスマスではありません。『クリスマスプティングの冒険』ではクリスマスの良さを沢山書いているのに、ここではクリスマスを否定するかのような扱いです。

アガサに何があったのでしょう、と思わずにいられません。そんなアガサの気持ちも想像しながら読んでみるのも良いかもしれません。

無人島にもって行くにはちょっと好みじゃないので満点の★ではありませんが、だまされることは必須の良い作品です。







Build a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: