ことばは不思議な力を持っています。形を獲得したことばは、歴史や民族、信仰に関する認識を次の世代に伝える役割を果たしてきました。ことばは論理的な思考の母胎であり、「黒い猫」というフレーズは含意を持ちます。ことばの論理性と文字の発明によって数学が生まれ、ガリレオの認識も生まれました。ことばの力は人間に与えられ、社会的な集団、宗教、芸術、科学、技術の基礎となっています。ことばは人間の最強かつ万能の道具であり、生物学的特徴です。言語能力は生まれつき備わり、チョムスキーはその獲得を遺伝子の突然変異と考えています。言語能力を持つ我々は、遡ればミュータントの子孫であり、原始的な思考のシステムを持っていたと言われています。ホモ・サピエンスとネアンデルタール人は交配しており、言語能力の差によってテレパシーのように見えたかもしれません。
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ことばには、人々の心を愉快にしたり、怒りや悲しみを和らげたり、ときには人を突き動かすほどの力があります。詩人である川崎洋さんは、挨拶など日々なにげなく交わしていることばを見直し、言い回しを探るなかから、人の気持ちを受けとめ、自分の思いや考えを伝えるにはどうしたらよいかを語ります。豊かなことばの世界へ導く一冊です。
また、子どもの「言葉の力」を強く育てるには、生まれてから6歳までの家庭環境が重要です。この時期の子どもは言葉を習得する最適期にあり、適切な環境があれば、2カ国語でも、3カ国語でも何の苦労もなく身につけることができます。しかし一方で、乳幼児期に言葉のインプットが不足すると「言葉の力」が形成できず、思考力が弱い子どもに育ってしまいます。
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