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2019年10月11日

不思議の酒のアリス



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そう、ジャックはすずよりもアリス派です。

だからと言ってこのタイトルを付けた訳ではありません。

ふとした瞬間に異世界に迷い込んだような気分になる事があります。

曲がった事の無い路地に入ってみようと思ったり、入った事の無いお店に入ってみたりした時には何度もその気分になります。


不思議の国のアリスがウサギを追って迷い込んだ木の根元の異空間。

その異空間に負けないような、素敵な世界を提供してくれるバーってありますよね。


バーと言うのは異空間であり、
バーテンダーと言うのはその演出家です。

その空間に帰りたくて、ジャックは戻ってまいりました。

本の国「バー ブックシェルフ」は、今日も素敵な世界を用意してくれていました。



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少し面食らいました。

前回お邪魔した時にはアリスのお茶会の様に、不思議なメンバーで賑わっていた「バー ブックシェルフ」。

ほぼ満員の店内に荷物をどけて頂き、なんとか入る事が出来たのでした。

今回は打って変わって静寂の店内が。

「いらっしゃいませ」と声をお掛け頂き、マスターが迎え入れてくれました。

いつもはそれなりに混雑しているそうなのですが、何故か今日は誰も来ないのだそうでした。

本などほとんど読まないのに店に迷い込んで来た人間の事は、あの後も度々話題になっていた様でマスターはとても喜んでくれました。


気をとり直して一杯頂くことに。

そこでマスターが棚の奥から出してきたのがこの一本でした。


「ポート アスケイグ」と言う名のスコッチです。

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製造社が自身の蒸留所を持たずに、購入してきた原酒からウイスキーを作って販売する形で作られた、「ボトラーズボトル」の名品です。

ジャックはこの「ポートアスケイグ」の事を聞いてはいたものの、実際に飲むのは初めてでした。

実際にいただいてみたら、テイスティンググラスの中いっぱいに広がる芳醇な香りに、先ず驚かされます。

柑橘系なフルーティーさとピート香の香ばしさが程よく同居しており、ここまで香り高いウイスキーはなかなか無いのではないでしょうか?

口に含むと最初にやって来るのはやや円やかなフルーティさです。

より消毒液の様な香りを想像していたジャックが少し面食らっていると、次に来ました!

針が刺すかのような歯医者さんの香りに追い打ちされ、シルバーチャリオッツにやられたJガイルの如く完全に打ちのめされてしまいます。

しかもこの消毒臭も、最初の円やかさと上手く混ざり合ってくれて、嫌味のない実に良い口当たりを与えてくれるのです…。


とか、言われてもわかりませんよね。

焼き鳥の時同様、味を正確に伝えるブログの方法は無いものかと、常日頃から悩んでいるジャックです。

百聞は一見にしかず。
百聞は一口に敵わず。
すずはアリスに敵わずですよ。


しかし美味しい事には変わりございません。
未体験の方は是非お飲みいただく様、お勧め致します。









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さてここで、「ボトラーズボトル」についてご説明しておこうと思います。

「ボトラーズボトル」に対するものとして「オフィシャルボトル」と言う言葉があります。


この「オフィシャルボトル」と言うのが、自社で持っている蒸留所(ウイスキーの製造施設)にて原酒を作り、その原酒を使って作られたウイスキーの銘柄の事なのです。

世界に誇るサントリーの「山崎」を思い浮かべて頂ければわかりますよね。
JR東海道線の山崎駅の脇に立派な蒸留所があります。
あそこで作られた原酒のウイスキーなので「山崎」は「オフィシャルボトル」です。

ジャックが大好きなイチローズモルトの「秩父」やニッカウヰスキーの「余市」なども、しっかりと銘柄に蒸留所の名前が入っています。

この様にはっきりと蒸留所の名前が入っているもの以外でも、基本的に自社の蒸留所の原酒で作られている銘柄は「オフィシャルボトル」なのです。


これに対し他社の蒸留所の原酒を樽買いしてきて、それを元に製造販売されている銘柄を「ボトラーズボトル」と言います。

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ボトラーズとはいわゆる「瓶詰め会社」とでも言えるのでしょうか。

何となく「他所が作ったものを瓶詰めしてるだけ!?」と思われそうですが、それは少々違います。

蒸留所の設備を持たずその工程に神経を使わなくて良い分、樽の熟成具合や最終調整に注力できるので、物凄く良い味わいのものが出来上がったりするのです。


さてそんな「ボトラーズボトル」の中に、「謎のウイスキー」と言われているものがあるのをご存知でしょうか?

通常「ボトラーズボトル」は瓶詰め会社の他に、蒸留所の名前もしっかりと書いてあります。

少年ジャンプとコラボしたパズドラの様に、お互いの知名度を上げて宣伝効果につなげる、いわゆるwin-winの関係を築いて行く為には当たり前ですよね。

しかし中には様々な事情で、蒸留所の名前が一切明かされていないものも存在します。


事情については様々なものがある様ですが、蒸留所の方から「作って売るのは良いですがうちの名前を明かされては困りますのよ」的な事を言われているケースがあるのですね。

蒸留所にしてみれば、自社で製造するときに「熟成年度は〇〇年以上は作らない様にしよう」と方針を決めているにも関わらず、同じ原酒を使って〇〇年以上のものを作る「ボトラーズ」が出てきたら困りますよね?

実際にその様な理由なのかはさておき、どの銘柄にも様々な事情があるのだと思います。


さてその「謎のウイスキー」、その中の一つが「ポートアスケイグ」なのです。

「ポートアスケイグ」以外にもグラスゴーの「アイリーク」、アイラ島の「グレンジストン」など、謎のウイスキーとして名高いものはまだまだあります。









「ポートアスケイグ」とは、アイラ島の北東部にある港町の名前です。

その地理的位置などから、以前の記事でジャックが頂いていた「カリラ」というウイスキーが、その正体だと言われる事が多いようですね。

しかし、原酒の正体は今後も明かされる事はないでしょう。

ウイスキーの愛好家達は今日も世界中の酒場で、これはカリラだ、いやラフロイグだという様な自説を繰り広げて、愛飲している訳ですね!


この謎のウイスキー、「ポートアスケイグ」をボトリングしているのは、ロンドンの「スペシャリティドリンクス社」です。

代表のスキンダー・シン氏は、数々の蒸留所関係者と密接な関係を持つ業界関係者に広く認められている人物です。

たぐい稀なるアイディアと先を見通す先見性で、常にウイスキー市場でのトレンドをリードしています。


この様な方のプロデュースしたボトルが月並みな魅力であるわけがありませんよね!

今宵のジャックも充分に満足させられたのでした。


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「ご馳走様でした」

ウイスキーを堪能したジャックは楽しいひと時のお礼を言います。

「また是非いらしてくださいね」

と、マスターは送り出して下さいます。



結局、前回とはうって変わって、最後までお店にはジャック1人でした。

この本の国はやはり異空間なのかもしれません。

その時その時の来訪者の気持ちに合わせて、賑やかさを楽しませてくれたり、静かな空間に変えてくれたりするのでしょう。

今夜は初めて出会った不思議の酒、「ポートアスケイグ」と語り合わせるため、ジャックとマスターだけにしてくれたのではないでしょうか?


現実社会に戻り上野駅に向かうジャックは、道すがら「また来よう」と改めて心に決めたのでした。

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■ Bar Bookshelff

住所  :〒東京都台東区東上野4-3-11 オリエント上野ビル3階
TEL :03-5246-4205
営業時間:18:00 〜 1:00
定休日 :不定休


https://barbookshelff.com/


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この記事へのコメント
日本にいたら絶対に行ってみたかったですね!!
ニュージーランドはワインが有名ですが、ワインは美味しくてもワイナリーのいい評判は聞けなくて(苦笑)
Posted by D.Monica at 2019年10月14日 08:47
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